作者:Elika
かけら
いずれこうなることはわかっていた。
いつかこんな日がくることは知っていた。
ただ──それが、今この瞬間、今日ではないと、思っていた。
毎日が、そんな思い込みの積み重ねで、振り返ればまるで空虚な自分の人生に思わず苦笑する。
粉々に砕け散ったかけらが、そんな自分の顔を歪に映し出していた。
あまりにも思い出がありすぎて、すべてを処分することなんでできなかった。
目に映るすべてに、いるはずのないあなたを重ねていた。
街の色ひとつですら、あなたを思い起こさせるには十分すぎた。
降り積もる雪ひとかけら、いや結晶ひとつですら、無意識のうちに、いるはずのないあなたを重ねていた。
これは確か、小樽のオルゴール堂で買ったんだったっけ。
割れたガラスの破片が、思い出ごと拾い上げようとした私に突き刺さる。
すぐに赤い血の流れ出す私は、無情にも生きている。
──あなたは、もう、どこにもいないのに──。
思い出の最後のひとかけらが、今日、形を失った。
あなたを失ってから、もう何度目になるかわからない嗚咽をもらして、いっそこのまま自分ごと砕けてしまえばいいと願った。
生きていて、ごめんなさい。
最終更新:2010年10月21日 17:27