作者:Elika
『姉さんの無茶振り1号』
・闇
・剣
・コンタクトレンズ
風が啼いている。
眠らない街の光の中で蠢く闇を滅せよ、と。
不夜城を見下ろし、俺は光に埋もれた闇に目を凝らした。
「いた──あそこだ!」
俺は新月に祈った。
俺が護るべき世界の無事を、俺を待っているあいつの幸せを。
そして、目を閉じ言の葉をつむいだ。
「来い、アンサラー!!」
声は波となり、夜を切り裂き、闇よりもまだ濃密な漆黒が俺の掌中に集積していく。
それはやがて束となり、密度を増し、徐々に形をあらわにしていく。
──魔剣・アンサラー。
『応えるもの』の名を持つこの剣は、使用者の命に従い闇を斬り魔を討つ、意思を持った魔剣だ。
2度3度空を切ると、切っ先から暗黒の波動が残像を結ぶ。
「今夜もよろしく頼むぜ。相棒!」
剣は応え、風を喚ぶ。
「っ────!!」
その風に乗り、俺の目から光が奪われていった。
「うわ、おい、ちょ、コンタクト!コンタクト風で飛んでった、おい!!」
俺の視力は裸眼で0.02、コンタクトレンズがなければまさに一寸先すら闇だ。
「お、おい、アンサラー!おまえちょっと、家戻って予備のコンタクト持ってきてくれよ!」
「主よ……私は情けない」
「情けなくて悪かったな!洗面台の右上の扉に入ってるからぁ~……な?!頼むよ!」
「予備のコンタクトレンズくらい、常に持ち歩くべきではないのか。そもそも主は危機感g」
「いーーーーーーーーいからとっとともってこいよ!」
「……世界がこのような者に護られていると知ったならば、人々はなんと思うであろうか」
「うっ…うるさいな!命令だ、アンサラー!今すぐコンタクトレンズをもってこい!」
「──承知した」
魔剣は渋々、闇に消えた。
…夜風が、目にしみるぜ────。
最終更新:2011年02月28日 23:18