始まる前に終わる伝説


作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI

ナレ:この台本に限り主役かもしれない。
女神:たぶん元凶。
孫娘:何歳でもどうぞ。三十路でも孫は孫よ?


ナ01「かつて、世界には平和な時代があったという。
   しかし今、世界は魔王とその軍勢によって、恐怖が吹き荒れていた。
   昨日は今日より暗く、今日より明日はなお暗い。
   人類はゆっくりと、しかし確実に滅びの道を歩もうとしていた。
   だが、そんな時にこそ勇者は現れる。
   その夜――世界中の人々は、夢の中で女神の声を聞いた」

女01「聞こえますか、人間達よ……私の声が聞こえますか……。
   私の名は女神ケルスティン……希望を司る者です……。
   今……一つの希望が目覚めようとしています。
   伝説の勇者の血を引く、新たな英雄が……目覚めようとしているのです……。
   彼が魔王を打ち滅ぼすその時まで、どうかくじけぬように……。
   そして――伝えましょう、新たな勇者の名を。
   その名はベルンハルト・フェルンストレーム。
   ――当年きって73歳の農民です」

ナ02「その時、世界中の人々は夢の中で叫んだ」

ガヤ「ジジイだー!!」

女02「……ジジイではありません……新たな勇者です……。
   少しばかりしおれていますが、新たな勇者なのです……。
   勇者ったら勇者なのです……異論がある方、呪いますのでよろしく……」

ナ03「それはとても希望の女神らしからぬ言葉であったが、しかし。
   こうして世界中に、新たな勇者の誕生が知れ渡ったのである。
   そして翌朝――新たな勇者、ベルンハルト・フェルンストレームは、朝日と共に目覚めなかった」

孫01「お爺ちゃん! お爺ちゃーん!!」

ナ04「新たなる勇者、ベルンハルト・フェルンストレーム、大往生。
   世界を救う旅へ出る事なく、彼は死後の世界へと旅立った。
   残されたのは孫娘が一人。
   どうなる世界!? 本当にこれでよかったのか女神!」

孫02「はっ、そうか……私もお爺ちゃんの血を引いてるんだから、勇者になれるかも!?」

ナ05「しかしこれは、ベルンハルト・フェルンストレームの物語。
   セリフの一つもない、老いたる勇者の伝説。
   孫娘の伝説は、語られない!!」


終わり