※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

くるくる迷子


ヒロ:高校生。
マイ:中学生。
ナオ:中学生。ヒロの後輩、マイの先輩。

歌:かごめかごめ(無感情で虚ろに歌う)


ヒ01「夏休みも半ばを過ぎた頃。
   部活の大会はあっさりと初戦敗退で、何もする事のない毎日が続いていた。
   その日は最高気温が四十度突破しやがった、どうかしてるような暑さ。
   冷房ガンガンの部屋で転がっていると、親に叱られて追い出された。
   行くあてのない若者としては、マンガ喫茶あたりで暇を潰したいが、そんな金はどこにもない。
   かくしてゾンビのように街を徘徊していると、同じような事情のゾンビと遭遇したのである。
   そのゾンビとは、お隣さんの一人娘で幼馴染のマイだった」

マ01「ややっ、誰かと思えばヒロ兄ちゃん。白昼堂々出歩くとは珍しい」
ヒ02「日陰者みたいに言うなっての。お前こそ、こんなクソ暑いのに珍しいな」
マ02「暇なんですよー。ヒロ兄ちゃんは?」
ヒ03「残念ながら、同じく暇人です。金はないけど暇はある、典型的なダメ人間なのです」
マ03「よし。じゃあ一緒に、どっか行こう!」

ヒ04「少し悩んだものの、暇潰しにはなるだろうと、女の尻を追っかける夏の午後。
   暇人ゾンビなコンビはぶらぶらと街を歩き、新たなゾンビと遭遇する。
   そいつは俺を見て喜び、マイを見て露骨に嫌そうな顔をするのだった」

ナ01「げ。ヒロさん、どうしてこんな奴と一緒にいるんスか」
マ04「ヒロ兄ちゃんとわたしはラブラブだからです。
   ナオさんはあっちの隅っこで、羨ましそうに指くわえて見てるがいい!」
ナ02「ふざけんなバカ女。ヒロさん、暇なら俺とどっか行きましょうよ。
   当然、このバカはあっちのゴミ捨て場にでも投棄して」
ヒ05「ダメだ、そんなのは許されない」
マ05「おおっ、分かってらっしゃる。
   ヒロ兄ちゃんとわたしの間には、血よりも濃い特濃の絆があるからね!」
ヒ06「そうじゃなくて。ほら、粗大ゴミって捨てるのに金かかるだろ」
マ06「がーん! まさかの粗大ゴミ扱い!?
   お、お願いですからせめて、萌えるゴミとかでどうでしょう……!」
ナ03「お前に萌えるわけねーだろ、バーカ」
マ07「うっせぇ! 萌え萌えしろー!」

SE:打撃音

ナ04「いってぇっ!? 普通、女がグーで殴るか!?」
マ08「ふっふっふ、時代は大和撫子よりも戦う女なのですよ、チミ。
   まだやる気かいボーイ? ヘイ、カマーン」
ナ05「うわあ、こいつマジ殺していいスかヒロさん!」
ヒ07「……はぁ。若いなぁ、お前らは。
   このクソ暑い中、そんなに騒げていいよなぁ」
マ09「呆れてないで助けてくださーい!
   ほらほら、か弱い女子を襲わんとするケダモノがそこに!」
ナ06「先に手ェ出したのお前だろ!?」
ヒ08「ナオ、いいからやめとけって。
   こいつガキの頃から空手やってるんで、ケンカとか俺より強いから」
ナ07「うっそ、ヒロさんより? 何それありえねー、マジでモンスターかよお前」
マ10「モンスターとか言うなー!
   うう、ちょっぴり最強なだけで、心はか弱い乙女なのにー」

ヒ09「そんな乙女はいない、とは言わなかった。怖いし。
   ともあれナオも合流し、我らがゾンビパーティーは三人パーティーになった。
   職業は全員遊び人。レベルが上がっても賢者にはなれません。
   そんな俺達が向かったのは、近所のせせこましい公園だったのである」

マ11「ひゃっほー公園だー! って、こんなトコ来て何して遊ぶ気ですかヒロ兄ちゃん!」
ヒ10「たまには自分で考えろ」
マ12「くぅ、愛を試されている……!?
   こんなトコでできる事……はっ、まさかヒロ兄ちゃん、エロ本という名の宝探しを!?」
ヒ11「ああ、お前に考えさせた俺がバカだったよ。
   とはいえ、何もする事ないんだよな……ナオ、何かしたい事ってあるか?」
ナ08「別に何も。ヒロさんこそ、何かないんスか」
ヒ12「何もないからお前に訊いたんだよ。
   しっかし暑いな……ナオ、何かジュース買って来てくれ。お前のおごりでいいぞ」
ナ09「おごらないしパシりません。普通、おごるのは年上の役目でしょ」
ヒ13「年上が全て、そんな素晴らしい人だと思うなよ?
   特に俺は、年下とも対等に接する主義だからな」
ナ10「そんな胸張って言う事じゃないでしょ……。
   ところでヒロさん。あのサル女が、マジで茂みに入ってエロ本捜索を始めてますけど」
ヒ14「しっ、見ちゃいけません。通行人に仲間だと勘違いされたら、どんな気分になる?」
ナ11「最悪ですね?」(朗らかに)
ヒ15「そうだろう? ま、だからって無視するわけにもいかんな……。
   おーい、マイ! そんなトコで遊んでないで、あの砂場を目指せ!」
マ13「むむ! お宝はそこに!?」
ヒ16「そうだ! たしかガキの頃、大量のカエルを埋めた気がする!」
マ14「とっくの昔に土に還ってますぜ旦那!
   でも掘る! ヒロ兄ちゃんが掘れと言うのなら、皇居の庭でも掘ってやるぜ!」
ナ12「ヒロさん。俺、たまにあいつが、ヒロさんを理由にはっちゃけてる気がします」
ヒ17「言うな。俺も薄々、そうじゃないかなー、って思い始めてるから。
   つーかあいつ、学校でどうなの? あのまんま?」
ナ13「学年が違うんで、詳しい事は分かりませんけど……あのまんまッス。
   何か騒ぎがあったら中心にいて、中心にいなかったら中心に入って行くような奴です」
ヒ18「ありがとう、予想通り過ぎて泣きたくなった」
ナ14「っていうか、ヒロさんこそどうなんスか?
   なんだかんだでよくあいつと一緒だし、幼馴染以上に思ってるんじゃないんですか?」
ヒ19「はっはっは、そんなわけあるか。
   あいつと一緒なのが多いのは、あいつが押しかけて来るからですー」
ナ15「ホントですかぁ……?」
ヒ20「俺を疑うとはいい度胸だ。褒美として今すぐ腕立て伏せ20回だ!」
ナ16「勘弁してください。ってか、褒美になってません」
ヒ21「ふっ、お前も頭を使うように――」
マ15「出たー! 何か出ましたよ、そこの暇人ども!」
ナ17「うわあ、マジで何か掘り当てやがったあいつ……」
マ16「これぞ愛の奇跡! 見て見て、なんか気色悪い人形が出たよ!」
ヒ22「そんなもん振り回すな! っていうかそれ、マジで何?」
マ17「うーん。手足全部もげちゃってるんで、人形だってコトしか。
   おちんちんないから、たぶん女の子?」
ナ18「そんな細部まで再現した人形、まずねぇよ!!」
マ18「む、ならば次の発見。髪が長いから、きっと女の子!
   ほれほれ、こうして股を裂けばもっと女の子らしく……!」
ヒ23「お前なぁ……涙ぐましくも女の風下にそっと置いてもらってる生き物なんだから、そういうのやめろ。
   ご近所でモロッコ帰りとか言われてるんだし、もうちょっと大人しくなれ」
マ19「も、モロッコ帰りとは失礼な!
   つまりわたし、性転換手術したとか思われてるわけですか!?」
ヒ24「ご近所と言っても、主に俺の家だけどな」
マ20「騙したなこのー!?」

SE:風切音

ヒ25「うわっ、そんな気色悪い人形を投げるな!
   当たって呪われたりしたらどうするんだ!?」
マ21「ははーん? お姫様キッスで呪いを解いて欲しい、そう言いたいんだねヒロ兄ちゃん!」
ヒ26「言ってない、全然言ってないから。
   とにかく、その砂場はもう掘るなよ。これ以上変なモノ掘り当てられても困る」
ナ19「こいつ、不発弾とか掘り当てそうで怖いんだよなぁ……」
マ22「不発弾なんて掘り当てません。そんなの掘り当てたら、わたしまでピンチだし」
ナ20「うわお前、自分さえよけりゃどうでもいいのか!?」
マ23「へへーん、あたぼうよ! つーかナオさんだけ死ねばいいと思うな」
ヒ27「はいはい、ナチュラルにケンカしてんじゃないぞお前らー?
   遊びに来てケンカとか本末転倒だから。あと、クソ暑いし」
マ24「むむ、それも一理あり。でもヒロ兄ちゃん、何して遊ぶ気?」
ナ21「この歳になってブランコとかは嫌ですよ、俺」
ヒ28「あー……それじゃ、鬼ごっこでもするか」
マ25「お、おおおお鬼ごっこ!!
   合法的に捕まえて押し倒して、あれやこれやでムフフな鬼ごっこですか!」
ヒ29「お前は何をする気だ」
マ26「ナニを」
ヒ30「……頼むから、女がそういうギャグかますのはやめてくれ」
マ27「別にギャグじゃないのにー」
ヒ31「なおさら悪いわ! で、ホントに鬼ごっこでいいのか?」
ナ22「俺は別に構いませんけど……」
マ28「ばっちこーい! 捕らえ殺してやるー!」
ヒ32「じゃ、やる気満々のお前が鬼でスタートな」
マ29「せめてジャンケンしろこんちくしょー!」

ヒ33「なんだかんだで、始まってしまえば鬼ごっこもそれなりに楽しいものだ。
   童心に返って走り回っていると、汗もほとんど気にならない。
   やがて日が沈み始めて、空が茜色に染まった頃。
   疲れ果てた俺達は、誰が鬼かも忘れて座り込んでいた」

ナ23「疲れた……尋常じゃなく疲れた……。
   マイ、お前の体力どうなってんだよ……」
マ30「鍛え方が違うのだ! ね、ヒロ兄ちゃん?」
ヒ34「……俺も、体力には自信あったんだ……これでもさ、甲子園の土踏んでるんだぜ……?
   なんで、それなのにどうして……! お前の方が体力あるんだよ!?」
マ31「甲子園とか、過去の栄光なのに?」
ヒ35「過去じゃねぇよ! 今年の夏だよ!? 初戦敗退だけどさ!!」
マ32「過ぎ去ったらそれは過去でしかないのだ!」
ヒ36「ぐ、ちょっと納得しかけた自分が悔しい……!」
マ33「にっひひー。でも懐かしいよね、ヒロ兄ちゃん。
   ちっちゃい頃ってさ、よくこうして日が暮れるまで遊んでたよね」
ヒ37「……まあな。確かに懐かしいっちゃ、懐かしいか」
ナ24「その頃もやっぱ、ヒロさんよりマイの方が体力あったんですか?」
ヒ38「いや、あの頃はさすがに俺の方が体力あったな。
   こいつさ、疲れて走れなくなると、ぐずり出してたんだぜ?」
ナ25「うわ想像できねー」
マ34「ふっ、あの頃のわたしは弱かった……でも!
   今じゃこんなに強く、たくましく!」
ヒ39「しかもこいつ、日が暮れても帰りたくないってぐずるんだよ」
マ35「無視しないで!? っていうか、恥ずかしい過去暴露すんなー!」
ヒ40「だって事実だろ? 帰りたくない、ずっと遊ぶー、ってさ」
マ36「ぎゃー! マジ黙れこのバカ!!」

SE:打撃音

ヒ41「ぐはっ!? て、照れ隠しにしては、きつくないか……?」
ナ26「つーかどこのバカップルだ、って感じになってますけど」
ヒ42「やめろ。こんなのとカップルにしないでくれ」
マ37「こんなのってどんなのだー!」
ヒ43「そんなのだよ。それじゃ、日が沈む前に帰ろうか」

ヒ44「重い腰を上げて、俺達は家に帰ろうと歩き出した。
   そして――公園を出た瞬間、俺は歌を聞いた」

歌:かごめかごめ

ヒ45「回る、回る、ぐるぐる回る。
   聞き慣れた筈の歌が、ぐるぐると回っている。
   誰が歌っているのか、確かめようにも体が動かない。
   否――ぐるぐる回っているのだから、正面からでも見える筈なのに。
   いない、誰もいない――歌だけが、ぐるぐると回っている。
   やがて歌が終わり……体が自由に動かせるようになった時。
   止まっていたのは俺ではなく、時間の方だったと気づく。
   何故ならマイとナオが、何事もなかったかのように傍にいるのだから」

ヒ46「な、なあ……今の歌、聞こえたか?」
ナ27「歌? 誰か歌ってたんスか?」
ヒ47「……いや、聞こえてなかったんならいいんだ」

ヒ48「あれはきっと、やけにハッキリとした白昼夢のようなものだ。
   俺だけが体験しただなんて――そんなバカな事が、あっていいわけない。
   崩れそうな常識を、なんとか守った気になって。
   公園を出て歩くが――俺達は、公園に戻ってしまっていた」

マ38「あれ……? なんで、ここに戻って来んの?」
ナ27「道を間違えた、ってわけでもないし」
ヒ49「……とにかく、もう一度行ってみよう」
マ39「あ、待ってよヒロ兄ちゃん!」

ヒ50「歩く。歩く。歩く。
   戻る。戻る。戻る。
   回る。回る。回る。
   通り過ぎた道を何度も通り過ぎて、何度も公園に戻ってしまう。
   そうなってしまえば、さすがに誰もがおかしいと気づいていた」

マ40「何これ……? どうしよ、ヒロ兄ちゃん……」
ヒ51「どうしよ、なんて言われてもな……俺だって、どうしたらいいのか分からない」
ナ28「っていうか、他にも色々おかしいッスよ。
   まだ日が沈んでないのに、誰ともすれ違わないし……。
   そもそも――日が沈んでないのが、おかしい」
ヒ52「……まるで、時間が止まったみたいだな」
マ41「そんな悠長な事言ってる場合?
   だっておかしいよ、これ――まっすぐ歩いてるのに、何度も戻るなんて。
   わたし達、どうやったら家に帰れるの!?」
ナ29「どう考えても、普通じゃない事が起こってるよな……。
   そうだ、ヒロさん! さっき、公園出る時に言ってましたよね?
   歌が聞こえたって――それ、何か関係あるんじゃないスか?」
ヒ53「関係……あるのか? だってあれ、かごめだぞ。
   それに関係あったところで、どうしろっていうんだ」
ナ30「でも、今は他に手がかりなんてないでしょ。
   とにかく、一度公園に戻ってみましょうよ!」

ヒ54「ナオの主張によって、ひとまず俺達は公園に戻る事にした。
   相変わらず日が沈まない、茜色で止まってしまった公園。
   出たり入ったりを繰り返してみたが――あの歌は、もう聞こえなかった」

ヒ55「ダメだな……原因は他にありそうだ」
ナ31「でも他の原因なんて――いや、ある、あった!
   マイ! お前の拾ったあの気持ち悪い人形、どこにやった!?」
マ42「え、え? なんで?」
ナ32「他に怪しいって言ったら、あれしかないだろ!
   あれ、どこにやったんだ? お前しか触ってないだろ?」
マ43「どこにやったって言うか……ヒロ兄ちゃんに投げて、どっか飛んでった……」
ナ33「はァ!? 飛んでったってお前、どこに飛んでったか覚えてるか!?」
マ44「お、覚えてないよ! あんなの、ゴミみたいなもんだったし!」
ナ34「なんでだよ! ふざけんな! 原因なんて、あれしかないだろ!?」
マ45「で、でも……!」
ヒ56「……ナオ、言い過ぎだ。あれが原因だって、決まったわけじゃない。
   それにどこへやったのか忘れたって、この公園から消えたわけじゃないだろ?」
ナ35「う……そりゃあ、そうッスけど……」
ヒ57「とにかく、あの人形を探してみよう。
   ……マイも、あんまり気にするな」
マ46「うん……ありがと、ヒロ兄ちゃん……」

ヒ58「探し始めると、あの人形はすぐに見つかった。
   見れば見るほど気持ち悪い人形で、これなら確かに呪いとかありそうだ。
   だけど、手にとってじっくり見れば分かる。
   気持ち悪くて、ボロボロでも――この人形は、元からそういうものだった。
   最初から不気味なデザインの、どこかで売っていそうな大量生産品だったのだ」

ナ36「これなんだよ……! これが原因の筈なんだ……!」
マ47「でも――ただの人形だよ、ナオさん」
ナ37「分かってる! だけど、これしかないだろ!?
   これじゃなかったら――どうやって帰ればいいんだよ!?」
ヒ59「落ち着けナオ。今のところ、幽霊が出たってわけでもないんだしさ。
   落ち着いて、じっくり考え直してみよう」
ナ38「ヒロさん……そうは言っても、落ち着いていられますか?
   こんなのおかしい、狂ってる!
   誰もいなくて、まっすぐ歩いてもぐるぐる回ってて……!
   帰ろうとしても帰れないのに、落ち着くなんて無理だ!!」
ヒ60「だからって考えないわけにはいかないだろ!
   考えなきゃ帰れないんだ――だから、考えろ」

ヒ61「そうは言っても、俺自身何を考えればいいのか分からなかった。
   こんな小さな公園に、怪しいものなんて何もない。
   手がかりはあの人形と、俺が聞いたあの歌だけ。
   他には何もない――帰りたいのに、帰れない。
   いくら歩いても、くるくる回って戻る迷子。
   この公園と、それを取り巻く世界から、抜け出せない。
   その時――ぽつりと、マイが言った」

マ48「お母さん達も、心配してるのかな……」
ヒ62「……マイ。お前今、なんて言った?」
マ49「え? お母さん達も、心配してるのかなって……」
ヒ63「ハ――はは、そうか、だからか。だから、かごめかごめだったわけか!」
ナ39「ひ、ヒロさん? 何か、分かったんですか?」
ヒ64「ああ、分かった。どうやったら帰れるのか、バカバカしいけど分かった。
   原因は俺だ、俺だったんだ――あの人形でも、あの歌でもなく、俺だった」

ヒ65「鬼ごっこのあと、思い出話の中で口にした言葉。
   帰りたくない、ずっと遊ぶ。
   その言葉のせいで――誰かが、俺と遊んでいたんだ」

マ50「ヒロ兄ちゃんが原因って……?
   ううん、そんなのどうでもいい。帰る方法は!?」
ヒ66「簡単さ。ある言葉を言うだけで、俺達は帰れる。
   さて――子供が遅くまで遊んだら、帰る時にはどんな事を言う?」
マ51「……バイバイ、とか?」
ナ40「また明日、ってのもありますよね」
ヒ67「いや、そうじゃないだろ……こう言えばいいんだ。
   お母さんが心配するから、もう帰る――ってな」

ヒ68「その瞬間、どこかで子供がバイバイと、そう言ったような気がする。
   俺は幽霊が出たわけでもないと、ナオに言ったけれど。
   幽霊はずっといたんだ――ずっと遊ぶ子供が、この公園にはずっといた。
   だからお別れの言葉を伝えれば、世界は元に戻る。
   マイとナオは半信半疑で、俺は確信を持って公園から出て行く。
   しばらく歩けば、そこには見知った町並が――辿り着けなかった日常があった」

ナ41「やった、抜けた……抜け出せたんだ」
マ52「でもヒロ兄ちゃん、どうして分かったの?」
ヒ69「また今度話すよ。今日のところは、まっすぐ帰ろう」
マ53「むー……気になるし、ご飯食べたらそっち行く」
ヒ70「はいはい、好きにしろ。とにかく、家に帰ってからだ!」

ヒ71「後日、あの公園で事故があった事を知る。
   ブランコから落ちた子供が、頭を打って死んだという事故の話。
   きっとあの公園にいるのは、その死んでしまった子なのだろう。
   どんな心残りがあるのか、その子はあの公園にいる。
   遊び相手を求めて――きっと今日も、誰かを迷子にしているのだろう」


終わり
というか、マイを書くのが楽し過ぎた。