タイトル:片耳ノンカバー
それに私が気付いたのは、偶然なのか、必然なのか。
真偽のほどは分からないが、ある日イヤホンを覆うスポンジ製のパッドが取れていた。
片耳だけである。
急いで支度をして、出かける直前。耳にイヤホンを入れた時の冷たい感触。
「うひゃお」という訳の分からない声を出しつつも、時計の針は待ってはくれない。
急いで玄関の扉の隙間をくぐり抜けた、双子の片割れをどうしたって?
勝負はいつだって弱肉強食なのだよ、芝浦君。
その日の給食は、勝利の余韻を牛乳二本で堪能したのは言うまでもない。
とにかく、イヤホンだ。帰宅して、絨毯の上にどうどうと居座っている奴を
改めて装着してみたが、翌日も、そのまた翌日も、やはり気付いたら外れていた。
諦めて、新しいものを購入してみたが、それでも数日すると外れたいた。
右と左を交換してみたが、やはり片方は外れていた。
全て右だった。理由は分からない。
そう考えてペン回しをしていると、シャーペンが分解した。これも右手だ。
どういうことだ? そう考えて唖然とした師走のとある夜。
その日から、俺の軸は回りだした。何かを分解するように。
最終更新:2010年10月19日 15:13