絵のうまくなる
作者:名無し ( ID: dZCsQySj0 )
【絵のうまくなる】
少女は桜の木のそばで休んでいた。
ちょっとつかれて一休み。そんなところだった。
次の日少女はやってきた。スキップしながらやってきた。
スケッチブックを持っていた。
今日は桜の根元を描いた。
その次の日もやってきた。
絵の具と筆を持っていた。
今度は色も鮮やかに、桜の木の絵を描き出した。
桜の大樹が嬉しそうに、さらさらさらと、音を立てる。
毎日毎日描くうちに、少女のその絵が上手になった。
桜の木の枝その花その葉、描けば描くほど上手になった。
少女のその絵が目に留まる。画家の先生の目に留まる。
「この絵を描いてはいけないよ。」画家の先生はそういった。
「どうしてなの。」と少女は問うた。
「僕の描いた絵と似ているからさ。」画家の先生はそういった。
少女の絵を絵を眺めてみれば、なるほどたしかによく似てる。
少女が上手になるほどに、画家のその絵に似てきてる。
それでも少女は描き続ける。真似したのではないんだと。
少女は毎日絵を描いた。一生懸命絵を描いた。
画家の先生がやってきて、少女の筆を取り上げる。
「その一筆を、入れてはいけない。」画家の先生はそういった。
「どうして描いてはいけないの。」少女は画家にそう問うた。
「僕のこの絵と同じだからさ。」画家の先生はそういった。
少女のその絵を眺めてみれば、なるほど確かにそっくりだ。
あと一筆を加えたならば、画家の描いた絵と瓜二つ。
桜の枝が、ざわついている。
少女は次の日やってきた。新しい筆を買ってきた。
桜の大樹は嬉しそう。
少女が一筆入れたとき、桜の木が静かになった。
桜の大樹はざわついた。
そのすぐ後に、少女の母がやってきた。少女の名前を呼んでいる。
桜の大樹はざわついた。
少女はその絵を放り出し、駆け足で家に帰っていった。
桜の大樹はざわついている。
桜の大樹はざわついている。
桜の大樹はざわついている。
桜の大樹は静かになった。
最終更新:2010年10月17日 09:14