『バースデイに思い出を添えて』

A:女性。食いしん坊だったり乙女チックだったりと、なかなか萌えキャラ気味。
B:男性。リョウヘイ。ネット世代。常に男らしくありたい、隠れロマンチスト。


A01「ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデー、ディア、
  クマロフィ。ハッピバースデートゥーユー」
B01「クマ……何だって?」
A02「クマロフィ。いいでしょ、子どもながらに一生懸命考えた名前なんだから」
B02「ほー。今日がこいつの誕生日なわけだ」
A03「そ。この子がウチにやってきた日。私が初めてわがままを言って、私が初めて誕生日でも
  クリスマスでもない日に買ってもらったぬいぐるみ」
B03「お父さん、災難だったな」
A04「帰ってからお母さんに叱られたことの方がよっぽどおっかなかったって、お父さん言って
  た」
B04「お父さん……。ん?でもそれじゃ、そいつの誕生日は今日じゃないだろ。誕生日っていう
  なら、買ってもらった日じゃなくて、そいつがつくられた日だろ」
A05「ううん。この子の誕生日は今日なの。この子がウチの子になって、クマロフィって名前に
  なって、なんだか嬉しくってぎゅーって抱きしめたら、この子がちゃんと答えてくれた、そ
  う、私とこの子の思い出が始まった日。……そうそう、実はこの子お腹押すと鳴くんだよ、
  『ぎゅう』って」
B05「どれどれ」
A06「あはは。ダメだよ、ずいぶん昔に壊れちゃった。……でも、それまでたくさんお喋りした
  なあ。嬉しいときも、叱られたときも、眠るときも、幼稚園を卒業したときも」
B06「例えばどんな?」
A07「うーん。にんじんって変な味がして美味しくないよね、とか」
B07「こいつは何て?」
A08「『ぎゅう』って」
B08「他には?」
A09「おにぎりのシャケの黒いところ、気持ち悪いからきれいにとってほしいよね、とか」
B09「クマロフィさんのコメントは?」
A10「『ぎゅう』」
B10「そればっかじゃねーか。つーかお前も食べ物ネタしかねーのか」
A11「ま、小学校あがってすぐ壊れちゃったから、それからずっと『ぎゅう』って聞いてないん
  だけどね」
B11「ふうん。……あのさ、俺、こいつ直してみてもいいか?ネットで調べればおもちゃの仕組
  みって結構出てくるし、俺こういうの割と得意だし」
A12「んー……。いいや。いらない。大事なものだし、それに、お母さん言ってた。『クマロ
  フィは大人になったのよ。大人の男の子はあんまりお喋りしないものなの。お父さんもそう
  でしょ』って。……クマロフィ、女の子なのに」
B12「おおう、お前レディだったのか」
A13「ね、リョウヘイはそういう思い出のおもちゃってある?」
B13「ヤツは……最後まで勇敢に戦い、死んだ」
A14「あー……、男の子だねえ。何て子なの?」
B14「名前か?DX(デラックス)ゼロコマンダーロボ。悪しき陰謀から地球を守る、正義最後の
  砦、僕らのニューヒーロー!」
A15「それ商品名でしょ」
B15「ゼロコマンダーロボはゼロコマンダーロボだろ。他の何者でもない。巨大改造人間ゴール
  デンヘアー・ジェニーの卑劣な髪の毛攻撃によって……無残にも」
A16「あーあー、妹さん泣いたでしょ」
B16「ぼこぼこに殴られた。今は反省している」
A17「リョウヘイも男の子なんだねえ」
B17「そんなに意外か?」
A18「んー、ちょっと可愛いなあって」
B18「つくづく女ってのは恐ろしい生き物だよな……」
A19「ね、リョウヘイ。やっぱりクマロフィ直してくれるかな」
B19「うん?まあ構わないけど、いいのか?」
A20「うん。この子が大切な友達で、思い出がいっぱい詰まっているのは、この子が喋らなく
  なった今も変わらないけど。実際、この子が大人になってからも、ずっといっぱいお喋りの
  相手をしてもらってたんだけど。……なんだか、この子の声が聞きたくなっちゃった」