愛01「やめてええええ!!私の為に争わないでえええ!!」

愛02(乙女なら一度は言ってみたい(ハート) と憧れるセリフでしょうか?
 ごめんなさい、ほんと勘弁して下さい、本当に勘弁して下さい。)

A01「いい加減にしろ!これ以上彼女に近づくな!
 貴様の耳をひきちぎり鼻に詰めこんだブザマな姿の
 さらし首でも作ってやろうか?」
B01「戯言を…これ以上引き下がらないのならば
 引きまわしのあげく身体の隙間という隙間に針を刺して
 死ぬまで弄んでやろう」
愛03「やめてええええ!!痛い痛い聞くだけで痛い!!」

愛04(どうしてこんな事になったのでしょう…。)


愛05(数分前…)

T01「ほう…男にモテたい、と」
愛06「お願いします!年齢イコール彼氏なしの人生を終わらせたいんです!!」

愛07(ピンクチラシに混ざって届いた、「除霊、承ります」のチラシ。
 金運恋愛運仕事運…色々な運の妨げとなる「悪運」の元、
 「悪霊」を退治してくれるんだとか。
 めっちゃ怪しかったけど「鑑定無料セール中」の文字につられ、
 私はこの寺へと足を運んだのです…。)

T02「ふん…確かに霊が澱んでいやがる。
 結婚相談所にいかず ここに相談に来たのは賢明だったぜ、お嬢ちゃん」
愛08「…! では私がモテないのは悪霊の仕業だったんですね!やっぱり!」

愛09(ガッデム!男にモテない人生が悪霊の仕業だったとは!
 やっぱりそうだったのです、私に落ち度があったわけではなかったのですよねー。
 そうでなければ年齢イコール彼氏ナシの人生なんてありえ……………やめましょう、悲しくなるだけです。)

愛10「あの…除霊お願いしたいんですけどー」
T03「ああ。普段は有料なんだが…ちょっとタチの悪いやつのようだ。
 保険代わりに無料でいい」

愛11(ラッキー!タダより安いものはありませんよね♪
 ……ん? ほけんって……どういうことでしょう?)

T04「アジャライタ、バライタ、エフラーム……
 混沌に侵されし守護霊よ、此世の縁を解き放ち、開眼せよ……」

愛12(住職さんの呪文と共にまばゆい光が――!
 そして光が納まった時、そこに二人の男性の姿が……)

A02「ここはどこだ?」
B02「お前は誰だ?」
A03「貴様こそ誰だ」
愛13「お、お、お、落ち武者ーーーーー!??」

愛14(そうです、落ち武者です。ボロボロの甲冑、
 バサバサした落ち武者カットの頭には弓が刺さってます。弓。
 痛くないんでしょうか。血も出てますが……)

B03「俺はその女(おなご)の守護霊だ」
A04「なんだと?彼女の守護霊は俺だ」
B04「何を…」

T05「これが原因か…普通女の守護霊は女がつくものだが、
 男で、しかも二つの霊が混合しちまってる。
 気が澱んでくるはずだ。」

愛15(住職さんが静かに言いました。
 ガッデム。あんな眼もこぼれおちそうな危ない霊に守護されていたのですか。私。
 道理でモテないはずです)

A05「貴様のような怪物顔と一緒に守護してやっていたとは虫酸が走るわ!
 さっさと彼女の身体から出ていけ!」
B05「敗残兵ごときがでかい口を……その女は俺の主人だ、お前こそ出ていけ」
A06「なんだと!ゆるさん!剣を抜け!!」
B06「望むところだ!」
愛16「ぬ、抜くな! 抜かないでください!」

愛17(そうです。落ち武者姿なので帯刀していらっしゃいます。
 見事なひとふりを引きぬき、脇差を構え、
 落ち武者ふたりは今にも切りかかりそうな形相でにらみ合っています)

愛18「やめてええ!!私のために争わないでえええ!!」
A07「だが断る!!」
B07「だが断る!!」
T06「無駄だ。強い霊は主人に従わない。
 怨念でできたような霊ならば余計に、な…」

愛19(マイガッ!なんということでしょう…。)


愛20(そして、時間は冒頭に巻き戻ります……
 落ち武者…便宜的にAさんBさんとしておきます。
 二人は長い時間、一歩も動かずににらみ合っています。
 ただよう緊迫した空気。
 Aさんがじりっと近づけばBさんが横によけ、
 Bさんが刀を動かせばAさんも構え……)

T07「居合いの達人は剣を抜いた、その一瞬で勝負がつくという…
  お互いに相手を見図っているのさ」

愛21(住職さんの深い言葉が落ちた…直後。)

A08「でやあ!」
B08「たあっ!」

愛22(私はぎゅっと目をつぶり耳を塞いで下を向きました。
 刀の一閃。キラン、とひらめく音、そして……)

B09「ぐああ!」

愛23(断末魔。)

T08「眼を開けろ、終わったぞ」

愛24(住職さんの声。けれど私は頭を振り拒否しました。
 目の前に広がっているであろう惨状を見るのが怖かったのです。
 本当に…どうしてこうなってしまったのでしょう。
 私がこんなところに来なければ、こんな怖い光景を見る事もなかったし、
 ふたりも争って死んだりする必要もなかったんじゃないでしょうか。
 どうしてこんなことに…。)

T09「しかたがないな……波ぁ!!」

愛25(その声と共にまばゆい白い光が…
 驚いて目を開けると、住職さんの身体が発光し、その光が右手に収束したかと思うと、波動の塊となって吸い込まれて行きました…)

T10「負けた守護霊の力を遣って、残った守護霊の陰陽を女の型に合せた。
 これで、お前さんについた悪霊も少しは大人しくなるはずだ。」
愛26「あ…ありがとうございます!ところで守護霊は…」

愛27(周りには石の畳が広がっているだけでした。
 …と、社の大きな石の陰に、血に濡れた弓が覗いていました…)

A09「くすんくすん。あたし、女になっちゃった…」

愛28(ジーザス。なんということでしょう。)

T11「女になったばかりで、霊の精神が安定していないからな。
 しばらく無理な運動は控えてくれ」

愛29(霊の性転換までしてしまうなんて…
 寺生まれってすごい、あらためてそう思いました。)



お題:一人称・逆ハーレム・愛の三角関係
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最終更新:2011年02月28日 00:12