反逆の僧侶
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*アンデット兵に襲撃された勇者一行は
回復役の僧侶を残し、倒れてしまった―― ▽
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【SE:倒れる】
僧侶01:勇者様!! みんな!!
A01:ハハハハハ! 口ほどにもないな!
さあ、最後は貴様の番だ!
次のターンで葬ってくれる!
僧侶02:くっ…
B01:油断めされるな。
あれでも勇者の仲間だ。
A02:たかが僧侶だぞ
回復魔法しか使えん。
戦いには役立たずだ。
B02:それはそうだが…
僧侶03:(師匠…
禁術を破ります、お許しください…
A03:どうした!いつまで待たせる!
命が惜しくなったか!
B03:逃げてもいいのだぞ。
逃がしはせぬがな
A04:ハーハハハ!!
僧侶04:時の流れよ 次元の神よ
我にひと時の祝福を
ひと時、あなたとの距離を埋められますよう
時よ、流れろ!
B04:(速度上昇…補助魔法か
僧侶05:(赤の魔法は通常の三倍の速度……
1ターンで3回の行動ができる…
A05:(動けたところで何になる。
たとえ勇者を蘇生させようと、
次のターンの全体魔法で全滅させてくれるわ!
僧侶06:穢れ、祓わせ給え
五臓六腑に流れし血潮よ
流れ、澄ませ給え…
A06:(やはり回復魔法か!
いくら蘇生させようと……
僧侶07:――暗き闇のものどもに
光よ、あれ!!
B05:(光がこちら側に向かってくるぞ!
攻撃魔法か!?
A07:(まさか!
聖魔法は魔術師しか使えぬはず…
僧侶の身の上では…
アンデット兵の呻き声:【ウボワーーー】
A08:!? アンデット兵の体が…
B06:崩れた…だと…
僧侶08:……回復魔法しか使えぬ、とおっしゃいましたか……
なれど、貴方がたは、その回復魔法の原理も
ご存じでいらっしゃいますか?
回復魔法は 薬草に頼らない…
それは治療ではないから……
【怪我を受ける前の身体に返す】。
其れ即ち……時間操作の極意也……
アンデット兵も…元はただの死体…
時間を経過させれば…土に還るのみ…
A09:(回復魔法が…時間操作…だと? 初耳だぞ、そんなことは…!
B07:(しかし筋は通っている…
通常の【治療】よりも高い治癒力を得られるはずなのにもかかわらず、
緊急性の高い怪我や病気などでなければ魔法は用いられない…
それは魔法により身体的負荷がかかるとの説を…今まで信じてきたが…
違ったというのか…
ならば、それを使う僧侶という存在は…
僧侶09:さあ……私のターンは、あと1回、残っています……
僧侶10:(我々は長く世論を騙し…そしてこれからも騙しつづけるでしょう…
我は僧侶…神に仕え、平穏な世界を望むもの…
僧侶11:時の流れよ 次元の神よ
我にひと時の祝福を
ひと時、あなたとの距離を埋められますよう
時よ、流れろ!!
勇者01:ハッ…!!
僧侶12:勇者さま!お気づきになられましたか!
勇者02:僧侶…みんなは?
僧侶13:向こうのテントでお休みになられていらっしゃいます。
皆、無事です
勇者03:よかった…。敵たちはどうした!?
僧侶14:私もよく分からないのです。
気がついたら、敵はおらず…皆も知らないそうです
勇者04:そうか…。
ならば、神の御加護があったのだろうと、そう思っておこう。
僧侶15:はい!
【終】
最終更新:2011年02月09日 01:11