『MUSAI be ambitious.2』
天帝「よろしい、貴様が望むならば…
この天帝(てんてい)の名において、
彼(か)の者をお前に与えよう」
女神「それで、あなたを使うことになりました。」
天使「はっ。宜しく御願い(おんねがい)申し上げ奉ります」
女神「そう恐縮なさらなくてもよいのですよ。
母上と違い、私はただの女神。
天界にいる他の神々と何も変わりません。」
天使「はっ。以降肝に銘じます」
女神「……(ため息)。改善を祈っています。
貴方を他の天使と区別するには何とお呼びすれば良いですか?」
天使「恐れ多う御座います。好きな様にお申し付け下さい」
女神「それでは私に、オイだとか貴様だとか呼びつけろというのですか?
天上の帝たる娘に、そのような呼ばせ方をさせると。」
天使「はっ……も、申し訳御座いません。
口が過ぎたのでしたら謝罪致します。
どうかご容赦下さい、どうかお怒りを…(お納め下さい)」
女神「貴方のお名前を教えて頂けたら、今にでも許してさしあげます」
天使「名は…持ち合わせていないのです。申し訳御座いません。」
女神「まあ。それでは今まで貴方は何と呼ばれていたのですか?」
天使「我が同族は一蓮托生、全なる一でありまして、
特定の名などは存在しないのです。
ただ……」
女神「ただ?」
天使「帝(てい)様におかれましては……
”ムサイの”と呼びつけられておりまして御座います」
女神「ムサ……!?」
女神「……申し訳御座いません、母は口さがなくて……」
天使「いえ、素晴らしき主君に御座います」
女神「今は私が貴方の主君です。
前の主君の事は今すぐ忘れなさい。」
天使「はっ……。」
女神「ですから、私がもっと素敵な名を考えてさしあげましょう」
天使「はあ…」
女神「すぐには思いつかないので、これは私の宿題に致します。
さて…顔合わせはこの辺にしておきましょう。
職務中にお呼び立てして申し訳御座いませんでした。」
天使「いえ、我ら一同、天上の神々に使われる事、無上の喜びでございます。
いつでもお呼び立て下さいませ」
女神「……それと、これは貴方への宿題にしようと思いますが」
天使「はっ」
女神「今度会う時にまでその耳触りな敬語を一切やめて下さい。
私、ふたまわりも大きい殿方を付き従える趣味はないのです。」
女神「王者の娘を教育し、導いて下さい。
母上もきっと、その為に貴方を遣わして下さったのです」
(電話)
天帝「どうした、我が娘よ……
酷いあだ名を付けるな? なんだ、どれのことだ?
ああ、あれか…………。あれが厭だと言っていたのか?
……違うのか。
まあ貴様がそう言うのなら、私に否はない。従おう。
天帝(てんてい)を従わすなど、おまえは恐ろしい女だな」
(電話を切る)
天帝「……男に女名(おんなな)は、不自然であったかな」
最終更新:2011年01月07日 20:17