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誘蛾の翅」(2010/10/19 (火) 04:25:12) の最新版変更点

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**誘蛾の翅 男:蛾。 女:夜の蝶。 男01「彼女は夜の蝶。    太陽とは無縁の街で、ネオンの光を浴びて輝く女。    欲望の渦巻く街を、その身一つで生き抜いていた。    そんな彼女が、俺にとっての太陽だった。    彼女と一緒にいられたなら、他に何もいらないと思っていた。    だから、俺は。    しがないボーイの俺は、店の決まりを破って彼女に声をかけた。    やがて俺達は付き合う事になり、将来を誓い合った。    ――許される筈がないと、分かっていながら。    だから俺達は、この関係が発覚する前に逃げようとした。    逃げ切る事さえできれば幸せになれると、目の前の現実からも逃げ出した。    なのに――ああ、なのに。    現実から逃げ出したのは、俺だけだったのかもしれない。    小さなアパートの中。手を掴む俺を、彼女は拒んでいた」 女01「逃げるなんて無理よ……! すぐに捕まる!    私ならともかく、貴方は殺されるかもしれないのに!」 男02「だからって逃げずにはいられないだろう!?    店の奴らに知られたら、結局おしまいだ!    逃げないと俺達に未来はないんだよ!」 女02「貴方と一緒にしないで! 私には借金があるのよ……?    それを返さないと、一生追いかけられる。    自由も未来も、私には最初からないのよ!」 男03「だから逃げようと言って――」 女03「現実を見てよ!? どうやって逃げるつもりなの?    お金もないのに、追われてる女をどうやって隠すの?    夢見がちな事ばかり言わないで、私の事も考えてよ!」 男04「ああ――ああ、どうして彼女は俺を拒むのだろう。    俺はただ、一緒に幸せになりたいと思っただけなのに。    彼女もそれを望んでくれていると、信じていたのに。    まるで、裏切られた気分。    こんなにも愛しいのに、こんなにも憎い。    もう後戻りはできないというのに――どうして、俺を拒むんだ。    俺のものにならないというのなら……せめて、誰のものにもならないようにしよう。    そして何よりも。二度と俺を、裏切る事のないように」 女04「な、何……? 何する気よ!?    ひっ……! や、やめっ……ぁ、ぐぅ……!!」 男05「彼女は夜の蝶。その翅をもげば、もう輝きはしない。    そして俺は蝶ではなく、蝶に憧れた一匹の蛾だ。    その翅は、最初から輝いてなどいなかった。    蝶の輝きに惹かれて、我を忘れてしまった愚かな男にすぎない。    ……ああ、こんな事を考えている場合じゃなかった。    早く、早く逃げなければ。    追いかけて来る、何かが追いかけて来る。    ソレに捕まったが最後、俺の翅までもがれてしまう。    でも、どこへ? 逃げる場所なんてないのに?    一緒に逃げようと思った彼女は、もういないのに?    逃げて、意味があるのか?    意味がないのなら――せめて最期は、自分の翅で。    太陽とは無縁で、欲望の渦巻く街を飛ぼう。    どうせ生きる意味もないのだから……。    ――ネオンの星空へ、羽ばたこう」 終わり
**誘蛾の翅 男:蛾。 女:夜の蝶。 男01「彼女は夜の蝶。    太陽とは無縁の街で、ネオンの光を浴びて輝く女。    欲望の渦巻く街を、その身一つで生き抜いていた。    そんな彼女が、俺にとっての太陽だった。    彼女と一緒にいられたなら、他に何もいらないと思っていた。    だから、俺は。    しがないボーイの俺は、店の決まりを破って彼女に声をかけた。    やがて俺達は付き合う事になり、将来を誓い合った。    ――許される筈がないと、分かっていながら。    だから俺達は、この関係が発覚する前に逃げようとした。    逃げ切る事さえできれば幸せになれると、目の前の現実からも逃げ出した。    なのに――ああ、なのに。    現実から逃げ出したのは、俺だけだったのかもしれない。    小さなアパートの中。手を掴む俺を、彼女は拒んでいた」 女01「逃げるなんて無理よ……! すぐに捕まる!    私ならともかく、貴方は殺されるかもしれないのに!」 男02「だからって逃げずにはいられないだろう!?    店の奴らに知られたら、結局おしまいだ!    逃げないと俺達に未来はないんだよ!」 女02「貴方と一緒にしないで! 私には借金があるのよ……?    それを返さないと、一生追いかけられる。    自由も未来も、私には最初からないのよ!」 男03「だから逃げようと言って――」 女03「現実を見てよ!? どうやって逃げるつもりなの?    お金もないのに、追われてる女をどうやって隠すの?    夢見がちな事ばかり言わないで、私の事も考えてよ!」 男04「ああ――ああ、どうして彼女は俺を拒むのだろう。    俺はただ、一緒に幸せになりたいと思っただけなのに。    彼女もそれを望んでくれていると、信じていたのに。    まるで、裏切られた気分。    こんなにも愛しいのに、こんなにも憎い。    もう後戻りはできないというのに――どうして、俺を拒むんだ。    俺のものにならないというのなら……せめて、誰のものにもならないようにしよう。    そして何よりも。二度と俺を、裏切る事のないように」 女04「な、何……? 何する気よ!?    ひっ……! や、やめっ……ぁ、ぐぅ……!!」 男05「彼女は夜の蝶。その翅をもげば、もう輝きはしない。    そして俺は蝶ではなく、蝶に憧れた一匹の蛾だ。    その翅は、最初から輝いてなどいなかった。    蝶の輝きに惹かれて、我を忘れてしまった愚かな男にすぎない。    ……ああ、こんな事を考えている場合じゃなかった。    早く、早く逃げなければ。    追いかけて来る、何かが追いかけて来る。    ソレに捕まったが最後、俺の翅までもがれてしまう。    でも、どこへ? 逃げる場所なんてないのに?    一緒に逃げようと思った彼女は、もういないのに?    逃げて、意味があるのか?    意味がないのなら――せめて最期は、自分の翅で。    太陽とは無縁で、欲望の渦巻く街を飛ぼう。    どうせ生きる意味もないのだから……。    ――ネオンの星空へ、羽ばたこう」 終わり

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