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**架空世界との愛を論ず 磯部:オタク。 藤澤:オタク。 岩井:オタク。 磯01「春が訪れた。季節にも、世間にも、――誰かの頭の中にも。    いつものように、学校の教室で俺達が雑談している時のコト。    藤澤は神妙な顔つきで、まるで哲学者のように厳かな声で言い出した」 藤01「二次元キャラとセックスするには、どうすればいいと思う?」 磯02「彼はとてもマジメで、冗談とは思えない雰囲気だった。    だから俺こと磯辺は、岩井と顔を見合わせて口を開いたんだ」 磯03「前々から危ない奴だと思ってたけど、ついに電波が脳にまで……」 岩01「しっ、見ちゃイケマセン。目が合ったら何か受信しちゃいますよッ」 藤02「いいからこっちを向いて話そうな?」 岩02「えー。じゃあ率直に訊くけど、脳外科と心療内科、どっちがいいデスカ」 藤03「人を病気のように扱うんじゃない」 磯04「いや、これはどう考えても病気だろ……親が聞いたら泣くぞ」 藤04「あの程度で泣くほど、うちの親は貧弱な精神の持ち主じゃないさ」 岩03「キャー。つ、つまりこやつ、一家揃ってアブノーマルですってカー!?」 磯05「優性遺伝を覆すDNAの神秘だな。遺伝子的にクズ揃いかお前の一族は」 藤05「ナチュラルにご先祖様まで罵倒するのはやめような?    そもそも俺はオタクの妄想ではなく、社会的な見地からこの話をしている」 岩04「シャーカーイーテーキー? 何それ何それ、新しいギャーグー?    小難しい言い回しすれば許されるとか思ってんじゃねーぞー、このゲス野郎!」 藤06「……ネットで仕入れた知識だがな。    アメリカのゲイには――あまりにモテないからこそ、ゲイになった者がいるらしい」 岩05「な、なんだって!?」 藤07「少数派かもしれないが、無視できるほどの数でもないだろう。    ならばいつの日か、日本もそうなる可能性があるんじゃないのか」 岩06「む、むぅ……しかし何故、そこで先ほどの電波発言が飛び出すのか理解不能。    単にお前が二次元に逃避する正当性を得たくて、適当ほざいてんじゃね?」 藤08「そう思うならそう思え。    だが気付いた時には、電車でお前の隣にゲイのいる世界が訪れている筈だ」 岩07「それがナーニー? べっつに怖くもなんともありまっせーん」 藤09「――他人ではなく。恋人として、だ」 岩08「うひゃあぅ!? お、俺、そんなルート進んだりしないヨ!」 藤10「今でもあまりにモテないお前だぞ? 果たしてそうならないと断言できるのか。    いや、そも筋金入りのオタクであるお前だ、ゲイの要素なぞ既に満たしている。    ガチムチはともかく、二次元ショタに萌えた経験ぐらいあるだろう?」 岩09「ヤメテヤメテヤメテ……! イタイ、頭イタイノ……!    そっちのセカイの扉開かないデ……!    ボクチャン、そんなガンダーラいらないヨ!!」 磯06「落ち着くんだ岩井。それで、どうして二次元セックスの話に繋がるんだ?」 藤11「さすが磯部だな、よくぞ冷静でいてくれた。    そして二次元セックスの件だが、考えてもみるがいい。    どんなに科学が進歩しようとも、それは俺達に夢のない現実を突きつけるだけだ。    いつまで待ったところで、マルチもセリオも現実にはならないとな!」 磯07「分かり切った話じゃないか。何を今更」 藤12「そうとも今更だ。しかし非モテ童貞の中には、そんな夢を信じて待つ者がいる。    それ故に三次元女から必死で目を逸らし、空想や妄想に溺れるのだ。    言うなれば――モテぬからこそゲイへと走る者の予備軍だ」 磯08「論理の飛躍じゃないのか?    そうまでして二次元に萌える奴が、ゲイに走るとは思えない」 藤13「甘い、胸焼けするほどに甘ったれた楽観だ、それは。    二次元萌えオタであるが故に、彼らはショタ萌えという禁忌を内包する。    そんなものに興味はないと言い張る者は、まだショタを知らぬだけの愚か者だ。    現に――そう、現にこの俺も、つい先日ショタ萌えに目覚めてしまった」 磯09「藤澤、それは茨の道だ。抜けたところで先のない、破滅の道だ。    男が男に萌えるなど、本来ならばあっていい事ではない。    お前が今歩もうとしている道は、人間という種の本能に逆らう十三階段だ」 藤14「そうとも、分かっている。正しく理解しているつもりだとも。    そしてショタとはいえ男に萌えてしまうのは、女の良さを知らないからだ。    女の良さを知れば、ショタ萌えなどという迷いは消し飛ぶ筈だ」 磯10「しかし現実には、女を知るにはまずモテる必要が……」 藤15「そうだ。だからこそ、だからこその二次元セックスなのだ。それしかないのだ。    三次元女が相手をしてくれないのであれば、二次元に目を向けるしかない。    残された欲望の向かう先は、最早それのみだ。    二次元セックスさえ確立すれば、ゲイに走る男も減るだろう」 磯11「なるほど、話は分かった。だがどうやって?    次元という厚過ぎる壁を越える方法は?」 藤16「問題はそれだ……妄想したところで所詮は妄想、虚しいだけだ。    脳内で繰り広げられる快楽は、悲しいほどに肉欲を満たさない。    どんな二次元美少女を思い描こうと、イチモツに触れるのが己の右手ではな」 磯12「まさに永遠の命題だな。妄想でしか触れ得ぬが、妄想であるが故の空虚さ。    それを解決しない事には、ゲイへの扉が開かれたままというわけか」 藤17「そうだ――岩井、お前はどう思う?    既にしてショタ萌えを知るお前には、無縁の問題ではないだろう」 岩10「え? あー、うん。    お前らってか、藤澤ってバカじゃねーの?」 藤18「そうだな、確かにバカだ。    しかしそれもこれも、非モテという覆せないレッテルが――」 岩11「いや、そうじゃなくてさ。    非モテ非モテって言っても、そこの磯部大先生にゃかわいい彼女がいるんだぜ?」 藤19「…………磯部?」 磯13「藤澤、岩井。俺はお前達がゲイにならないよう、祈っておくよ」 藤20「裏切りだ! これは裏切りだぞ磯部!?」 磯14「え、何が? つーかゲイとかショタ萌えとか二次元セックスとか、何ほざいてますか?    うわっ、キモチワルーイ。同類に見られるのイヤだし、そういう話しないでよね」 藤21「こ、殺す! キィーぶっ殺す!!」 岩12「ギャー!? 落ち着け藤沢ー!!」 唐突に終わる。
**架空世界との愛を論ず 磯部:オタク。 藤澤:オタク。 岩井:オタク。 磯01「春が訪れた。季節にも、世間にも、――誰かの頭の中にも。    いつものように、学校の教室で俺達が雑談している時のコト。    藤澤は神妙な顔つきで、まるで哲学者のように厳かな声で言い出した」 藤01「二次元キャラとセックスするには、どうすればいいと思う?」 磯02「彼はとてもマジメで、冗談とは思えない雰囲気だった。    だから俺こと磯辺は、岩井と顔を見合わせて口を開いたんだ」 磯03「前々から危ない奴だと思ってたけど、ついに電波が脳にまで……」 岩01「しっ、見ちゃイケマセン。目が合ったら何か受信しちゃいますよッ」 藤02「いいからこっちを向いて話そうな?」 岩02「えー。じゃあ率直に訊くけど、脳外科と心療内科、どっちがいいデスカ」 藤03「人を病気のように扱うんじゃない」 磯04「いや、これはどう考えても病気だろ……親が聞いたら泣くぞ」 藤04「あの程度で泣くほど、うちの親は貧弱な精神の持ち主じゃないさ」 岩03「キャー。つ、つまりこやつ、一家揃ってアブノーマルですってカー!?」 磯05「優性遺伝を覆すDNAの神秘だな。遺伝子的にクズ揃いかお前の一族は」 藤05「ナチュラルにご先祖様まで罵倒するのはやめような?    そもそも俺はオタクの妄想ではなく、社会的な見地からこの話をしている」 岩04「シャーカーイーテーキー? 何それ何それ、新しいギャーグー?    小難しい言い回しすれば許されるとか思ってんじゃねーぞー、このゲス野郎!」 藤06「……ネットで仕入れた知識だがな。    アメリカのゲイには――あまりにモテないからこそ、ゲイになった者がいるらしい」 岩05「な、なんだって!?」 藤07「少数派かもしれないが、無視できるほどの数でもないだろう。    ならばいつの日か、日本もそうなる可能性があるんじゃないのか」 岩06「む、むぅ……しかし何故、そこで先ほどの電波発言が飛び出すのか理解不能。    単にお前が二次元に逃避する正当性を得たくて、適当ほざいてんじゃね?」 藤08「そう思うならそう思え。    だが気付いた時には、電車でお前の隣にゲイのいる世界が訪れている筈だ」 岩07「それがナーニー? べっつに怖くもなんともありまっせーん」 藤09「――他人ではなく。恋人として、だ」 岩08「うひゃあぅ!? お、俺、そんなルート進んだりしないヨ!」 藤10「今でもあまりにモテないお前だぞ? 果たしてそうならないと断言できるのか。    いや、そも筋金入りのオタクであるお前だ、ゲイの要素なぞ既に満たしている。    ガチムチはともかく、二次元ショタに萌えた経験ぐらいあるだろう?」 岩09「ヤメテヤメテヤメテ……! イタイ、頭イタイノ……!    そっちのセカイの扉開かないデ……!    ボクチャン、そんなガンダーラいらないヨ!!」 磯06「落ち着くんだ岩井。それで、どうして二次元セックスの話に繋がるんだ?」 藤11「さすが磯部だな、よくぞ冷静でいてくれた。    そして二次元セックスの件だが、考えてもみるがいい。    どんなに科学が進歩しようとも、それは俺達に夢のない現実を突きつけるだけだ。    いつまで待ったところで、マルチもセリオも現実にはならないとな!」 磯07「分かり切った話じゃないか。何を今更」 藤12「そうとも今更だ。しかし非モテ童貞の中には、そんな夢を信じて待つ者がいる。    それ故に三次元女から必死で目を逸らし、空想や妄想に溺れるのだ。    言うなれば――モテぬからこそゲイへと走る者の予備軍だ」 磯08「論理の飛躍じゃないのか?    そうまでして二次元に萌える奴が、ゲイに走るとは思えない」 藤13「甘い、胸焼けするほどに甘ったれた楽観だ、それは。    二次元萌えオタであるが故に、彼らはショタ萌えという禁忌を内包する。    そんなものに興味はないと言い張る者は、まだショタを知らぬだけの愚か者だ。    現に――そう、現にこの俺も、つい先日ショタ萌えに目覚めてしまった」 磯09「藤澤、それは茨の道だ。抜けたところで先のない、破滅の道だ。    男が男に萌えるなど、本来ならばあっていい事ではない。    お前が今歩もうとしている道は、人間という種の本能に逆らう十三階段だ」 藤14「そうとも、分かっている。正しく理解しているつもりだとも。    そしてショタとはいえ男に萌えてしまうのは、女の良さを知らないからだ。    女の良さを知れば、ショタ萌えなどという迷いは消し飛ぶ筈だ」 磯10「しかし現実には、女を知るにはまずモテる必要が……」 藤15「そうだ。だからこそ、だからこその二次元セックスなのだ。それしかないのだ。    三次元女が相手をしてくれないのであれば、二次元に目を向けるしかない。    残された欲望の向かう先は、最早それのみだ。    二次元セックスさえ確立すれば、ゲイに走る男も減るだろう」 磯11「なるほど、話は分かった。だがどうやって?    次元という厚過ぎる壁を越える方法は?」 藤16「問題はそれだ……妄想したところで所詮は妄想、虚しいだけだ。    脳内で繰り広げられる快楽は、悲しいほどに肉欲を満たさない。    どんな二次元美少女を思い描こうと、イチモツに触れるのが己の右手ではな」 磯12「まさに永遠の命題だな。妄想でしか触れ得ぬが、妄想であるが故の空虚さ。    それを解決しない事には、ゲイへの扉が開かれたままというわけか」 藤17「そうだ――岩井、お前はどう思う?    既にしてショタ萌えを知るお前には、無縁の問題ではないだろう」 岩10「え? あー、うん。    お前らってか、藤澤ってバカじゃねーの?」 藤18「そうだな、確かにバカだ。    しかしそれもこれも、非モテという覆せないレッテルが――」 岩11「いや、そうじゃなくてさ。    非モテ非モテって言っても、そこの磯部大先生にゃかわいい彼女がいるんだぜ?」 藤19「…………磯部?」 磯13「藤澤、岩井。俺はお前達がゲイにならないよう、祈っておくよ」 藤20「裏切りだ! これは裏切りだぞ磯部!?」 磯14「え、何が? つーかゲイとかショタ萌えとか二次元セックスとか、何ほざいてますか?    うわっ、キモチワルーイ。同類に見られるのイヤだし、そういう話しないでよね」 藤21「こ、殺す! キィーぶっ殺す!!」 岩12「ギャー!? 落ち着け藤沢ー!!」 唐突に終わる。

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