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 ***怯える子供
 
 作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI 
 
  ガタガタ、ガタガタ。戸が軋んでいる。
  早く出ろ、表に出ろと呼ぶように、風が歌っている。
  どうやら嵐が近いようだと、家に残されたその子は不安に怯える。
  親がその親から聞いた、つまりは古くからある言い伝えを思い出す。
  嵐の晩には狼がやって来て、小さな子供を連れ去ってしまうという。
  迷信なのかもしれない。けれど本当なのかもしれない。
  果たしてどちらなのか。判断ができるほど、その子は大きくなかった。
  ガタガタ、ガタガタ。戸が叫んでいる。
  あの音は本当に風によるものなのだろうか?
  もしかしたら外には狼がいて、爪を立てているんじゃないだろうか?
  分からない。分からないからこそ、その子はどうしても怖くなってしまう。
  ああ、どうして狼は人を襲うのだろう?
  ずっと森にいてくれさえすれば、何も怖くはないというのに。
  人と狼。
  住む場所が違うのだから、出会わなければいいのに。
  どうして人は森へ入り、狼は里へ出てしまうのか。
  そんな事をしなければ、どちらも平和に生きていけるのだから。
  ガタガタ、ガタガタ! ひときわ強く、戸が泣き声を上げた。
  その子は驚いて飛び上がり、そのひょうしに転んでしまった。
  ああ、どうして自分は一人だけなのだろう?
  転んですりむいたヒザを抱えて、その子は涙ぐんでいる。
  もし一人でなければ、こんなにも不安な思いをせずにすんだのに。
  ああ、どうして。どうして残ってしまったのか。
  こんなにも不安な思いをすると分かっていれば、一人にならなかったのに。
  一人になることが怖いと知っていれば、何もしなかったのに。
  ガタガタと軋む音の響く家の中。
  その子は暖炉の傍で眠る両親を見て、泣きながら謝った。
  ごめんなさい、ごめんなさい……。
  一人ぼっちはもう嫌なんです。
  ごめんなさい、ごめんなさい……。
  だから起きて、どうか目を覚ましてください。
 
  ――殺してしまったのは、その子だけれど。