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***とある旅行者の手記 作者:グレイト 【とある旅行者の手記】 1- ……ここはどこだろうか。 ふと目が覚めた俺は、バスが停止しているのに気付いた。 カーテンから外を覗くと、パーキングエリアの文字が見えた。 まだ目的地には到着していないらしい。 既に一周はしたであろうミュージックプレーヤーの停止ボタンを押し 開けっ放しのドアから外に出た。 冷たい空気が、肺に、身体に染み渡る。 大きく体を伸ばし、ぼんやりと空を眺める。 雲一つない、綺麗な黒に染まった夜空。 生憎と目の悪い俺には、星の瞬きを堪能出来そうにないのが残念だ。 これから向かう先で何が待っているのだろうか。 仲間達との再会、新しい出会い、かけがえのない時間。 どれを思い描いても心を躍らせる。 そろそろ出発の時間だ。 これからまた、長い時間と道のりを、このバスは刻んで行く。 俺の旅は、またここから続いていく。 2- 「13番線に電車が参ります」 都会の人ごみに揉まれ、なれない空気に戸惑いながら、駅のホームに向かう。 現在時刻5時45分。 朝、と言うにはまだ早く、夜明け、と言うには少し遅い、丁度その境目の時間。 眠気は既に無く、あるのはこれからの期待に満ちた逸る気持ちだけ。 荷物を背負いなおし、電車に乗り込む。 駅のホームにあれだけの人がいたのに、乗ったのはわずかのみ。 多少の違和感を感じたが、その思いは逸る気持ちにすぐに掻き消えた。 「13番線、ドアが閉まります」 俺の旅は、まだまだ続く。 3- 「2番線、快速列車が参ります」 楽しい時間というものは、あっという間に過ぎていく。 新たな出会いに胸をときめかせ、懐かしい友人達と飲み語り、気付けば別れの時間を迎えていた。 名残惜しいが、明日からはまたいつもの日常が俺を待っている。 いつまでも、「今」にすがる訳にはいかないのだ。 友人達に別れの挨拶と再会の約束を告げ、電車に乗り込む。 イヤホンをつけ、一時停止中だったミュージックプレーヤーのスイッチを入れる。 少し哀愁漂う音楽が、今の俺を慰めているように思えた。 「2番線、ドアが閉まります」 俺の旅は、もう少しだけ続く。 4- ……ここはどこだろうか。 ふと目が覚めた俺は、バスが停止しているのに気付いた。 カーテンから外を覗くと、パーキングエリアの文字が見えた。 まだ目的地には到着していないらしい。 既に電池切れで動かないミュージックプレーヤーをカバンにしまい、 開けっ放しのドアから外に出た。 風が気持ちいい。 突き刺さるように冷たい風が、火照った体に染み渡る。 大きく体を伸ばし、深呼吸をする。白い吐息が真っ黒の空に消えた。 夜空を見上げながら、今日の出来事を、まるで昔のように思い出す。 過ぎた時間は戻らない。だから尊く、楽しく、寂しい。 仲間達は今頃夢の中だろうか。 こうして、同じ空を見上げているのだろうか。 色々な事を思いながら、俺はもう一度深呼吸をした。 そろそろ出発の時間だ。 これからまた、長い時間と道のりと、今までの思い出を、このバスは刻んでいく。 俺の旅は、あと少しで終わる。 5- 「うお……寒ぃ……」 アクセル全開の原付で、誰もいない車道を走りながら、思わず口にする。 都会の朝と比べると、幾分か気温の低い北国の朝。 現在時刻5時30分。 やはり朝というにはまだ早く、夜明けというには少し遅いこの時間。 辺りはうっすらと明るくなっているが、それでもまだ暗く、寒い。 歯をがちがち鳴らしながら、我が家へと向かった。 何もない、静かな町。 静かな風景。 昨日までとは、まったく違う朝。 少しだけ都会を思い出し、懐かしくなる。 寒さで手が振るえ、歯をガチガチ鳴らしながら、漸く目的地に到着する。 エンジンを切り、荷物を降ろす。 鍵を取り出し、ドアを開けた。 「ただいま」 また、一日が始まる。 同じ太陽の、まったく違う朝を迎える。 俺の旅は、ここで終わりを迎えた。 そして、俺の一日が、ここからまた始まった。 俺の旅は、これで終わる。
***とある旅行者の手記 作者:グレイト 【とある旅行者の手記】 1- ……ここはどこだろうか。 ふと目が覚めた俺は、バスが停止しているのに気付いた。 カーテンから外を覗くと、パーキングエリアの文字が見えた。 まだ目的地には到着していないらしい。 既に一周はしたであろうミュージックプレーヤーの停止ボタンを押し 開けっ放しのドアから外に出た。 冷たい空気が、肺に、身体に染み渡る。 大きく体を伸ばし、ぼんやりと空を眺める。 雲一つない、綺麗な黒に染まった夜空。 生憎と目の悪い俺には、星の瞬きを堪能出来そうにないのが残念だ。 これから向かう先で何が待っているのだろうか。 仲間達との再会、新しい出会い、かけがえのない時間。 どれを思い描いても心を躍らせる。 そろそろ出発の時間だ。 これからまた、長い時間と道のりを、このバスは刻んで行く。 俺の旅は、またここから続いていく。 2- 「13番線に電車が参ります」 都会の人ごみに揉まれ、なれない空気に戸惑いながら、駅のホームに向かう。 現在時刻5時45分。 朝、と言うにはまだ早く、夜明け、と言うには少し遅い、丁度その境目の時間。 眠気は既に無く、あるのはこれからの期待に満ちた逸る気持ちだけ。 荷物を背負いなおし、電車に乗り込む。 駅のホームにあれだけの人がいたのに、乗ったのはわずかのみ。 多少の違和感を感じたが、その思いは逸る気持ちにすぐに掻き消えた。 「13番線、ドアが閉まります」 俺の旅は、まだまだ続く。 3- 「2番線、快速列車が参ります」 楽しい時間というものは、あっという間に過ぎていく。 新たな出会いに胸をときめかせ、懐かしい友人達と飲み語り、気付けば別れの時間を迎えていた。 名残惜しいが、明日からはまたいつもの日常が俺を待っている。 いつまでも、「今」にすがる訳にはいかないのだ。 友人達に別れの挨拶と再会の約束を告げ、電車に乗り込む。 イヤホンをつけ、一時停止中だったミュージックプレーヤーのスイッチを入れる。 少し哀愁漂う音楽が、今の俺を慰めているように思えた。 「2番線、ドアが閉まります」 俺の旅は、もう少しだけ続く。 4- ……ここはどこだろうか。 ふと目が覚めた俺は、バスが停止しているのに気付いた。 カーテンから外を覗くと、パーキングエリアの文字が見えた。 まだ目的地には到着していないらしい。 既に電池切れで動かないミュージックプレーヤーをカバンにしまい、 開けっ放しのドアから外に出た。 風が気持ちいい。 突き刺さるように冷たい風が、火照った体に染み渡る。 大きく体を伸ばし、深呼吸をする。白い吐息が真っ黒の空に消えた。 夜空を見上げながら、今日の出来事を、まるで昔のように思い出す。 過ぎた時間は戻らない。だから尊く、楽しく、寂しい。 仲間達は今頃夢の中だろうか。 こうして、同じ空を見上げているのだろうか。 色々な事を思いながら、俺はもう一度深呼吸をした。 そろそろ出発の時間だ。 これからまた、長い時間と道のりと、今までの思い出を、このバスは刻んでいく。 俺の旅は、あと少しで終わる。 5- 「うお……寒ぃ……」 アクセル全開の原付で、誰もいない車道を走りながら、思わず口にする。 都会の朝と比べると、幾分か気温の低い北国の朝。 現在時刻5時30分。 やはり朝というにはまだ早く、夜明けというには少し遅いこの時間。 辺りはうっすらと明るくなっているが、それでもまだ暗く、寒い。 歯をがちがち鳴らしながら、我が家へと向かった。 何もない、静かな町。 静かな風景。 昨日までとは、まったく違う朝。 少しだけ都会を思い出し、懐かしくなる。 寒さで手が振るえ、歯をガチガチ鳴らしながら、漸く目的地に到着する。 エンジンを切り、荷物を降ろす。 鍵を取り出し、ドアを開けた。 「ただいま」 また、一日が始まる。 同じ太陽の、まったく違う朝を迎える。 俺の旅は、ここで終わりを迎えた。 そして、俺の一日が、ここからまた始まった。 俺の旅は、これで終わる。

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