ハルヒと親父 @ wiki
できちゃった その2
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haruhioyaji
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- ハル母
- キョン君、いらっしゃい。ハルは部屋よ。「勝手にあがってきて」って言ってたわ。
- キョン
- いつもすみません。お邪魔します。
- キョン
- ……って、おい、ハルヒ?
- ハルヒ
- ん?……あ、キョン、おはよ。
- キョン
- おはよって、もう昼だぞ。それと妊婦が床に寝るな。うつぶせで寝るな。腹出して寝るな。ったく、よいしょっと。
- ハルヒ
- お、お姫様だっこ……って、もう終わり?
- キョン
- 終わりって、ベッドに運ぶだけだから、これで終わりだろ。
- ハルヒ
- このまま町内を一周してみない?
- キョン
- しない。無駄に体を冷やすな。それより、なに散らかして寝てたんだ?
- ハルヒ
- あ、これ? 母さんの家事日記だって。もらったの。新妻と新米ママには参考になるだろうって。読みふけってるうちに寝ちゃったみたいね。
- キョン
- ……おれには「ただの親父」腕章だったが。
- ハルヒ
- なんか、言った?
- キョン
- いや。それよりすごい量だな。
- ハルヒ
- 親父と結婚してからずっと、らしいからね。
- キョン
- 途中から3年日記、それから5年日記形式になってるのか。
- ハルヒ
- だんだん書くこともシンプルになってったみたい。あと、複年式の方が、去年とかおととしのを見れて、参考にしやすいんだって。去年の今日の献立はなんだったとか、そろそろカツオの初物が出てるかも、季節のものも分かるし。あと家族の体調の波とか、陥りがちな献立のパターンなんかにも気が付きやすいって。
- キョン
- 日記ってただ書くだけじゃなくて、使えるもんなのか。お、このあたりでハルヒが生まれてるぞ。
- ハルヒ
- そこら辺りは、看護婦さんとか親父とか手伝いに来ていたおばあちゃんを尋問して書いてたらしいわ。
- キョン
- 尋問……。確かに根掘り葉掘り聞いて書いた感じだな。
- ハルヒ
- 母さん、入院してたしね。書くことで一緒に居る、つながってるって感じたの、と言ってたわ。さびしいときは、ノートを抱きしめて眠ったりしたって。
- キョン
- ……。体重とか体温とか便の色とか、書いてあるな。
- ハルヒ
- へんなとこ読むな!……赤ん坊なんだからしょうがないでしょ!
- キョン
- ここらへんのは新しいな。これ、最近のノートか。
- ハルヒ
- こ、こら、見るな!触るな! ……プライバシーってもんがあるでしょ。
- キョン
- 蹴るなよ。ああ、すまん。そういうつもりはなかったんだが。……ハルヒが中学から高校の頃のか?……なぜ、胸に日記を抱えてあとずさる?
- ハルヒ
- あんた、やっぱり退場!ノート片付けるまで入ってくんな!!
- ハル母
- ハルが中高の頃の日記? そうね、あの娘もどんどん変わっていった頃ね。
- キョン
- いや、プライバシーと言われれば、確かにそうですし。
- ハル母
- それはあれね。キョン君をいつから男の子として意識したとか、どんなこと言われて一喜一憂したとか、わかるからじゃないかしら?
- キョン
- そんなことまで書いたんですか?
- ハル母
- ふふ、母の日記は伊達じゃありません。
- ハルヒ
- もう! 母さんも余計なこと言わないで。 (ギロッ)キョン、絶対見せないからね。
- ハル母
- お式のときにタイム・カプセルにでも入れて、10年後にみんなで開けるというのはどうかしら?
- ハルヒ
- (ギロッ)か・あ・さ・ん
- ハル母
- まあ、怖い。
- キョン
- 人の日記を見る趣味はない。さっきは悪かったな。
- ハルヒ
- う、うん。あたしも、その、ちょっと悪かった。
- キョン
- 会ったときのハルヒがどうだったとか、会ってからのおまえがどう変わったとかなら、俺だって全部覚えてる。俺が知ってる限りだけどな。それだけでもうお腹いっぱいって感じだ。
- ハルヒ
- なによ、それ。ひとを食べ物みたいに。
- キョン
- おまえを食べたわけじゃないだろ。時間とか、思い出とか、そういうのだよ。
- ハルヒ
- あんたは獏(ばく)か。この先の方がずっとずーっと長いのに、もうお腹いっぱいでどうすんのよ。
- キョン
- 獏が食べるのは悪夢だろ。俺が言ってるのは……
- 親 父
- 食っただろぉ、ひとのむすめをぉぉぉ
- キョン
- 親父さん!?
- ハルヒ
- バカ親父、なんて時間に帰ってきてるのよ!? 太陽はまだ頭の上よ!
- 親 父
- 最近、勤労意欲が目っきり落ちてな。はっきり言って落ちこんでるんだ。
- ハルヒ
- いままでが無駄にテンション高かったんだから、その反動よ。しっかり収支をあわせなさい!
- 親 父
- そういうこと言ってるとな、毎日押しかけて、孫に悪い影響を与えちゃうぞ。でたらめな世界観を植えつけちゃうぞ。宇宙人と未来人と超能力者と遊びたがるような孫にしちゃうぞ。満員の甲子園球場に連れてって5万分の1の悲哀をトラウマにして刻み込んじゃうぞ。
- キョン
- 親父さんに(負け惜しみ)怪人の自爆フラグが……。
- ハルヒ
- あんたにはうちの敷居は一歩だってまたがせないわ!
- 親 父
- 子供産んでも、しばらくうちにいるんだろうが。……そうだ、キョン!
- キョン
- はい。
- 親 父
- バカ娘には、もうなーんにも期待しとらん。せめておまえが自重しろ。
- キョン
- はあ。
- 親 父
- 俺の目の黒いうちは、うちであんまりいちゃつくな。
- ハルヒ
- そんな目は、今すぐ白く塗りつぶしてあげるわ!
- 親 父
- 立候補すら取り消されたダルマか!
できちゃった その3へつづく