ハルヒと親父 @ wiki
ロール・プレイング その1
最終更新:
haruhioyaji
-
view
人生の98%はゴミみたいなもんだ。だが最悪なのはそこじゃない。残りの2%があることに気付かないまま、そして、あきらめたまま死んでいく。これこそ最悪だ。
おい、目を覚ませ。立って支度しろ。人生の2%がはじまるぞ。
- キョン
- わっ、なんですか、親父さん、その格好?
- オヤジ
- 確かに異常事態だが、人のことばかり言えんぞ、キョン。自分の格好を見ろ。
- キョン
- ……何かの罰ゲームですか?
- オヤジ
- 心当たりがあるのか? この場合の第一声は「ゲームではよくあることですよ」だろ? ゲームちがいだ。
- キョン
- いや、そっちでも「現実(リアル)なんてクソ・ゲーだ」でもなくて、「勇者よ、死んでしまうとはなさけない」とか、そういう奴では?
- オヤジ
- 根がネガティブにできてるのか? 「テーブル」の付かない方のRPGな。どうせ夢オチだろうと二度寝してみたが、効果なしだ。こっちの「勝利条件」を満たさんといかんのかもな。
- キョン
- 勝利条件って、あの?
- オヤジ
- ドラゴンを倒して、お姫様を救いだすとか、だ。いやな予感がしないか?
- キョン
- します。すごく。……うっ!
- オヤジ
- どうした、キョン?
- キョン
- いや、いま「うっさい、さっさと助けに来なさい!」って怒鳴り声が聞こえませんでしたか?……だれの声かは、あえて言いませんが。
- オヤジ
- ……キョン、これを聞くのはきっと百回を越してるが、本当にあんな奴でいいのか? って、今、尋ねても答えられんか。仕方がない。さっさと「世界」とやらを救いに行くか。そして、あいつは速やかに回収する。それでいいな?
- キョン
- 親父さん、あれを!
- オヤジ
- あーあ。見事に突き刺さってんな、岩に。キョン、ちょっとよじ登って抜いて来い。
- キョン
- おれがですか?
- オヤジ
- おまえがだ。オレが抜こうとすると、なぜだか落雷に打たれそうな気がする。
- キョン
- ……否定はしません。
- オヤジ
- そんなことにでも、なってみろ。
- キョン
- どうなるんですか?
- オヤジ
- バーサーカー・モードになって、しかも「ずっと親父のターン」だ。
- キョン
- ……行ってきます。
- オヤジ
- どうだ、登れそうか?
- キョン
- な、なんとか……うわっ!
- オヤジ
- まあ、のんびり行け。おまえの手足の置き所がちゃんと用意してあるはずだ。行き詰まったら、別のルートを探せばいい。
- キョン
- こ、今度は行けそうです。……上から見ると、岩の下に、いっぱい人骨みたいなのが……。
- オヤジ
- 演出だろ。「たくさんの冒険者が挑んで失敗しました」って訳だ。勇者は、自分が勇者であることをどこかで証明しなくちゃならない。「エクスカリバー抜き」は、すごぶる分かりやすい。くがたち、とかじゃなくて、良かったな。
- キョン
- なんですか、それは?
- オヤジ
- 盟神探湯と書く。古代日本で行われていた神明裁判で、要するに熱湯に手を突っ込むんだ。選ばれたものなら、熱さを感じない。元々、罪人と無罪に者を見分ける手段なんだけどな。自分の無実を信じるものは、大方βエンドルフィンでも出るんだろ。
- キョン
- たどり着きました!
- オヤジ
- 剣を抜いて戻って来い。だいたい岩なんて女陰のメタファーなんだぞ。ときどき泉みたいに水が流れ出てたりするしな。剣の方はいうまでもなく○○の……。やれやれ、ユング先生も爆笑ものだな。おわ!
- キョン
- 親父さん!!……大丈夫ですか?
- オヤジ
- 地面が焦げただけだ。キョン、とりあえずイコノロジーとエロい話題は禁止だ。ユングとエリアーデもだ。あと、他の女に無差別に親切にするなよ。地面が割れるだけじゃすまんかもしれん。やれやれ。ドラゴンより厄介だな。ああ、キョン。降りてきたら、その岩、適当に刻んどけ。他の冒険者が徒労に終わらんように。
- キョン
- 刻むと言っても……。
- オヤジ
- 岩に刺さってた剣だろ? 豆腐を切るみたいに簡単に切れるだろ、多分。
- キョン
- どこの斬鉄剣ですか? あ、切れた。
- オヤジ
- おれもなんか武器を調達しないと格好がつかんな。どこかの町で銀の弾丸でも仕入れるか。
- キョン
- それって手に入らないというか存在しないはずでは?
- オヤジ
- じゃあ、敵には無差別に墓石を投げつけるか?
- キョン
- どこの妖怪でも、そこまではしません。
- オヤジ
- キョン、例によって、良いニュースと悪いニュースだ。
- キョン
- どっちを選んでも、悪い方から話すんでしょ?
- オヤジ
- その通り。見てみろ。我が娘とは言え、いやになるぞ。
- キョン
- 手配書!? キャラ振りじゃ、どこかのお姫様になってるはずじゃ?
- オヤジ
- その姫とやらが手配されてるそうだ。王宮のものがこっそり探すんじゃ、もう時間がないらしい。この数字みたいなのは懸賞金だ。
- キョン
- 思いっきり、おたずねものじゃないですか!
- オヤジ
- 生死を問わず、と書いてないだけましだ。
- キョン
- どうやって探しましょう? この世界の人たちより先に見つけないと。
- オヤジ
- 多勢に無勢だが、しかし吉報(良いニュース)もある。あいつは、この世界でも、あの性格のままだってことだ。この世界の連中の理解を越えたバカが相手なら、おれたちの方に一日の長がある。