ハルヒと親父 @ wiki
一人旅に必要な事 エピソード2
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haruhioyaji
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幸せと笑顔
- アキ
- ねえ、ナツキは、ハルヒに似てるよね。
- ハルヒ
- そうね。キョンにも似てるけどね。
- アキ
- 惜しいね。すごい美人になれたかもしれないのに。普通の美人どまりかも。
- ハルヒ
- それはキョンを愛するあたしへの挑戦と受け取っていいわね、アキ。キョンはああ見えても、もてるのよ。
- アキ
- 知ってる。素で親切で、自分の行為を親切ともなんとも思ってないから、相手が感謝して好意を持ったとしても気付かないんでしょ。フラクラっていうんだよね。
- ハルヒ
- その下らない豆知識の発信源は、親父ね。
- アキ
- うん、親父ちゃんって、ほんと物知りだね。何、尋ねても答えちゃうから、アキ、びっくりだよ。いーーっぱい説明してくれるから、ときどき自分が何を質問したから忘れちゃうけど。
- ハルヒ
- だいたい親父は、いつも百言くらい多いのよ!
- オヤジ
- 人間は知りたがりの動物だと、アリストテレスも言っている。あきらめろ。
- ハルヒ
- アキの知的好奇心を問題にしてるんじゃなくて、あんたのトンデモ言動を問題にしているの! アキ、ナツキがヘンタイにならないように、ちゃんと見張っててね。
- アキ
- 了解! でも、ハルヒみたいに美人で、親父ちゃんみたいにヘンタイだと、きっとモテモテだね!
- ハルヒ
- アキ、あんたのその「モテ理論」は何を根拠にしてるのかしら?
- オヤジ
- おれじゃないぞ。アキのオリジナルだ。中高時代の誰かさんに聞かせてやりたいな。
- ハルヒ
- 黙ってなさい!
- アキ
- 誰かさんって、誰?
- オヤジ
- そいつはな、顔はハルヒで、行動は手に負えない変人だった。キョンがいつも体を張ってそいつを止めてくれたんで、神様はキョンを天に上げて星座にしたんだ。
- アキ
- ロマンティック! 親父ちゃん、詩人だね!
- オヤジ
- 頭に「桂冠」とつけてくれ。
- アキ
- でも、それってハルヒだよね? 顔がハルヒで行動が変人って。
- オヤジ
- わはは、そのとおりだ。
- アキ
- アキ、顔はハルヒにかなわないけど、行動だけでも遅れをとらないように頑張るよ。
- オヤジ
- ハルヒ、おまえ、アキにどういう教育をしてるんだ?
- ハルヒ
- それについては、親父(あんた)は、最も発言する権利がないわ。
- ハル母
- ふふ、ハルもね、お父さんの遺伝子が入ってなかったら、もっと美人になれたのに、って言ってたことあるのよ。
- アキ
- 親父ちゃんも『母さんは女神だ』っていつも言ってるもんね。でも、ひいき抜きで言うけど、ハルヒもおばあちゃんも、おなじくらいの、すごい美人だよ。あと、親父ちゃんの目、キラキラしてて、かわいいよ。ハルヒと同じ目だよ。
- ハルヒ
- う。涼宮家最強の称号を継ぐのは、確かにあんたのようね、アキ。
- アキ
- ハルヒ、ハルヒ!
- ハルヒ
- はい、ここよ、アキ。
- アキ
- ママに赤ちゃんが生まれたの。写真、送ってきた!
- ハルヒ
- わあ。見せて、見せて。
- アキ
- ママが赤ちゃん、抱っこしてるんだ。こっちに写ってるのが……。
- ハルヒ
- ん、どうしたの、アキ?
- アキ
- ママが……、ずっと好きな人だったんだって。ママが再婚した人。
- ハルヒ
- そうなんだ。
- アキ
- でも、ママ、幸せそうだよ! みんな、幸せそう……。
- ハルヒ
- そうね。幸せよ、きっと。そうに違いないわ。
- アキ
- ……ハルヒ、聞いていい?
- ハルヒ
- もちろん。いいわよ。
- アキ
- 人間ってさ、笑ってる方がいいよね?
- ハルヒ
- ……親父がまたバカ言ってたけどね。あたしの中学高校時代のこと。一緒くたにしてくれたけど、中学のあたしと高校に入ってからのあたしは、二つの点で大きく違ってたわ。ひとつは、中学生のあたしはほとんど笑わなかったけど、高校生のあたしは良く笑った。もちろん怒りもしたし、憂鬱にもなったけどね。もうひとつは……
- アキ
- 高校でパパと会ったんだよね?
- ハルヒ
- そう。1年からクラスが一緒、前と後の席でね。
- アキ
- もうひとつって、パパに会ったこと?
- ハルヒ
- 残念ながら、違うわ。キョンは、あたしの笑顔が好きだとかなんだとか言うけど、じゃあ怒ってるあたしや落ち込んでるあたしは嫌いってこと? 聞いてみなさい。0.1秒待たずに「違う」っていうから。
- アキ
- パパはハルヒにぞっこんだもん。
- ハルヒ
- あたしも、キョンの、笑ってんだか困ってんだか分かりにくい笑顔も、真剣に怒ってる顔も、死にそうに落ち込んでる顔もみんな好き。ああ、惚気じゃなくて、もうひとつの違いだったわね。
- アキ
- 自覚……あったんだね。
- ハルヒ
- ……もうひとつの違いはね、あたしを止められるのはあたしだけなんだ、って気付いたこと。
- アキ
- ?
- ハルヒ
- それに気付けたのは、キョンやSOS団のみんながいたおかげだけどね。コレも、キョンに確かめてみるといいわ。あたしを止めることができた試しがあるかって。0.01秒かからずに「ない」って返ってくるから。
- アキ
- ……うん。
- ハルヒ
- 笑うことの少なかった中学時代を不幸だったとかみじめだったとも、思わないわ。同じく高校時代も、今思うと当時のあたしを殴りつけてやりたいこともたくさん! キョンとのことでいえば、大きな回り道したのは違いないしね。でもね、キョンもあたしも、もう少しだけバカじゃなくて素直だったりしたら、あたしはアキと会えなかったのよ。
- アキ
- ハルヒ……。
- ハルヒ
- 笑うのは気持ちがいいし、幸せなのも結構なことよね。でもね、アキ、泣きわめこうが落ち込もうが、時間は流れるし、あたしたちは生きてるの。そのカケラを指差して「いい」とか「わるい」とか、いろいろ言う人もいるだろうけど、そんなことはね、自分が決めればいいの。ううん、自分で決めるしかないの。
- アキ
- ……うん。
- ハルヒ
- あたしは、アキのママはそうしたと思うわ。
- アキ
- うん。……そうだね。あたしもそう思う。……ねえ、ハルヒ?
- ハルヒ
- なあに、アキ?
- アキ
- あたし、ハルヒみたいになりたいし、ママみたいになりたい。
- ハルヒ
- ぜいたくね。でも、アキならそれくらい狙ってもいいかもね。あ、でもキョンみたいなのは、止めといた方がいいわよ。
- アキ
- うん、そうする。パパのこと大好きだけど、恋人にはめんどくさそう。
- ハルヒ
- まあ、親父みたいなのは、論外だけどね。
- アキ
- おばあちゃんって、ほんと女神みたいな人だね。あたしも、親父ちゃんは勘弁だよ。
- ハル母
- どうしたんですか、おとうさん?
- オヤジ
- ん? ああ、なんか星をみてたらな、目が潤んできた。歳かなあ。
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