ハルヒと親父 @ wiki

親父のびおろん

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haruhioyaji

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 ん、これか?
 久々に時間はあるし、良い天気だし、空が開けたとこで弾こうとおもってな。海の方の公園で演(や)ったんだ。その稼ぎだな。
 5円、10円、スナック菓子の半分残った奴、それについてた知らないサッカー選手のカードだ。
 ガキしかいなくてな、その公園。ま、平日の昼間だしな。ガキの喜ぶような曲、知らねえし。こんなもんだろ。

 公園に着くなり、とりあえず、簡単なのをギコギコやってたんだ。そしたらな、10才ぐらいのガキだったな。
「おじさん、ニート?」
「ちょっと違うが、似たようなもんだな」
「蟻とキリギリスって知ってる?」
「ああ」
「ママにね、バイオリン習えって言われたんだけど」
「ふーん。で、学校でキリギリス野郎って言われたか?」
「うん。でも遊んで暮らせるなら、誰だってその方が良いと思わない?」
「そりゃそうだな。けど、おまえ、勉強だってしてるだろ?」
「うん。バイオリンない日は、塾行ってる」
「勉強好きか?」
「嫌い。バイオリンも嫌い」
「そうか。嫌いなものはしょうがないな」
「おじさんは、好きなの?」
「いいや。すきな女の子がバイオリン好きだった」
「もてようと思ったの?」
「そうだな。いや、その子が振り向けばいいなと思ったんだ」
「案外、一途なんだ」
「まあな」
「その女の子と結婚したの?」
「残念ながら。だが、もっと好きな人と結婚したから、後悔はないな」
「おじさん、幸せだね」
「そりゃ、どうも」
「それ、高いの?」
「バイオリンか? どうだろうな。俺がつくったんだ」
「そんなの、つくれるの?」
「ああ。型紙が売ってるんだ。その通り、木を切って貼り合わせて乾かす、ニス塗って乾かす、そんなのの繰り返しだ。多少時間はかかるが、プラモデル組み立てるのと、たいして変わらん」
「ぼくのより良い音がする気がする」
「いい加減、古いからな、こいつも。娘と同じくらいだ」
「おじさん、娘いるの?」
「ああ、娘ならいるぞ」
「美人?いくつ?」
「高校生だから15,6,7歳ってとこだ。母さんは美人なんだけどな。かわいそうに俺に似ちまった」
「ふーん、そうなんだ。仲いい?」
「よくないな。15すぎて父親と仲良い娘なんて、気持ち悪いぞ」
「そうなの?」
「まあ、美人なら別だけどな」
「……」
「なんか弾こうか?トロイメライとか」
「あれ、大嫌い」
「そうか。じゃあ、おれの好きな奴でいいか?」
「うん。なんて曲?」
「チゴイゼルワイゼン」

「かっこいい!おじさん、実はうまい?」
「どうだろうな。あまり誉められたことがないんでわからん」
「そうなの? 何年くらい習ったら弾けるようになる?」
「今のか? 田舎だったんで学校の先生くらいしか弾ける人がいなかったんだ。その人がいた間だから2年か。美人な先生だったんだが、嫁に行っちまった。習ったのはそれくらいだ。あとは思いだしたときに、好き勝手に弾いてたくらいだぞ」
「その先生に気に入られようと思ったの?」
「意外とするどいな」
「見え見えだよ」

「こらー、ここで演奏しちゃいかん!」
「何故だ? ここは公共の公園だろ?」
「そうだ。だから規則がある。ちゃんと書いてあるだろ」
「そうか、読めなかったんだ、すまん。外国で生まれたから、見かけほど日本語ができないんだ。こういうとき、俺の生まれた国じゃ多数決で決める。見渡す限り、今この公園には俺と、この少年と、管理人らしいあんたの3人しかいない。では決を取ろう。演奏してもよいと思うもの! ではダメだというもの! うん2対1だ。 退け、サタン」
「誰がサタンだ! そんな勝手に決をとってもダメだ」
「何故だ? ここは自治法上の『公の施設』だろ? だったら議会で設置条例を制定しなきゃならん。つまり市民の代表の多数決が不可欠だ。役人の独走では作れん。そして『公の施設』の使用の制限は、集会の自由その他と抵触するから、よっぽどの場合のみ、即ちそれ以外に起こり得る被害を回避できないことが明確な時のみに限られるはずだ。最高裁判例を暗唱してやろうか?」

「管理人さん、どっか行っちゃったね」
「バカと関わらん方が身のためとわかったんだろう。おれと口ケンカしてもしなくても、勝っても負けても、どうせ給料は同じだ」
「おじさん、外国で育ったの?」
「18才からな」
「ほとんど大人だね」
「おまえくらいの頃はそう思ったな。今から考えると、相当なガキだったが」
「そうなの? 高校生なんて、すごい大人だよ。髭生えてるし」
「髭なんか中学生だって生える奴は生える。おまえの考えだと、うちのバカ娘は、もうすぐ大人だってことになる。アンビリーバボーだ」

「なにが『アンビリーバボー』よ!あんたとなんか、3歳のときにすでに決裂してるわよ!」
「おーい、少年。このうるさいのが、うちのバカ娘だ」
「な、なに、さらってきてるのよ!?」
「承諾済みだ。うちの母さんの名前を出して、電話にも出てもらった。結構、有名なんだな、母さん。音楽に理解のある親だ」
「おじさん、お姉さん、すっごい美人じゃない!」
「だまされるな。こいつはすごい厚化粧だ。SFXの応用だ。どんな顔にもなれる」
「だれが厚化粧だ!」









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