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8月10日 健康ハートの日

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haruhioyaji

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○8月10日 健康ハートの日
 「ハー(8)ト(10)」の語呂合わせから日本心臓財団と厚生省(厚生労働省)が1985(昭和60)年のこの日に同財団の設立15周年を記念して制定しました。
 夏の間に心と体をチェックして、心臓病の多発する冬に備える日とされており、健康チェックなどさまざまなイベントが行われます。



記念日童話 王子の心臓



むかしむかし、ある町に「しあわせものの王子」の像がありました。
  • ピカピカと、金色にかがやく体。
  • 青いサファイアのひとみ。
  • 腰の剣には、大きいルビー
などで装飾されているので、人々はときどき「金ぴか王子の像」などと呼んでいました。
 町の人たちは、この王子のように、うらやまれるようなバカップルに生まれ変わりたいなどと、途方もない野望を描いたりしていました。

 冬が近づいてきた、ある寒いタ方のことです。
 町にツバメが一羽飛んできました。
「なんだか、ちいさくて、つまんなそうな町ね。まあ、いいわ。今日はここで泊まることにしましょう」
 ツバメは王子の足元にとまり、そこで眠ろうとしました。
 すると、ポツポツと、しずくが落ちてきます。
「あんなに晴れてて、星だっていっぱい見えるのに、何なのよ!? え、あんた、仏像のくせに泣いてるの?」
 おどろいたツバメがたずねると、王子は答えました。
「仏の像じゃなくて、王子の像なんだがな。ああ、こうして高い所にいると、町じゅうの悲しいできごとが、どうしても目に入ってくる。だが俺には、どうすることもできん。王子と言ってもただの像だし、指先一つも動かないんだから」
「ふーん。アイマスクでもしたら?」
「おまえは、目を閉じたら、嫌な現実が消えると思うのか」
「思う訳ないでしょ。現実を変えたいなら、戦いなさい! まあ、あたしも暇だし、手伝って上げなくもないわ。とりあえず、何をすればいいの?」
「あそこに小さな家があるだろう。子どもが病気で、オレンジがほしいと泣いている。お母さんは一生けんめい働いているのに、貧しくて買えないんだ」
「子供手当でなんとかなるのかしらね」
「早速、頼んで悪いが、俺の剣についてるルビーを、あの家に運んでくれないか」
「それはやり過ぎってもんよ。あんた、そんなどんぶり勘定してたら、何人も救えないわよ」
「じゃあ、どうすればいい?」
「ルビーを元手にNPOを作って、びっくりするくらいの低金利でミシンを買えるくらいの額のお金を貸し出すの。ただし一人だとくじけがちだから、5人くらいのグループを組織して、そのグループに5人分貸すのよ。昔の5人組ね。こうするとリスク・ヘッジにもなるし、地域のネットワークも育つしね。こういう手法をマイクロ・クレジットというのよ」
「ツバメのくせに物知りだな」
「ツバメのくせに、は余計よ。これでも世界中飛び回ってるんだから、知らないことの方がむしろ少ないぐらいよ。まあ、あたしにまかせなさい!」
 ツバメは王子の腰の剣のルビーをはずして、それを宝石商のところで換金して、銀行口座を開設し、役所に出す書類を作成して、理事になる人間を集めてNPOをつくり、貧困家庭向けの低金利業が立ち上がるまで、やり手ビジネスマンのように一生懸命働き、なんとか事業は軌道に乗り出しました。
「ふー、さすがに、つかれたわ。でも、不思議ね。ねえ、王子、こんなに疲労困憊して、しかも寒いのに、なんだかカラダがポカポカするわ」
「それはな、おまえがいいことをして、お礼を言われるのになれてないからさ」

 しばらくたったある日、王子はまた、ツバメにたのみました。
「おれの目からサファイアを一つ取り出して、才能のある貧しい若者に運んでやってくれないか」
「わるいけど王子、あたし、渡り鳥だし、そろそろ出発しないと、暖かい国に行きそびれちゃって、凍え死ぬわ」
「そうか、すまん。これまで、いろいろありがとな」
「・・・うん」
 しかしツバメは王子の願いを放っては置けず、サファイアをお金に換えて、それで芸術振興基金として公益信託をつくり、生活のために芸術活動が思うようにできない若い芸術家を助ける仕組みをつくりました。まだ書き上がっていない作品を「担保」の一種として生活資金を借りられるようにしたのです。つまり返済は作品を完成させることです。基金はあちこちから芸術振興に使って欲しいという寄付金を厚め、こうして若手芸術家をプロデュースし育てる事業を立ち上げました。
 王子が目にしたあの若者も、支援が受けられるようになりました。
「これでパンが買える。作品も書きあげられるぞ」
 そしてツバメは、今度こそ旅に出る決心をし、王子にお別れをいいにいきました。
 「芸術家支援もなんとか軌道に乗ったわ。王子、これからあたしは、先に仲間のいるエジプトへ出発するわ。エジプトは暖かかだけど、この町はあたしには寒すぎるみたいだから」
 けれど、王子はたのむのでした。
「最後に頼みたいことがある。あそこでマッチ売りの女の子が泣いている。お金をかせがないとお父さんにぶたれるのに、マッチを全部落としてしまったんだ。だから、残ったサファイアをあげてほしい」
「ちょっと待ちなさい! それだと、あんたの目が、見えなくなるわ!」
「構わん。あの子がしあわせになれるのなら」
 人のしあわせのために、自分の目をなくした王子を見て、ツバメは決心しました。
「王子、ちょっと旅立つのが遅すぎたみたい。これから一生懸命、南へ飛んでも冬に追いつかれてしまうわ。だからずっとここにいて、なくなったあんたの目のかわりをしてあげる」
「すまない」
 ツバメは町じゅうを飛び回り、貧しい人たちの暮らしを見ては、それを王子に話して聞かせました。
「俺のからだについている金を、全部はがして、貧しい人たちに分けてあげてほしいんだ」
 ツバメは、王子のいいつけどおりにしました。

 空から雪の華が舞い落ちてきました。
 とうとう、本当の冬がきたのです。
 寒さによわいツバメは、こごえて動けなくなりました。
「どうやら、あたしもこれまでみたいね。世界中を飛び回っていろんなものを見聞きしたけど、この町であんたとやったことは、どれもみんな楽しかったわ。最後にひとつだけ、あたしの願いを聞いてくれる?」
「ああ、いいとも」
 ツバメは最後の力を振り絞って王子の足下から飛び立ち、キスをすると、力つきて死んでしまいました。
 パチン!
 そしてその瞬間、王子の心臓は、寒さと悲しみのたえかねて、はじけてしまいました。

 つぎの朝、町の人たちは、王子の像がすっかりきたなくなっているのに気づきました。
「美しくない王子なんか、必要ない。溶かして銅貨にでもしてしまおう」
 ところがふしぎなことに、王子の心臓だけは、どんなにしても溶けませんでした。
 しかたがないので心臓だけは、そばで死んでいたツバメといっしょにすてられました。

 しばらくたって神様と天使が、その町に通りかかりました。
「なんとすばらしい町じゃないか。貧しい者たちは、自分で働いて豊かになれるように、最初の手助けが貸し与えられる。若く貧乏な芸術家は、お金の心配をしないで作品に打ち込める。だが、町の誰も、そんな仕組みを作ったのが誰か知らないようだ」
と言って神様は、天使に命じました。
 「お前はこの謎を解いて、この町をこんなにすばらしくしたものを、探して持っておいで」
 神さまにいいつけられて、天使が運んだのは、王子の心臓とツバメの羽でした。
 神さまはうなずきました。
「よくやった。これこそが、この町でいちばん美しいものだ。この2人を天国にすまわせよう。きっと、しあわせに暮らせるように」

〜おしまい〜















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