ハルヒと親父 @ wiki

7月27日 スイカの日

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haruhioyaji

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○7月27日 スイカの日
 スイカの縦縞模様を綱にたとえ、27を「つ(2)な(7)」(綱)と読む語呂合わせから、記念日に定められました。


ハルヒ
バイト?急な話ね。
キョン
ああ、なんでも予定してた奴のうち一人が、急な腹痛でダウンしたとかで。この3日間の代打でいいそうだ。
ハルヒ
で、なにやるの?
キョン
スイカ泥棒の番人だ。
ハルヒ
はあ?
キョン
夜中じゅうスイカ畑を見張って、昼間は眠る。3食昼寝付きで、スイカは食い放題だそうだ。
ハルヒ
なによ、そのゆるみきった仕事内容は?
キョン
自分で言うのもなんだが、おれにぴったりだろ?
ハルヒ
ぴったりすぎるわ。……これは、なんかの罠ね。
キョン
なんの罠だ。……って、まさか、おまえ?
ハルヒ
当然ついて行くわよ。
キョン
待て待て。どこの世界に、スイカ泥棒の番に彼女連れて行く奴がいる?
ハルヒ
本当に凶悪なスイカ泥棒がいるなら、あたしの方が戦力になるわ。
キョン
どうやったら凶悪なスイカ泥棒になれるか、教えてくれ。
ハルヒ
おいしそうな順にスイカを根こそぎ食べて行くのよ!
キョン
それは、単なる食いしん坊のスイカ泥棒だ。そんな奴とお前を対峙させたら、スイカ早食い合戦になって、スイカ畑は未曾有の被害にあうと思うぞ。
ハルヒ
ううー。
キョン
うなるな。お土産にスイカ持って帰ってくるから、大人しく待ってろ、な。
ハルヒ
そういわれて、あたしが大人しく待ってたことがあったかしら。
キョン
腰に手をあてて胸はって何を威張ってんだ。……わかった。時間がないから、とにかく現地に行くぞ。向こうで断られたら、大人しく帰れよ。
ハルヒ
平気よ。大船に乗ったつもりでいなさい、キョン!

ハルヒ
夜だってのに、結構蒸すわね。
キョン
そうだな。……ほれ。
ハルヒ
ひゃっ。冷たい、何すんのよ!
キョン
井戸水で冷やしといたタオルだ。
ハルヒ
なんで、そういうつまんないとこばかり、気がきくのかしらね。
キョン
大きなお世話だ。
ハルヒ
ほんとにスイカ泥棒なんているのかしら?
キョン
ここの畑はまだやられてないらしいがな。隣町では、夜中にトラックで乗りつけてきて、その辺のスイカを根こそぎ積み込んで逃げたのがいたらしい。
ハルヒ
なんてやつら! でも、そんな連中相手に、1時間毎2人で見回りだけで、対抗できるの?
キョン
さあな。被害は隣町までやってきたけど、どこまで備えていいか分からん。なにもしない訳にも行かないから、見張りぐらいつけるか、というところなんだろう。
ハルヒ
いい加減というか、おおらかというか。
キョン
ハルヒ!
ハルヒ
ちょ、ちょっとエロキョン、いきなり、こんなところで!
キョン
ちがう! お約束だが、現れたらしいぞ。やっぱり、はずれくじピッカーだな、おれたち。
ハルヒ
な、期待、じゃない! びっくりするじゃないの!! ……ほんとに来たの?
キョン
こんな時間にわざわざヘッドライト消して、ノロノロ走ってくるトラックは、それだけで訳ありだろ。
ハルヒ
どうするの?
キョン
いま、メールを入れた。おっつけ応援が来るだろう。
ハルヒ
大勢がどやどや着たら、逃げられちゃうわよ。……あたしに考えがあるわ。
キョン
いま、嫌な考えがアタマをよぎったぞ。
ハルヒ
よくわかったわね。さすがキョンだわ。
キョン
まだ、なにも言ってない。
ハルヒ
進んでく方向があたしと一緒、ってことは、あたしと同じ考えってことよ。
キョン
残念ながらそうらしいが、おれは本来、そういう度胸を欠いてる事なかれ主義者だ。
ハルヒ
ちょっと顔貸しなさい。度胸を注入したげるから。
キョン
んんんーーーん!!
ハルヒ
(静かにする!気付かれたら、どうするのよ!?)
キョン
(そしたら、続きをやろう)
ハルヒ
(エロキョン。ま、ヒーローになれたら考えなくもないわ。さあ、運転席を占拠するわよ!)
キョン
(やれやれ、やっぱりかよ)

 俺たちは、一応の護身用として持たされた金属バットと野球のヘルメットで装備していた。
 トラックがやって来る道の脇に潜み、まずはヘルメットをボンネットとフロントガラスにぶつけるように投げる。
 ガン、ガンという音に驚き、急ブレーキを踏む、スイカ泥棒ドライバー(推定)。
 おれはトラックの前に飛び出して、金属バットでトラックの前面をガンガン叩く。最近はトラックでもエアバッグを装備してるから、うまく行けば、衝突の衝撃と勘違いさせて、エアバッグを作動、数秒間は運転席を使用不能にできる。その隙に、ハルヒが中の二人を失神させて外へ放り出し、トラックごと乗っ取ろうという、実に荒っぽい作戦だ。打ち合わせ抜きなのがすごい。おれの穏当な思考回路もハルヒズムに犯されつつあるのか? なにしろ毎日毎晩「度胸」を注入されてるからな。
「キョン。速く!」
ハルヒの呼び声に、右側のドアから乗り込み、ギアを入れ、クラッチをはげしめに繋いで発車させる。荷台には一杯のスイカ泥棒s(推定)を乗っけてのトラック奪取だ。ちょっとは荒っぽくないと、運転席の天井に取り付いて、フロントガラスを蹴破るかもしれんから な。あー、ほんと、悪いカーチェイスものの見過ぎだぞ。
 なれない畑の夜の道を運転するのに精一杯なおれから携帯を奪い、ハルヒが現状を手短かに連絡する。
「なんだって?」
「橋の上なら逃げにくいから、○○橋に警察もみんないるって」
「道順は?」
そんな橋、覚えてないぞ。
「まかせて。ナビゲーションするから」
飛び降りて逃げられないように、おれなりに最高速度で走っているが、辺りは真っ暗で、道の上にいるのか、それ以外なのか、そもそも舗装だってしてないところが多くて、その度トラックと荷台の連中は浮かんでは沈みする。おれなら絶対車酔いだな。その上、右だ、左だと、せわしないハルヒのナビは、さらに横揺れまでも加えてくれる。
 前方に、こちらを照らすライトが見えた。パトカーだ。周りに人も大勢いる。
「ハルヒ、橋を渡って真ん中に止めれば良いんだな」
「そうよ、がんばって!」
 そのコトバ、後ろの荷台の連中にも言ってやってくれ。
 ギリギリまでアクセルを踏み、ブレーキを踏み込む。ロック寸前で離しては踏み,離しては踏みしながら、橋の上に乗った途端、サイド・ブレーキを引き、わざと車輪をロックさせ、スピンもどきで止まる。
 「あー、おもしろかった。あんた、結構やるわね」
「もう二度とやらん」
わらわらと警官や畑の人たちがトラックを取り囲んで、御用。ハルヒが運転席奪取のために蹴り出した二人も、無事捕まったそうだ。

 その後?
 のんびりした仕事が続くはずだったバイト仲間には少々恨まれたが、それは畑の持ち主がボーナスと称して大量のスイカを渡すことで、丸く納めたらしい。
 俺たちにも、特別ボーナスが出た。トラック一杯のスイカ。うちとハルヒの両方の家、団員、準団員にも配ったが、その程度ではもちろん、あまりに余る。名誉顧問はバカンス中で、仕方なしに俺たちは、にわかスイカ屋となり、トラックの中身を売ることにした。
 どこで?
 近所はやめて、最寄りの海水浴場へ繰り出して、だ。スイカ割り用、食用と飛ぶように売れたさ。
 帰りは、「度胸」注入の続きに寄り道したが(なにしろバイトの予定はあと2日あったんだ)、そんなことまで報告することはないよな。

 察してくれ。
















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