ハルヒと親父 @ wiki

できちゃった 外伝ー教材仁義

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haruhioyaji

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オヤジ
母さん、今ちょっといいか?
ハル母
ええ。なんですか?
オヤジ
南朝・梁(502 - 549年)の武帝が、周興嗣に作らせた千字文(せんじもん)というのがあるだろ。東アジアじゃ各地で子供に漢字を教える初級テキストになった長詩だ。
ハル母
敦煌でも手本や習字した断片が出土したそうですね。日本でも寺子屋で使ってたのかしら。
オヤジ
ああ。だが今の人間には少々難しいから、石渡明という人が、小学校学年別漢字配当表にある字を使って現代っ子向けにつくった「平成千字文」というのがあるんだ。それを筆で書いてみた。あいつらに送ろうかと思ってな。
ハル母
相変わらず、いい字ですね。王羲之とまではいかなくても。
オヤジ
あっちは空前絶後の書聖、こっちは親父の手習いだ。
ハル母
アカザキさんとマサカドさんが「イメージと違う」と言ってらしたわ。誰も読めないような筆跡にちがいないと思ってたのに、って。
オヤジ
あいつら、おぼえてろ。
ハル母
あら、こっちはプリント。薄墨で書いてあるのね。
オヤジ
最初のうちは、なぞって書く。どんどん薄くなって、そのうちなくなる。そのころには自分で書けるようになってるという訳だ。算数のプリントなんかもそうしといた方がいい。学習理論でいうErrorless Discrimination Learningの応用なんだが、日本じゃ○○式とかが商売にしてるけどな。
ハル母
これで漢字も覚えちゃうわね。小さい頃、海外で暮らすと苦手意識を持つ人が少なくないというけど。
オヤジ
母さんは、今回はなんだ?
ハル母
いつものですよ。ピアノと歌にのせて、世界の挨拶と簡単な言い回しを覚えるmp3。Carolyn Grahamという人の Jazz Chantsってシリーズの真似だけど。
オヤジ
あれのSmall Talk Jazz: More ChantsとGrammarchantsはいいな。英会話と英文法のミニマム・セットだ。苦手な奴によくやらせてる。しかし、母さんの引き語りとは、ぜいたくだな。
ハル母
一応、7カ国語分作ったんですけど。フランス語と英語と中国語とイタリア語とアラビア語とドイツ語とスペイン語と。ギリシア語とラテン語は、あの子たちには、まだ早いと思うの。
オヤジ
そうだな。もう少ししたら、あいつらもいろいろできるようになるから、幅も広がるんだが。次はインド人もびっくりの2桁の九九表を送ろうと思うんだが、どうだろう、母さん?
ハル母
それはいい考えね。……あら、スカイプのアイコンが跳ねてるわ。ハルかしら?

ハルヒ
ちょっと母さん、毎日、うちにお手製《教材》送るの、やめてくれない?
ハル母
あら、不評なの?
ハルヒ
そうじゃないけど
ハル母
母さん、日本に帰って来て、孫たちをみる時間がなくなって暇だから、ついつい何か贈りたいなあと思っちゃうの。モノはかさばるし、そっちに着くまでに時間がかかるから、メールで送れるものになるんだけど。ほら、すぐに反応が欲しいじゃない?
ハルヒ
だから、そういうのは時々でいいの!
ハル母
毎日は、やっぱり量が多かった? もっと欲しい、次は何?ってメールが来るものだから、ついつい。
ハルヒ
どうしてうちの子たちが個人のメアドを持ってるかも謎だけど、まあ楽しみにしてるのは確かよ。でも、そればっかりで、外で友達と遊ぶ時間削ってまで、ってのは問題よ。
ハル母
それはそうね。
オヤジ
じゃあ、こんどは友達と外で遊べる《教材》をつくるか、母さん。
ハル母
それはいいアイデアね、お父さん。
ハルヒ
じゃなくて! 二人ともちょっと過干渉すぎると思うわ。いまどき、孫に夢中のおじいちゃん、おばあちゃんなんて、流行らないわよ。もっと自分たちの人生を楽しみなさい!
オヤジ
愛を注ぐべきものに、時間を費やして何が悪い?
ハルヒ
そういうのは、自分の子供にするものでしょ!
オヤジ
おれたちの子供と言えばおまえだが、おまえは何でも飲み込みが早すぎて、手応えがなかった。太平洋隔てて、メールでやり取りしている方が、いろいろ制約条件があって面白い。
ハルヒ
結局、おもしろがってるだけじゃないの!
オヤジ
面白くって何が悪い。おもしろさは、おれの生命原理(いのちのみなもと)だ。タバコで言えばニコチンだ。
ハルヒ
相変わらず、言ってる比喩がわかんないわよ!
ハル母
まあまあ、二人とも。ハル、研究も忙しいのに、よくやってるわね。ほんと、言った通りに《気合い》でなんとかしちゃうんだから、すごいわ。だから、空いた時間は子供たちと好きに遊びたいわよね。子供たちとの時間を取っちゃってわるかったわ。
ハルヒ
ごめん、母さん。ずっと子供たちの面倒みてもらったのに、わがまま言って。
ハル母
わがまま言われるのも、親の醍醐味のひとつよ。つい躾を考えて厳しくしちゃうけど、ほんとはうれしいの。もうあなたはしつける側なんだから、どんどんわがまま言いなさい。
オヤジ
(おい、母さん、いいのか? 高校生のとき、自転を逆さにしろとか短冊に書いてた娘だぞ)。
ハル母
(大丈夫。それにね)ねえ、ハル。今日はもうひとつ、私たちに報告してくれることがあるんじゃない? それとも母さんの勘違い?
ハルヒ
あ、はい。……あのね、その、また、できちゃったの。
ハル母
はいはい。そんなことじゃないかと、思ってました。じゃあ、しばらくご厄介になりに行くわね。
ハルヒ
厄介だなんて、いつも、すごく助かってるし。
オヤジ
俺はまた逆=単身赴任か。
ハル母
大丈夫。ハルキもハルナも、もう大きいんだから、お父さん、今度はskype先生になれるわよ。
オヤジ
それで、おれが会いに行っても、俺の声がしたらパソコンの画面に声の主を探すようになっちまうんだろうなあ。













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