ハルヒと親父 @ wiki

できちゃった その6(最終回)

最終更新:

haruhioyaji

- view
管理者のみ編集可


1:
 「嫁が臨月だってのに、ダンナを海外に引っ張ってくバカがどこにいんのよ!」
「しかも、それが妊婦の親父だった日には、笑うしかないな」
「笑い事じゃない!! あんた、初孫のことどう思ってんの?」
「目に入れるほど可愛い。だが、おまえのデカ腹ごとじゃどうせ入らん。頑張れ、ハルヒ」
「このクソ親父! そんなにデカくないんだからね!」
「前にも言ったが、いい男は待つってことを知ってるんだ」
「で、肝心のキョンはどこ?」
「あいつ、残業。いい奴だよな」
「母さん、こいつ、やっちゃっていい? 2プラス、1マイナスでおつりがくるわ」
「お父さん……」
「といってもな。何故だか先方がキョンを気に入ってる。キョンもやる気になってる。なんだかサラリーマンみたいだろ、高校生バイトなのに。少々うますぎる話なんでな、俺もついてくつもりなんだが」
「当たり前よ!最悪、キョンだけでも生きて帰しなさい。絶対よ!」
「キョンが帰ってくりゃ最悪どころか最高(ベスト)じゃねえか。よくばりめ」
「お父さん、ツンですよ、ツン」
「あーもう、二人とも静かにしなさい!」
「はっきり言って騒いでるのはお前だけだぞ、バカ娘」

 といったような話が涼宮家で繰り広げられてる頃、俺は資料室とコピー室と通称「親父部屋」(親父さんのオフィス)を行ったり来たりしながら、飛行機に搭乗不能なほど莫大な資料を、電子化したりしてなんとか持って行けるよう悪戦苦闘していた。
 「遅くまでご苦労様、キョン君」
 いつかの若い社員その1のマサカドさんだ。ハーバード大学のロー・スクールで交渉・調停を専門に学んできた若手のホープ。親父さんの部屋の前でまちぼうけを食わされたあの一件以来、時々話をするようになった。
「いや、単に段取りが悪いだけで」
「謙遜じゃないのは見ればわかるけど、君がやってるのは、ここじゃ親父さん以外には誰もやれないようなことなんだよ。いや、親父さんにだって出来ないこともあるな」
「ははは」
「真面目な話、キョン君、君は将来どうするつもりだい?」
「ごく近い将来は決まってるんですが。あの、いろいろ事情がありまして」
「ああ、親父さんから聞いたよ。だが聞きたいのは……というより、君に言いたいのは、親父さんや俺たちがやってるような仕事をする気はないのか、ってことなんだ。……実は、親父さんから、『キョンに粉かけたやつは殺す』って回状が社内メールで回ってて、お偉方も声がかけられないらしいんだけど」
やれやれ。大丈夫なのか、この会社は?
「買いかぶりですよ。俺は親父さん型小型台風みたいな奴とくされ縁というか深い付き合いというか、とにかくあの手合いに慣れてるだけです」
「僕から見ると、ちょっとした英才教育に見える。うらやましいのが半分、かわいそうが半分」
「ほら、やっぱり」
「彼女なら、うらやましい100%だろうな」
彼女とは、もう一人の若手のホープ、(カリフォルニア大学)バークレー校で地域計画の博士号を、日本に帰って都市計画の技術士を取ったアカザキさんのことだ。
「マサカドさん、親父さんの大学での専攻、知ってますか?」
「いや。それは価値ある情報だが、見返りが用意できるかな」
「主専攻は歴史で、副専攻は美術だそうです。歴史は人間の愚行を知って笑える。美術は女にモテそうだし、最悪、裸の女を見て過ごせる、だとか」
「親父さんらしい。そのネタでアカザキとランチと思ってたんだが」
なんとなれば、アカザキさんは親父さんを崇拝している(マサカド氏談)だからだそうで。つまりマサカド氏はアカザキさんを「崇拝」してるってことなんだが。
「すみません。あまりにもどうしようもないネタでしたね」
「いや、まて、ディナーになら使えるかも」
大人の恋愛はよくわからんな。

“やめとけとー、いうべきかー、どうせ徒労だろー”

「キョン君、その着うた、自前?」
「いやあ、あははは………ハルヒ?」
「そうよ、あんたの嫁の涼宮ハルヒですよお」
うわ、声が座ってる。目がすわってるのが後頭葉の視覚野に浮かぶ。
「今何時だと思ってんの! あと5分で馬車がカボチャに変わるわよ! どうすんの、今日の分の『あたしたちの時間』は!?」
「うわ、やべ」
「巡航ミサイルで帰ってきなさい。電線にひっかからないように。わかった!?」
わかるか、わかって、なおかつ、出来る奴なんているのか?
「わ、わかった。なんとかする」
プチン。
「お、奥さん?」
「俺の18の誕生日が来るまでは仮免夫婦ですが」
「タクシーを使おう。僕にも責任の一端があるから、相乗りで行こう」
ああ、確かに今のハルヒの怒声は、男たちをうろたえさせるにあまりある威力を秘めていたな。やや免疫がついているオレがそうだから、マサカド氏がうろたえるのも無理はない。


 涼宮家にたどり着いたのは午前1時。今日は自宅に帰れそうにないな。
 ハルヒは当然、待っていた。玄関で。正座して。
「ハルヒ、お前な、体冷やしたら……」
「お・か・え・り・な・さ・い」
「……はい。た、ただいま、……帰りました」
「話があるんだけど」
「分かった。居間へ行こう」

 「あんたがやる気になってることを、あたしが止める道理はないわ。でもね、約束は約束よ」
「すまなかった」
「はっきり言うわ。あんたが何かに夢中になってるのは見ててうれしいけど、一方ですごく嫌。『あんた、仕事仕事っていうけど、高校生でしょ、受験でしょ、何勘違いしてんの』だとか、嫌な言葉で頭が一杯になるわ」
「すまん」
「そんなこと、言いたくもないのに。……言っちゃったけど」
 目に何かをためてまで、怒りを押し殺すなんてらしくないことを、オレはこいつにさせちまってるのか。
「ハルヒ。今から訳の分からんことを言うぞ。……オレをなぐれ」
「はあ?どこの走れメロスよ?セリヌンティウスよ?」
「とにかく、こぶし……は痛めるといかんから、掌底で来い」
「あんたを痛めつけてすっきりするんだったらね、玄関が開いた時点でヒザでもヒジでも叩き込んでるわよ! そういうことじゃないって、どう言ったらわかるの!」
「そういうことじゃないのは、わかってる」
 ハルヒは憤然として立ち上がった。
「あんたがわかってることくらい、わかってるわよ!」
 コツン、とゲンコツが頭に降って来た。とても軽い。でも、当たった訳じゃない場所が、とても痛い。
「ちゃんと無事に帰ってくるって、約束して」
「約束する」
 ハルヒは、ちょっと無理やりに、満足げな笑みを浮かべた。
「よろしい」

 俺も立ち上がり、ハルヒの横に立って手をつなぐ。寝室までの短い距離なんだが。
「いってらっしゃい」
途中でハルヒが前を向いたまま、つぶやくように言った。
「いってきます」
俺もつぶやくように言葉を返した。


2:

 「おいおい、なんなんだ、この見送りは。俺達は出征でもするのか?」
 出発の日の空港には、SOS団副団長以下名誉顧問はおろか反強制的準団員まで勢ぞろいだった。そんなに居ても、セリフ全員分入らないぞ。多分。
「こんな年寄りと若いもんを、戦場に行かせるようになったら、そりゃ戦争も負けもするさ」
 なんとなれば、親父さんがその分、しゃべりつづけるからだ。縁起でもない。
「『あたしは行けないから、その分見送りは盛大に頼む』と団長直々のご命令でして」
今日も「体操のお兄さん」のような笑顔がうっとうしいな、古泉。それから妹よ、後ろでぴょんぴょんしてても、顔が入らないぞ。谷口に前、ゆずってもらえ。
「何が行けない、だ。出掛けにこいつら、しっかりチューしてたぞ」
うわ、あまりに予想どおりの、親父こうげき。キョンは、メンタル・ヘルスを2ポイント失った。
「わーい、ちゅー、ちゅー」
いや、そこは飛び跳ねなくても、兄は一向にかまわんぞ。朝比奈さんに手をつないでてもらいなさい。兄が許す。
「いやー、その歳で海外出張とは、末恐ろしいっさー。未来のカーネギーか、ロックフェラーか、こりゃ前途洋々だね、キョン君」
鶴屋さん、今回、セリフ、それっきりなんですよね。ありがとうございます。
「気をつけて、無事に帰ってきて下さい」
ありがとうございます、朝比奈さん。俺はもう人のものですが、あなたの言葉は甘露のように心身にしみわたりますよ。
「……」
長門、来てくれただけで俺はうれしいぞ。
「みんな友達かい。すごいなあ」
「キョン君、マサカドが言ったこと、考えといてね」
マサカドさんに、アカザキさんまで。過大な期待は少々重いが、この二人には多分これからも世話になるんだろう。
「はい」 期待に応えるとは言えないが、頑張るぐらいはしないといけない気持ちになってくる。
「おい、キョン。ぼちぼち行くか?」
いつもなら搭乗時間の〆切りぎりぎりまで腰をあげない親父さんがそう言って立ちあった。
「あ、はい」
「晴れがましいのは苦手だ」
本人は時々無駄なくらい派手なのに。つまり照れ屋なのだ、この人も。
「それぞれ、あと頼むぞ。じゃあ、言ってくる」
俺はみんなに軽く手を降り、その大きな背中を追いながら、親父さんに続いてゲートへ向かった。


 「朝比奈さん、少しよろしいですか?」
「は、はいー!」
「気になることをおっしゃってましたね。『気をつけて、無事に帰ってきて下さい』と」
「は、はなむけ、と言うんですか?旅立つ人を送り出す言葉です」
「ええ。昔の旅は、現在の我々が想像し難いほど、危険の多いものでしたから。旅に出るイコール今生の別れとなる可能性が高いことから、そうした儀式が行われました。……何か、お二人の身に危惧すべき事態が生じると考えていいんでしょうか?」
「す、すみません。詳しくは私もよくは知らなくて。ただ……大丈夫です、二人は必ず、必ず、帰ってきます!」
「規定事項……という奴ですか。長門さん?」
「現在のわたしは、過去未来を問わずいかなる時空連続体に存在する自分の異時間同位体と同期することが不可能。そうしたのはわたしの意思。未来から情報を受け取ることはできない。しかし……正確な表現ではないが、《嫌な予感》がする」
「なるほど。彼なら言いそうな言葉です」
「私が現在アクセスできる情報のうち、ある特定の事項についてのみ、急速に減少ないし歪曲していくのが認められる。複数の干渉によって引き起されたものである可能性が高い」
「それは何についての情報ですか?」
「NH585x便の飛行経路」
「お二人の乗った便です!」
「……航空機事故の可能性ですか?」
「ハイジャックやテロの可能性も否定できない。NH585x便が目的地に到着する可能性は、時間経過と共に低下し続けている。機内をスキャンしているが、これにも原因不明の干渉が加えられている」
「お二人の位置と、あとバイタル・サインをモニタすることは?」
「可能。すでに行っている」
「事故や何かがが起こったとしても、涼宮さんがあのお二人を助けないとはまず考えられませんが、しかし、今、彼女は出産を控えた身です。非常にタイミングが悪い。両面に同時に対処することにでもなれば、万一のケースも考えられます。そしてどちらを失うことがあっても、……最悪の事態を想定せざるを得ませんね」
「あ、あの、こんなことしか言えなくて本当にすみません、ば、万全の対策を、お願いします。そうすれば、きっと……」
「……分かりました。長門さんは、引き続きお二人のモニタリングをお願いできますか」
「了解した」
「事故やハイジャックなど生じた場合を想定して、万全の配備を行うよう、ぼくも機関と掛け合います。朝比奈さん、あなたは涼宮さんに付いててあげてください。彼がこれだけの期間不在になることは最近なかった。それだけでもナーバスになっておられます。何かあれば逐一連絡しますので」
「わ、わかりました。どうか、よろしくお願いします」


3:

 機体が雨雲に2度入ったのが、退屈しのぎになるほど、途中までは快適で退屈な旅だった。

 航路は目的地まであとわずかを残すばかりだと、それまで映画をやってた座席に着いた液晶画面が教えてくれていた。
 そして、それは到着時刻が若干早まるというアナウンスの後に起こった。

 機内を閃光が包み、続いて叩きつけるような衝撃が襲った。
 光が消え、音が消え、そして天地が消えた。
 視力も聴力も回復しないまま、もがきながら手を伸ばしていると、しっかりした手が俺の手首をつかみ、それから酸素マスクが口に押し当てられた。
 少しだけ我に帰る。上に乗っかっているのは、間違いようがない、親父さんだ。
 ものすごいGがでたらめな方向にかかり、やがて片方にかかる時間が長くなっていく。
 親父さんが骨に伝わるように、俺の頭蓋骨に向けて話す。
「旋回してるが機首はもう持ちあがらん。落ちるぞ。歯は食いしばってろ。全身の力は抜いとけ」
「親父さん!」
「黙ってろ。今度喋ったら、舌抜くぞ」


「かあさん! かあさん! かあさん!」
「どうしたの、ハル? 」
「飛行機が、ひどい落ち方をして!!……。これは夢じゃないの! かあさん、どうしよう? どうしよう!?」
「落ちついて、ハル。あなたの見た通りのこと話して。怖いことかもしれないけど、大丈夫、大丈夫よ」
「う、うん。 飛行機の後の方が突然爆発して……尾翼が効かなくなって、操縦できなくなって、あっというまに……。あたし、なんとかしようとしたんだけど、飛行機を水平に戻すのが精一杯で! キョン!お父さん! 二人をなんとか守ろうとしたけど、わかんない、わかんないよ、母さん。キョンの方は手応えが有ったけど、お父さんが! ひどい怪我をしたかも。キョンをかばって……あたしが馬鹿なこと言ったばっかりに、……どうして?ねえ、どうして?」
「落ちつきなさい、ハルヒ! ……ハル、あなたの言うとおりなら、二人は大丈夫よ。キョン君は無事みたいだし、お父さんは怪我ぐらいじゃし死なないわ。わたしと約束したんだもの。ハル、あなたは精一杯やったわ。できる限り最高のことを。疲れたでしょ。少し眠りなさい」
「でも!」
「眠りなさい。おなかの二人もそう思うわよね? このあたらしいお母さんを安心させてあげて」


 「大規模な情報フレアを観測した」
「こちらも閉鎖空間の発生を確認しました。何が起きたのです?長門さん」
「涼宮ハルヒの父親たちを乗せた旅客機が墜落した」
「!」
「涼宮ハルヒは、この事態を止めるために力を用いた。しかし彼女の体内に居る2つの有機生命体との力が干渉し合い、彼女が望んだとおりの結果は得られなかった。墜落の原因もまた複合的で複雑。多くの力が関与していると考えるのが妥当」
「それで、二人は?!」
「二人のバイタル・サインは正常の範囲。しかし、涼宮ハルヒの精神と身体にかかる負担を軽減するため、この情報を至急彼女に伝えてもらいたい。方法はあなたに任せる」
「分かりました。そちらはまかせて下さい」
「二人の救援も急いで欲しい。彼を涼宮ハルヒにできるだけ早く会わせる必要がある。遅れればそれだけ深刻な事態となる可能性が増す。また彼女の父は内臓に深刻なダメージを受けている。」
「了解です。彼らのいる場所を教えてください」
「今、国際地球基準座標系で彼らの現在位置を伝える」


 「リスボン地震に遭遇したゲーテの気分か? 『神はどこだ?どこで、なにをしてやがる?』。生きてるのは、俺とお前だけだ、キョン」
 親父さんもまた、どこか痛めているのだろう。いつもの半分ぐらいの速度で、ゆっくり歩いてくる。
 「ほら、燃え残った毛布に機内食、今もって来たので全部だ。3日間はご馳走責めだな。1週間もサバイバルすれば、誰かが見つけに来るだろう」
「すいません」
けが人に働かせて、俺はほうけたまま座りこんで何をやってるんだ?
「ん? ああ、機内の生死確認のことか? 勝手にやったことだ。慣れない奴にやらして、トラウマになっても面白くない」
「親父さんはどこかで?」
「まあな。都市じゃないところで仕事してると、死はどっか向こうの方から飛んでくるんじゃなくて、いつも自分のすぐ隣にいるのが分かる。それだけだ」
「……」
「キョン、このワインを飲み干すのを手伝え。刃物持ちこみ禁止ってのは考えもんだな。ひげを剃るにも事欠く。飲み終えたら、瓶を丁寧に割って、破片を剃刀がわりにするんだ。小さい頃、『ドリトル先生』ってシリーズを読まなかったか?井伏鱒二が訳してるんだが」
「……」
「お前が側に居ても、居なくても、ガキは生まれてくる」
「……はい」
「母さんがついてる。お前の家族だって駆けつけてくれる。それにな……」
「……」
「俺達が生きてることは、あいつには、……ハルヒは多分、分かってると思うぞ。なんとなくだけどな」
「!おやじさん、ひょっとして?」
「ん、なんだ?」
「いえ、あの……」
「まあ、食え。それから飲め。食うものがなくなったら、狩りのやり方を教えてやる」


4:
 「古泉と申します。夜分に申し訳ありません。緊急の事態だと思い、電話いたしました。お母様ですか?」
「ありがとう古泉君。ハルヒならさっきまで興奮していたけれど、落ちつかせました」
「そうですか。ええ、お二人が乗った旅客機が事故に。いえ、二人は無事です。確実な情報です。救助の者もすでに現地へ発っています。追ってマスコミ報道や旅行会社からの連絡もあるかと思いますが、今のが最も確実で最新の情報です」
「わかりました。ハルヒにも伝えます」
「ただ、無事と申し上げましたが、親父さん、もといお父様の方は怪我をしておられると思われます。救助ヘリには医師も乗っていますが、最悪、最寄りの医療機関で手術が必要かもしれません」
「承知しました。今はハルヒに付いていなくてはなりません。主人をどうぞよろしくお願い致します」
「もちろんです。また何か分かればご連絡します」


 「親父さん……。食べないんですか?」
「サバイバル中に言うことじゃないが、ダイエット中だ。……にらむなよ。実は腹に穴があいてるらしい。止血はしたが、食欲まではもどらん。……今しか言う機会がないようだ。気付いてるんだろうが、俺の口から話しておく」
「……はい」
「おれはこの手の事故には少々慣れている。だから、少しは手際がいい。今回みたいに『奇跡的』に助かったことが何度かあってな」
「……」
「俺は疑り深いから、調べ尽くして考えた。どの事故も、俺が助かる可能性はゼロに近かった。さらに言えば、俺が助かったのなら、もっと別の奴の方が助かる可能性の方が高かった。墜落時の速度や角度、機体に加わった衝撃、機体の損傷、何度かシミュレーションもやってみたが、どう考えても俺が助かるのはおかしい、と確信した」

「家に帰りついて、バカ娘の顔を見たとき、わかった。どうやってかは俺の理解を超えてるが、まちがいない、こいつがやったんだ、とな。そして、どうやってそれを忘れさせるかに、今度は頭をひねった」
「忘れさせるって?」
「あのバカはバカだけあって、まだ気付いてなかったからな。だがいずれは気付く。自分がやったことは、父親の命を奇跡的に救ったのと同時に、何百人という人間の命を救わなかったんだ、ってことにな」
「でも、それは!」
「あのバカはエゴイストになりきれんお人好しだ。ボートは一艘、遭難者は二人ってパズルがあるな。あいつは考えなしに自分が海に飛び込んで、周りをやきもきさせるタイプだ。俺たちなら、二人とも海に浸かってボートは浮き代わりに使うだろう。水に入った分、自分の体重は浮力でマシになるからな。頭が固くてな、そういう考え方ができん」
「……」
「良心の呵責とやらが首をもたげてくる前に、緊急避難的に忘れさせることにした。いかに自分は普通でありきたりの、とるに足らない存在だと思い知らせることで、な」
「じゃあ野球場、五万分の一の存在の話って!……でも、それはハルヒが小学生の六年生の時の話じゃ?」
「人の記憶は、つじつまをあわせようとする性質があってな、それを使えば操作することは、意外と簡単なんだ。記憶研究でエリザベス・ロスタフって心理学者がいるが、授業中に簡単なデモンストレーションをやってみせる。単純なもんだ。催眠なんて小細工もいらん。小学生の六年生の頃あった出来事で挟んで、一連のつながりをでっちあげられればな」
「……そんな、あいつは、それを」
「俺の大失策だ。バカな呪いをかけて娘のローティーン時代を奪っちまった。なんと責められようと言葉がない。『緊急避難』ってのは、ひどい言い訳だ。本当は俺自身が、何百人の人が死んで自分だけが生き残ったことに耐えきれなかったんだ。封印したかったのは、俺の方だ」


5:

 「古泉、はやく乗りなさい」
「森さんですか? 新川さんは?」
「第3海兵遠征隊に協力を要請した。先に行かせている」
「米軍ですか?」
「あらゆる手段を講じろと進言したのはおまえだ。陸海空軍の作戦行動には議会の承認が必要だが、海兵隊なら大統領の命令だけで動ける。いずれにしろ表ざたにはできんが。おまえが指示した地点へ、現在地球で最も速い手段で、お前を送る手はずになっている」
「ええ。事態は一刻を争います。感謝します」
「そういうのは世界を救ってからにしてくれ」


 「……キョン、ちょっと顔を近づけて、俺の右目を見てみろ」
「え?」
「見えてない。ガラス玉だ、よく出来てるだろ。あいつにバレないようにするには、一苦労だ。ときどき無駄に勘がいいからな」
親父さんは、ハルヒの左足の蹴りを笑って受けていた。受けたのではなく、避けられなかったのか。
「引退してからはタレントになったが、タコ八郎ってボクサーがいてな。とっくに目はみえてなかったんだが、そのころの視力検査なんていい加減なもんだ。棒でさした輪っかのどっちが開いてるかを言えばいい。奴はそれを全部暗記してた。
試合?もちろん相手のパンチなんざ避けられない。全部受ける。そして言う。『効かねえな』ってな。そういって相手を震え上がらせた。もうボクシングの域を越えてる」
「その目も事故で、なんですか?」
「いつだったかは忘れちまった。本当なら、鼻から上がふっ飛んでたんだろうな。あいつから、俺を助けたトンデモ・パワーを忘れさせるには、事故そのものを忘れさせる必要がある。俺が怪我をしてちゃまずいんだ。ヒーローはつらいぜ、キョン。嘘の上塗りを続けなきゃならん」
「……」
「こら、うつむくな。俺とお前が生き残って、数百人が死んだ。そんな奇跡が何故起こったかも、俺達は知っている。これは遺言になると思うから……怒るな、黙って聞いてくれ……バカな親父がかけた呪いは、ハルヒとおまえらとで解いちまった。おまえは、世界とあいつを秤にかけたことがあるだろう。俺には逆立ちしてもできん。……ハルヒを助けてやってくれ。大方、全員助けられなかったのを、うじうじ悩んでる頃だ。うぬぼれるなと怒鳴りつけてやりたいところだが、お前さんの方がうまくやるだろう。……おいキョン、こんなことを人に頼むなんてな、親として、こんなに情けないことも、こんなにうれしいことも、他に思いつけんぞ!」


「お母様!涼宮さんが!」
「前駆陣痛です。大丈夫。うまくいってる証拠よ」
「……母さん、ごめん。うまく……集中できなくて。せっかく教えてもらったのに。痛みが……うまく逃がせない」
「ハル、集中する必要はないのよ。存分に気を散らしなさい。キョン君のこと、赤ちゃんのこと、お父さんのこと、SOS団のみんなのこと、たくさんのことを、みんな考えなさい。あなたの耳に入る一番遠い音はどれ?あなたのどちらの頬に風が当たってる? みんな一度に感じてみなさい……」
「あ、あの、お母様。救急車を、呼んだほうがいいですか?」
「そうね。陣痛の間隔がだんだん短くなってくるから、10分おきになったら、病院に連絡を入れてから、タクシーを呼びましょう。みくるさん、お願いできる?」
「は、はい!」
「わたしは、ハルヒに最後の稽古をつけてあげないといけないの。お願いします」


「うるさいな、この音は何だ?」
「親父さん、あれ?」
「ハリアーだあ? どこの海兵隊だ? ヘリで十分だろ」
ロールスロイス社のエンジンが、ものすごい爆音と風を生んでその重量を支え、ハリアー攻撃機を俺達の前に垂直に着陸させた。
「墜落機から十分離れておられたので、着陸場所を簡単に見つけることができて助かりました」
「あんなジェット燃料くさいところで焚き火ができるか」
「古泉!?」
「遅くなりましたが、これでも精一杯で。ええ、F−18FスーパーホーネットとTAV−8Bハリアー2を乗り継ぎましたよ。事態は一刻を争います。すみませんが、彼を先に涼宮さんのところへ」
「海兵隊が使ってる練習機だろ。あれは二人乗りだ。古泉、おまえさんは?」
「残ります。追ってヘリがやってくる手はずです。負傷者には誰かが付き添うべきでしょう」
「ふう。古泉が代わってくれるそうだ。行ってくれ。さっきのは他言無用だぞ」
「親父さん、《先に》行きます。後から必ず来てください。古泉、頼んだぞ」
「了解しました。あなたの頼みです。今は地球と同じ重みがありますよ」


「母さん、ダメ!助け切れない。爆発が起こって、破片が飛び散って、みんなに、父さんにも! ガードし切れないわ。どうしたらいい? 選んでいいの? 選ばなくちゃいけないの? 助けたいの! みんな助けたいのに!!」
「ハル……。何かを選ぶことはね、他の何かをあきらめるということなの。普段は気付いてないけど、いつだってそう」
「でも! 父さんは、あたしも、母さんも、どちらも諦めなかった。両方とも、選んでくれたわ!なのに、あたし……」
「いいえ。お父さんは、ハル、あなたを選んだの。そして母さんのことは母さんにゆだねたのよ」
「ゆだねるって、あきらめるってことなの?」
「そうね。あまり変わらないわ。お父さんは、母さんを助けることをあきらめた。でもね、ううん、そして母さんを信じてくれたの。それがゆだねるってことなんじゃないかと、母さんは思うわ」
「母さん、あたし、どうしたらいいの?」
「ハル、あなたはもう選んでしまったの。あとは信じて待つしかできない。あなたは、できるかぎりのことはやったわ。大勢の人がなくなって、お父さんも怪我をしたし、キョン君もショックを受けたかもしれない。二人が本当に助かるか、わたしたちのところに帰ってきてくれるかは、二人を信じて待つしかないの。そう、あなたは、まだ待つことができるのよ。それが選んだってことなの。あなたの選択の是非は、それを決めるのは、あなたの力の及ぶところじゃないわ。あなたが選んだ人からお聞きなさい。選ばれたことで何を背負ってしまったか、それでも選択に是と言うのかどうか。あなたのキョン君を信じて、待ちなさい」


6:

「古泉、キョンも、お前が来たその乗り継ぎで帰るのか?」
「副座のがあればF−35になったかもしれません。あれはVTOL機でも音速を越えますから。訓練を受けてない者にはつらいでしょうが、まあ彼なら大丈夫でしょう。それぐらいでないと彼女のナイトはつとまりません」
「吐く言葉までイケメンか。オレを連れて行く天使は、太っちょでオレよりブサイクなのと決めてたんだがなぁ」
「それは死神の仕事だったのでは? 残念ですが、ぼくがお連れできるのは、涼宮さんのところまでです」
「何度も言うようで悪いが、オレも『涼宮さん』だ」
「はい。涼宮ハルヒさん、あなたの娘さんのところまでならお連れできます。ハリアーほど速くありませんが、AH−1Wスーパーコブラが別途、先に出発しているはずです。もう少しで到着するでしょう」
「ヘリも軍用機、か。それで直接、娘に引導を渡させるのか? 趣味が悪いぞ」
「……内蔵の損傷がひどいと聞かされていたのですが、さすがにタフですね」
「あることないことしゃべって気を散らしてるんだ。だが限界だ。これ以上は、恥ずかしくて生きていられん」
「もうすぐです。ほら、プロペラ音が聞こえてきました」
「オレは耳鳴りがする。それとも何かの冗談か? ワーグナーまで聞こえるぞ」
「『ワルキューレの騎行』とは、さすが新川さん、分かっておられる」
「おまえ、『地獄の黙示碌』なんか見てる歳じゃないだろ?」
「実は古い映画を見るのが趣味でして」
「そんな設定、どこにもなかったぞ。死ぬほど気が合いそうにない同好の士だな」
「ヘリにはドクターを乗せてます。輸血と応急処置までは機内で可能ですが、その後は手術の出来る施設へ運びます。麻酔はご入用ですか?」
「鬼か、おまえは? 内臓ってのは痛覚しかないんだぞ。死ぬのが無理なら、せめてゆっくり眠らせろ」
「了解しました。お目覚めは、涼宮ハルヒさんと同じ総合病院でよろしいですね」
「くそったれ。ワーグナーで眠らされるんだ。目覚めの音楽はリクエストさせろ。What a Wonderful World(このすばらしき世界)だ。サッチモ(ルイ・アームストロング)以外は認めんぞ」


 古泉をここまで乗せてきたハリアー2(座席が二つあるTVA−8B訓練機)は、VTOL機(垂直離着陸機)特有の、やり方で垂直に飛び立ち、それから海の方向へ加速した。
 音速の一歩前まで迫れるこの攻撃機は、この度の非軍事的なミッションに合わせて装備をぎりぎりまで軽装化しており、その性能を遺憾なく発揮した。人一人運ぶのには最も贅沢な、しかし飛行場のない場所から人を違う大陸に運ぶには最も迅速な方法というのは、こういうものなんだろう。
 当然、非戦闘員であり、平凡な上にふ抜けがつく一民間人にとって、乗り心地は最高のものとは言い難く(これを知ってりゃ機内食をやけ食いしなかった)、たいしてアクロバットな飛行はなかったにもかかわらず、胃と腸と肝臓と頭の位置が入れ替わったような心地がした。
 古泉がくれたメモにあったように、ニューギニア沖800キロの海上に待機していた、フランクリンだかジェファーソンだかいう空母までハリアー2は1時間足らずで飛んでくれた。ほとんど航続距離ぎりぎりを往復してくれたらしい。空母でF/A−18Fスーパーホーネット(これも座席が二つある)に「乗り換え」、今度はマッハ1.8越えを体験することになった。今回の立役者、第3海兵遠征隊下の第1海兵航空団の第12海兵航空群が駐留する岩国基地(山口県)にはよらず、このうるさい戦闘機を神戸空港へ着陸させた(岩国基地に着いてから、乗りかえると1時間は余計にかかったろう。)。空母からその時間、わずか90分で到着。最後にヘリコプターが神戸空港から阪神高速道路近くの小学校のグランドへの15kmを移動し、これも5分で到着した。墜落現場からしめて2時間半。
 グランドに臨時に設置されたサーチライトに浮かぶシルエットには見覚えがあったが、今日は仕様が違うらしい。皮のドライバーズ・グローブに、ジャケット。顔には大きな偏光グラス。だが見間違えることはない。
「森さん!」
「至急、病院へ向かいます。ご同乗を」
「お願いします。ハルヒは? ハルヒの様子はわかりますか?」
「陣痛が2分ごとになってます。病院ですが、まだ分娩室ではなく、待機中です」
「間に合いますか?」
「合わせます」
 アクセルが踏み込まれ、撃ち出されるように車が走り出した。
「現在、病院までの道は、他の車が入ってこないように封鎖しています。5回曲がった後、
止まったら、そのまま外へ」
 胃袋が口からはみ出そうな激しい横Gの往復ビンタを右左右左右と感じた後、前に放り出
されるようなGを感じて車は止まった。
 「幸運を」
「ありがとうございます」
森さんは、病院の夜間入口に横付けして俺を降ろし、そのまま走り去った。
「キョン君!」
「お義母さん! ハルヒは?」
「今から分娩室よ。キョン君も着替えなきゃいけないけど、その前にハルヒと少し話できる?」
「はい」
「こっちよ」

「ハルヒ!」
「キョン! あんた……ひどい事故だって……よかった」
「ああ。親父さんも大丈夫だ。俺だけ先に行かせてくれた」
「キョン……あたし……」
「ハルヒ、俺たちがどうやって助かったか、こんなに速く俺を送ってくれるために、どれだけの人が力を貸してくれたか、あとでゆっくり話してやる。でも、これだけは先に言わせてくれ。……ハルヒ、約束どおり帰ってきたぞ。おれがどんなにうれしいかわかるか? だから、おまえも必ず帰ってくるんだ。ずっと着いててやるから」
「わかってる。あんたが帰ってきたんだもの。あたしに出来ない訳がないわ。あんたには聞きたいこと、話したいことがいっぱいある。いっしょにやりたいことも! だから……」


What a Wonderful World
 このすばらしき世界

作詞・作曲:G.ダグラス、G.D.ワイス
訳詞:涼宮親父

I see trees of green, red roses too
 木には葉が繁り、バラも真っ赤に
I see them bloom for me and you
 咲いていやがる 俺たちの方を向いて
And I think to myself what a wonderful world
 だからオレは思うことにする ああ、悪かない世界だと

I see skies of blue and clouds of white
 空はやけに青くて 雲はやけに白い
The bright blessed day, the dark sacred night
 まぶしい祝福の日、暮れて初めての夜を迎えて
And I think to myself what a wonderful world
 オレはこう思うんだ ああ、悪かない世界だと

The colors of the rainbow so pretty in the sky
 虹がかかるのは、なにも空だけじゃない
Are also on the faces of people going by
 見ろよ、行き過ぎる奴らの笑顔を
I see friends shaking hands, sayin' "how do you do?"
 二人は友人のように握手をして、いつもの挨拶を交わす
They're really sayin' "I love you"
 だがこう言ってるのが聞こえるだろ 「オレはお前が好きだ」と

I hear babies cry, I watch them grow
 赤ん坊が泣いてやがる ガキがでかくなるのを見守るとしよう
They'll learn much more than I'll ever know
 連中はたくさんのことを学ぶんだろう オレなんかが知ったよりずっと多く
And I think to myself what a wonderful world
 だから、オレはこう思う ああ、悪かない世界だと
Yes I think to myself what a wonderful world
 そうとも、オレは思ってる なんてすばらしい世界なんだと




7:
 多くの命が失われ、多くの悲しみが生まれて、二つの命が生まれ、親父さんが息を吹き返し、多くの謎を残して、事件は幕を閉じた。 

 後のことは、手短に話そう。今はまだ話せないこともあるからだ。

 双子の名前は「ハルナ」と「ハルキ」に決まった
 墜落の最中、親父さんが手帳に殴り書いてた名前があることが、親父さんの失言から分かり、どうしても見せようとしないものを、ハルヒ&お義母さん連合によって奪取されてしまった。涼宮家最強ペアに腹に穴が空いた親父さんは、なす術もなかったらしい。そして、手帳を開いてみると、そこにあったのは、俺とハルヒが考えていたのが同じ名前だったという訳だ。
「字は違ったけどな」
「ふん、あんなにふるえてちゃ、何篇かもわからないわよ」
「俺がふるえてたんじゃない。飛行機が震えてたんだ」
「はいはい、そういうことにしといてあげるわ」
「俺にも双子、抱かせろよ」
「腹に空いた穴がふさがったらね」

 それからメディエーターの仕事のこと。
 親父さんは病床の身だが、仕事の方は待ってはくれない。
 抜けた穴を埋めるのに、親父さんはいつかの若い二人を代役に推した。マサカドさんとアカザキさんだ。
「まだまだ足りないとこだらけだが、そこがお前らの売りだ。全部の勝負に負けてやるという気構えでいけ。おまえらがわざわざ出向いて、そこでオタオタしてりゃ、必ず「おせっかい」なのが出てくる。そしたら10のうち8は済んだようなもんだ。俺たちは手を貸すだけ、当事者たちが本気になってやらなきゃ何も始まらんことを忘れるな。あと微妙な判断は、こいつに聞け。だいたいのことは教えといたつもりだ。大学受験をキャンセルさせたんだ、それなりの見返りを用意しないと、世界一おっかないこいつのかみさんが殴り込みにいくぞ。って、俺の娘なんだけどな。悪知恵はともかく対人攻撃力では、俺をもしのぐ」
 そういうわけで、俺の大学受験はしばし延期される運びとなった。マサカドさんとアカザキさんは、それぞれ、おれを自分の母校に放りこんで「先輩」になりたいという野望を描いているらしく、「まあ、ちいさいうちに外国の生活を体験させとくのも悪くないわ」と誰かさんも大いに乗り気だったりするので、俺の進路は前途多難にして洋々のようである。
 親父さんは病院のベッドの上でも、元気はつらつである。あまりに元気なので、個室に押しこまれたが、見舞い客が絶える夜以外は、喋りつづけてる。
 「とりあえず半年で戻る。戻れなきゃ引退を考える。今度はあこがれのデスクワークだ。そしたら会社でもつくるから、おまえら副社長待遇で呼ぶぞ。仕事の量は倍になるだろうけどな。まあ楽しみに待ってろ」















記事メニュー
目安箱バナー