ハルヒと親父 @ wiki

できちゃった その4

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haruhioyaji

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ハルヒ母
どうしたの、ハル? 部屋の隅で膝なんか抱えて。アンニュイな雰囲気が出てるわ。
ハルヒ
そんなの出したくない。
ハルヒ母
体育座りは、確かに妊婦さんにはお勧めではないわね。キョン君はどうしたの?
ハルヒ
オヤジにとられた。
ハルヒ母
あらあら。
ハルヒ
「進路指導」なんだって。何やって将来食って行くつもりなんだ、とか、なんとか。
ハルヒ母
そんなの『ハルヒの嫁、ハルヒの嫁、ハルヒの嫁』でいいのにね。
ハルヒ
いや、いきなり、そこまでは私も割り切れてないというか、切り込めてないというか。
ハルヒ母
どんな風に働くかなんて、何のために働くかがはっきりしないと決められないでしょ?
ハルヒ
むー、オヤジも母さんも「出たとこ勝負400戦全勝」だからいいけど。
ハルヒ母
誰だって負けることはあるわ。でも大人は多少ずるいから、途中で道を間違えても黙っていて、結果で正当化しちゃうだけ。ともあれ目的地に着いたでしょ、って。


オヤジ
まあ、あんまり深刻になることないぞ。最後の最後には、第1志望から第3志望まで『ハルヒの嫁、ハルヒの嫁、ハルヒの嫁』というのもありだ。
キョン
いや、その手はあいつに先に使われたんで。
オヤジ
そうだったな。最後の手段は最後に使うもんだってのに。キョン、苦労かけるな。
キョン
いや、それは苦労でも何でもないんですが。
オヤジ
主夫も立派な職業だぞ。というか、あいつの主夫がつとまりそうなのは、金のわらじを履いて探したって、めったに見つかりそうにない。
キョン
まあ、ハルヒも働くでしょうし、家事は分担するつもりですが。
オヤジ
あー、最初に言っとくけどな、キョン、自分に何が向いてるか、なんてところから出発すると、就活も人生も失敗するぞ。なんとなれば、そんなものはやってみんとわからんし、やりはじめたら向いていようがいまいが、やり切るしかないからだ。
キョン
といっても、俺の場合、とりたてて特技があるわけじゃないし、成績も下から数えた方が早いし。あまり関心がなかったというか考えた事なかったんですけど「誰かを食わせていく」と考えたら、急に自分が頼りなく思えてきて。
オヤジ
やれやれ。何ができる、こんな資格を持ってる、どんなスキル・セットがある、なんてのは人材とはいわん。何やらせても、つぶれないのが人材だ、無事これ名馬なり、だな。情勢なんてコロコロかわるし、3年後はおろか3ヵ月後の仕事だってどうなるかわからん。やれといわれたら、なんでもやる奴、なんとかやっちまえる奴がいいに決まってる。まあ、「やれ」と言う方も何をさせりゃいいのか、さっぱりわかってないのが多いからしょうがないけどな。
キョン
はあ。
オヤジ
まあ、成績の方は、ちょっと俺に考えがあるから任せておけ。いや、ハルヒの出産日からいくと、お前さんの受験の追い込み時期には、あいつは戦力にならんだろ。
キョン
そういや、そうだ。予備校とか考えとかないと。
オヤジ
だから、そっちは任せとけって。あとな、バイトの話だが、ちょっと迷ったんだがな……おまえ、おれの仕事、ちょっと手伝ってみるか?
キョン
親父さんの? そういや、親父さんの今の仕事って聞いたことなかったですね。
オヤジ
仕事と言えるかどうかわからんけどな。給料の名義は、「総研」とは名ばかりの銀行系コンサルにフェローって肩書きで腰掛けなんだがな、ゼニにしてる稼業は、コンフリクト・リゾリューションとか、最近はご大層な名前がついてる。自己紹介の時はメディエーターか、無理に訳せば仲介者だ。
要は、もめごとのあるところに呼ばれていって、双方の言い分を聞いて、最終的に手打ちにできれば成功報酬というわけだ。アメリカじゃ、一応職業になってるがな。これとはちょっと違うが、日本でもADR( 裁判外紛争解決:Alternative Dispute Resolution)ってのを流行ろそうとしてるだろ。
キョン
いや、全然知らなかったです。
オヤジ
前は公共工事とその反対派ってパターンが多かったな。ODAをやろうとして日本企業と現地の連中と国際環境保護団体とガチンコの三つどもえ、なんてのもよくやった。工事が遅れると何億って金が無駄になる、3年もめるところを半年で話がまとまれば、いくらかおれも儲けていいだろう? まあ昔は顔役だとかヤクザがやってた仕事だ。いろんな「おどし」が社会的に「高く付く」ようになってな、コストがいくらかかるかわかりやしない「話し合い」なんてのをやるはめになって、結局座礁してどうしようもなくなった時に、俺が呼ばれるのさ。両方と交渉して落としどころを見つけて、怪しい理屈と説得でそいつを両方に飲み込ませる。
キョン
それって……
オヤジ
おれが見るところ、非常におまえさん向きだ。まあ、俺とは全然別のタイプのメディエーターになるだろうけどな。弟子にとろうかと、一時、本気で考えたぞ。おまえがハルヒの彼氏じゃなきゃ、とっくにそうしてた。ただあいにく、これは相手さんの都合に合わせた仕事なんでな、定時に行って帰って来るってことにならない。家族サービスにはものすごく不向きだ。だが、おまえさんが手伝うっていうなら、おれの近くに常にいる訳だから「超・家庭教師」の時間を別に捻出する必要がなくなる。おまえさんも仕事ってものがどういうものか、少しは分かりもするだろう。よって一石三鳥だ。
オヤジ
だが、欠点も3つある。嫁から子供から仕事まで、おまえさんをべったり涼宮家に取り込むことになっちまう。おまえさんの家からすればあまり面白くないかもしれない、これがひとつめ。あと、親父べったりとなって、バカ娘といちゃいちゃする時間が激減する、おれはいったい何のために生きてるんだと考えるようになるかもしれん。これがふたつめ。最後に、ふたつめとも関係するが、仕事をいっしょにやってるとお前さんは多分俺を尊敬するようになるだろう。一方でバカ娘の方は俺を全然尊敬していない、よってお前さんとバカ娘の間に何らかの行き違いが発生するかもしれん。みっつめ。
オヤジ
ってな感じで、多くのメリットとデメリットを抱えていてな、さすがの親父も決めかねてるし、まだ誰とも相談できてない。……さてと、最初の仕事だな。誰になんと言って相談持ちかける?
キョン
ハルヒに。
オヤジ
王道だな。正面突破か。ちなみに俺なら母さんからまずアプローチする。外堀を埋める。
キョン
いや、必要なら、そういう手も使います。
オヤジ
おいおい。こっちは一応プロなんだぜ。これじゃ形無しだな。まあ、おまえさんのお手並み拝見といくか。


 妊婦のハルヒはよく働いた。
 週3日づつを、俺の家とハルヒの家で過ごし、両方の家で家事を手伝い、夜はバイトの翻訳をやったり、ハルヒの母さんからもらったノートや本を読んでいる。
 (俺以外には)文句も愚痴の一つも言わず、その合間合間で居眠りをして帳尻を合わせているのか、母子ともに健康そのものだ。
「ハルヒ」
「何よ?」
「がんばってるな」
「学ばなきゃならないことがいっぱいよ。まあ、おかげでつまんないこと考えなくて済むわ」
「そうか。だが、あんまり根をつめるなよ」
「ありがと。で、あんたは大丈夫なの?」
「ああ。それでちょっと、話がある」
「いいニュースでしょうね?」
「それも俺次第らしいんだが。……親父さんの仕事をしばらく手伝いたい。バイトで助手というか雑用みたいなことをやる。バイト代はしっかりいただくが、実はもうひとつ、親父さんには頼もうっと思ってる。受験勉強のことだ」
「……そう」
「おまえの出産予定日はこの夏だ。どんなに早い推薦入試も、その後になる。夏休みは予備校の夏期講習にでも行こうかと考えてたんだが、渡りに船で、親父さんから提案があった」
「それが雑用助手と家庭教師のバーターって訳ね。あたしも夏休み以降、どうしようかと思ってたわ。多分、あんたにとっても、あたしにとっても、ベストの提案ね」
「そう思うか?」
「提案者が個人的に気に入らないだけ。というか、完全に自己嫌悪の部類だから放っておいて。普段、あれだけ悪態ついてても、いざという時、かなわないの。状況分析にしろ、提案できる内容にしろ、ね。悔しいったらありゃしない」
 ハルヒが不機嫌にうつむくと、ノックがあった。
「親父ね。入って来ていいわよ」
「一応、俺の家なんだけどな」
「年頃の娘の部屋に入るのにノックするのはいい習慣よ。どうせ立ち聞きしてたんでしょ?」
「あいにく、最近そこまで耳がよくなくてな」
昔は、やってた、ってことですか、それ?
「仕事の方がモノになるか、本人がやりたがるかどうか、こればっかりは保証できん。だが、こいつの成績と受験については俺が責任を持つから安心しろ。今時点では、俺の方がこいつの成績を上げられる。だから今は勝ちを譲っとけ」
「そこまで放言する以上、覚悟はできてるんでしょうね」
「負けはないから、必要ないな」
「キョンが納得してる以上、あたしもどうこう言う気はないわ」
「仕事の都合で連れ回すから、会える時間は減るぞ」
「1日最低1時間の電話。砂漠の真ん中からでも、地球の裏側からでも。これが条件よ」
「やれやれ。せいぜい衛星電話がいらない範囲で働くか、キョン?」


 親父さんの助手としての仕事は、最初は「荷物運び」だった。
 というより、今の俺のレベルでは、それ以上やりようがないということなのだが。
 メディエーターとして、双方の話を聞き、対案を提示するのが仕事の主だったところだが、今更驚くところではないのだが、親父さんは普段は、ほとんど何の資料も、話し合いを記録するものとしてはICレコーダーや筆記具すら持たずに、相手先を訪れる。つまり、あの脅威の記憶力を存分に発揮するのだが(少々、演出的にやってる向きもあるらしい)、助手が今現場で話し合われていることを理解できるように、資料を運び、次回に備えて記録を取るのが俺の仕事だった。ほとんど俺のために俺が汗水流しているようなもので、親父さんにとってのメリットが不明だが、とにかく毎日が、資料作り、会議、資料づくりの繰り返しで暮れていった。
 「どうだ、すこしは慣れたか?」
「いや、全然です。周りのスピードにまず付いて行けないっていうか」
「そのわりには、記録の方は、まあまあ取れてるがな」
「そうですか?会議中は夢中で殴り書いてるだけですが」
「訳が分からないから書けるだけとにかく書く、という方がこの場合は正解だ。若い連中を記録係に連れて行ったこともあるんだけどな。あいつら、てんで手を動かしやがらない。自分なりに要点をスマートにまとめてるんだそうだ。翌朝、プリントアウトされた「会議要旨」とやらを貰うんだけどな、8割は俺が拾って欲しいところを落っことしてる。しょうがないから追記と修正を赤ペン先生しだしたら、えらく不評でな。近頃の若い連中はいろいろ資格やら学位やら持っていてなかなかの自信家で、赤ペン先生をやられると大層堪えるんだそうだ。若手の自信をつぶし続けるのもたまらんから、結局一人で動くようになったんだけどな。組織的には後継者が育たんとエライさんはおかんむりだ」
「はあ」
「なあ、キョン。日本でも田舎にいけば、今でも何百年分の村の伝承をそらで言えるじいさん・ばあさんがいるんだぜ。アジアやアフリカだけに限らん、文字を使わない文化なんかじゃ当たり前だ。そんな相手にICレコーダーを持って行く神経がわからん」
 と、親父さんは大げさにため息をつく振りをして、げらげらと笑う。
「次のまで、ちょっと時間がある。英語だけでも、やっておくか?」
 超・家庭教師の親父さんの授業は、こんな風に、仕事の合間に降ってくるようにして始まる。


 おやじさんの教授法は古風かつスパルタで、たとえば英語だと、「聞いてろ」「読んでみろ」「訳せ」「覚えろ」といった具合である。

 まず親父さんがどこからか選んできた、少々長めの英文を音読してくれる。俺は聞きながら、自分でも読めるように発音記号やら何やらを書き込んでいく。
 次に俺が音読して、親父さんは俺が読むのを聞きながら英文にチェックを入れる。
 さらに親父さんが入れたチェックや書きこみをみながらもう一度読み、最後に「じゃあ、頭から訳してみろ」となる。
 できないところは横棒を引いて、とにかく最後まで訳す。
 それがおわると、今度は親父さんが、口頭で英文の頭から訳していく。
 俺はそれを聞きながら訳を修正する。
 最後は仕上げとして、俺に頭から口で訳させる。親父さんはそれを聞きながら、訳文にさらにチェックを入れて、俺に返してよこす。終了。
 あとは英文と訳文を次回までに暗唱できるよう覚えて来い、となる。

 「はあ、そんなことやってんの?」
 できるかぎり、涼宮の家には立ち寄る(実質は帰る)ことにしていたが、どうしても地方の現場まわりが増えてくると、電話か、ネットが使えればスカイプでハルヒと話すことになる。
「ああ。はじめはおれもよくわからんかったが、過去問や模擬試験を復習してみて納得した。どれも、ほとんど読み上げたことのある文章、親父さんが持って来た文章だ。どこをアレンジしてあるかまでわかる。親父さんが選んでもってくる英文は、みなそういうものだったらしい」
「ふーん。英語はいいけど、あんた、苦手の数学は? 学費抑えたいからって、国公立にしたんでしょ?」
ああ、今は涼宮の家に厄介になっているが、早晩、自分たちだけで生活をしていかなくてはならない。そのためには出て行く金は少ない方がいい。
「ふふふ、親父に死角は無い」
「こら。二人っきりの会話に参加してこないで!」
「せっかくネットが使える宿を探したんだぞ」
「人のダンナを、帰って来れないような遠方に連れ出してるんだから、当然よ」
「聞いたか、キョン。『ダンナ』だと。これは親父日記に書いとかないといかんな」
「くだらんこと言ってないで、立ち去りなさい!」
「こいつはアタマは悪くない。だが、そのことが自分で分かってない。加えて、学校の勉強に意味・意義を感じてない。平たく言えば、勉強嫌いだ」
「そんなことはわかってるわよ」
なにげにひどいこと言われているな。
「だから鍛え甲斐がある」

 クルミを握って握力を鍛えるみたいに、簡単な計算問題を常にポケットに突っ込んでおいて、5分とか3分といった短時間で、時間を計ってやらされる。これも、仕事の合間に、スコールのように唐突にだ。
 数学の勉強は、基本的には、親父さんお手製の問題集を(いったいこんなもの、いつ作る時間があるんだろう。ハルヒの時も思ったが、親父さんはさらに輪をかけてボリュームのあるものを持ってくる)、まず例題と解き方を、これも音読させ暗唱させられる。
 例題を自分で解くのは、その後だ。

 「答えを知ってからだと、誰でも分かるじゃないの?」
というハルヒの批判に、親父さんは軽く答える。
「それは数学ができる奴のセリフだ。たとえば英語ができない奴は、ほんの短いフレーズでも何度聞いても、なかなか覚えられない。そいつのアタマのワーキング・メモリがその手の情報処理に慣れてないからだ。同じことで、数学ができない奴は、解答をみせてもなかなか覚えられない。音読させてるのは、時間が無いからだが、数学的な情報を繰り返しワーキング・メモリにくぐらせてるんだ。こっちは英語ほど、効果が早く現れないがな」
「ふーん」
「むくれるな、バカ娘。おまえなりに、やれることはやってあるのは、いまのキョンを見ればよく分かる。ただ出来のいい奴は、できない奴がなぜできないのか、なかなか理解できん。それと、お前はこいつに典型的な同級生目線で、勉強を『教えよう』としただろ。出来のいい世話好きの同級生に勉強を教わるなんてのは萌え要素だが、厳しく言えば、そこそこのところで成績は頭打ちする。結果が出なくても二人の目的は『一緒に勉強する』時点で達しちまってるからだ。これは能力やモチベーションの問題とは違ってな」
「じゃあ親父がやるのはどうなのよ?」
「俺は上から目線でコイツを見る。やってるのは『わからないところを教える』んじゃない。『泳げないものを、泳げるように鍛える』、トレーニングと調教だ。つまり立場の違いから来るアプローチの差だ」

 言いたいことは言い終えたらしく、親父さんは別室に消えた。ツインでいいところを、シングル2室をおさえてくれたのだ。親父さんの親心というべきか。
「それで、おまえの方はどうなんだ? 見る限り、元気そうだが」
「まあ、母子ともに健康よ。エコーもしたけど、やっぱり双子だって」
「いっぺんに二人か。幸せも2倍だ」
「ふう。あんたのその能天気ぶりには、時々救われるわ。……もっとも、あんたじゃなきゃ、生むどころじゃなかったろうけど」
「頑張ってるおまえを見てるとな、腹が座ってきた」
「今日は有希とみくるちゃんが来てくれたわ。ベビー服、作ってくれるんだって」
「そうか。よかったな、ハルヒ……ハルヒ?」
「……でも、一日でも、あんたと離れてるのは、正直つらい」
「すまん」
「あんたが謝ることじゃないわ。……あたしが贅沢者なのよ」
「悪いことじゃないぞ、ハルヒ」
「そうね。あんたがそう言うんだから、そう思って眠ることにする。おやすみ、キョン」
「ああ、おやすみ、ハルヒ」


ハルヒ
母さん、今いい?
ハルヒ母
ええ、いいわよ。
ハルヒ
……ちょっと気分と言うか、機嫌が良くなくて。
ハルヒ母
うん。
ハルヒ
親父が一緒だし、ある意味、そっちは心配入らないって頭では分かってるの。
ハルヒ母
無事,キョン君が帰ってくるってことね?
ハルヒ
うん。それが分かってるのに、今、あいつがここにいないことが、すごく不安なの。そんなことくらいで不安になっちゃう自分もいや。しっかりしなきゃと思うんだけど、そうすると余計、自分がダメに思えてきて。
ハルヒ母
……ねえ、ハル、不安になってもいいのよ。
ハルヒ
母さん……。
ハルヒ母
ついキョン君を探している自分に気付いて自己嫌悪してもいいの。
ハルヒ
……。
ハルヒ母
あなたは、どんなにつらくても泣き言なんて、言ったことなかったわね。そういう風に私たちが育ててしまったし、「しっかりしなさい」と言うことはなかったけど、無言で、態度でそう要求していたかもしれないわ。
ハルヒ
……。
ハルヒ母
……ねえ、ハル。母さん、今とっても身勝手だけど、泣きじゃくるあなたを抱きながらね、『母親』ってものを堪能してるの。そんな風に素直に泣いてくれなければ、母さんも「不安でもいい」なんて言えなかっただろうし、言ってもあなたに届かなかったと思うの。素直に泣けるように成長したあなたと、それをいつも助けてくれた彼には、感謝しなくちゃね。
ハルヒ
キョンのこと?
ハルヒ母
もちろん。今のハル、キョン君に見せてあげたいくらい。もっともキョン君はとっくに知っているんでしょうけど。ハル、泣いている今のあなた、とてもきれいよ。



















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