ハルヒと親父 @ wiki

涼宮ハルヒの格闘2

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haruhioyaji

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「10人がかりよ、どうする?」
「どうするも何も、俺たち狙いだろ、どうみても?」
「正確に言うと、あたし狙いだけどね。倒した覚えのあるのが何人か混じってるわ」
「ストリートファイトはやめとけ。と、いつも言ってるだろ」
「ふりかかった火の粉を払っただけよ」
「いや、その前に火をつけて回ったりしなかったか? 比喩で聞いてんだが」
「よくわからないけど、そういうこともあったかもしれないわね」
「やれやれ」
「ほら、『あっちの男は使えねえ』『狙いは女の方だけだ』『取り囲んで、足を止めさえすりゃ勝ちだ』とか、いろいろ言ってるわよ」
「ご期待に添えるかどうか」
「何言ってんの。日頃の特訓の成果を見せる日がとうとう来たのよ。喜びなさい、キョン」
「特訓って、お前の家の庭に穴掘って埋めるアレだろ?」
「そうよ、アレよ」
「まあ、待て。とりあえず話し合いからやるぞ」
「どうぞ」

「おーい、俺たちに用があるみたいだから話しかけるんだが、夜な夜な中年男を襲ってる『親父狩り』たちが、最近ひどい目に遭ってるって話を聞いた事はないか? おれたちは、ちょっと訳ありで、その「親父狩り」狩りのおっさんの関係者なんだ。そっちに敵意があることはわかるが、今日のところは『顔見せ』ってことで、また後日、日を改めて、って訳にはいかないか?」
「無理でしょうね」 ハルヒ、おまえが答えてどうすんだ。
「やっぱりこういう交渉事は荷が重いな」
「交渉だったの? なんかの口上か、落語で言うところの『枕』かと思ってたわ」

 あからさまに「ハルヒ狙い」の10人は、見事にハルヒ・シフトを敷いて来た。
 ハルヒの向こうに半円形に並ぶ。
 いつかの経験が生かされてるんだろうか。

 ハルヒの奴は、優雅に膝を曲げて「どうぞ、お先に」と身振りで俺を促す。
 ちきしょう、無駄に可愛らしいぞ。

 俺はハルヒの横を抜けて、相手方の半円形の真ん中をとぼとぼ歩いて行く。
 正面の奴との距離が縮まるはずなんだが、向こうはなんと後ずさりしていて、半円形ごと俺の歩調にあわせて下がって行く。
 どうも、こちらの意図が分からず不気味がってるようなんだが。
 調子狂うな。

 俺は歩調を早める。
 後退する半月形のスピードも上がる。
 おいおい、下がってどうすんだ。
 しょうがない。俺は駆け足に切り替える。
 正面の奴は、180度反転、なんと逃げる手に出たが、俺がダッシュした方が早く、本能的に逃げる相手にはタックルをかけてしまった。
 おお、痛そうだ。すまん、わざとじゃない。これもみんな訓練という名の条件反射の賜物で……。

 振り返ると、半円形の陣形は当然ながら崩れ、ハルヒはその端っこ(向かって左側)から、いつものごとく各個撃破に取りかかっていた。

 半円形の残り右側を見ると、なんだか怖い者を見たような目で俺を見る。
 俺が何かやったか?
 単に、こいつが逃げたから反射的にタックルしてしまっただけで、俺の引き出しには、とくにヤバそうなものは何も無いはずだぞ。

 俺はゆっくり立ち上がって、残り右側半分の連中の方へ、またてくてくと歩いて近づいて行った。
 連中も、仲間がハルヒに一人ずつやられていくのは見るに忍びないのか、助けに行きたいのだが、どうも「不気味認定」された俺に近づかないでどうやって向こうへ行けばいいかを思案中らしい。
 俺は、適当なところで立ち止まった。
 相手に取っては、さぞややこしそうな距離を残して。

「キョン、こっちは片付いたわよ」

俺は「ああ、わかった」と答えてから、残り半分の右側君たちに向き直った。

「と、うちの相方は言ってるんだが、どうする?」

 いや、すごんだ訳じゃないぞ。
 努めてジェントルに、加えて(これは本心からだが)めんどくさそうに『質問』した。
 右側君たちは、互いに顔を見合わす。

「もう、いらいらするわね。どうすんの!!」

 ここにハルヒの怒声砲が一発。
 右側君たちは、急に仲間意識に目覚めたらしく、ひっくり返ってる仲間たちを、分担して背負うなり肩を貸すなりし、這々の体で去って行った。

「キョン、あんた、なかなかやるじゃない!」

 そうか? そんな女番長にほめられてるような事を言われても、あまりうれしくはないんだが。
 それに今日俺がしたことといったら……。まあ、ハルヒは適度に暴れられてご機嫌だし、俺もズボンの膝についた土を払い落とすぐらいで済んだのなら、
「すべてうまくいったIt all went right.」
というべきなんだろう。

 多分な。
















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