ハルヒと親父 @ wiki

涼宮ハルヒの格闘

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haruhioyaji

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 その日もいつもの不思議探索。

 めずらしく組になった俺とハルヒは一通りの探索を終えて、いつもの公園のベンチにいた。正確にはベンチにどかっと座り込んだのはハルヒだけで、おれはいつもの通り二人分の飲み物を買いに、最寄りの自動販売機に向かった。

 自販機からベンチに戻る途中、公園の中を横切っていた俺は、最近では少年誌でもお目にかかれないような、それはそれは古風な格好をしたレッド・データ的不良数人が、ベンチに座っている少女二人に「ちょっかい」をかけているところに出くわしてしまった。消極的平和主義者を自認する俺はもちろん、そのまま通りすぎようと思ったが、お人よし的良心回路がおそらく誤作動したんだろう、意識を介することなく、俺の口を勝手に操って、こんなことを口走らせた。

「取り込み中のところすまないが」
「だれだ、てめえ?」
「通りすがりの雑用係だ。どうせ聞いちゃくれないだろうが、アリバイがわりに言わせてくれ。あと5分もするとしびれを切らした《あいつ》がここを通りがかる。《あいつ》は、見た目は女の子だが、中身は阿修羅だ。しかも、まずいことに破壊的良心回路を実装してる。こう言っちゃなんだが、見るからに悪人っぽいあんたらが《あいつ》に出会うと、かなり高い確率でとってもよくないことが起こる気がする。悪いことは言わん。ここは何も言わず立ち去ることをお勧めする。お互いのために、ひいては世界平和のために。悲しいことに俺の方はもう慣れちまっているが……って、ああ、遅かったか」

「ちょっとキョン!!あんたジュースひとつ買うのに何分かかってんの!?団長をこんな寒空にひとりベンチで待たすってどういうつもり? ん? 誰、そいつら? なんでそっちの子たち泣いてんの? ちょっと、なにキョンの胸ぐらつかんでんのよ! 手をはなしなさい! あんたらの相手はあたしよ!おりゃー!!」


 一般的に言って、複数人を相手にケンカすることは、よほど腕に覚えのある人でもお勧めできない。
 人間は弱いようでいて、これでなかなかしぶとくて、マンガのようには一撃で倒れてくれることは稀だ。
 前後左右の敵を一度に戦闘不能にすることができれば、取り囲まれてもなんとかなるかもしれないが、実際はほとんど不可能に近い。
 よって武器でも持たない限り、複数を相手にして立ち回ることはすなわち敗北を意味する。


 ハルヒは、腹の底から出した叫び声で、不良たち4人の注意を一瞬で自分に引きつけた。
 が、次の瞬間、居並ぶ不良たちの(ハルヒから見て)一番右側の男の真横に飛び込んだ。そいつが体の向きを変えるよりはやく、左足で地面を蹴り、体ごとぶつけるような勢いで、右の掌底を相手の脇腹に叩き込んだ。その痛みに相手のからだがくの字に曲がり頭が下がってくるのを待ち構えていたように、ハルヒの左の掌底が下からそいつのあごを打ちぬいた。
 一人目が崩れ落ちて、その後ろになっていた二人目はようやくハルヒの動きに気づいた。が、ハルヒを捕まえようと突きだした手は、低い姿勢で懐に飛び込んできたハルヒを捕らえそこない、空を切った。ハルヒの右の肘鉄が二人目のみぞおちに突き刺さり、その肘を支点に右腕が弧を描いて伸び、裏拳を相手の鼻先に叩きつけた。
 その惨状を目の当たりにした三人目は、掴みかかるか否かを躊躇した。ハルヒの方は動きを止めなかった。低い右の横蹴りが相手の脛を打ち、痛みに身を低くしたところに右の裏拳がこめかみに炸裂した。
 俺の胸ぐらを掴んでいた四人目は、目の前で何が起きたのか、うまく理解できないといった様子だった。ハルヒはくるりと体の向きを変えて後ろを向き、倒れた三人を眺めつつ、こう言った。

「こいつら連れて帰りなさい。それとも、まだやる?」

「無防備」に背中をさらしているハルヒを見て、ようやく決心がついたらしい四人目は俺から手を離し、ハルヒがしゃべり終わるのを待たずに飛びかかった。

「あ、おいっ……って、遅いか」

 罠だと思わず、表記できないようなことを叫んで向かって行ったそいつを無論待ち構えるように、ハルヒの今日一番の大技、後ろ回し蹴りがあごに炸裂した。

「……やれやれ、いわんこっちゃない」



 買ってきたジュースを二本とも飲みほした後、ハルヒが語ったところを記しておく。


「話にならなかったわね。見かけ倒しもいいところよ。悪者なら悪者らしく、人質をとるとか一斉に飛びかかるとか、もっと卑劣な手を使いなさい!」
いや、それは無理だろ。おまえが先に、一番右にいた奴のとなりに飛んだからな。
「あたしからみて、ちょうど連中が一直線に並ぶように、あそこに飛び込んだの。となりの奴が邪魔になって、一斉にはかかって来れないでしょ? 一対多でケンカする時の基本よ。覚えておきなさい」
いや、君子危うきに近寄らず、というだろ。まず、そういう事態は避けろ。危ないことはすんな。
「人にはね、どうしても闘わなきゃいけない場面ってのがあるの」
さっきのがそうだというのか?
「あたしが行かないと、あんた殴られてたじゃない」
そうだな。悪かった。これからはもっとうまく逃げるようにする。
「あんただって、からまれてたあの子たちを助けようと思ったんでしょ?」
そんな殊勝な話じゃない。放っておこうと思ったんだが、おまえに言ううまい言い訳が思いつかなかっただけだ。
「ほんと素直じゃないわね」
おまえも知っての通りだ。だが助けてもらった礼を言うくらいの常識は持ち合わせてるぞ。

「聞こうじゃないの」
「……ありがとな、ハルヒ」
「……!!……あ、あんた、なんてことすんのよ!」

感謝のしるしだ。深い意味はない。気にするな。

「き、気にするわよ! このエロキョン!」



副々団長「い、いまキスしましたよね?」
文芸部「した、見た、撮った」
副々団長「って、ええ、長門さん!?」















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