ハルヒと親父 @ wiki

手錠

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haruhioyaji

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 今、ハルヒと俺は、断ち切り難い一本の鎖でつながっている。
 言っとくが、ロマンティックな妄想の余地は微塵もないぞ。ハルヒと俺を結びつけているのは、冷たい金属の色をした、手錠だ。
 といっても、俺たちは、一時休戦して逃亡中のルパンと銭形のとっつあんでも、なつかしい脱獄コントを練習中の若手コメディアンでも、ない。
 どうして、こんなことになったかって? かいつまんで言えば、ハルヒにとっては暴走的悪ふざけによる自業自得、俺にとっては悲しいほど定番になった巻き込まれ的不慮の事故、要するに「いつものこと」なんだが、詳しくは時間を少し巻き戻して語ろう。

 放課後、部室の前までくると、聞くものを身悶えさせえるような愛らしくもかわいらしい悲鳴と、活字におこすと「ぐひひひ」とどこのスケベ親父だと思えるようなサディスティック・ボイスが、耳に飛び込んで来た。時々こいつは女子高生の皮をかぶった中年親父なんじゃないかと思えて、めまいがするな。
「さあ、みくるちゃん、今日は手錠プレイよ!」
「ひゃぁあああ」
今の場合、ノックは無用だろう。勢い良くドアを開けると、案の定、中ではハルヒが朝比奈さんを後ろ手にして手錠をかけようとしているところだった。
「おい、ハルヒ。いいかげんにしとけ」
「なによお」
つかつかと歩みよって、ハルヒの手から手錠を取り上げる。
「モノには限度ってもんがあるだろ」
俺はハルヒが届かないようにと、手錠を持った手を頭の上にあげた。
「こら、キョン!返しなさい」
 ハルヒは、ぴょんぴょんと何度かジャンプした後、おもいっきり床を蹴って手錠に飛びついた。
 こいつの運動能力の高さや、これと決めたら回りが見えなくなる性格なんかについては、今さら言うこともないだろう。ハルヒの跳躍は、俺の頭上に差し上げられた手錠に手が届くに余りあるものだった。当然そのジャンプは真上ではなく斜め上へ向かうものになる訳で、ハルヒの「余り」の力は俺の顔と体を押し、俺の足腰が支えきれずに崩れ落ちるのにも、十二分の威力があった。要するに、飛びつくハルヒの体は俺の上半身を激しく押し、俺はのしかかるハルヒごと後ろにぶっ倒れた。
「きゃあ、バカキョン!」
「うお、なにすんだ!」
ガシャン!
「んが!」
「へ?」
 背中にぶつかる床と上から落っこちてくるハルヒの体に板挟みになり、肺を圧迫されたのか、一瞬息が止まる。俺の上でハルヒがじたばた暴れる。
「いい加減あきらめろ、ハルヒ」
それでも手錠を離そうとしない俺と、掴んだら最後決して諦めないハルヒの意地の張り合い、という俺の状況認識を、ハルヒは一蹴した。
「バカ!そうじゃないわよ!」
といって腕を振っているらしく、俺の腕も上下に揺さぶられる。手首が痛え。
「あんた!なんてことしてくれるの?」
「わかったから、とりあえず俺から降りてくれ。息ができん」
「むー。あたしはそんなに重くないわよ!」
「あばれるな。とりあえず手を離してくれ」
「できるものなら、とっくにやってるわよ!」
「なにを言って……」
そこにゆっくりと部室のドアが開き、見慣れたにやけスマイルが入ってきた。
「やあ、これは飛んだ失礼を。お取り込み中でしたか」
この格好じゃ仕方がないが、お前に見下ろされると何気にむかつくな。
「お前はこれが何の取り込み中に見えるんだ? いや答えんでいい。それよりハルヒを除けてくれ。起きるに起きれん」
「そうですか。僕にはいつにもまして二人が固い絆で結ばれているように見えるんですが」
「何を言ってる?」
「あの、キョン君、手錠が」
「バカキョン、現実を直視しなさい」
身をおこしたハルヒが俺の目の前に突き出した左手には銀色の輪っかがはまっており、そこから垂れ下がる鎖は、引っ張り上げられた俺の右手首にはまったもう一つの銀色の輪っかに……。やれやれ。なんの冗談だ?

 「まったく、冗談じゃないわよ!」
 どこで手に入れたのか、手錠はプラスチック製のおもちゃでなく、ステンレス製の本物だった。古泉が用務員室から借り出してきたノコギリも巨大なペンチのような道具も文字通り歯が立たなかった。
 長門? ああ、確かに長門ならいとも簡単にチェーンを切るどころか、輪っかの方をなんとかしてくれただろう。だが「長門は実は知恵の輪の名人でもあるんだ」程度の理屈ではさすがに苦しすぎる。ハルヒの奴を納得させられないだろう。問題の物があいつと俺の体に密着している以上、ごまかしようにも限度ってものがある。
 鍵? そうだ、鍵だ。だが、おそらくは大方の予想通りと言おうか、ハルヒがしまい込んでいたはずの鍵は、スペアもまとめて全部だ、どこをいくら探しても見つからなかった。
ああ、どこぞのニヤケ心理専門官は、いつもの調子でいつものようなことを言ってたな。
ハルヒがこの事態を望んだから? WHY? どうして? だったら何でこいつは、こんなにも憤懣やる方ないといった様子で、地面を蹴飛ばしながら、俺を引きずるように歩いているんだ? 
「あんたん家へ行くわよ」
「は? 何言ってんだ、おまえ?」
「手錠が外れないだから、嫌でも一緒にいなきゃいけないでしょ! それとも、あんた、うちに来て、あたしの親にちゃんと事情を説明できるの?」
「いや、そりゃその、あれだ」  説明できなくはないが、無事には済まないかもしれない。
「あたしがあんたの親に説明する方が、まだ見込みがあるってもんよ」
くやしいが反論の言葉もない。ハルヒは何度かうちに来ているし、どうした訳か妹はもとより俺の家族もハルヒのことは気に入っているようだ。一方、俺はハルヒの家に行ったこともなければ、当然ハルヒの親と面識もない。加えて、まったくの蛇足と言うべきだが、こいつは女で,俺は男だ。初対面のハルヒの親に「手錠が外れるまで、こいつとは離れられないので、寝食を共にします」とでも言ってみろ。ハルヒの親がうるさい旧タイプなら、俺の腕を叩き切られるか、何だかよくわからん『責任』なんぞ取らされて、それこそ一生寝食を共にするハメにならないとも限らない。どうする、俺? どうなる、世界? っていうか、何想像してんだ?
「エロキョン」
いつしかハルヒが立ち止まり,遅れた俺を振り返って言った。
「な、なにがエロキョンだ」とは、つまりながらも力なく言い返す俺。
「あんた、いまエロい想像してた。そういう顔よ」
「ハルヒ、おまえ、人の心が読めるのか?」って、決して認めた訳じゃないぞ。
「あんたごときの心、読むまでもないわ。全部,顔に書いてあるもの」
「失礼な奴だな。おまえこそ、実は顔に出るタイプだろ?」
「うっさい、アホキョンのニブキョン!」
「こ、こら、走るな! 腕が!」
「あたしに何かしたら、死刑だからね!」
ないない、それない。
「ヘタレキョン、ロリキョン」
いや、ロリキョンだけは勘弁してくれ。妹が覚えたりしたら、まじへこみそうだ。

 ハルヒの説得は、それはそれは見事なものだった、とだけ記しておきたい。
 「手錠プレイ」やら、俺たちが倒れてハルヒが俺の上にのしかかった顛末とか、そういったことは完璧にスルーして、この異常事態に陥った顛末を実にシームレスに、俺の母親と妹に、そして後では父親に語って聞かせた。加えて、ハルヒは俺の母親から暫定的承諾(お父さんに聞いてからになるけど、私からもお願いするから、というもの)を得て、そのまま自分の家に電話して(出たのは母親だったようだ)、ハルヒの家も説得した。その見事な事の運びは、手錠がなければ、俺ですら拍手してしまいそうなくらいだった。ちなみに「手錠がなければ」というのは、右手が自由に動けば、という意味と、そういう事態に陥っているのが自分(たち)でなければ、という意味だが。

 「キョンくーん、ハルにゃーん、ごはんができたよー」
 そして今、俺(たち)は、想定される3大困難のひとつに差しかかっていた。兄弟が多かった昔の人はこう言った。曰く、食卓は戦場である、と。しかし食い物を奪い合う物理的戦いが、今や懐かしいと思えるほどの精神的消耗戦が繰り広げられることになった。それも一方的に俺が不利な条件で。ここは俺のホームじゃなかったのか。まるっきりのアウェイだぞ、これは。
「ほら、キョン、口をあけなさい」
左手は手錠で自由がきかないものの、自由な右手に箸を持ち,俺のおかずをつまんで構える女、ハルヒ。
「ことわる」
右手の自由を手錠に奪われ、どういう訳か知りたくもない家族の生暖かい視線にかすかな抵抗を試みる男、俺。
「なに言ってんの。手で食べる気? インドの人だって、不浄な左手は使わないわよ」
しかも、誰が何を思ったのか(母親が何かひどい勘違いをしたんだろう、きっと)、今夜のメニューは、誰の誕生日が盆と正月と一緒になってきたのかという御馳走だった。品数もすごい。ああ、うまそうだが、忌々しい。
「ことわる。確かに右手がふさがってて箸は持てんが、フォークかスプーンを使えば……」
「ふーん、『寝食を共にする』って、あれ嘘だったんだ」
「言葉のアヤだろ。っていうか、こんなところで言うな」ついでにいうと俺の意志じゃないぞ。
「あたしの箸がつまんだものを食べられない理由を聞かせてもらおうじゃないの」
「理由なんてな、親のまえ……なにをしてる?」
ハルヒはくるりと俺に背を向け、ハルヒの右側に座った妹の方を向いた。
「はい、妹ちゃん、あーん」
「あーん、ぱく。おいしいよ、ハルにゃん」
兄にさえ見せたことのないような、まぶしい笑顔で喜ぶ妹。それは、うちの夕飯だぞ。ハルヒが作った訳でもなんでもないんだぞ。
「うん、もっと食べる?」
「食べるー♪」
そして、ギ、ギ、ギという擬音が聞こえそうな動きで、ハルヒは俺の方を向いた。
「で、『親の前で』どうとかいうセリフが聞こえたような気がしたんだけど」
「ひ、卑怯だぞ、ハルヒ」
「ほーら、キョン、口をあけなさい」
く、くそ。これ、なんていう恥辱プレイだ? 手錠プレイ? 餌付けプレイ? なんか違うだろ、それ。

 肉体はカロリーを補給する一方で、精神からは何かが削り取られ続ける拷問的夕食タイムがやっとのことで終わり、俺は這這の体(ほうほうのてい)で自分の部屋に引き上げた。
がっくりとベッドに背中を預けて床に座り込む。だがしかし、今の俺には回復の時間はひと時も与えられていないのだった。
「あー、あんたんちのご飯はいつ食べてもおいしいわね」
 俺のすぐ隣で、何故だか上機嫌で、腕を上に突き出して伸びをするハルヒ。もちろん俺の手も持っていかれる。何が悲しくて片手バンザイだ。ああ、忌々しい。
「その割には随分食べてたじゃない。おかわりまでして」
「自分ん家の夕飯食って何が悪い?」
「別に悪かないわ」ニタリと笑うハルヒ。「うん、悪くないわ」
「ご機嫌だな。歌でも歌い出しそうだ」
「あら、歌って欲しいの?」
 ハルヒの至近距離でのいたずら子がするような笑顔が、俺の堪忍袋の脇をつついたらしい。こいつを困らせるような何かを言ってやろうという気持ちが、ふつふつと湯気をあげて、理性のふたを持ち上げた。
 ハルヒとふざけて、あるいは互いに怒りをぶつけ合って、近い距離になったことは何度かある。だが、こういったシチュエーションで否応なく接近し続けることは今までなかっただろう。俺の思考回路の変調は、そのせいにしたい。たしかに俺のアタマはこの時どうかしてた。
 冷静に考えれば、今のハルヒと俺は同じ状態、こいつに向けた言葉はそのまま自分にも突き刺さるのだ。そういう当たり前のことが、この瞬間は頭の中から消えていたのだ。
「ハルヒ、おまえ、風呂とか、どうするんだ?」
効果はてきめん、ハルヒの顔がみるみる間に赤く染まっていく。
「真っ赤な顔して何言ってんのよ? このエロキョン!」
赤いのはおまえだ、ハルヒ。
「あんたよ。……それに、手錠つけたままで、どうやって服脱ぐのよ?」
「あ」
脱ぐには脱げるだろうが、シャツみたいに袖を通して着ているものは手錠をつけている側の腕から抜けず、鎖のところでたまってしまうだろう。事実、俺たちはいまだ制服のままだ。客観的に見たらへんてこな夕食の団欒だったろう。
「あほ。もう、思い出させないでよ。あたしだって……嫌なんだからね」
「……その、すまん。バカなことを言った」
「そんなバカなことを言いだすようじゃ、どうやって寝るのかも、考えてないでしょ?」
「そりゃまぶたを閉じてだな」
ハルヒはとうとうかわいそうな人を見る目になって首を振る。
「バカ」
「わかってるさ、俺だって。考えないようにしてたんだ」
「で、考えて何か思いついた?」
「おまえはベッドで寝ろ。おれは毛布でもかぶって床で……」
「そういう問題じゃないの!」
といってハルヒはベッドの上によいしょと上った。自然、鎖でつながった俺の右手はそっちへ引っ張られる。
「いて、痛いって」
「体に痛みを刻み込みでもしないと気付かないようだから。鎖の長さはこれだけしかないの。どうやってベッドの上と下と別れて眠れるの?」
「いや、それはまずいだろ、いろいろと」
「《それ》が何を指してるかは聞かないであげるけど、ことは物理的な問題なの、モラルや道徳の問題じゃなくて」
俺だって何も「男女七歳にして席を分かつべし」などと言ってる訳じゃない。確かに物理的に今どうにかしようがあるかといえばない訳だが、問題は断じて物理的じゃないぞ。丸太やマネキンとなら同衾(って古いか)していくらでも寝てやるさ。だがな。
「ふーん、あたしは丸太やマネキン以下なんだ?」
「そうじゃない、逆だ」 いや俺、何を言ってる?
「どういう意味よ?」
「そういう意味だ」
「全然わかんない」
「わからなくていい」
「わかるように言いなさい」
ハルヒの顔が、言い逃れを許さない目が、至近距離まで近づいてくる。俺は顔を背ける。
背けた顔面をがしっと掴んで、ハルヒは自分の方を強引に向かせる。
「答えなさい」
俺は大きく息をつく。
「……こんなことになるのは二度とごめんだが、……それでも少しだけ、ほんのちょっとだけ、最悪よりはましだと思ってる」
「……」
「鎖のこっち側にいるのが……俺以外の奴じゃなくて……って以上だ。忘れろ」
「……」
ハルヒは何か言おうとしていた。しかし口を開く前に、部屋のドアが元気よく開いた。
「んしょ。キョン君、ハルにゃん、おふとんもってきたよー」
「あ、ありがと、妹ちゃん。-----ほら、キョン、さっさと受け取りなさい。妹ちゃん、重そうでしょ!」
「お前が一緒に来ないと受け取れんだろ」
「わかってるわよ!」


 結局、俺たちは、さっきと同じ姿勢で、ベッドに背中をあずけて隣通しに座ったままで眠ることにした。床に横にならずにすむことで、どこかほっとしていた。二人で明かりを消して、床に座り、毛布をかぶった。
 となりにいるやつがごそごそ動いている。何度かためらってから声を出した。
「ねえ、キョン、寝ちゃった?」
「ああ、ぐっすりだ」
「寝てないじゃないの」
「だが、もう寝た方がいいぞ。眠れなくても、目をつぶってるだけでも、いくらか疲れは取れるそうだ」
「……わかったわよ。寝るわよ」
「ああ、そうしろ」
「……あ、あのね」
「なんだ?」
「今日は、ってもう昨日になっちゃってるけど、その、あ、あたしが悪かった」
「……」
「だまるな。何か言いなさいよ」
「……すまん」
「あんたまで黙ったら、ただでさえ気まずいのに、どうしたらいいのよ?」
「……」
「何か話しなさい。つまんなくてもいいから。何でもいい」
「……」
「……じゃあ、手、握ってよ。鎖でつながってるなんて……嫌だから」
「……これで、眠れそうか?」
「……うん」
「おやすみ、ハルヒ」
「おやすみ、キョン」


 次の日の朝、俺たちは携帯がうなるメールの着信音で目を覚ました。
 差出人は古泉。内容は簡潔で「朝、部室に寄ってください」というものだった。
 この不愉快にして悩ましげな事態は、簡単に幕となった。長門がどうやってか(いとも簡単にだろうというのは想像がつく)作り出した「スペアの鍵」を、さも部室のどこかから見つかったことにして、手錠を開ける、これだけのことだった。
「なんで昨日できなかったんだ?」
誰かを責めてる訳じゃない。ただ本当に疑問に思っただけだ。
「おっしゃるとおりです。言葉もありません。ですが、昨日は誰も、長門さんですら、その方法を思いつかなかった。涼宮さんがそう望んだ、としか言いようがありません」
そういって古泉は肩をすくめてみせる。忌々しい。
「いいじゃありませんか。可能性としては、鍵ができるのが何日も、いや何ヶ月も先、という事態も想定されたのですから」
「ハルヒが一日で満足したってことか?」
「それはなんとも。昨夜何があったかは我々の知らないところですし」


 それから数日が何事もなく過ぎた。完全に何もなかった訳ではないが、諸般の事情により割愛させてくれ。
 そして土曜。いつもの集合場所に俺たちは集まり、いつもの通りに不思議探索をとり行うこととあいなった。いつかのようにクジは俺にとっての幸運や不運を運んで来たが、それもまたご愛嬌の範囲内に留まったと言っておこう。
 午前、午後ともハルヒとペアになったという事実だけで、多くを語る必要はないだろう。
 だが俺は油断していた。この季節にしては、無慈悲な北風もほとんど吹くことなく、ぽかぽかという擬音を付けたいような小春日和の日差しがまずかったのか、それとも連日の深夜に及ぶ長電話のせいか、もう少しで集合場所にたどり着く場所まで来て気が緩んだのか、とにかく俺は眠りの女神の甘美な吐息に誘われ欠伸を連発したあげく、あろうことかハルヒに手を引かれたまま、猫型ロボットにひみつ道具をせがむ小学生さながらに1、2、3で熟睡モードに入ってしまい、転んで地面に激突し、いと気高き絶対不可侵の団長までも道連れにしてしまった。
 「このアホキョン!! あたしに手引かして眠りこけるとはどういうこと!? 団の活動についてのサボタージュおよび団長に対する不敬罪でタイホよ、タイホ!」
言うがはやいか、ハルヒはどこに隠し持っていたのか、そいつをガシャンと俺の腕にはめた。
「どこから出したんだ、こんなもの!?」
「女の子のカバンはね、4次元ポケットも真っ青なのよ! 中見たら火傷するわよ」
「ハルヒ、おまえ懲りたんじゃなかったのか? ひょっとして、変な趣味にでも目覚めたのか?」
「こ、このエロキョン! とにかく、今日はあたしの家に来なさい。夕食からおやすみまで、しっかり調教してあげるから覚悟しなさい!」
 いや、調教って、それがおかしいと言ってるんだ! おい、長門!朝比奈さん、ついでに古泉! 何、やれやれ、って顔で立ち去ろうとするんだ。おい、まってくれ!















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