ハルヒと親父 @ wiki

ハルヒと親父1

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haruhioyaji

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「なによ。ずいぶんとご機嫌ね?」
 カーペットに寝転んでTVを見てるのは親父。いい大人が日曜の朝からアニメ見ておもしろい?
「そうとも。気分がいい。だが、お前には負けそうだ」
「どういう意味かしら?」
「年頃の娘の幸せそうな姿を見るのは親冥利に尽きるが,男親としては寂しさに悲しさが添加されるようだ」
「な・に・が・言いたいのかしら?」
「ハル、お父さんと遊んでいいの? 思ったより時間過ぎてるわよ」
 と助け舟を出したのは母さん。どっちにとっての助け舟かしらね。
「ええ、うそ。やばい。じゃ、行ってくるね」
「まて娘。行きがけの駄賃だ」
 そういってバカ親父が何か放ってくる。と、と、と、キャッチ。え、あたしの携帯? 夕べ、居間でテレビみながらメールして、そのままだったんだ。
「心配するな。何も見てない。それから充電なら、しといた」
 何も聞いてないでしょ! ……見てたら殺すけどね。
「楽しんでこい。だが、孫はまだいらんぞ」
「母さん、グーで殴っといて。いってきます!!」
「はいはい、いってらっしゃい」
 ああ、もう! だから親父が家にいると、調子狂うのよ! 
 今日だって、ほんとだったらキョンに迎えに来させるはずだったのに。キョンの奴、「俺はかまわんぞ」って言ってたけど、あたしがかまうの! 
 あんなセクハラ親父、見せられないわよ。こんなあたしを見せたくない、ってのもあるけど。


「いっちまったか」
「お父さん、さみしそうなのに、何だかうれしそうですね」
「何故だか当てたら、母さん、デートしよう」
「そうですね。とてもいいお天気で、お洗濯日和だこと」
「わかった、ヒントを出そう。これ、なーんだ?」
「お父さんの携帯でしょ。……あなた、まさか? またハルに怒られますよ」
「俺の娘のくせして、機械に弱いからな、あいつ」
「機械に弱いというより、せっかちなんですよ、お父さんに似て」
「『携帯なんて電話とメールができれば十分よ!』って、どこの親父かと思うよ」
「で、何したんですか?」
「あいつはマニュアルなんて絶対読まないからな。自分の携帯の機能も知らないんだ。母さん、最近の携帯にはGPS機能というのがあってな」
「はあ。なんだか、わかっちゃいましたよ」
「さすがだな、母さん。デートしよう」
「はいはい。でもハルの邪魔しちゃ駄目ですよ」
「それぐらいの慎みはある。だが歯止めが効かない恐れもある。だから、母さん」
「デートというか、お守りじゃありませんか。……すこし支度に時間がかかりますよ」


 最悪よ、最悪。
 集合場所(じゃなくて今日は待ち合わせ場所よね)には約束の10分前に着いたわ。予定では30分前につきたかったとこだけど。
 物陰から恐る恐る覗くと、キョンの奴はまだそこにはいなかった。そこにはね。
「なにしてるんだ、ハルヒ」
「!」
 いきなり背後から声かけないでよね!
「あたしがどっかのスナイパーなら、撃ち殺してるところよ……」
 じとっとした目でにらんでやる。
「おれも今来たところだ。どっちにしろ、今日は俺のおごりだから、安心しろ」
 缶コーヒーを二つ持って後ろから登場したキョンは、はあ、とため息をつく。でも、不機嫌というわけじゃないわね。まあ、これはもう癖みたいなものね。多分。
「あんたの情けは受けないわ」
 キョンの奴は一瞬あ然として、それから吹き出した。
「な、なんで笑うのよ!」
「いや、すまん。というか、おれはおまえに情けをかけた覚えは一度だってないぞ。まあ、かけられた覚えもないが」
 まだ笑ってるし。何がそんなにおかしいのかしら。
「し、知ってるわよ、そんなこと」
 少しくらいは、優しくしてくれてもいい、と思う時もなくはないけどね。まあ、いつだって、ある意味「やさしい」のだけれど。特殊すぎて、時々腹が立つわね。
「出掛けに何かあったか?親とやらかしたとか?」
 それに、普段は極端に鈍いくせに、時々ムダに鋭い。わざとやってるんじゃないかしら。
「親父と、ちょっとね」
「ケンカか?」
「ケンカというか、いたぶられた、わね」
 なに、その「お前がか?」みたいな顔は。むかつくわね。
「まあ、おまえの親だもんな」
「どういう意味?」
 あたしじゃなけりゃ、頬をはられて一発で退場ものよ。
「別に。まあ、強いて言えば、俺にも据えられる腹がなくはない、ってことだ」
「意味分かんない。ああ、言わなくいい!」
 あたしは、このバカの手を引いて歩き出す。この場で、これ以上の言葉は不要だわ。


「用意できたか。じゃ、出発!」
「ハルとは2時間遅れですけど」
「小娘には、それくらいのハンディはやらんとな。俺も鬼じゃない」
「……これで、結構仕事ができるっていうんだから、不思議ね」
「うん。多分世の中には2種類の人間が要るんだな。一つは壊す人間、もう一つは修復する人間。壊す人間がいるから新しいことが起こるし、直す人間がいるから毎日が続いていく。俺やハルヒは壊す方だし、おまえや、えーと……」
「キョン君」
「そうそう、そのキョン君は、直す方の人間だな」
「苦労しそうですね」
「俺は仲良くなれそうな気がする」
「不憫になってきますよ、キョン君が」


「なあ、おまえの家って、普通か?」
「はあ?なに?」
「ああ、NGワードだったか。いや、ただ家族仲とか、どうだと思ってな」
「それを知って、あんたはどうしてくれる訳?」
「ふう。確かにできることしかできないけどな。手順を踏めば、もう少しできるかもしれん」
「どういう意味?」
「いや、とにかく、雑用係にも、愚痴ぐらいは聞けるって話だ。おまえが話したいこと限定でな」
「いまは雑用係に用はないわ」
「そうか。じゃ、暫定彼氏志望者じゃどうだ?」
「・・・」
「……黙るなよ。情けないが、これでも、なけなしの勇気なんだ」
「出直してきなさい。あと『志望者』ってのは、外してきて」
「へ?」
「あー、もう、うっさい。あんたが変だから調子狂うわ。どうしちゃったのよ、今日は?」
「知らん。……父親って聞いたらかな?」
「言っとくけどね!」
「……おう」
「あたしは親父似だからね!」
 こ、こらキョン、なんでそこで笑うのよ!バカにしてんの!?


「おまえはキョン君に何度か会ってるんだろ?」
「ええ。よくハルを送って来てくれますし、遊びに来たことも何回か」
「拗ねてるように聞こえるかもしれんが、初耳だ」
「ええ、はじめて言いましたよ。拗ねてるんですか?」
「正直言うと拗ねてる」
「私は感謝してますよ」
「俺だって感謝してるよ。娘と軽口を言い合える日が来るなんてな。うれしくて頬刷りしたくなる」
「愛情表現が相変わらず下手ですね」
「いまのは冗談だぞ、母さん」
「私のも冗談ですよ」
「ハルヒの中学時代を思うとな」
「あら、『俺はハルヒを信じる。信じて待とうと思う』と言ってたじゃありませんか」
「父に二言はない。が、つらくなかったと言えば嘘になる」
「ハルヒ似のお父さんが、よく切れずに我慢しましたね」
「それ、ほめてくれてるんだろうが、ハルヒが俺に似てるんだ」
「どっちもどっちですよ」
「いや、時間の順序とか、遺伝とか、そういうのがあるだろう」
「冗談ですよ」
「で、母さん。映画と買い物と、どっちがいい?」
「映画見てから買い物するか、買い物してから映画を見るか、ですね」
「買い物はいいが、あまり荷物になると、映画も見にくいし、第一フットワークが悪くなる」
「あら、その後、追いかけっこでも?」
「娘と彼氏を追い回す、いかれた親父か。悪くないな」
「一生、口を聞いてもらえなくなりますよ」
「まあ、荷物なんか預けてもいいし、送らせてもいいか」
「とりあえず映画見てから、買い物で時間をつぶしましょうか」


「で、キョン君って、どんな奴なんだ?」
「そうですねえ。一言では言えないけれど、やさしい子ね」
「最近の男はみんなやさしいぞ。中には例外もなくはないが」
「ハルがどんなわがまま言っても、照れ隠しに怒っても、許してくれる。でも、ハルのためにならないと思ったら、嫌われようが苦言するし本気で怒ってくれる」
「ほんとはその役をやりたかったんだ」
「お父さんは何をやっても、真剣に怒っているときも、どこか楽しげですもの」
「そうでもない。特に娘に『楽しんでる』『好きでやってる』といわれのない非難を受けることほど悲しいものはないぞ」
「ハルはお父さんにはそうあって欲しいのよ。でも私はハルがちゃんと涙を流せる女の子に育ってうれしいわ」
「……」
「どうかしました?」
「いや、黙ったら少しは悲しげに見えるかなと思って」
「自分で解説が必要なら、まだまだですね」
「キョン君に聞いといてくれ。ハルヒの叱り方」
「『親のプライドが微塵もない』ってハルの声が飛びそうですねえ」
「あいつときたら、父親をグーでなぐるんだぞ。俺のお仕置きビンタはスウェイでかわすくせに」
「そんなの教えたの、お父さんじゃありませんか」
「父親のこめかみにハイキックするんだぞ。父親に関節技つかう娘が他にどこにいる?」
「それでも少しも効いてない振りして笑っているからですよ。あ、でもハイキックはキョン君に叱られたみたい。『スカートの中とかいろいろ見えるだろ』って」
「……」
「なんですか、そのOh, my god!! みたいな身振りは?」
「感情表現が下手なんだ」
「『別に減るもんじゃないでしょ!』ってハルが言い返したら、『減るんだよ。俺のHPとかLPとか、なんかそんなのが』とキョン君が」
「そんな話したのか?」
「ええ、ハルが声帯模写付きで話してくれたのよ。『自分のものでもないのに何言ってんのよ!』とか、ぶつくさ言ってたわね。あら、私の声真似もなかなかいけてた?」
「ハルヒが母さんにいじめられている映像が、何故だか頭に浮かぶんだが」
「ええ。ハルが照れ隠しに不機嫌ぶるのがかわいくて、ついついからかちゃうんだけど」
「今度そういうことがあったら、喜びは二人で分かち合おう。写メで送ってくれ」


「そんなに変なのか、ハルヒの親父さん」
 今日は日曜、俺的には近頃すっかり定番となった市内、もとい「市街探索」だ。参加者は、土曜に定例で行われる市内探索と違って、団長と団員その一。今、二人は移動中、電車の中で隣り合って立っている。
 前の日の探索の終わった後か、その夜の電話などで、日曜の集合時間とだいたいの行き先が決まる。目的は「市内探索」と大同小異、つまりあってないようなものだが、参加者によってはいくらかの意見の相違はあるかもしれない。あっても別にかまわん。他人と付き合うのは、いやそういう意味じゃないぞ、異なる意見の持ち主と共にいること、なんだろう。多分な。
「変ってもんじゃないわ。あれはヘンタイの域に達しているわね」
「さっき、ハルヒは親父さん似だ、と聞いたような気がしたんだが」
「何か言った!?」
「いや、続けてくれ」
「娘を叱る時まで、おもしろ半分なのよ。一応、顔は怒ってる訳。でも、目がいかにも
『怒り顔、演じてます』って感じにニヤケてるの」
「気のせいじゃないのか?」
「ないわよ。叱り終わったら、さっさと隣の部屋へ行ったの。で、こっそり後付けてみたら、突っ伏して、文字通りお腹を抱えてるのよ!『すまん、母さん。限界だ』だって。母さんもその時ばかりは離婚を考えたって。あたしもそれで一時、人間不信に陥ったわよ」
 突っ込んでいいのか、笑っていいのか、わからんぞ、ハルヒ。
「ある時、また親父のひどい悪ふざけで、何だったかは忘れちゃったけど、すごく頭にきて、親父のこめかみにハイキックをあびせたの。ああ、昔の話だし、あんたに会う前だし、部屋着に着替えてたし、スカートじゃなかったんだから、ノーカウントよ。……話もどすわ。とにかく親父の側頭部を蹴ったの。クリーンヒットだったわね。で、親父どうしたと思う? 屁でもないって顔でせせら笑ってるのよ。レバ—打ち→ガゼル・パンチ→デンプシー・ロールでとどめ刺そうとしたら母さんに止められたけど。ったく、思い出すだけで腹立つわ」
「子どもみたいだな」
 おまえみたいだ、とは言わなかった。いかに俺でもそれくらいの空気は読める。というか、そう言った際の「不幸な俺」の映像を思い浮かべることはできる。
「そうよ、ガキなのよ、ガキ!」
「しかし父親と殴り合ってる中高生は、ざらにはいないと思うぞ。男女問わず」
「誰と誰が殴り合ってるのよ!? 向こうがこっちに一方にやられてるんでしょ。直ちに修正しなさい!」
「いや、ハルヒのケリを頭にくらって立っていられること自体、想像しにくいんだが。お前の親父はレスラーか何かか? 首まわりがお前のウエストより太いとか?」
「フツーのサラリーマンだと言い張ってるけどね。ああ、でも『相手の攻撃をよけてもいい格闘家がうらやましい。どんな技でも一度は受けるのがプロレスラーだ』とか、ふざけた台詞を吐いてたことはあったわ」
「ハルヒ、それに似たようなセリフ、俺もマンガで読んだことあるぞ」
「ああ、そうなの。それ知ってたら、その時突っ込んでやったのに」
 やれやれ。なんだかハルヒの無駄な攻撃能力の育成環境を垣間見た気がする。


「お父さん」
「なんだ、母さん?」
「ロードショーじゃなくて名画座、というのはいいんですけど」
「すまんな。実は古い映画が好きなんだ」
「それは知ってますけど、この3本立て」
「ルトガー・ハウアー特集。『ブレードランナー』(1982年)、『ヒッチャー』(1986年)、『聖なる酔っぱらいの伝説』(1988年)。うむ、確かに右肩下がりだな。いい役者なんだが、この後、いい映画と役にめぐまれなかった」
「それはいいんですけど」
「あとサム・ペキンパーの『バイオレント・サタデー』(1983年)とリチャード・ドナー
『レディ・ホーク』(1985年)があれば完璧だったんだが」
「お父さんの見た映画は大抵見るようにしてるんですけど」
「それは、なにげにすごいな」
「『ヒッチャー』って、デートで見に来るような映画だったかしら?」
「ご立腹はごもっとも。しかし、いささか都合があってな。これ」
「携帯?」
「実は今さっき、ハルヒの携帯に特殊なメールを送った」
「大丈夫なんですか?」
「問題ない。このGPS機能のおまけだ。そのメールを送ると、ハルヒの携帯から、現在いる位置情報を知らせる返信メールが俺の携帯に来る。すると、地図の上にハルヒの現在位置が表示されるというシステムだ」
「いくら熱々カップルでも、メールが入ったら気付くんじゃないかしら?」
「恋する乙女の手を煩わすまでもない。今朝、ハルヒの携帯をいじって、『GPSメールを自動返信』モードにしといた。もともと迷子や徘徊老人の位置把握に使う機能なんだ」
「おもしろがって、その説明をハルにしないでくださいね。種明かしとか言って」
「駄目か?」
「そんな肉を川に落とした犬のような目で見ても駄目です」
「あいつの怒った顔を見るのが、唯一の生き甲斐なんだ」
「寂しい老後ね。いずれは出て行く娘ですよ」
「キョン君に婿に来てもらえばいい。あいつは話せる奴だ、多分」
「まあ、会ったこともないのに」
「もうすぐ会えるさ。だが今はまずい」
「どうしてです?」
「演出上の都合だ。さっきチェックしたところ、あいつらも映画を見るらしい」
「ロードショーを、ですか?」
「そう。だからあの界隈をうろうろしたくない」
「お父さん、嘘と尾行は下手ですものね」
「そうなんだ。よくサラリーマン社会でやっていけると思う」
「では、こうしましょう。交換よ」
「携帯をか。で、どうする?」
「お父さんはルトガー・ハウアーをご覧になって。私は買い物と尾行を楽しみます」
「母さん、今日はデエトだぞ」
「発音を気取っても駄目よ。デートなら、嘘でも私とルトガー・ハウアーを見る必然性を力説しなきゃ」
「ダシに使ったみたいで悪かった。素直じゃないんだ。ツンデレなんだ」
「本当にルトガー・ハウアーが見たかったのね」
「そっちじゃない。いや、完敗だ。最初から勝てる気がしない」
「では集合時間を決めましょ」
「12時半に○○屋(本屋)の哲学・思想書コーナーでどうだ? 誰も近づかん。その時間でもすいてるぞ。なんなら合言葉も決めようか」
「じゃあ、私が『ハルヒ』といったら、あなたは『キョン』ね」
「逆にしないか? 父親の男心も察してくれ」
「いいけれど、ダメージという点では同じじゃないかしら」
「本当だ。ハートブレイクだ、母さん」
「はいはい。じゃあ、また後でね」


 「映画、よく見るのか?」
 キョンが尋ねる。映画館でする質問じゃないわね。間抜けっぽい。キョンらしいといえば、キョンらしいけど。
 「そうでもないわ。親父は家にいると絶えず何か見てるけど。多分、その反動ね」
 キョンはいつものように少し困った風に笑う。あたしの方がもっと自然に笑ってるわね。それは多分、こいつの前だから。以前は少し悔しい気がしたけど、今は認めてあげるのもやぶさかじゃない。というくらいには、寛大になれた気がする。「寛大」というには、ほんとは程遠いけどね。はあ、自分につっこむ癖がついた気がするわ。誰のせいかしらね。
「で、今日の映画、おもしろいんでしょうね?」
「正直よくわからん。ふつうの映画とごくふつうの映画とへんな映画とすごくへんな映画があったんだが」
「なによそれ?」
「今、この辺りでやってる映画だ。あとは、怖い映画とすごく怖い映画だったな」
「すごく怖い映画がよかったわね」と言ってやると、キョンの顔に少しだけど焦りの色が見える。そこはポーカーフェイスで華麗にスルーでしょ。いつもみたいにやる気なさそうな顔でいいのよ。あたしはニヤリと笑ってやる。
「まあ、ヒロインが白血病で死ぬとかでない限り、暴れ出さないわよ」
 声には出さないけど、やれやれ、って言ってる顔ね。
「まあ、『暴れる』と口で言ってるうちは大丈夫か」
 うっさいわよ、キョン。


「ハルヒ」
「キョン。……母さんの言うとおりだった」
「何がです?」
「映画だ。『ヒッチャー』。確かにデエトで見る映画じゃない」
「そうですよ」
「ごついおっさんが、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」
「あらあら」
「殺しても死なないんだよ、そのおっさん」
「ルトガー・ハウアーですから」
「それでさらに、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」
「お昼、どうします?」
「携帯、とりかえてくれ」
「はい」
「ピ。ピ。ピ。……おいおい」
「どうしました?」
「あいつらだ。高校生らしく、ファストフードで済ませると思ったんだがな」
「この地図、小さいわ。どの辺りにいるのかしら」
「ここだ。こじゃれたイタメシ屋なんかあるところだ」
「よくそんな細かいところまでわかりますね」
「この辺りのメシ屋、ゲーセンの類いはすべて暗記した。基本だ」
「少年課の刑事さんみたいね。娘に似て、無駄に高いスペックね」
「娘が俺に似たんだ。……無駄に高いか?」
「キョン君が奮発したんですよ、きっと」
「イタメシ屋か? ランチだと1500円からある」
「そこまで覚えてるの?」
「基本だ……無駄に高いかな?」
「ええ、きっと。でも、嫌いじゃありませんよ」
「よかった。凹むところだった」
「で、鉢合わせはまだ避けたいの?」
「劇的な登場と行きたいもんだ」
「すてきな昼食と、わたしたちもいきたいわ」
「ガキが来そうにないそば屋があるんだが。そのイタ飯屋からすると駅を挟んで反対側だ」
「落ち着いて食べられそうね。天ざるなんて、どうかしら?」
「人におごりたくなるほど、うまいのが食える」
「すてきね。ごちそうになるわ」
「イエス、マム」


 映画は可もなく不可もなく、といった感じだった。
 泣かせどころが2〜3カ所、笑いどころが5〜6カ所。まあ,普通に「へんな映画」だったわ。
 それも、前半はハラハラドキドキ手に汗にぎって見てたのに、後半はグーグーいびきかいて寝てる奴ほどではなかったわね。呆れるのを通り越して、笑えたわよ。
 言い訳がまた古典的というかベタというか、「明日が楽しみで、夕べ寝られなかった」と。あんた、何時代の人間よ? 思いついても普通口に出来ないわよ。事実なら、なおさらね。
 まあ、あたしも終わり三分の一は寝てたし、この件はこれ以上追求しないわ。あんたも忘れなさい。いいわね、キョン? いいのよ。こういうのは何を見るかより、誰と見るかが,重要なのよ。自爆?どこの誰が? へえ、あんたも言うようになったわね。でも、顔真っ赤にしてちゃ説得力は1ピコグラムもないわよ。うっさい。トマトとか言うな。指をさすな。小学生か?! ……ああ、待って。以後、恥ずかしいこと言う度に一回、グーで殴るから。はい、どうぞ。 ……ヘタレ。いくじなし。

 まあ、食事は、おいしかったわね。
「ほんと、食べてる時は幸せそうだよな」
 わるい? おいしいもの食べて幸せになるのは当然よ! 何食べても見境なく笑ってたら多幸症だけどね。あんたも、あんなにおいしいお弁当、持ってきてるんだから、笑顔で幸せを噛みしめて食べなさい。あれは、いつ取られるかわからんから、周囲を警戒してる表情だ? 上等よ、表へ出なさい! あ、そ。確かに混んでるしね。随分、並んでるわね。で、この後どうするの? はあ、誘ったの、あんたでしょ。しょうがないわね。ほら。何かって? 見てわかんない? 怪しげな収蔵品を展示してる博物館というか室内テーマパークの割引券。新聞屋が置いて行ったのよ。うっさい。行くの?行かないの? あたし?行くに決まってるでしょ。じゃあ、早く来なさい!


「で、どこで劇的な登場をするんです?」
「俺の計算だと、黄昏どきの展望台だな。みんな景色を見るふりをして、お互いを見ないお約束だから、若いアベックの宝庫だぞ」
「そこに乗り込むの?」
「命知らずだろ? 惚れたか?」
「あの二人、照れ屋だから、いっそ観覧車にするかもね」
「だから町の中にあんなもの建てるのは反対だったんだ」
「ロンドン・アイ、ふたりで乗ったわよね?」
「テームズ川は、心のふるさとなんだ」
「いいところでお父さんが現われたら台無しよね」
「馬に蹴られるような真似はしない。登場はその直後だ」
「『口づけを交わした日は、ママの顔さえも見れなかった』」
「なんだ、それ?」
「歌の歌詞ですよ」
「クールな自分を見失いかけた」
「ふつうですよ」
「目がきょどってないか?」
「ふつうよ」
「まあ、観覧車には爆破予告の電話をするとして、だ」
「いいけど、オカマ声はやめてね」
「母さん、念のため言っておくが、あれは悪ふざけだ」
「知ってるわ」
「信じてくれ」
「はいはい」


「結局、私たちが乗ることになったのね、観覧車」
「何事も予習復習だ。俺は照れ屋なんだ」
「行き当たりばったりも素敵よ。期待以上の事が起きるかもしれないし」
「たしかに。ぎちぎちのスケジュールだと、そもそもサプライズの生じる余地がない」
「どうしたの? 『しまった』って顔して」
「今のをハルヒに伝えるの忘れてた。ああ、親らしいこと、何もせずじまいだ」
「平気よ。どうせ聞く耳もたないもの」
「だが、母さん。あれは、ああ見えて勝負パンツをはいていくような娘だぞ」
「『お父さんの親心は、おじさんの下心』よ」
「なんだ、それ?」
「ことわざですよ」
「新しい自分を見つけ損なった」
「よかったですね」
「声、うらがえってないか?」
「大丈夫」
「しかし、こんな密室に二人きりで向かい合って、恥ずかしくて死ぬんじゃないか?」
「同じ側に隣り合って座る手もあるわね」
「ああ、それならお互いの顔を見なくて済む」
「こんなに近くにいるのに、もったいないわね」
「俺たちも、いいかげん素直になろう」
「あら、私はずっと素直ですよ」
「わかってる。我が家でツンデレは、俺と娘だけだ」
「三分の二いれば、憲法も変えられますよ」
「そうなのか?」
「違ったかしら」
「眼下の下界を見ろよ。人間がアリのようにたかってる」
「夜景には早いけれど、きれいね」
「母さん、吊り橋効果って知ってるか?」
「ええ、保健の時間に習いました。たしかシャクターの情動二要因説(1964)やダマジオのソマティック・マーカー仮説(2000)と一緒に」
「そうなのか?」
「違ったかしら」


「さあ、たっぷり楽しんだな」
「そうですね」
「あとは、若い連中をからかいに行くだけだ」
「ひかえめにね。『やーい、やーい』は、やめてね」
「あれ、嫌がるんだぞ」
「されるのが嫌というより、『これが自分の親』と思うのが嫌みたいですよ」
「うまいぞ、母さん。『親』と『嫌」をかけたんだな」
「いいえ」
「他に禁則事項はないかな?」
「女の子だから、残るような傷はちょっと」
「顔以外の傷は、見たらクーリング・オフは認めんぞ」
「ハルが小さい頃は、毎日、なま傷だらけで。きれいに治ってよかったわ」
「男の子がするような遊びしかしなかったからな」
「息子の方がよかったの?」
「息子だったら、俺が殺されてるか、殺してるよ」
「そうなの?」
「ああ、俺が息子だったらそうしてる」
「ふふ、ハルヒが女の子でよかったわ」
「心底そう思う。だが、うまく伝わらないんだ」
「表現方法を変えてみたら?」
「今度そうする。だが、恥ずかしくて死にそうだ」
「それもいい手かも」
「生まれ変わったら試してみる」
「あの子たち、この中にいるの?」
「隣のビルとつながってるチューブみたいのがあったろ。あれが展望台なんだ。今だと、夕日が正面でロマンチックだ」
「このロビーで待つの?」
「あそこの色の違うエレベータが展望台直通のやつ。あいつらは事がすんだら、あそこから出てくる予定だ。そっちに喫茶があるから、座れるし、お茶も飲める」









「ハルヒ、それとキョン君だったかな? Comment allez-vous?(コマンタレブー)」
「な、なにしてるのよ!?こんなところで」
「母さんと二人で青春してるんだ」
「まさか、つけてきたの? 最低!!」
「自分ばっかり幸せになれると思ったら大間違いだぞ。幸せは分かち合うもんだ」
「母さんまで、この悪魔に魂売ったの!?」
「キョン君、君はまだやり直せる。いっしょに日本へ帰ろう!」
「キョンに指一本でも触れたら承知しないわよ!」
「ラブラブだな、このツンデレ娘」
「親父にだけは言われたくないっ!」
「じゃあフラクラか?」
「娘相手にどんなフラグ立てようっての?」
「死亡フラグ」
「覚悟はできてるようね!」

 どうしたらいいのか、いや何がはじまったのか、見当もつかず途方に暮れていると、いきなり襟首をすごい力でひっぱられた。 ハルヒ?は前にいるよな、ってハルヒの母さん? おまえのアレは、母親ゆずりだったのかよ。
「少し離れて見てましょうね。キョン君までケガしたら大変」
「止めなくていいんですか?」 普通は娘の心配をしませんか?
「もう無理よね。こんなにおもしろいもの」
 ああ、最後の頼みの綱だったが、この人も駄目だ。
「仕事で家を空けることが多いせいかしら。会うと愛情表現が過激になっちゃうみたいなの」
 ころころ笑うところじゃありません。
「ハル、今日はキョン君も呼んで夕食よ。母さん、本気出すから、早くしとめて帰りましょう」
 ハルヒは顔は敵(父親)に向けたままだが、親指を立てて(いわゆるサム・アップだ)、多分「OK」の返事をした。
「いつもは、本気じゃないんですか」
 と、当たり障りなくて、どうでも良さそうなところに突っ込んでしまう。
「そう毎日だと家計がねえ。普段はどうしても時間とか値段とか効率を考えてしまうの。今日はそういうリミッターなしだから、楽しみにしててね。『さすがハルヒの母さんだ』ってところをお見せするわ」

 すみません。俺にはお見せできるようなものが何もないみたいです。
「いいのよ、そんな」
「今はこれがせいいっぱい……」
 どこかで聞いたようなことを言って、俺は闘争オーラの震源地へ、びびりながらも2歩、3歩踏み出した。
「一家団欒のところお邪魔してすみません」
「キョン君、下がっていろ。手負いの娘が何をするかわからん」
「このバカ親父!!」
 俺はすうと息を吸い込んで、低く押さえ込んだ、しかしよく通る声の出し方で言った。
「おいハルヒ、やめとけ」
「うっさい、邪魔するな!!」
「やめないとな・・・別れるぞ」
「「!!」」

 音速の壁を越えて父と娘が同時に俺につかみかかってきた。ああ、ハルヒのお母さん、後のことはお願いします。
「お、親の前で、だ、だ、だれが、あんたと、つ、付き合ってるみたいなこと言うな!!」
「……」
「親父、何黙ってるのよ!!」
「いや、突っ込もうか、おちょくろうか、嬉しいような、寂しいような、複雑な心持ちでな。ところでハルヒ」
「なによ!?」
「キョン君、もうオチてるぞ」
「あ」

 親の前だとか、いきなり既成事実だとか、パニっくって力の加減ができなかったとか、言い訳はしたくない。結局、意識を失ったキョンは親父が蘇生させて、そのまま親父がおぶって帰った。あたしが、と主張したんだけど、
「若い兄妹を売る奴隷商人に見られたらかなわん」
 という訳のわからない親父の言い分が通ったのだ。無理を通せば道理が引っ込むって奴だわ。
 母さんは母さんで、キョンの家へ電話をして何やら調子の良い嘘話をこさえて(確かにうちの娘が息子さんの首を絞めましたので、夕食を食べていってもらおうかと、とは言えないわよね)キョンの親御さんを説得し、その前に電話してあったのか、話が終わって建物の外に出ると、タクシーが私たちを出迎えていた。親父とキョンと母さんが後ろに乗って、あたしは一人、運転手さんのとなりの前の席。母さんが無言でそう促したのに従った。
 キョンといるところをうちの親に見られて、ううん、うちの親をキョンに見られて、どうしようもないくらい動揺してたのは確か。怒りをあおった親父に乗ったのも,混乱と照れを隠すため。そこにキョン、あんたまで乱入してきて、さすがの私もオーバーフローよ。パニックにもなるわ。でも、あんた、あたしを止めようとしたんだよね。それくらい、分かるよ。分かる過ぎるくらい。あんたがどういう奴で、あの場面に居合わせたら、何を考えて、どうしようとするかぐらい、百もお見通しよ。だから,今は自分が情けない。

「おい、こいつ。なかなかやるな」
 バカ親父が何か言ってる。もう黙っててよ。娘が泣いてるのに、責任ぐらい感じなさい。
「『こいつ』なんて呼ばないでよ。ちゃんと『キョン』って名前があるんだから」
「『キョン』は、ちゃんとじゃないだろ……。わかったよ。キョンはすごい奴だ」
「『キョン君』でしょ」
「はいはい。キョン君は、なかなかのもんだ」
「キョンが目覚ましたら、その無駄口、ふさいでよね」
「混乱に混乱を、か。ベタだがなかなか思いつかん。思いついても普通は選択せん。ずいぶんと修羅場をくぐってるのかな、この若者は?」
「知らないわよ」
「おいおい、知らなくていいのか?」
「知ってても、あんたに言う必要ないわ」
「そりゃそうだ」
 親父はそっぽを向いて、アヒルみたいに口をとがらせる。子どもみたい。恥ずかしいから止めて。

「昔、父さんの親友二人がな、ちなみに男と女で、そのうち夫婦になるんだが、ちょっとしたレストランで痴話喧嘩を始めた。気性の荒い二人でな、飛び交うのは怒号だけじゃすまなくなって、両方が同時にナイフとフォークを握りしめて立ち上がった。俺はそいつらの向かいで飯を食ってたんだが、店中の人間が父さんを注目しているのに気付いた。『止めてくれ』ということらしかった。その国の言葉は、まだあんまり得意でなかったんで、細かいことはわからんが。父さんは、とっさに自分たちが食事していたそのテーブルを蹴り飛ばしてひっくり返す手を思いついた。でかい音と衝撃で、気をそげるかもしれんと思ったんだ。だが、実行は躊躇した。テーブル・マナーはいくらか教えてもらったが、犬も食わないケンカにテーブルを蹴飛ばしても可、なんて常識はずれもいいところだからな。もう一度、他の手はないか考え込んだ。父さんも若かったから口では『常識なんてくそくらえ』と言っていたが、いざそんな場面に投げ込まれると、自分が骨の髄まで常識に染まってるのを思い知ったよ。結局、父さんがテーブルを蹴飛ばすよりも早く、女のフォークが男の胸にぶすり。……ハルヒ、全然信じてないだろ、今の話」
「親父、その話、怪談になってる」
「しょうがない。母さん、胸の傷を見せてやれ」
「バカじゃないの。刺されたのは男でしょ」
「そうだ。言ってなかったが、母さん、昔は男だったんだ」
「だったら、あたしはどこから生まれたのよ」
「そりゃ、おまえ、コウノトリをおびきよせて孕ませたんだ。だが、そのコウノトリは本当はハゲタカだったんだ」
「母さん、このバカ、いますぐ捨ててきて」
「父さんは、この若者、気に入っちゃたな。お前が捨てるなら、俺が拾うぞ。お前にオトされるようじゃ、少々線は細いが、なに海兵隊に2年もぶち込めば、口で糞たれる前と後にSir.をつける立派な若造になる」
「訳わかんない。捨ててないし、勝手に拾わないで」
「今時の若いもんを見直したってことだ。……よし、来年は冬コミにサークル参加するぞ」
「はあ?」
「サークル名も決めた。涼宮家を大いに盛り上げるソフィスケイトされた大人の団、略してSOS団だ。ガキは入れないから安心しろ」
「母さん、親父が壊れた。新しいの買っていい?」
「はいはい」
 はいはい、じゃないでしょ。誰か何とかして。キョン、いいかげん目をさましなさいよ。や、やっぱ駄目。寝てなさい。目が覚めても寝たふりしてて。


 気がつくと、事態は修羅場から、魅惑の食卓へと激変していた。
 俺たちはナプキンなどつけ、出ては下げられ、また出ては下げられていく何枚もの皿の上の料理を食べている。
「お、おい。ハルヒ」
「なによ。ちょっと、顔が近いって」
「すまん。しかし、これ家で出てくるような料理じゃないぞ」
「あの人は無駄になんでもできるのよ。若い頃、フレンチの店、してたこともあるみたいだし」
「まじか?」
「金持ちのじじいに金出させて、店出したんだって。シェフもギャルソンもソムリエもピアニストも全部自分ひとり。テーブルも一つっきりで予約のみ。親父と出会うまで続けてらしいんだけど。本人の話だし、あてになんないわ。『日本じゃないのよ』とか言ってたし」
「まじか?」
「小学校も途中までしか行ってないとか、14の時には日本にいなかったとか。そういう『伝説』みたいなことしか、自分のこと言わないの。たしかに語学は親父よりできるみたいだけど、発音はきれいだし。親父は何語しゃべってもカタカナね。あれでよく通じるわ。まあ母さんの方が、娘をからかわないだけマシだけどね。最近そうでもないけど」
 そこで何故「じとっ」とした目で俺をにらむ?
「わかんないなら、いいわ。あ、親父、醤油とって」
「フレンチに醤油はないだろ?」
「何言ってんの?このソースにも使ってあるわよ。だったらソイ・ソースとって」
「それ醤油と同じだ。母さん、このソースだが……」
「ええ、使ってますよ、お醤油」
「……キョン君、お互い苦労するなあ」
「はあ」
「愚かしくもバカバカしい店があるんだが、憂さを晴らしに今度飲みに行かないか?新しい友情のはじまりだ」
「キョン、知らない親父に着いて行っちゃ駄目よ。死刑だから」
 いや未成年だし。そんな店、行きたくないし。友人は選びたいし。親は・・・選べないんだよな。
「母さん、娘がグレた。次のと交換していいか?」
「次の、って何よ?」
「……教えない。だが、眼鏡っ子で巨乳とだけ、言っておこう」
「むー、巨乳は垂れるんだからね!」
 論点が違う!・・・よな?


  おわり




(別の日の食卓にて)

「そういえば、あたしが親父の頭を蹴って、親父が平気な振りして笑ってた話をしたら、キョンの奴、なんて言ったと思う?『子どもみたいだな』『でも、そういうの嫌いじゃないぞ、オレは』だって。ばっかじゃないの!」
「おお、心の友よ!!」
「あんたはジャイアンか!?」


  ほんとにおわり














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