ハルヒと親父 @ wiki

彼と彼女と彼女のメール

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haruhioyaji

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To:キョン
 4月に入って1週間も経ったわ。なのにキョン、あんたから一通もメールがないって、どういうこと!? 

 あたしだって入学式だの単位登録だの、その他で忙しいかったわよ!

 このアホキョン、なんとか言いなさい!!


To:ハルヒ
 すまん

 大学が始まって早々事故っちまった。

 相手も俺も大した怪我じゃないから心配すんな。


To:キョン
 ちょっと事故ってどう言うこと?相手って、誰かに怪我させたの?人身事故じゃないの?なんで、そんな大事なことを。

To:ハルヒ
 相手は同じ大学の学生だ。怪我も、もう大丈夫だから。

To:キョン
 そう。無事なら無事で、それでいいわ。

 それより、G.W.には帰ってくるんでしょうね?

To:ハルヒ
 ああ。

To:キョン
 わかったわ。詳しくはその時、聞くから。あんた、自分が思ってるのの百倍は鈍いんだからね。相手にちゃんとするのよ。

To:ハルヒ
 わかってる。


To:ハルヒ
 約束を破ってすまん。病院へ行ってた。あいつがまた手首を切った。
 医者には入院を勧められてる。

To:キョン
 あいつって?手首を切ったって、どういうことよ? 入院って、何よ、それ?

To:ハルヒ
 事故の相手だ。あいつは不安定だ。今は目を離せない。帰ったら詳しく話す。


To:ハルヒ
 誕生日、おめでとう。 


To:キョン
 自動発信のバースデイメールなんてよこして、むかつくわ。

 あんたがいない誕生日なんて、最悪よ。


To:キョン
 キョン、なんとか言いなさい!!


To:ハルヒ
 あいつがいてメールできない。しばらくメールしてくるな。絶対、連絡する。


To:キョン
 キョン、事故の相手って、リストカットしたのって、女の子?

To:キョン
 ねえ、キョン、《彼女》は今どこにいるの?

To:キョン
 答えなさい、キョン!


To:キョン
 あんたはお人よしだから利用されてるのよ!

 あんたがいなくなったらまた別の人にそうするわ。

 それが、どうしてわからないの!?


To:ハルヒ
 いまさらこんなことを言って、俺は卑怯者だと思う。おれはハルヒのことが好きだ。だが、目の前のこいつをほっとけない。


To:ハルヒ
 あなた、だれ?

To:ハルヒ
 キョンの何なの?

To:キョン
 キョンの携帯、勝手につかって! あんたこそ、誰よ!?

To:ハルヒ
 へえ、あなたがハルヒなんだ?
 何度アドレス消しても、ハルヒって人だけは復活するの。 故障かなんかかとおもったわ。

To:ハルヒ
 ねえ、あなた、生きてる人?死んでる人?

To:キョン
 生きてるわよ。あたりまえでしょ。

To:ハルヒ
 そう。わたしはもうすぐ死ぬわ。でもキョンは渡さないから。

To:キョン
 ちょっと、あんた、何いってんの?

To:ハルヒ
 Sleeping Beauty。永遠に眠って目を覚まさない。だからキョンはわたしを起こし続けるわ。ずっとそばにいてくれるのよ。彼がわたしを置いていけない人間だって、あなただって知っているでしょ?

To:キョン
 キョンはお人よしよ。やさしくて、困った人間を見捨てて置けない。口ではなんといおうとね。あんたはそこにつけこんでるのよ。

To:ハルヒ
 ふん、ずいぶんとお利口さんだこと。そこまでわかってるなら、あなたにはもうキョンは必要ないわ。あなたは強い人よ。さあ、さっさと自分の道を歩いていきなさい。キョンは誰にも渡さないわ。

To:キョン
 あんたはキョンの弱みにつけこんで、すがって、ただ依存しているだけ。

To:ハルヒ
 じゃあ、あなたはどうだっていうの?

To:キョン
 愛し合ってるわ。

To:ハルヒ
 はあ?

To:キョン
 愛し合ってる。あたしはあいつを愛してるし信じてる。あいつはあたしのことを愛してくれているし信じていてくれてる。

To:ハルヒ
 妄想もそこまでいくと怖いわね。何を証拠に?

To:キョン
 じゃあ、あんた、いま誰にメールしてるの?

To:キョン
 なんで見ず知らずのあんたが、あたしにメールできるの?

To:キョン
 あんたとあたしをつないでるのはキョン。キョンがどちらかの手を離したら、あたしたちは永遠にメールを交わすこともなかったわ。

To:キョン
 あたしを、あたしたちを、なめないことね。

To:ハルヒ
 いまさら、あなたに何ができるっていうの? 

To:キョン
 決まってるわ。あんたを叩き起こして、キョンを取り返す。死のうたって、そうはいかないわよ!

To:ハルヒ
 せいぜい遠くで吠えてなさい。わたしたち、一緒に暮らしているのよ。

To:キョン
 そう。まあ、そんなことだろうと思ってたけど。

ガチャリ

「おかげで探す手間がはぶけたわ。キョンはでかけてるのね」
「あ、あなた! 誰? まさか、ハルヒ? どうして?」
「二人で不動産屋巡りして探した部屋よ。合鍵くらい持ってるわ。夜行バスで、今朝にはこっちについてたの。強襲しようと思ってたけど、このタイミングでメールがあるなんてね」
「ハルヒ! おまえ?」
「ちょうどいいところに帰ってきたわね、キョン。修羅場をやりに来たわよ。また、あたしひとり蚊帳の外ってどういうこと? 一人で悩むなって言ってたのはあんたでしょ!」
「ハルヒ、こいつは病気なんだ。悪いと思ってる。しかしな……」
「ストップ。キョン、あんたにとってはこの娘は、病人で庇護の対象だろうけど、あたしにとってはただの恋がたきよ。さあ、名無しのあんた。どうするの? 悔しかったら、ここまで上がってきなさい!」
「な、なによ! あんたが先に出会っただけじゃないの!」
「だけじゃないわ。あたしも逃げようとしたことがある。でもね、あたしたちは選んだの、この世界をね。『夢』っていうんでしょうけど、キョン、あたしはあれを忘れる訳にはいかないの。あそこから、あたしたち、始まったんだもの」
「ば、ばかじゃないの? こんな男に固執して」
「名前は聞かないでおいてあげるわ。今度会った時、名乗れる名前があるように」
「もう会わないわ。あんた最悪よ」


「ハルヒ……」
「夜行バスで今朝着いたばかりなの。一睡もしてないわ」
「あ、ああ。少し眠るか」
「……キョンと出会ってなかったら、あたしがあの子だったのかな……?」
「ちがう。誰がなんと言おうと、おまえはおまえだ」
「それはそうと、キョン、一発殴らせなさい」
「お、おお」
ばきっ
「あと胸をちょっと借りるわよ。……泣こうと眠ろうと、あたしの勝手だから、何も言わないでよね」


●  ●  ●


To:キョン
 で、今度の休みも帰って来ないつもり?

To:ハルヒ
 バイトだ。やましいことは何もないぞ。

To:キョン
 あたしは何も言ってないわよ。胸に覚えがあるのかしら?

To:ハルヒ
 誰かさんが泣いてた感触なら胸に残ってるぞ。

To:キョン
 次、あったとき、胸に穴開くぐらい殴るからね。

To:ハルヒ
 ところでハルヒ、入っていいか?

To:キョン
 え、え、え? キョン? あんた、いま、どこにいんのよ?

To:ハルヒ
 ドアの前だ

To:キョン
 すぐそこにいるのに、何のメールよ!?

To:ハルヒ
 大事なことは、面と向かって言うんだったろ。

ガチャリ


















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