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小池婆」(2009/02/24 (火) 22:46:43) の最新版変更点

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 いわゆる「千匹狼」型説話のヴァリエーションです。  雲州松江(島根県)の小池という武家に仕える男(Aさん)がおりました。  このAさんが年末休暇のオフを実家で過ごしてリフレッシュし、年が明けてから主人の家に戻ろうとする道すがら、事件は起こりました。  檜山の山道で、Aさんの行く手を遮るように立ちはだかった狼の群れの恐ろしさ。しかもこいつらときたら、まるで『銀牙』に出てくる伊賀忍犬のごとく見事に統率がとれていて、大木の上に登ったAさんを意地でも食おうと次々ドッキングしながら高さを伸ばして梯子のようにAさんにせまりくる! こわい!  しかしあと一歩。ほんの一匹分の高さが足りず、Aさんに牙を突き立てるまでには及ばない。一番上の狼はそりゃもう悔しがって、フシュー、フッフッ、バボフォー! とか言って、『銀牙』でいったら失明のため戦線離脱を余儀なくされた時のベンみたいな悔しがり方をするわけです。  Aさんが樹上で胸をなで下ろす一方、しかしベンはまだ諦めてはいませんでした。 「そういえば、この近くにオレの知っている『男』がいるはずだ」みたいなことをベンが呟くと、その下にドッキングしていたスミス的な狼が 「なんだってェー。そいつは一体誰なんだ、ベン!?」的なことを言う。そうすると更に下にドッキングしているクロス的な雌狼が 「そう……ヤツの名は小池婆。あたしらの仲間うちで、『男』と認められた雌はあたしとヤツだけなのさ……」みたいなことを遠い目になりながら言う。そんなにすごいヤツがいるならひとっ走り呼んでくるぜ、と言ってスミスがどこかへ駆けていき、ややあってスミスが小池婆を連れて帰還。 「おっ、おおお~っ。ヤツがベン小隊長の認めた『男』かッ!」  そんなざわめきが一つのうねりとなって群れ全体に拡がり、軍団の士気を底上げします。Aさんもいったいどんな凄い狼がやって来たのかと気になって下を覗いてみると、スミスが連れてきたのはデカい猫でした。出オチです。男とか男じゃないとかそれ以前に、そもそもお前は狼ですらないではないか……というAさんのツッコミにも怯むことなく、大猫は狼梯子をのっしのっしと登ってくる。下の兵卒狼たちの間では「抜刀牙! 抜刀牙!」「八犬士! 八犬士!」などといったよくわからないコールが巻き起こりはじめる始末。どこまでも銀牙ネタで引っ張ろうとする狼たちにふつふつと怒りがわいてきたAさんは、目線の高さにぬっと現れた大猫の眉間目がけ渾身のひと太刀を浴びせます。たしかな手応え。そして大猫は地面に落下し、狼梯子も瓦解し、けだものたちは散り散りに逃げてゆくのでした。そして夜が明け、おそるおそるAさんが樹から下りてみると、大猫が落ちたあたりには主の家にあったはずの茶釜の蓋がのこされていたのでした。  Aさんがようやっとのことで主人の家に辿り着くと、家中は上を下への大騒ぎ。なんでも主人の老母がトイレに行く途中でつまづいて転び額に大怪我をし、なおかつ大事な茶釜の蓋が紛失するというダブルな悲運に見舞われているというのです。これにはAさんもさすがにピンときました。  主人は「わしが館をバリアフリー化しなかったばかりに母上がこんなことに……」と悲嘆に暮れ自らを責めさいなんでいましたが、Aさんは「今回の件にバリアフリーは関係ありません」と言って主を慰め、昨夜のいきさつを話し、そして証拠として茶釜の蓋を見せたのでした。  主人が老母の部屋を覗いてみると、母は布団をかぶって「おっ、おおお~」などと奥羽の戦士みたいな声で呻いていたので、やはりこれはと思い布団の上から刀で刺し殺してやりました。そして布団を剥いでみると、そこには大きな古猫の死骸がひとつ転がっていたのだそうです。 #pcomment(reply,enableurl)
 いわゆる「千匹狼」型説話のヴァリエーションです。  雲州松江(島根県)の小池という武家に仕える男(Aさん)がおりました。  このAさんが年末休暇のオフを実家で過ごしてリフレッシュし、年が明けてから主人の家に戻ろうとする道すがら、事件は起こりました。  檜山の山道で、Aさんの行く手を遮るように立ちはだかった狼の群れの恐ろしさ。しかもこいつらときたら、まるで『銀牙』に出てくる伊賀忍犬のごとく見事に統率がとれていて、大木の上に登ったAさんを意地でも食おうと次々ドッキングしながら高さを伸ばして梯子のようにAさんにせまりくる! こわい!  しかしあと一歩。ほんの一匹分の高さが足りず、Aさんに牙を突き立てるまでには及ばない。一番上の狼はそりゃもう悔しがって、フシュー、フッフッ、バボフォー! とか言って、『銀牙』でいったら失明のため戦線離脱を余儀なくされた時のベンみたいな悔しがり方をするわけです。  Aさんが樹上で胸をなで下ろす一方、しかしベンはまだ諦めてはいませんでした。 「そういえば、この近くにオレの知っている『男』がいるはずだ」みたいなことをベンが呟くと、その下にドッキングしていたスミス的な狼が 「なんだってェー。そいつは一体誰なんだ、ベン!?」的なことを言う。そうすると更に下にドッキングしているクロス的な雌狼が 「そう……ヤツの名は小池婆。あたしらの仲間うちで、『男』と認められた雌はあたしとヤツだけなのさ……」みたいなことを遠い目になりながら言う。そんなにすごいヤツがいるならひとっ走り呼んでくるぜ、と言ってスミスがどこかへ駆けていき、ややあってスミスが小池婆を連れて帰還。 「おっ、おおお~っ。ヤツがベン小隊長の認めた『男』かッ!」  そんなざわめきが一つのうねりとなって群れ全体に拡がり、軍団の士気を底上げします。Aさんもいったいどんな凄い狼がやって来たのかと気になって下を覗いてみると、スミスが連れてきたのはデカい猫でした。出オチです。男とか男じゃないとかそれ以前に、そもそもお前は狼ですらないではないか……というAさんのツッコミにも怯むことなく、大猫は狼梯子をのっしのっしと登ってくる。下の兵卒狼たちの間では「抜刀牙! 抜刀牙!」「八犬士! 八犬士!」などといったよくわからないコールが巻き起こりはじめる始末。どこまでも銀牙ネタで引っ張ろうとする狼たちにふつふつと怒りがわいてきたAさんは、目線の高さにぬっと現れた大猫の眉間目がけ渾身のひと太刀を浴びせます。たしかな手応え。そして大猫は地面に落下し、狼梯子も瓦解し、けだものたちは散り散りに逃げてゆくのでした。そして夜が明け、おそるおそるAさんが樹から下りてみると、大猫が落ちたあたりには主の家にあったはずの茶釜の蓋がのこされていたのでした。  Aさんがようやっとのことで主人の家に辿り着くと、家中は上を下への大騒ぎ。なんでも主人の老母がトイレに行く途中でつまづいて転び額に大怪我をし、なおかつ大事な茶釜の蓋が紛失するというダブルな悲運に見舞われているというのです。これにはAさんもさすがにピンときました。  主人は「わしが館をバリアフリー化しなかったばかりに母上がこんなことに……」と悲嘆に暮れ自らを責めさいなんでいましたが、Aさんは「今回の件にバリアフリーは関係ありません」と言って主を慰め、昨夜のいきさつを話し、そして証拠として茶釜の蓋を見せたのでした。  主人が老母の部屋を覗いてみると、母は布団をかぶって「おっ、おおお~」などと奥羽の戦士みたいな声で呻いていたので、やはりこれはと思い布団の上から刀で体を刺し貫いてやりました。そして布団を剥いでみると、そこには大きな古猫の死骸がひとつ転がっていたのだそうです。 #pcomment(reply,enableurl)

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