2010年6月5日
『姑獲鳥の夏』が昨年(2009年)に英訳されていた!という事実に衝撃を受けて、ほかにどんな日本のミステリが英訳されているか調べてみた。
気になるのは新しい作品がどれぐらい訳されているかということで、たとえば日本SFに関しては2009年夏から《Haikasoru》(「High Castle」を日本人ぽく発音した音らしい)というレーベルで翻訳が進められており、ほかにも数は少ないとはいえライトノベルもそれなりに英訳されている。では、ミステリはどうなのか?
乱歩の英訳(短篇集)は以前に買って持っているし、乱歩、横溝、あとは松本清張あたりはそこそこ訳されているだろうと予想できるが、一方で最近の作品はいったいどうなのか。乙一だとか、ライトノベルと隣接するあたりは訳されているかも……などと考えながら、amazon.comでいろいろ調べてみた。
調べ方
- 1.(2010年6月5日) 米国amazonでミステリ作家の名前で適当に検索し、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のところをたどっていく。
- 2.(2010年6月10日頃追加) 国際交流基金が作成している「日本文学翻訳書誌検索」を参考にして、赤川次郎2冊(国内で出版された英訳本)・陳舜臣1冊・西村京太郎1冊追加。
- 3.(2010年6月20日頃追加) 早川書房『ミステリマガジン』2007年6月号掲載の「ニッポン小説英訳本リスト」(早川書房編集部編)を参照し、佐々木譲1冊・船戸与一1冊追加。
ブログ「翻訳ミステリー大賞シンジケート」に寄稿した以下の記事も合わせてお読みください。
『本格ミステリー・ワールド2015』(南雲堂、2014年12月)に「日本作家の英米進出の夢と『EQMM』誌」(pp.22-26)を寄稿しました。
Index
リストの見方
- ミステリ・サスペンスからホラーまで、広く関連するジャンルの作家を集めています。また、作家で選んでいるので、リストの中にはミステリではないものも含まれています。
- 英訳が短編のみの作家については見出し化していない場合があります。英訳短編の雑誌掲載やアンソロジー収録についてはページ下方をご覧ください。
- ISBNをクリックすると米国amazonの該当ページが新規ウィンドウで開くようになっています。
- 当ページで示している英訳書の出版年は、あくまでもリンク先(amazon)の書籍の出版年を示しているにすぎません。たとえば、松本清張『点と線』の英訳"Points and Lines"(ISBN 0870114565)の出版年をこのページでは「1986年」としていますが、これはリンク先の英訳書が1986年に出版されたということを示しているだけであり、『点と線』が最初に英訳されたのが1986年だという意味ではありません。
- それぞれの書籍が最初に英訳されたのはいつか、ということについてはいつか追加で調査します。
あ
赤川次郎 (Jiro Akagawa)
- 長編および短編集
- Midnight Suite / 『真夜中のための組曲』 ISBN 4061860054 (Gavin Frew[ギャビン・フルー]訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》5、1984年)
- Three Sisters Investigate / 『三姉妹探偵団』 ISBN 4061860097 (Gavin Frew[ギャビン・フルー]訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》9、1985年)
- 短編
- Beat Your Neighbor Out of Doors / 「沿線同盟」(Gavin Frew訳)
- 米国『EQMM』1992年3月号
- アンソロジー『The Deadliest Games: Tales of Psychological Suspense from Ellery Queen's Mystery Magazine』(1993)に収録
+
|
Midnight Suite 収録作 |
Midnight Suite 収録作
The Car Park |
駐車場から愛をこめて |
The Wardrobe |
我が愛しの洋服ダンス |
If I Were You |
幸福な人生 |
The New Man |
見知らぬ同僚 |
A Dangerous Petition |
危険な署名 |
|
『真夜中のための組曲』と『三姉妹探偵団』の英訳は巻末に日本語による英文解説、単語解説を付した日本人向けの《講談社英語文庫》での刊行。日本の書店で販売された。英語圏の書店では流通していないと思われる。
秋月涼介 (Ryosuke Akizuki)
英語圏進出プロジェクト「
The BBB」の書き下ろし作品。日本語版とその英訳版が電子書籍で販売されている。
芥川龍之介 (Ryunosuke Akutagawa)
『日本探偵小説全集第11巻 名作集1』に採られている「藪の中」や、『文豪ミステリー傑作選』(河出文庫、1985年5月)に採られている「開化の殺人」、山前譲編『文豪の探偵小説』(集英社文庫、2006年11月)に採られている「報恩記」などは英訳がある。
芦辺拓 (Taku Ashibe)
- 長編
- Murder in the Red Chamber / 『紅楼夢の殺人』(2004) ISBN 4902075385 (黒田藩プレス、2012年1月)
- 短編
阿刀田高 (Takashi Atoda)
- 長編
- Prince of the Dark: Yamihiko / 『闇彦』(2010) (Wayne P. Lammers訳、日本ペンクラブ、2010年)(2010年の国際ペン東京大会で海外からの来賓に配布された。非売品)
- 短編集
- Napoleon Crazy and other stories / 「ナポレオン狂」ほか、全10編 ISBN 4061860194 (Stanleigh H. Jones[スタンレー・H・ジョーンズ]訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》19、1986年3月)
- The Square Persimmon and other stories / 「四角い柿」ほか、全11編 ISBN 0804816441 (Charles E. Tuttle Co、1991年4月)
- 短編
- The Visitor / 「来訪者」 (米国『EQMM』1988年12月中旬号掲載、Gavin Frew訳)
- Napoleon Crazy / 「ナポレオン狂」 (米国『EQMM』1989年3月号掲載、翻訳者名記載なし)
- Woman With Hobby / 「趣味を持つ女」 (『New Mystery』第1期第1号、1991年、Gavin Frew訳) 「こちら」で公開されている
+
|
Napoleon Crazy and other stories 収録作 |
Napoleon Crazy and other stories 収録作
Napoleon Crazy |
「ナポレオン狂」 |
短編集『ナポレオン狂』より |
|
My Friend in America |
「アメリカの友人」 |
ショート・ショート集『食べられた男』より |
|
Welcome Aboard |
「本日はようこそ」 |
ショート・ショート集『食べられた男』より |
|
The Visitor |
「来訪者」 |
短編集『ナポレオン狂』より |
1979年、第32回日本推理作家協会賞短編賞受賞作 |
The Wager of the Century |
「笑顔でギャンブルを」 |
ショート・ショート集『食べられた男』より |
|
Innocence |
「無邪気な女」 |
短編集『だれかに似た人』より |
|
The Perfect Gift |
「すばらしい贈り物」 |
ショート・ショート集『食べられた男』より |
|
The Transparent Fish |
「透明魚」 |
短編集『ナポレオン狂』より |
|
The man Who Was a Meal |
「食べられた男」 |
ショート・ショート集『食べられた男』より |
|
Disaster |
「凶事」 |
短編集『夢判断』より |
|
|
+
|
The Square Persimmon and other stories 収録作 |
The Square Persimmon and other stories 収録作
The Mongolian spot |
「モンゴル模様」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
Paper doll |
「紙人形」 |
短編集『風物語』より |
Dried fish and an electrical leak |
「干魚と漏電」 |
短編集『夢判断』より |
The destiny of shoes |
「靴の行方」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
Of golf and its beginnings |
「ゴルフ事始め」 |
短編集『ナポレオン狂』より |
The honey flower |
「蜜の花」 |
短編集『迷い道』より |
The glow of lipstick |
「紅(べに)の火」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
Night flight |
「夜間飛行」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
A treatise on count St. German |
「サン・ジェルマン伯爵考」 |
短編集『ナポレオン狂』より |
Floating lanterns |
「精霊流し」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
The square persimmon |
「四角い柿」 |
短編集『ガラスの肖像』より |
|
『The Square Persimmon and other stories』収録の「靴の行方」(The destiny of shoes)はアンソロジー『Japan: A traveler's literary companion』(2006年)にも収録されている。(訳者・訳文が同一かは不明)
阿部和重 (Kazushige Abe)
文芸評論家の池上冬樹氏が「日本推理作家協会賞をとってもおかしくない群像ミステリの一大傑作」(
リンク)と評した『シンセミア』が文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(JLPP)で英訳出版される予定。
『シンセミア』のミステリ、パルプ・ノワールとしての評価については講談社文庫版『シンセミア』(上下巻、2013年5月)巻末の池上冬樹氏による解説を参照のこと。
天樹征丸 (Seimaru Amagi)
漫画『金田一少年の事件簿』の原作者・天樹征丸による小説版が4作英訳されている。ただし講談社英語文庫および《Ruby books》での刊行なので、海外では流通していないと思われる。
- 金田一少年の事件簿シリーズ
- The new Kindaichi files / 『金田一少年の事件簿 オペラ座館・新たなる殺人』(1994) (玉置百合子訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》129、1996年)
- The new Kindaichi files 2: Murder on-line / 『金田一少年の事件簿 電脳山荘殺人事件』(1996) (玉置百合子訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》137、1998年)
- The new Kindaichi files 3: The Shanghai river demon's curse / 『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説殺人事件』(1997) (玉置百合子訳、講談社インターナショナル、《講談社英語文庫》144、1998年)
- The new Kindaichi files: Deadly thunder / 『金田一少年の事件簿 雷祭殺人事件』(1998) (玉置百合子訳、講談社インターナショナル、《Ruby books》5、1999年)
《Ruby books》は日本の英語学習者向けの叢書で、本文中の難しい英単語に日本語でルビがふられている。
綾辻行人 (Yukito Ayatsuji)
- 長編
- Another, Vol. 1 / 『Another』(2009) Kindle版 (Yen Press、2013年3月)
- Another, Vol. 2 / 『Another』(2009) Kindle版 (Yen Press、2013年7月)
- 短編
- 2012年12月刊行の日本SF英訳短編集『Speculative Japan 3』(黒田藩プレス書籍紹介ページ)に短編「心の闇」収録。
荒井曜 (Akira Arai)
日本・アメリカ・中国・韓国の出版社が共催し、世界に通用するエンターテインメント小説(日本語)を公募するゴールデン・エレファント賞の第1回大賞受賞作。2011年7月、日米同時刊行。(同回のもう1編の大賞受賞作、中村ふみ『裏閻魔』は日米のほかに中国・韓国でも刊行されている)
受賞作の英訳出版が確約されている新人賞には過去にランダムハウス講談社新人賞(2008-2009年)もあった。また、2012年募集開始のハヤカワSFコンテストは受賞作を英語および中国語に翻訳し電子書籍化することを約束している。
泡坂妻夫 (Tsumao Awasaka)
かつて『11枚のとらんぷ』(1976)の英訳計画があったが、出版には至っていないと思われる。
『幻影城』1977年3月号の編集後記(「編集者断想」)には以下のように書かれている。
■〈幻影城〉読者に、とっておきの嬉しいニュースをお知らせします。
〈幻影城〉から国際的作家現われる――泡坂妻夫氏の『11枚のとらんぷ』が遂にアメリカで英訳されることが決まりました。翻訳は映画『夜の大捜査線』でアカデミー賞を受賞したジョン・ポール氏と木琴奏者ナンバー1の平岡養一氏の異色コンビが当ります。
日本の長編探偵小説で英訳されたのは、在米の講談社から刊行された、松本清張氏の『点と線』に続いて『11枚のとらんぷ』が二冊目です。
上に引用した文中では「ポ」ールになっているが、ただしくはジョン・ボール(John Ball, 1911-1988)。アメリカのミステリ作家で、代表作は『夜の大捜査線』のタイトルで映画化された小説『夜の熱気の中で』。『ミステリマガジン』1966年11月号の扉ページには、ジョン・ボールが来日したとの記述がある。同誌1968年11月号にはジョン・ボール会見記が掲載されており、日本語を勉強しているとの情報がある。(ほかに1966年12月号、1976年4月号、1983年2月号にインタビュー等の記事、1980年2月号、1981年5月号に評論やアンケート)
『EQ』1979年1月号にアメリカのミステリイベントに参加した人物のレポートが載っているが、サインを求めるとジョン・ボールは英文とカタカナでサインをくれたという。同号に載っているジョン・ボールのコメント(p.160)「ごく一部の知識人を除いて、米国人は日本のミステリーのレベルを知らない。あれほどミステリーが愛読され、優れた日本のミステリーが存在することを知らされていない。残念なことですヨ。日本のEQ読者から優れた翻訳家(和文→英文)が出ること、世界で読まれるミステリーが一日も早く生まれることを心から望んでいます。」
『11枚のとらんぷ』の英訳はなぜ実現しなかったのだろう。平岡養一氏(1907-1981)がその頃に病気になっているらしくそれが原因だろうか。
大内茂男「推理小説界展望一九七六年」(『1977年版 推理小説年鑑 推理小説代表作選集』講談社、1977年)
「11枚のとらんぷ」は、久方ぶりに探偵小説独自の醍醐味を満喫させてくれる傑作として世評高く、すでに平岡養一とジョン・ボールによる共同英訳のアメリカにおける出版予定も伝えられている。
い・う・え
池波正太郎 (Shotaro Ikenami)
「和製ハードボイルド」とも評される仕掛人・藤枝梅安(ふじえだ ばいあん)シリーズ全7巻のうち最初の2巻が英訳されている。
- 仕掛人・藤枝梅安シリーズ
- Master Assassin: Tales of Murder from the Shogun's City / 『殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安 一』 ISBN 4770015348 (講談社インターナショナル、1991年)
- Two wives (おんなごろし)
- The uncertain assassin (梅安迷い箸)※日本では第3巻の『梅安最合傘(ばいあんもやいがさ)』に収録
- Four killers (殺しの四人)
- Autumn journey (秋風二人旅[しゅうふうににんたび])
- Leave him to his fate (後は知らない)
- New Year's noodles (梅安晦日蕎麦)
- 2000年に改題版『Ninja Justice: Six Tales of Murder and Revenge』(講談社インターナショナル、ISBN 4770025378)が出ている
- Bridge of Darkness: The Return of the Master Assassin / 『梅安蟻地獄 仕掛人・藤枝梅安 二』 ISBN 4770017286 (講談社インターナショナル、1993年)
- Spring snow (春雪仕掛針)
- Rabbit stew (梅安蟻地獄)
- Autumn rain (梅安初時雨)
- Bridge of darkness (闇の大川橋)
伊坂幸太郎 (Kotaro Isaka)
- 長編
- 短編
- The Precision of the Agent of Death / 「死神の精度」 (米国『EQMM』2006年7月号、「Passport to Crime」コーナー掲載)
現在、伊坂幸太郎の海外版権はエージェント会社「
コルク」が扱っている。2013年5月11日にNHKで放送された週刊ニュース深読み、特集「
世界に売り出せ! ニッポンの文学」にはコルクの社長の佐渡島庸平氏が登場。現在伊坂幸太郎の作品を村上春樹作品の英訳で知られるフィリップ・ガブリエル(Philip Gabriel)氏に訳してもらい、売り込み中とのこと。
石川智健 (Tomotake Ishikawa)
日本・アメリカ・中国・韓国の出版社が共催するゴールデン・エレファント賞の第2回大賞受賞作。
石田衣良 (Ira Ishida)
2013年5月23日、集英社が日本の小説の英訳の電子書籍販売を開始した。最初のラインナップは乙一『夏と花火と私の死体』(Summer, Fireworks, and My Corpse)、浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』(The Stationmaster)、そして石田衣良『娼年』(Call Boy)。このうち新たに訳されたものは『娼年』のみで、ほかの2作はすでに紙の書籍で英訳出版されていたものを電子書籍化したもの。販売は北米のSony Reader storeのみ。
その後、2013年8月29日に乙一『ZOO』、9月26日に乙一『暗黒童話』の販売が始まった(どちらもすでに英訳出版されていたもの)。上に貼った報道記事によれば、今後は矢野隆『鉄拳』(『蛇衆』で小説すばる新人賞を受賞した矢野隆によるゲーム「鉄拳」のノベライズ)、清水義範『迷宮』(1999)、高嶋哲夫『TSUNAMI』(2005)、嶽本野ばら『エミリー』、万城目学『偉大なる、しゅららぼん』など、年間10冊程度のペースで配信を続けていくとのこと。
内田康夫 (Yasuo Uchida)
- The Togakushi Legend Murders / 『戸隠伝説殺人事件』(1983) ISBN 0804835543 (Tuttle Publishing、2004年5月)
意外にも訳されているのは浅見光彦シリーズではなく、信濃のコロンボというシリーズの作品。
シュウ・エジマ(江島周) (Shu Ejima)
江戸川乱歩 (Edogawa Rampo)
英題 |
原題 |
ISBN |
出版社、出版年 |
備考 |
Japanese Tales of Mystery & Imagination |
(短編集) |
ISBN 0804803196 |
Tuttle Publishing、1989年12月 |
初版は1956年 |
The Boy Detectives Club |
『少年探偵団』 |
ISBN 4061860372 |
講談社英語文庫、1988年8月 |
amazon.comになし |
The Black Lizard and Beast in the Shadows |
『黒蜥蜴』と『陰獣』 |
ISBN 4902075210 |
黒田藩プレス、2006年1月 |
|
The Edogawa Rampo Reader |
(短編、エッセイ集) |
ISBN 4902075253 |
黒田藩プレス、2008年12月 |
|
Moju: The Blind Beast |
『盲獣』 |
ISBN 1840683007 |
Shinbaku Books、2009年5月 |
|
The Fiend with Twenty Faces |
『怪人二十面相』 |
ISBN 4902075369 |
黒田藩プレス、2012年3月 |
|
Strange Tale of Panorama Island |
『パノラマ島奇談』 |
ISBN 0824837037 |
ハワイ大学出版、2013年1月 |
|
+
|
Japanese Tales of Mystery & Imagination 収録作 |
Japanese Tales of Mystery & Imagination 収録作
The Human Chair |
人間椅子 |
The Psychological Test |
心理試験 |
The Caterpillar |
芋虫 |
The Cliff |
断崖 |
The Hell Of Mirrors |
鏡地獄 |
The Twins |
双生児 |
The Red Chamber |
赤い部屋 |
Two Crippled Men |
二癈人 |
The Traveler With The Pasted Rag Picture |
押絵と旅する男 |
|
+
|
The Edogawa Rampo Reader 収録作 |
The Edogawa Rampo Reader 収録作(短編小説のみ示す。収録エッセイについては黒田藩プレスの「 該当ページ」を参照のこと)
The Daydream |
白昼夢 |
The Martian Canals |
火星の運河 |
The Appearance of Osei |
お勢登場 |
Poison Weeds |
毒草 |
The Stalker in the Attic |
屋根裏の散歩者 |
The Air Raid Shelter |
防空壕 |
Doctor Mera’s Mysterious Crimes |
目羅博士の不思議な犯罪 |
The Dancing Dwarf |
踊る一寸法師 |
|
黒田藩プレスでは「D坂の殺人事件」と『パノラマ島奇談』の英訳も予定されていたが、そのうち『パノラマ島奇談』については中止になっている(英訳作業中に、ハワイ大学出版が同作の2012年末の英訳出版を発表したため)。少年探偵団シリーズは『怪人二十面相』以降も英訳版刊行予定。
黒田藩プレス公式サイト参照。
お
逢坂剛 (Go Osaka)
大阪圭吉 (Keikichi Osaka)
大沢在昌 (Arimasa Osawa)
- Shinjuku Shark / 『新宿鮫』(1990) ISBN 1932234373 (Vertical、2008年1月)
- The Poison Ape: A Shinjuku Shark Novel / 『毒猿 新宿鮫II』(1991) ISBN 1934287245 (Vertical、2008年12月)
岡崎大五 (Daigo Okazaki)
- Black Wave / 『黒い魎(みずは)』(Bento Books、201X年◆予定)
岡本綺堂 (Kido Okamoto)
- 短編集
- The Curious Casebook of Inspector Hanshichi: Detective Stories of Old Edo / 半七捕物帳 ISBN 0824831004 (University of Hawaii Press、2007年1月)※14編収録(収録内容は光文社時代小説文庫版第1巻と同じ)
- 短編
- その他
+
|
『The Curious Casebook of Inspector Hanshichi: Detective Stories of Old Edo』収録作(光文社時代小説文庫版第1巻と同じ14編) |
『The Curious Casebook of Inspector Hanshichi: Detective Stories of Old Edo』収録作(光文社時代小説文庫版第1巻と同じ14編)
The Ghost of Ofumi |
お文の魂 |
The Stone Lantern |
石灯籠 |
The Death of Kampei |
勘平の死 |
The Room Over the Bathhouse |
湯屋の二階 |
The Dancer's Curse |
お化け師匠 |
The Mystery of the Fire Bell |
半鐘の怪 |
The Daimyo's Maidservant |
奥女中 |
The Haunted Sash Pond |
帯取りの池 |
Snow Melting in Spring |
春の雪解 |
Hiroshige and the River Otter |
広重と河獺 |
The Mansion of Morning Glories |
朝顔屋敷 |
A Cacophony of Cats |
猫騒動 |
Benten's Daughter |
弁天娘 |
The Mountain Party |
山祝いの夜 |
|
半七捕物帳は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)の第1回対象作品(2002年)に選ばれ、英訳出版された。同事業ではほかに『半七捕物帳』のフランス語訳も出版された。またその後、重訳かどうかは分からないが、おそらく英訳・仏訳の出版を契機として、イタリア語訳やスペイン語訳も出版されている。
奥田英朗 (Hideo Okuda)
乙一 (Otsuichi)
英題 |
原題 |
ISBN |
出版社、出版年 |
備考 |
Calling You |
『きみにしか聞こえない―CALLING YOU』(2001) |
ISBN 1598168525 |
TokyoPop、2007年6月 |
|
GOTH |
『GOTH―リストカット事件』(2002) |
ISBN 1427811377 |
TokyoPop、2008年10月 |
|
ZOO |
『ZOO』(2003) |
ISBN 1421525879 |
VIZ Media LLC、2009年9月 |
Haikasoru |
Summer, Fireworks, and My Corpse |
『夏と花火と私の死体』(1996) |
ISBN 1421536447 |
VIZ Media LLC、2010年9月 |
Haikasoru |
『Summer, Fireworks, and My Corpse』は、『夏と花火と私の死体』(「夏と花火と私の死体」および「優子」)のほかに『暗黒童話』(Black Fairy Tale)も収録。
英訳版の『ZOO』は2009年度のシャーリイ・ジャクスン賞個人短編集部門ノミネート。
- 北米Sony Reader Storeにて電子書籍販売(Shueisha English Edition フェイスブック / 乙一特設サイト)
- 2013年5月23日発売 Summer, Fireworks, and My Corpse / 『夏と花火と私の死体』(「優子」も収録)
- 2013年8月29日発売 ZOO / 『ZOO』
- 2013年9月26日発売 Black Fairy Tale / 『暗黒童話』
小野不由美 (Fuyumi Ono)
か行
木内一裕 (Kazuhiro Kiuchi)
貴志祐介 (Yusuke Kishi)
- The Crimson Labyrinth / 『クリムゾンの迷宮』(1999) ISBN 193223411X (Vertical、2006年10月)
北方謙三 (Kenzo Kitakata)
『City of Refuge』(逃がれの街)は遅くとも2010年春には米国amazonにデータが登録されていたが、(amazonのデータで見る限り)たびたび発売が延期になり、2012年11月にやっと発売された。
『檻』は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)の第1回対象作品(2002年)に選ばれ、英訳出版された。
京極夏彦 (Natsuhiko Kyogoku)
- The Summer of the Ubume / 『姑獲鳥の夏』(1994) ISBN 1934287253 (Vertical、2009年8月)
- Loups-Garous / 『ルー=ガルー ― 忌避すべき狼』(2001) ISBN 1421532336 (VIZ Media LLC、2010年5月) - Haikasoru
- Why Don't You Just Die? / 『死ねばいいのに』(2010)(iPhone向けアプリ及びiPad向けアプリでの販売、講談社、2011年1月)
2011年1月、すでに販売されていたiPhone及びiPad向けアプリの『死ねばいいのに』がアップデートされ、英訳『Why Don't You Just Die?』(訳:Takami Nieda)が読めるようになった。下に貼った講談社が配信したPDFによれば、「世界同時配信開始」とのこと。
桐野夏生 (Natsuo Kirino)
英訳版『OUT』は2004年、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)の1つであるエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされた。(受賞したのはイアン・ランキン『甦る男』[2003年邦訳、ハヤカワ・ミステリ])
栗本薫 (Kaoru Kurimoto)
小池真理子 (Mariko Koike)
さ行
桜庭一樹 (Kazuki Sakuraba)
佐々木譲 (Joh Sasaki)
佐藤春夫 (Haruo Sato)
『怪奇探偵小説名作選4 佐藤春夫集 夢を築く人々』(ちくま文庫、2002年)の収録作では、「西班牙犬の家」「指紋」「美しき町」の英訳がある。
佐藤友哉 (Yuya Sato)
- 【雑誌掲載】Gray-Colored Diet Coke / 「灰色のダイエットコカコーラ」(2002) ISBN 0345503570 (Del Rey、2009年6月、アメリカ版ファウスト2号に掲載)
島田荘司 (Soji Shimada)
- Tokyo Zodiac Murders: Detective Mitarai's Casebook / 『占星術殺人事件』(1981) ISBN 4925080814 (IBC Books、2005年9月)
米国EQMMに中編「Pの密室」の英訳掲載(2013年8月号)。
『占星術殺人事件』は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)の第1回対象作品(2002年)に選ばれ、英訳出版された。
清水義範 (Yoshinori Shimizu)
鈴木光司 (Koji Suzuki)
『リング』は世界中で翻訳出版されている。短編集『生と死の幻想』の英訳『Death and The Flower』(
ISBN 1934287008)が近日刊行予定??
清涼院流水 (Ryusui Seiryoin)
日本の作家を英語圏へ進出させるためのプロジェクト「The BBB」を進めている(公式サイト 2012年12月1日公開
The BBB: Breakthrough Bandwagon Books)。
自作の『キング・イン・ザ・ミラー』(PHP研究所、2010年10月)は自ら英訳し、2012年11月より電子書籍として販売している。このプロジェクトにはほかに、メフィスト賞作家の蘇部健一、積木鏡介、矢野龍王が参加している。
清涼院流水の小説の英訳は『キング・イン・ザ・ミラー』が初だが、小説以外では講談社の文芸誌『ファウスト』の北米版1号および2号に清涼院流水のコラム「ヤバ井でSHOW」の英訳が載っている。
なお杉江松恋氏も以前にブログで日本ミステリの英訳について書いている(「
(8/18)異文化交流」、2009年8月18日)。
瀬名秀明 (Hideaki Sena)
- Parasite Eve / 『パラサイト・イヴ』(1995)
蘇部健一 (Kenichi Sobu)
- 短編「叶わぬ想い」(2005)/ The Hopeless Dream (清涼院流水訳、The BBB、2012年12月)
- 短編「きみがくれたメロディ」(2005)/ Your Melody (清涼院流水訳、The BBB、2014年3月)
『六とん2』(2005年)収録の短編SFミステリ「叶わぬ想い」が英語圏進出プロジェクト「
The BBB」にて英訳され、電子書籍で販売されている。同短編集の「きみがくれたメロディ」も英訳される予定。
曽野綾子 (Ayako Sono)
『天上の青』は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)の第1回対象作品(2002年)に選ばれ、英訳出版された。
た行
高木彬光 (Akimitsu Takagi)
- The Tattoo Murder Case / 『刺青殺人事件』 ISBN 1569471568 (Soho Crime、2003年7月)
- Honeymoon to Nowhere / 『ゼロの蜜月』 ISBN 1569471541 (Soho Crime、2003年7月) ※『No Patent on Murder』という英題で出版されたこともある
- The Informer / 『密告者』 ISBN 156947155X (Soho Press、2003年7月)
高嶋哲夫 (Tetsuo Takashima)
- Fallout / 『メルトダウン』(2003) ISBN 1934287156 (Vertical、2013年1月)
- 【電子書籍】『TSUNAMI』(2005年)がShueisha English Editionより発売予定。
『Fallout』(メルトダウン)は遅くとも2010年春には米国amazonにデータが登録されていたが、(amazonのデータで見る限り)たびたび発売が延期になり、2013年1月にやっと発売された。
高田崇史 (Takafumi Takada)
The BBBにて、「三人小坊主: 千葉千波の事件日記」が英訳される予定。英訳者:清涼院流水。『試験に出るパズル 千葉千波の事件日記』に収録の短編「夏休み、または避暑地の怪」の改題か?
高橋克彦 (Katsuhiko Takahashi)
- The Case of the Sharaku Murders / 『写楽殺人事件』 ISBN 0857281291 (Thames River Press、2013年9月)
文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)で英訳出版された。
高見広春 (Koushun Takami)
- Battle Royale / 『バトル・ロワイアル』(1999)
谷崎潤一郎 (Junichiro Tanizaki)
- 「私」(創元推理文庫『日本探偵小説全集第11巻 名作集1』や集英社文庫『谷崎潤一郎犯罪小説集』に収録されている作品)
- The Thief (谷崎潤一郎『Seven Japanese tales』に収録、1963年)
- The Thief (アンソロジー『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』に収録、John L. Apostolou編、1987年6月)
- 「秘密」(ちくま文庫『明治探偵冒険小説集4 傑作短篇集 露伴から谷崎まで』に収録されている作品)
- The Secret (谷崎潤一郎『The gourmet club: a sextet』に収録、講談社インターナショナル、2001年)
- 「柳湯の事件」(集英社文庫『谷崎潤一郎犯罪小説集』に収録されている作品)
- The Incident at Willow Bath House (『Studies in Modern Japanese Literature: Essays and Translations in Honor of Edwin McClellan』に収録、1997年)
『日本探偵小説全集第11巻 名作集1』に「私」とともに収録されている「途上」はおそらく英訳されていない。集英社文庫『谷崎潤一郎犯罪小説集』には「柳湯の事件」、「途上」、「私」、「白昼鬼語」が収録されているが、「白昼鬼語」もおそらく英訳はない。
陳舜臣 (Shunshin Chin)
- Murder in a Peking Studio / 『北京悠々館』(1971) ISBN 0939252155 (Arizona State Univ Center for Asian、1986年4月)
辻原登 (Noboru Tsujihara)
英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞(最優秀翻訳ミステリ賞)の選考委員であるKaren Meek氏がブログで公開している2013年度用の「
ノミネート資格のある作品一覧」には『ジャスミン』も入っている。
『ジャスミン』は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)の第2回対象作品(2005年)に選ばれ、英訳出版された。
積木鏡介 (Kyosuke Tsumiki)
英語圏進出プロジェクト「
The BBB」の書き下ろし作品。日本語版とその英訳版が電子書籍で販売されている。
戸川昌子 (Masako Togawa)
な行
中井英夫 (Hideo Nakai)
短編「地下街」の英訳「Underground City」が英語圏のウェブマガジン『Words without Borders』の2012年7月号に掲載された(
リンク)。
中里友香 (Yuka Nakazato)
- Silver Wings of the Campanula / 『カンパニュラの銀翼』(第2回アガサ・クリスティー賞受賞作)(Bento Books、2014年11月◆予定)
中村文則 (Fuminori Nakamura)
- The Thief / 『掏摸(スリ)』(2009) ISBN 1616950218 (Soho Crime、2012年3月)
- The Rule of Evil and the Mask / 『悪と仮面のルール』(2010) ISBN 1616952121 (Soho Press、2013年6月)
- Last Winter, We Parted / 『去年の冬、きみと別れ』(2013) ISBN 1616954558 (Soho Press、2014年10月◆予定)
『掏摸(スリ)』は2009年の出版物を対象とする第4回大江健三郎賞の受賞作。大江健三郎賞は受賞作の英訳(またはフランス語訳・ドイツ語訳)の出版を約束している賞で、大江健三郎が1年間の出版物(小説に限らず、評論等も含まれる)から選出する。
『掏摸(スリ)』は日本ではあまりミステリとは見なされていないと思うが、松本清張『砂の器』や高木彬光『刺青殺人事件』を出版しているSoho Crimeからの出版であるのでリストに加えておく。米国amazonで「この商品を買った人はこんな商品も買っています」を見てみると、東野圭吾『容疑者Xの献身』や北欧のミステリ作家(ユッシ・エーズラ・オールスン、オーサ・ラーソン、アンネ・ホルト、ジョー・ネスボ等々)の作品が並んでいるので、やはりアメリカでは「クライム・フィクション」として受容されているようである。
『掏摸(スリ)』は2013年1月にはフランス語訳"
Pickpocket"も出版された。
夏樹静子 (Shizuko Natsuki)
1977年のエラリー・クイーン(フレデリック・ダネイ)初来日の際に夏樹静子は京都散策の案内役を務め、それ以来交流が続いた。(フレデリック・ダネイは1982年9月に死去)
『Ellery Queen's Japanese Golden Dozen: The Detective Story World in Japan』(エラリー・クイーン編、タトル商会、1978年)に収録
- 「断崖からの声」 / Cry from the Cliff
米国EQMM掲載 (11編訳載。日本の作家で最多。[次点の松本清張は4編])
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
「質屋の扉」 |
The Pawnshop Murder |
1980年5月号 |
アンソロジー『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』(1987)に収録 |
「足の裏」 |
The Sole of the Foot |
1981年9月号 |
アンソロジー『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』(1987)に収録 アンソロジー『Murder Intercontinental: Stories from Ellery Queen's Mystery Magazine and Alfred Hitchcock Mystery Magazine』(1996)に収録 |
「愛さずにはいられない」 |
I Can't Help Loving Him |
1982年7月号 |
|
「階段」 |
The Stairs |
1985年6月号 |
|
「狙われて」 |
A Very Careful Man |
1987年1月号 |
|
「カビ」 |
The Taste of Cocoa |
1988年3月号 |
|
「毒」(旧題・モーテルの毒) |
The Love Motel |
1989年7月号 |
Robert B. Rohmer訳/アンソロジー『The Year's Best Mystery and Suspense Stories 1990』(1990)に収録 |
「艶やかな声」 |
The Woman on the Phone |
1990年5月号 |
Robert B. Rohmer訳 |
「酷い天罰」 |
Divine Punishment |
1991年3月号 |
Gavin Frew訳/アンソロジー『The Oxford Book of Detective Stories』(2000)に収録 |
「深夜の偶然」 |
A Midnight Coincidence |
1992年5月号 |
Gavin Frew訳 |
「独り旅」 |
Solitary Journey |
1994年6月号 |
Gavin Frew訳/アンソロジー『Women of Mystery III』(1998)に収録 ※「ひとり旅」は別作品 |
※「モーテルの毒」は初出時のタイトル。1988年の短編集『湖・毒・夢』刊行時に「毒」に改題された。
※1979年10月のエラリー・クイーン(フレデリック・ダネイ)夫妻の来日時、兄の五十嵐均がクイーンに夏樹静子の短編の英訳原稿を渡し、『EQMM』に載せてもらえないかと頼んでいる。クイーンは一読してすぐに掲載を決めたという(ローズ・ダネイ「エラリイ・クイーン夫妻最後の旅」[仙波有理訳]、「第5回 夏樹さんの短篇」『ミステリマガジン』1989年5月号)。これが1980年5月号に掲載された「質屋の扉」だろうか。
米国『Ellery Queen's Prime Crimes』掲載
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
「遠い秘密」 |
It's Best Not To Listen |
3号(1985年秋号) |
|
「遇わなかった男」 |
The Missing Alibi |
4号(1986年) |
|
『New Mystery』掲載
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
「死ぬより辛い」 |
Harder Than To Die |
第1期第2号、1992-93年 |
|
「独り旅」か? |
Solitary Journey |
第2期第2号、1994年 |
同時期に米国『EQMM』に載ったものと同一? |
以上の掲載作のうち「足の裏」について、『夏樹静子のゴールデン12(ダズン)』(文藝春秋、1994年)巻末の鼎談(夏樹静子、五十嵐均、権田萬治)で夏樹静子の兄の五十嵐氏は以下のように語っている。
これは一九八二年にヨーロッパで、当年の最優秀短篇に選ばれて、イラスト入りで新聞掲載されたりもしました。アメリカのEQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリーマガジン)に英文で載ったのが、フランス語やスウェーデン語に転訳されたのですが。
最優秀短編に選ばれたということについて、詳細は分からない。
『Wの悲劇』の英訳について
マーク・シュライバー(高山真由美訳)「日本ミステリ英訳史――受容から創造へ」(『ミステリマガジン』2007年6月号)、p.21より引用
これはあまり知られていないことだが、翻訳小説のマーケティングにおいて、小説に大きく編集が加えられるだけでなく、欧米の読者に受け容れられやすいように物語自体が書き換えられることもある。夏樹静子の『Wの悲劇』が Murder at Mt. Fuji になったときにも、日本語版の原作には出てこないアメリカ人女性が主役のひとりとして新たに登場した。
夏樹静子は《トーキョー・ジャーナル》誌(一九八七年七月号)のインタヴューに答え、こう言っている。「その部分は翻訳用の原稿を送るまえに書きました。変更を加えれば、つまり、理解できる登場人物がひとりでもいれば、外国の読者にもより興味を持ってもらえると思ったのです」
一方、2002年のエッセイでは以下のように書かれている。
夏樹静子 エッセイ集『往ったり来たり』(光文社文庫、2008年)、pp.67-68 [初出:西日本新聞、2002年]
完成した『Wの悲劇』の英訳原稿を、エージェントのSさんがアメリカのいくつかの出版社に持ちこんでは断られた。やっとセント・マーチンズ・プレス社が承諾してくれたが、思いがけぬ要求を持ち出された――。
アメリカで無名の日本の女性作家の作品を出版するとなれば、物語の中にどこかわが国との接点がなければならないと、先方の編集者はいった。それに、なるべく日本情緒も加味してほしい――。
協議のうえ、私は『Wの悲劇』の探偵役で劇作家の卵の若い女性を、日本文学の勉強に留学中のアメリカ娘に変えることにした。日本情緒のほうは、舞台が山中湖畔で富士山がよく見えるから、そのムードを強調したいと先方が提案し、タイトルも変えることになった。私はやむをえず目をつぶって、とにかくまず出版にこぎつけたいと考えていた。
仁木悦子 (Etsuko Niki)
- 短編 The distant drawing / 「遠い絵図」(『The Kyoto collection: stories from the Japanese』、1989年)
『宝石』1958年3月号に掲載された仁木悦子の短編「灰色の手袋」に付された江戸川乱歩のルーブリックは「"猫は知っていた"英訳のこと」と題されており、仁木悦子本人からの報告として、「仁木さんの一番上の姉さんは若いころアメリカに留学したことがあり、その当時の先生であったアメリカの学者が今東京のある文化団体の長をしておられ、"猫は知っていた"を読んで、姉さんを介して英訳出版のことを勧められ、アメリカ大出版社との連絡もすでに出来ている模様だというのである。結構なことだから承諾なさいと勧めておいた(以下略)」と書いている。ただ、この話は実現はしていないようである。乱歩は日本版『EQMM』1958年9月号でも「長篇では『猫は知っていた』が英訳されるという話もある」と書いている。
西尾維新 (NISIOISIN, Nisio Isin)
著者名英字表記は「NISIOISIN」。「Nisio Isin」、「Nisioisin」などとも表記。
- 戯言シリーズ / Zaregoto series (Del Rey)
- 『クビキリサイクル』(2002)/ Zaregoto: Book 1: The Kubikiri Cycle (2008年7月、ISBN 0345504275)
- 『クビシメロマンチスト』(2002)/ Zaregoto: Book 2: The Kubishime Romanticist (2010年6月、ISBN 0345505786)
- その他
- 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006)/ Death Note: Another Note (VIZ Media、2008年2月、ISBN 142151883X)
- 『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』(2006)/ xxxHOLiC: AnotherHOLiC (Del Rey、2008年10月、ISBN 0345505182)
『xxxHOLiC アナザーホリック』の第1話の英訳は、日本の文芸誌『ファウスト』の北米版第1号(2008年8月)に先行掲載された。北米版『ファウスト』第2号(2009年6月)には「新本格魔法少女りすか 第一話 やさしい魔法はつかえない。」の英訳が掲載されている。
西村京太郎 (Kyotaro Nishimura)
- The Mystery Train Disappears / 『ミステリー列車が消えた』(1982) ISBN 0942637305 (Barricade Books、1990年12月)
- The Isle of South Kamui and Other Stories / 『南神威島(みなみかむいとう)』 ISBN 1783080116 (Thames River Press、2013年9月)
『南神威島』は文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(Japanese Literature Publishing Project : JLPP)で英訳出版された。
乃南アサ (Asa Nonami)
『Body』(躯)は遅くとも2010年春には米国amazonにデータが登録されていたが、(amazonのデータで見る限り)たびたび発売が延期になり、2012年12月にやっと発売された。
法月綸太郎 (Rintaro Norizuki)
- 【短編】 An Urban Legend Puzzle / 「都市伝説パズル」
- EQMM 2004年1月号
- アンソロジー『Passport to Crime』(2007年1月)に収録
- アンソロジー『The Mammoth Book of Best International Crime』(2009年)に収録
- 【短編】The Lure of the Green Door / 「緑の扉は危険」
アンソロジー『The Mammoth Book of Best International Crime』は2013年にチェコ語訳『Světové krimipovídky』(
ネット書店リンク)が出ている。「都市伝説パズル」のチェコ語訳題は「Záhada městské legendy」。
は行
浜尾四郎 (Shiro Hamao)
- The Devil's Disciple / 『悪魔の弟子』 ISBN 1843918579 (Hesperus Press、2011年9月)
- 「The Devil's Disciple」(悪魔の弟子)と「Did He Kill Them?」(彼が殺したか)の2編を収録。どちらも1929年に雑誌『新青年』に掲載された短編である。
東野圭吾 (Keigo Higashino)
- ガリレオシリーズ
- The Devotion of Suspect X / 『容疑者Xの献身』(2005)
- Salvation of a Saint / 『聖女の救済』(2008)
- A Midsummer's Equation / 『真夏の方程式』(2011)
- 加賀恭一郎シリーズ
- その他
- Naoko / 『秘密』(1998)
- Journey Under the Midnight Sun / 『白夜行』
『容疑者Xの献身』はアメリカ図書館協会(ALA)により2012年のミステリ部門最高推薦図書に選ばれたほか、エドガー賞最優秀長編賞、バリー賞最優秀新人賞の候補になった。エドガー賞ノミネート以前にも複数の言語に翻訳されていたが、エドガー賞ノミネート後はさらに翻訳が進み、『OUT』以来の日本ミステリの世界的大ヒット作となった。
- 参考:『容疑者Xの献身』の翻訳本(+各地のネット書店の該当ページへのリンク)(当サイト調査)
久生十蘭 (Juran Hisao)
短編「母子像」の英訳がニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙主催、第2回(1953年)
世界短編小説コンクール第一席入選。
(ブログ「久生十蘭オフィシャルサイト準備委員会」の2005年12月31日のエントリー「
久生十蘭の仕事部屋から(16)」がこのことについて詳しい)
平山夢明 (Yumeaki Hirayama)
- 短編
- Summoned by the Shadows / 「或る彼岸の接近」(Lairs of the Hidden Gods 第2巻『Inverted Kingdom』、黒田藩プレス、2005年)
- 長編
- Diner / 『DINER(ダイナー)』(2009) 売れ行き不振によりレーベルが休刊、『DINER』も発売中止に
- イギリス版 ISBN 1909223840 (Exhibit A、2014年7月予定→発売中止)
- 北米版(アメリカ・カナダ版) ISBN 1909223859 (Exhibit A、2014年7月予定→発売中止)
- 電子版(英米共通) ISBN 1909223867 (Exhibit A、2014年7月予定→発売中止)
船戸与一 (Yoichi Funado)
- May in the Valley of the Rainbow / 『虹の谷の五月』 ISBN 1932234284 (Vertical、2006年12月)
ま行
舞城王太郎 (Otaro Maijo)
- 【雑誌掲載】Drill Hole in My Brain / 「Drill Hole in My Brain」(2003) ISBN 034550206X (Del Rey、2008年8月、アメリカ版ファウスト1号に掲載)
文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(JLPP)で『阿修羅ガール』の英訳・仏訳の出版が予定されていたが、事業が2012年6月に「廃止」の判定を受けてしまったためどうなるのか不明。
松浦寿輝 (Hisaki Matsuura)
文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(JLPP)での刊行。「形而上学的推理小説」。
松本清張 (Seicho Matsumoto)
- 長編
- 短編集
- The Voice and Other Stories / 「声」ほか ISBN 4770019491 (講談社インターナショナル、1995年7月)(初刊は1989年)
- The Accomplice(共犯者)
- The Face(顔)
- The Serial(地方紙を買う女)
- Beyond All Suspicion(捜査圏外の条件)
- The Voice(声)
- The Woman Who Wrote Haiku(巻頭句の女)
米国EQMM掲載
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
「地方紙を買う女」 |
The Woman Who Took the Local Paper |
1979年6月号 |
アンソロジー『Ellery Queen's crime cruise round the world: 26 stories from Ellery Queen's mystery magazine』(1981)に収録 アンソロジー『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』(1987)に収録 |
「証言」 |
The Secret Alibi |
1980年11月号 |
アンソロジー『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』(1987)に収録 |
「百円硬貨」 |
The Humble Coin |
1982年7月号 |
|
「捜査圏外の条件」 |
Beyond All Suspicion |
1991年1月号 |
Adam Kabat訳(松本清張英訳短編集『The Voice and Other Stories』[1989]からの掲載) |
「地方紙を買う女」(The Woman Who Took the Local Paper)は米国EQMMに掲載された最初の日本ミステリ。
その他の短編
- 「一年半待て」 / Just Eighteen Months または Wait a Year and a Half
- Just Eighteen Months 『Japan Quarterly』1962年1号(9巻1号)、朝日新聞社、John Bester訳 ★松本清張作品の最初の英訳
- Just Eighteen Months 『Ellery Queen's Prime Crimes』1号(Davis Publications、1983年)
- Wait a Year and a Half 『The Mother of Dreams and Other Short Stories』(Kodansha America、1986年)
- Wait a Year and a Half 『Japanese Short Stories』(Folio Society、2000年)
- 「証言」 / Evidence
- 『Japan Quarterly』1962年1号(9巻1号)、朝日新聞社、John Bester訳 ★松本清張作品の最初の英訳
- のちに「The Secret Alibi」というタイトルでEQMMに訳載
- 「奇妙な被告」 / The Cooperative Defendant
- 『Ellery Queen's Japanese Golden Dozen: The Detective Story World in Japan』(エラリー・クイーン編、タトル商会、1978年)
- 『Classic Short Stories of Crime and Detection』(Garland、1983年)
- 『The Oxford Book of Detective Stories』(Oxford University Press、2000年)
- 「顔」 / The Face
- 『Japan Quarterly』1980年4号(27巻4号)、朝日新聞社、David W. Wright訳
- 松本清張短編集『The Voice and Other Stories』1989年
- 「張込み」 / The Stakeout
- 『Japan Echo』12号(1985年)、ジャパンエコー社、Daniel Zoll訳
- 『The Columbia Anthology of Modern Japanese Literature: From 1945 to the Present』(2007年4月)(上記の訳文の再録)
北九州市立松本清張記念館 松本清張研究奨励事業研究報告書
- 松本清張研究奨励事業第8回(2008年) 短編集『隠花の飾り』英訳(収録短編11編のうち5編を英訳。なお、「隠花の飾り」というタイトルの短編は存在しない)
- Tabi socks(足袋)
- Woman's best friend(愛犬)
- Plumes of fire in the north(北の火箭)
- The departure(見送って)
- A case of misinterpretation(誤訳)
- 松本清張研究奨励事業第11回(2011年) 短編「黒地の絵」英訳
- Tattoo on the black soldier's breast(黒地の絵)
また、長編『熱い絹』の日米同時発売の企画もあったらしい。(山村正夫『続々・推理文壇戦後史』、双葉社、1980年4月、p.203)
水上勉 (Tsutomu Mizukami, Tsutomu Minakami)
- The Temple of the Wild Geese and Bamboo Dolls of Echizen / 『雁の寺』と『越前竹人形』 ISBN 1564784908 (Dalkey Archive Press、2008年3月)
皆川博子 (Hiroko Minagawa)
早川書房の英訳プロジェクト「ハヤカワ・ワールドワイド」で、2012年の本格ミステリ大賞受賞作『開かせていただき光栄です』が英訳され、電子書籍として出版される予定。このプロジェクトでは、東野圭吾『容疑者Xの献身』や伊藤計劃『ハーモニー』の英訳者であるアレクサンダー・O・スミス氏らが創設したアメリカの翻訳出版社、
BENTO BOOKSが作品選定と英訳を担当している。同プロジェクトではほかに森晶麿『黒猫の遊歩あるいは美学講義』、中里友香『カンパニュラの銀翼』、小川一水『天冥の標』、五代ゆう『アバタールチューナー』の英訳も進んでいる。
湊かなえ (Kanae Minato)
2011年5月にイタリア語訳が出ている。
宮部みゆき (Miyuki Miyabe)
ファンタジー小説
Brave Story |
『ブレイブ・ストーリー』(2003) |
ISBN 1421527731 |
VIZ Media LLC、2009年11月 |
Haikasoru |
The Book of Heroes |
『英雄の書』(2009) |
ISBN 1421527758 |
VIZ Media LLC、2010年1月 |
Haikasoru |
ICO: Castle in the Mist |
『ICO 霧の城』(2004) |
ISBN 1421540630 |
VIZ Media LLC、2011年8月 |
Haikasoru |
- Apparitions: Ghosts of Old Edo / ホラー短編集『あやし』 Haikasoru、2013年11月
『ブレイブ・ストーリー』の英訳版は2008年1月、アメリカ図書館協会(ALA)の児童図書部門(Association for Library Service to Children, ALSC)が主催するバチェルダー賞(Batchelder Award)を受賞している。これは英訳された児童文学を対象とする賞である。1968年から続く賞で、日本の作品ではほかに、1983年に丸木俊『ひろしまのピカ』、1997年に湯本香樹実『夏の庭 The Friends』、2009年に上橋菜穂子『精霊の守り人』が受賞している。
森晶麿 (Akimaro Mori)
- The Black Cat Takes a Stroll / 『黒猫の遊歩あるいは美学講義』(第1回アガサ・クリスティー賞受賞作)(Bento Books、2015年◆予定)
森博嗣 (Hiroshi Mori / MORI Hiroshi)
短編集『地球儀のスライス』(1999年)に収録の短編「小鳥の恩返し」が英語圏進出プロジェクト「
The BBB」にて英訳され、電子書籍で販売されている。同短編集の「片方のピアス」も英訳される予定。
や行
山田風太郎 (Futaro Yamada)
山田正紀 (Masaki Yamada)
山村美紗 (Misa Yamamura)
- The Dark Ring of Murder / 『黒の環状線』(1976) ISBN 1561672475 (Noble House、1996年5月)
第18回(1972年)の江戸川乱歩賞候補作。この回の受賞作は和久峻三の『仮面法廷』。
結城昌治 (Shoji Yuki)
河出書房新社の叢書《メルヘンの森》(全6巻)の1冊として刊行された絵本。
夢野久作 (Kyusaku Yumeno)
- Love After Death / 「死後の恋」 (日本文学英訳アンソロジー『Modanizumu: Modernist Fiction from Japan, 1913-1938』[2008年2月]に収録)
- Bottled Hell / 「瓶詰地獄」 amazon.comでKindle版(2011年8月)が販売されている ※日本の翻訳グループによる英訳
- Hell in a Bottle / 「瓶詰地獄」 (日本近代文学英訳アンソロジー『Three-Dimensional Reading: Stories of Time and Space in Japanese Modernist Fiction, 1911-1932』[2013年7月]に収録)
ほかに随筆「恐ろしい東京」の英訳(Terrifying Tokyo)が『Tokyo Stories: A Literary Stroll』(2002)に収録されている。
横溝正史 (Seishi Yokomizo)
- The Inugami Clan / 『犬神家の一族』(1951) ISBN 1933330317 (Stone Bridge Press、2007年9月)
横溝作品はフランス語訳は3冊刊行されている(『犬神家の一族』、『八墓村』、『悪魔の手毬唄』)。ドイツ語訳はなし。
吉田修一 (Shuichi Yoshida)
- Villain / 『悪人』(2007) ISBN 0307454940 (Vintage、2011年8月)
- Parade / 『パレード』(2002)
英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞(最優秀翻訳ミステリ賞)の選考委員であるKaren Meek氏がブログで公開している2011年度用の「
ノミネート資格のある作品一覧」には『悪人』も入っている。サイト閲覧者が同リストに対して書き込んだコメントを見ると、『悪人』がノミネートされるのではないかと予想している人もいる。
2012年9月に、米国のミステリ編集者のオットー・ペンズラーが「面白くて歴史的意義のあるミステリ小説はすべて英語圏の作品であると言ってよい」と主張するエッセイを発表した(
Why the Best Mysteries Are Written in English)。このエッセイでペンズラーは、「つい最近までアジアにはミステリ小説はほとんどなかった」(Until very recent years, there were very few Asian mystery stories)と書いている。当然ながら反論コメントが即座に複数ついたが、日本にもミステリがあると反論してくれた人が挙げた作品は吉田修一の『悪人』だった。この作品を日本の「クライム・フィクション」の代表作とみなしている人もいるようである。(記事に対するコメントは一定時間が経つと消えてしまうようで、現在は見られない)
米澤穂信 (Honobu Yonezawa)
『ボトルネック』(2006)の部分訳が米国タフツ大学の「Tufts Digital Library」にある(
リンク)。
米国EQMM掲載作品
EQMM=エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン。米国のミステリ雑誌。1941年創刊。初代編集長はエラリー・クイーン(の1人であるフレデリック・ダネイ)。
早川書房『ミステリマガジン』の前身である日本版『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』でかつて、海外を視野に入れた「
EQMM短篇探偵小説年次日本コンテスト」(1958~1963、全6回)が実施されている。第1回の告知は1958年9月号に掲載。短編探偵小説を募集し、入選作1編を英訳して米国『EQMM』に送り、掲載を狙うという賞だった。ただ、第1回の入選作、結城昌治「寒中水泳」の英訳「A Midwinter Swim」はクイーンから「今一歩」との評が日本側に届き、掲載はされなかった。第2回~第5回は入選作が出ていない。第6回は土井稔「会議は踊る」が入選第一席に選ばれているが、やはり米国『EQMM』には掲載されていない(英訳が米国編集部に送られたかどうかも不明)。
著者 |
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
谷崎潤一郎 |
「私」 |
The Thief |
1967年10月号 |
谷崎潤一郎『Seven Japanese tales』(1963年刊)からの転載 |
松本清張 |
「地方紙を買う女」 |
The Woman Who Took the Local Paper |
1979年6月号 |
『Ellery Queen's crime cruise round the world: 26 stories from Ellery Queen's mystery magazine』(1981)に収録 |
夏樹静子 |
「質屋の扉」 |
The Pawnshop Murder |
1980年5月号 |
|
松本清張 |
「証言」 |
The Secret Alibi |
1980年11月号 |
|
夏樹静子 |
「足の裏」 |
The Sole of the Foot |
1981年9月号 |
『Murder Intercontinental: Stories from Ellery Queen's Mystery Magazine and Alfred Hitchcock Mystery Magazine』(1996)に収録 |
松本清張 |
「百円硬貨」 |
The Humble Coin |
1982年7月号 |
|
夏樹静子 |
「愛さずにはいられない」 |
I Can't Help Loving Him |
同上 |
|
エラリー・クイーン(フレデリック・ダネイ)死去(1982年9月) |
夏樹静子 |
「階段」 |
The Stairs |
1985年6月号 |
|
夏樹静子 |
「狙われて」 |
A Very Careful Man |
1987年1月号 |
|
夏樹静子 |
「カビ」 |
The Taste of Cocoa |
1988年3月号 |
|
阿刀田高 |
「来訪者」 |
The Visitor |
1988年12月中旬号 |
|
阿刀田高 |
「ナポレオン狂」 |
Napoleon Crazy |
1989年3月号 |
|
夏樹静子 |
「毒」(旧題・モーテルの毒) |
The Love Motel |
1989年7月号 |
『The Year's Best Mystery and Suspense Stories 1990』(1990)に収録 |
夏樹静子 |
「艶やかな声」 |
The Woman on the Phone |
1990年5月号 |
|
松本清張 |
「捜査圏外の条件」 |
Beyond All Suspicion |
1991年1月号 |
松本清張英訳短編集『The Voice and Other Stories』(1989)からの掲載 |
夏樹静子 |
「酷い天罰」 |
Divine Punishment |
1991年3月号 |
『The Oxford Book of Detective Stories』(2000)に収録 |
赤川次郎 |
「沿線同盟」 |
Beat Your Neighbor Out of Doors |
1992年3月号 |
『The Deadliest Games: Tales of Psychological Suspense from Ellery Queen's Mystery Magazine』(1993)に収録 |
夏樹静子 |
「深夜の偶然」 |
A Midnight Coincidence |
1992年5月号 |
|
夏樹静子 |
「独り旅」 |
Solitary Journey |
1994年6月号 |
『Women of Mystery III』(1998)に収録 ※「ひとり旅」は別作品 |
五十嵐均 |
「セコい誘拐」 |
What Goes Round Comes Round |
1995年7月号 |
|
以下はEQMMのPassport to Crimeコーナーに掲載 |
法月綸太郎 |
「都市伝説パズル」 |
An Urban Legend Puzzle |
2004年1月号 |
第55回(2002年)推協賞短編部門受賞作/『The Mammoth Book of Best International Crime』(2009)に収録 |
光原百合 |
「十八の夏」 |
Eighteenth Summer |
2004年12月号 |
第55回(2002年)推協賞短編部門受賞作 |
伊坂幸太郎 |
「死神の精度」 |
The Precision of the Agent of Death |
2006年7月号 |
第57回(2004年)推協賞短編部門受賞作 |
横山秀夫 |
「動機」 |
Motive |
2008年5月号 |
第53回(2000年)推協賞短編部門受賞作 |
長岡弘樹 |
「傍聞き」 |
Heard at One Remove |
2010年2月号 |
第61回(2008年)推協賞短編部門受賞作 |
永瀬隼介 |
「師匠」 |
Chief |
2013年2月号 |
第63回(2010年)推協賞短編部門ノミネート作 |
島田荘司 |
「Pの密室」 |
The Locked House of Pythagoras |
2013年8月号 |
『The Realm of the Impossible』(2017)に収録 |
法月綸太郎 |
「緑の扉は危険」 |
The Lure of the Green Door |
2014年11月号 |
『The Realm of the Impossible』(2017)に収録 |
島田荘司 |
「発狂する重役」 |
The Executive Who Lost His Mind |
2015年8月号 |
|
甲賀三郎 |
「蜘蛛」 |
The Spider |
2015年12月号 |
|
大阪圭吉 |
「寒の夜晴れ」 |
The Cold Night's Clearing |
2016年5月号 |
大阪圭吉英訳短編集『The Ginza Ghost』(2017)に収録 |
島田荘司 |
「疾走する死者」 |
The Running Dead |
2017年11・12月号 |
|
我孫子武丸 |
「人形はテントで推理する」 |
A Smart Dummy in the Tent |
2019年7・8月号 |
|
芦辺拓 |
「疾駆するジョーカー」 |
The Dashing Joker |
2020年9・10月号 |
|
(このリストの作成にあたっては、「
翻訳道楽」の宮澤洋司氏にご協力いただきました)
※谷崎潤一郎「私」は三門優祐氏からリスト漏れを指摘していただき、2015年2月25日に追加しました。
※最初の5編(谷崎潤一郎「私」、松本清張「地方紙を買う女」、夏樹静子「質屋の扉」、松本清張「証言」、夏樹静子「足の裏」)は『Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection』(1987)に収録
※法月綸太郎「都市伝説パズル」、光原百合「十八の夏」、伊坂幸太郎「死神の精度」の3編は『
Passport to Crime』(2007)に収録
Passport to Crimeコーナー(2003年6月号~)について
アメリカのミステリ雑誌『Ellery Queen's Mystery Magazine』の「Passport to Crime」コーナーは非英語圏の短編ミステリを英訳掲載するコーナーである(※ただしインドの作家が英語で書いた作品が掲載されたこともある)。2003年6月号より毎号掲載されており、日本の作品も何度か掲載されている。
「Passport to Crime」コーナーの初期の掲載作は『
Passport to Crime』(2007年1月)というタイトルでまとめられて刊行されており、日本の作品では法月綸太郎、光原百合、伊坂幸太郎の作品が収録されている。
「十八の夏」は米国『EQMM』の読者投票で、掲載短編の年間第5位。(『ミステリマガジン』2007年6月号、p.39)
2013年1月、エドガー賞の候補作が発表され、2012年3・4月号の「Passport to Crime」コーナーで英訳紹介されたTeresa Solanaの"Still Life No. 41"が最優秀短編賞にノミネートされた。Teresa Solanaはカタルーニャ語(スペイン東部で使用される言語)で書くミステリ作家。「Passport to Crime」コーナー掲載作がエドガー賞にノミネートされたのはこれが初である。今後、日本の作品が同賞にノミネートされる日も来るだろうか?
『Ellery Queen's Prime Crimes』掲載作品(EQMMの増刊号のようなもの?)
著者 |
タイトル |
英題 |
掲載号 |
備考 |
松本清張 |
「一年半待て」 |
Just Eighteen Months |
1号(1983年冬号) |
|
夏樹静子 |
「遠い秘密」 |
It's Best Not To Listen |
3号(1985年秋号) |
|
五十嵐均 |
「ビジター」 |
The Visitor |
3号(1985年秋号) |
本名の五十嵐鋼三(Kozo Igarashi)名義 |
夏樹静子 |
「遇わなかった男」 |
The Missing Alibi |
4号(1986年) |
|
(このリストの作成にあたっては、「
翻訳道楽」の宮澤洋司氏にご協力いただきました)
五十嵐均の「The Visitor」は日本でデビューする以前の掲載。日本でのデビュー作『ヴィオロンのため息の―高原のDデイ―』(角川書店、1994年5月)の著者略歴には『'85年EQMMに「ザ・ビジター」を執筆』とあるが、正確にはEQMMではなく『Ellery Queen's Prime Crimes』への掲載である。「The Visitor」の日本語版「ビジター」は日本推理作家協会編『ミステリー傑作選・特別編6 自選ショート・ミステリー2』(講談社文庫、2001年10月、pp.121-130)で読むことができる。
ミステリアンソロジー
Ellery Queen's Japanese Golden Dozen: The Detective Story World in Japan (エラリー・クイーン編、1978年5月)
石沢英太郎(Eitaro Ishizawa) |
「噂を集め過ぎた男」 |
Too Much About Too Many |
|
松本清張(Seicho Matsumoto) |
「奇妙な被告」 |
The Cooperative Defendant |
のちにアンソロジー『Classic Short Stories of Crime and Detection』(1983)に収録 のちにアンソロジー『The Oxford Book of Detective Stories』(2000)に収録 |
三好徹(Tohru Miyoshi) |
「死者の便り」 |
A Letter from the Dead |
|
森村誠一(Seiichi Morimura) |
「魔少年」 |
Devil of a Boy |
|
夏樹静子(Shizuko Natsuki) |
「断崖からの声」 |
Cry from the Cliff |
|
西村京太郎(Kyotaro Nishimura) |
「優しい脅迫者」 |
The Kindly Blackmailer |
|
佐野洋(Yoh Sano) |
「証拠なし」 |
No Proof |
のちにアンソロジー『City Sleuths and Tough Guys』(1989)に収録 |
笹沢左保(Saho Sasazawa) |
「海からの招待状」 |
Invitation from the Sea |
のちにアンソロジー『Murder on Deck!』(1998)に収録 |
草野唯雄(Tadao Sohno) |
「復顔」 |
Facial Restoration |
|
戸川昌子(Masako Togawa) |
「黄色い吸血鬼」 |
The Vampire |
|
土屋隆夫(Takao Tsuchiya) |
「加えて、消した」 |
Write In, Rub Out |
|
筒井康隆(Yasutaka Tsutsui) |
「如菩薩団」 |
Perfectly Lovely Ladies |
|
Murder in Japan: Japanese Stories of Crime and Detection (John L. Apostolou編、1987年6月)
江戸川乱歩 |
「心理試験」 |
The Psychological Test |
|
「赤い部屋」 |
The Red Chamber |
志賀直哉 |
「剃刀」 |
The Razor |
|
「范の犯罪」 |
Han's Crime |
谷崎潤一郎 |
「私」 |
The Thief |
芥川龍之介 |
「藪の中」 |
In a Grove |
石川達三 |
|
The Affair of the Arabesque Inlay |
耕治人(こう はると) |
|
Black Market Blues |
松本清張 |
「証言」 |
The Secret Alibi |
|
「地方紙を買う女」 |
The Woman who Took the Local Paper |
安岡章太郎 |
「雨」 |
Rain |
安部公房 |
「夢の兵士」 |
The Dream Soldier |
夏樹静子 |
「質屋の扉」 |
The Pawnshop Murder |
|
「足の裏」 |
The Sole of the Foot |
黒田藩プレスの非ミステリアンソロジー
その他のアンソロジー
- The Columbia Anthology of Modern Japanese Literature: From Restoration to Occupation, 1868-1945
- 2007年4月刊/全888ページ。1868年から1945年までの日本の短編小説・詩・エッセイ等の英訳を収録。ミステリ関連では、江戸川乱歩「人間椅子」、谷譲次「上海された男」。
- The Columbia Anthology of Modern Japanese Literature: From 1945 to the Present
- 2007年4月刊/全864ページ。1945年から2007年までの日本の短編小説・詩・エッセイ等の英訳を収録。ミステリ関連では、松本清張「張込み」"The Stakeout"、星新一「おーい でてこーい」"He-y, Come on Ou-t!"。
- Modanizumu: Modernist Fiction from Japan, 1913-1938
- 2008年2月刊/全605ページ。1913年から1938年までの日本の短編小説。広義のミステリ関連は、村山槐多「美少年サライノの首」、橘外男「酒場ルーレット紛擾記」、江戸川乱歩「二銭銅貨」「押絵と旅する男」「芋虫」、谷譲次「上海された男」、夢野久作「死後の恋」。
amazon.co.jp内のリスト
(2010年6月6日追加 表紙をざっと一覧するのに便利)
関連ページ
最終更新:2020年08月14日 00:41