中国語ミステリ邦訳・電子書籍化計画「現代華文推理系列」

2014年10月7日

  このページは、今月初めに中国語の短篇ミステリ4作を翻訳・電子出版した稲村文吾さん(現代華文ミステリ翻訳部)にご寄稿いただいたものです。 (Dokuta / 松川良宏)


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主催者挨拶

 はじめまして、中国語のミステリを読み、日本で紹介する活動を行っている稲村文吾と申します。今回はこの場をお借りして、新しく翻訳が発表される中国語ミステリのご紹介ができることとなりました。

 作家の島田荘司氏が中心となった華文ミステリの振興活動や、このサイトをはじめとするネットでの草の根の布教などを通して、中国語圏においても盛んにミステリが書かれているということ自体は日本でもある程度知られるようになっていると思われます。しかし、その成果を日本語で読むことのできる機会はまだまだ多いとは言えず、また中国語を学んでいる方や中国語圏の文化に興味を持っている方の中でも、ミステリに関心を向ける方はあまり多くないというのが現状です。

 それでも、私の乏しい読書経歴の中だけを見ても、紹介されるべきだと思える華文ミステリ作品にいくつも出会ってきました。そこで、現代の中国語ミステリの姿を日本の読者の方々により知っていただきたいと決心し、翻訳の許可を取るところから始まって、翻訳、編集、出版準備や広報と、多数の方々から様々なお力沿えを頂き、今回、短篇作品4作の翻訳をAmazonの提供する電子書籍出版サービス、 Kindle Direct Publishing を通し出版する運びとなりました。

 今回紹介する4作品、それぞれ作品のタイプは異なりますが、日本の読者からしても各々に大きな魅力を持った作品です。この出版を通して、多くの素晴らしい作品が紹介されずに眠っている、現代華文ミステリに意識を向ける方が一人でも増えればと思っております。

※ Kindleストアで販売している電子書籍は、Kindle端末を持っていない場合でも、Android端末(スマートフォン、タブレット)やiPhone、iPadなどからアプリを使用して読むことができます。
【追記】2015年1月に「KIndle for PC」日本語版がリリースされ、PC等からも読むことができるようになっています。

『現代華文推理系列 第一集』(以下四作の合本版)
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「人体博物館殺人事件」御手洗熊猫(みたらいぱんだ、ユーショウシー ションマオ)

原題:”人体博物馆谋杀案”(人体博物館謀殺案)、2008年初出

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  • 作家紹介
    • 1988年生まれ。雑誌『歳月・推理』(岁月・推理)の編集者であった杜撰に見出され、島田荘司にオマージュを捧げた短篇「異想天開之瞬移魔法」(异想天开之瞬移魔法)でデビュー。不可能犯罪とそのトリックに強くこだわった作風が特徴。
  • 作品紹介
    • 「人体博物館殺人事件」は第一短篇集『御手洗濁的流浪』(御手洗浊的流浪)に収録された作品で、若き芸術家「小栗虫子」が設立した「人体芸術の美術館」で二重密室殺人事件が起こる。執筆にあたっては『黒死館殺人事件』から影響を受けていたと作者が語っている。

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「おれみたいな奴が」水天一色(すいてんいっしき、シュイティエンイースー)

原題:”我这样的人”(我這様的人)、2008年初出

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  • 作家紹介
    • 1981年北京生まれ、北京工業大学コンピュータ学部卒。2001年ごろからインターネットフォーラム「推理之門」などで作品を発表、2006年に雑誌『歳月・推理』が創刊されると2008年まで編集者を務めた。2009年には長篇『蝶の夢 乱神館記』が日本語訳され、これは『2011本格ミステリ・ベスト10』海外篇で14位相当にランクされる健闘を見せた。
  • 作品紹介
    • 『蝶の夢』は唐代を舞台にした作品だったが、本作「おれみたいな奴が」は現代が舞台で、卑小な男の破滅を冷静な筆致で描く倒叙ミステリ。『歳月・推理』2009年9号に発表され、北京偵探推理文芸協会の主催する賞、第五回全国偵探推理小説大賽(2011年)において最優秀短篇小説賞を受賞したほか、北京師範大学教授の任翔氏が編集した『中国百年偵探小説精選』第八巻(2012)などのアンソロジーに採られている。

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「バドミントンコートの亡霊」林斯諺(りんしげん、リン スーイェン)

原題:”羽球場的亡靈”、2004年初出

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  • 作家紹介
    • 1983年、台湾嘉義県生まれ。台湾推理作家協会会員。2002年に短篇「判決」(のちに「褪色的愛」と改題)を『推理雑誌』誌に掲載してデビュー。2004年に本作「羽球場的亡靈」で第二回人狼城推理小説賞を受賞。2009年に『氷鏡荘殺人事件』で第一回島田荘司推理小説賞最終候補、2012年に短篇「第五大道謀殺案」で、中国大陸の雑誌『歳月・推理』が主催する賞、華文推理大奨賽(华文推理大奖赛)第二等入選。現在は『歳月・推理』誌で特約編集員を務める傍ら旺盛に執筆を続けている。
  • 作品紹介
    • 本作はシリーズ探偵・林若平が安楽椅子探偵を務める密室もの。受賞後に『野葡萄文学誌』14、15期に発表され、2007年に輔仁大学の学生によって映画版が作られているほか、Ellery Queen's Mystery Magazine 2014年8月号に "The Ghost of the Badminton Court" として訳載された。

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  • なし

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「犯罪の赤い糸」寵物先生(ミスターペッツ)

原題:”犯罪紅線”、2007年初出

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  • 作家紹介
    • 1980年生、台湾大学情報技術学部卒。台湾推理作家協会理事。2007年に本作「犯罪紅線」で第五回人狼城推理文学賞受賞。2009年には長篇『虚擬街頭漂流記』で第一回島田荘司推理小説賞を受賞し、これは日本語訳も出版されて『2011本格ミステリ・ベスト10』海外篇では12位相当にランクされている。
  • 作品紹介
    • 本作は「運命の赤い糸」を操るという神「月下老人」の伝説を十年前の誘拐事件に絡め、ある夫婦の馴れ初めを描いていく軽快にしてサスペンスルフルな作品。中国本土の『歳月・推理』誌にも掲載され、同誌の8周年記念号や、任翔編『百年中国偵探小説精選』第八巻(2012)にも収録された。

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