2014年8月28日
ポーランドで2007年に刊行された『Krwawa setka. 100 najważniejszych powieści kryminalnych』(ブラッディー・ハンドレッド: 最重要ミステリ100選)(
ポーランド語版Wikipedia)で選ばれている100作品の一覧。選者はポーランドのミステリ研究家・評論家であるヴォイチェフ・ブルシュタ(Wojciech Burszta, 1957- ,
ポーランド語版Wikipedia)と、ミステリ研究家でミステリの創作も手掛けるマリウシュ・チュバイ(Mariusz Czubaj, 1969- ,
ポーランド語版Wikipedia)の2人。100冊一覧の情報源は「
こちら」。
6つのカテゴリに分けて選出されているが、書籍の現物をもっているわけでもなく、またポーランド語が読めるわけでもないので、どのような区分けなのか正確には分からない。「(4)Najgorsi z najlepszych」は「ワースト・オブ・ザ・ベスト」という意味のようだが、「作家自体はお勧めだがこの作品はあまり勧めない」というような意味合いで取り上げられているのだろうか?
ポーランド語版Wikipediaのこの書籍の記事では、似たような試みとして英国推理作家協会(CWA)のベスト100、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のベスト100と並んで、日本の『東西ミステリーベスト100』にも言及があって驚く。
Index
最重要ミステリ100選(ヴォイチェフ・ブルシュタ、マリウシュ・チュバイ選)
- 100作品中、日本語で読めるのは82作品、邦訳がないのは18作品。(邦訳のない作品には背景色[茶色]をつけた)
- 100作品中、英語圏の作品が75作品、ポーランドの作品が2作品、それ以外が23作品。
|
(1)ジャンル確立の父たちと1人の母 (Ojcowie założyciele i jedna matka) |
1 |
米 |
エドガー・アラン・ポー |
群衆の人 |
Człowiek tłumu |
2 |
英 |
チャールズ・ディケンズ |
エドウィン・ドルードの謎 |
Tajemnica Edwina Drooda |
3 |
英 |
コナン・ドイル |
オレンジの種五つ |
Pięć pestek pomarańczy |
4 |
英 |
G・K・チェスタトン |
ブラウン神父シリーズ |
Przygody księdza Browna |
5 |
英 |
アガサ・クリスティー |
書斎の死体 |
Noc w bibliotece |
|
(2)アスファルト・ジャングル (Asfaltowa dżungla) |
6 |
米 |
ダシール・ハメット |
マルタの鷹 |
Sokół maltański |
7 |
米 |
ジェイムズ・M・ケイン |
郵便配達は二度ベルを鳴らす |
Listonosz zawsze dzwoni dwa razy |
8 |
米 |
コーネル・ウールリッチ |
黒衣の花嫁 |
Panna młoda w żałobie |
9 |
米 |
E・S・ガードナー |
殴られたブロンド |
Sprawa blondynki z podbitym okiem |
10 |
米 / 英 |
レイモンド・チャンドラー |
長いお別れ |
Długie pożegnanie |
11 |
米 |
レックス・スタウト |
原題 Plot It Yourself / Murder in Style |
Układanka |
12 |
米 |
ロス・マクドナルド |
ブルー・ハンマー |
Błękitny młoteczek |
13 |
米 |
ジェイムズ・リー・バーク |
ブラック・チェリー・ブルース |
Wiśniowy blues |
14 |
米 |
ウォルター・モズリイ |
ブルー・ドレスの女 |
Śmierć w błękitnej sukience |
15 |
米 |
ジェイムズ・エルロイ |
ホワイト・ジャズ |
Biała gorączka |
16 |
米 |
ケイレブ・カー |
エイリアニスト 精神科医 |
Alienista |
17 |
フランス |
ジャン=クロード・イゾ |
失われた夜の夜 |
Total Cheops |
18 |
米 |
デニス・ルヘイン |
闇よ、我が手を取りたまえ |
Ciemności, weź mnie za rękę |
|
(3)メインストリーム (Głowny nurt) |
19 |
英 |
イアン・フレミング |
007 カジノ・ロワイヤル |
Casino Royale |
20 |
ベルギー |
ジョルジュ・シムノン |
メグレと首無し死体 |
Maigret i trup bez głowy |
21 |
ポーランド |
ジョー・アレックス |
‐ |
Śmierć mówi w moim imieniu |
22 |
米 |
パトリシア・ハイスミス |
ふくろうの叫び |
Krzyk sowy |
23 |
米 |
ハリイ・ケメルマン |
金曜日ラビは寝坊した |
W piątek rabin zaspał |
24 |
フランス |
セバスチアン・ジャプリゾ |
シンデレラの罠 |
Kopciuszek w potrzasku |
25 |
スウェーデン |
シューヴァル&ヴァールー |
笑う警官 |
Śmiejący się policjant |
26 |
英 |
フレデリック・フォーサイス |
ジャッカルの日 |
Dzień Szakala |
27 |
米 |
ウィリアム・ゴールドマン |
マラソン・マン |
Maratończyk |
28 |
米 |
ドロシー・ユーナック |
捜査線 |
Śledztwo |
29 |
英 |
ケン・フォレット |
針の眼 |
Igła |
30 |
米 |
トマス・ハリス |
レッド・ドラゴン |
Czerwony smok |
31 |
米 |
スコット・トゥロー |
推定無罪 |
Uznany za niewinnego |
32 |
米 |
スティーヴン・キング |
ミザリー |
Misery |
33 |
スペイン |
マヌエル・バスケス・モンタルバン |
原題 Delantero centro fue asesinado al atardecer |
Środkowy napastnik zginie o zmierzchu |
34 |
イスラエル |
シュラミット・ラピッド |
原題 מקומון |
Gazeta lokalna |
35 |
米 |
パトリシア・コーンウェル |
検屍官 |
Post mortem |
36 |
デンマーク |
ペーター・ホゥ |
スミラの雪の感覚 |
Smilla w labiryntach śniegu |
37 |
英 |
フィリップ・カー |
殺人探求 |
Traktat morderczo – filozoficzny |
38 |
スウェーデン |
シャスティン・エークマン |
白い沈黙 |
Czarna Woda |
39 |
米 |
フィリップ・マーゴリン |
黒い薔薇 |
Nie zapomnisz mnie |
40 |
英 |
P・D・ジェイムズ |
原罪 |
Grzech pierworodny |
41 |
英 |
ルース・レンデル |
シミソラ |
Simisola |
42 |
英 |
ミネット・ウォルターズ |
鉄の枷 |
Wędzidło sekutnicy |
43 |
米 |
マイクル・コナリー |
ラスト・コヨーテ |
Ostatni kojot |
44 |
米 |
ジェフリー・ディーヴァー |
静寂の叫び |
Panieński grób |
45 |
英 |
ヴァル・マクダーミド |
殺しの儀式 |
Syreni śpiew |
46 |
英 |
キャロライン・グレアム |
原題 Faithful unto Death |
Wierna do śmierci |
47 |
米 |
ダナ・レオン |
原題 Acqua Alta / Death in High Water |
Acqua alta |
48 |
米 |
ネルソン・デミル |
プラムアイランド |
Śliwkowa Wyspa |
49 |
ノルウェー |
ジョー・ネスボ |
ザ・バット 神話の殺人 |
Człowiek – nietoperz |
50 |
日本 |
桐野夏生 |
OUT |
Ostateczne wyjście |
51 |
フランス |
ジャン=クリストフ・グランジェ |
クリムゾン・リバー |
Purpurowe rzeki |
52 |
ロシア |
ボリス・アクーニン |
原題 Статский советник |
Radca stanu |
53 |
イタリア |
アンドレア・カミッレーリ |
原題 Gli arancini di Montalbano |
Pomarańczki komisarza Montalbano |
54 |
スペイン |
アリシア・ヒメネス=バルトレット |
原題 Mensajeros de la oscuridad |
Wysłańcy ciemności |
55 |
米 |
トニイ・ヒラーマン |
原題 Hunting Badger |
Polowanie na Borsuka |
56 |
スウェーデン |
ホーカン・ネッセル |
原題 Carambole |
Karambol |
57 |
英 |
ロバート・ウィルスン |
リスボンの小さな死 |
Śmierć w Lizbonie |
58 |
スウェーデン |
カーリン・アルヴテーゲン |
喪失 |
Zaginiona |
59 |
英 |
アレグザンダー・マコール・スミス |
キリンの涙 ミス・ラモツエの事件簿2 |
Mma Ramotswe i łzy żyrafy |
60 |
米 |
ジョン・グリシャム |
裏稼業 |
Bractwo |
61 |
英 |
モー・ヘイダー |
死を啼く鳥 |
Ptasznik |
62 |
英 |
ピーター・ロビンスン |
エミリーの不在 |
W mogile ciemnej |
63 |
英 |
ジョン・ル・カレ |
ナイロビの蜂 |
Wierny ogrodnik |
64 |
米 |
T・ジェファーソン・パーカー |
サイレント・ジョー |
Cichy Joe |
65 |
英 |
イアン・ランキン |
甦る男 |
Odrodzeni |
66 |
米 |
スティーヴン・L・カーター |
オーシャン・パークの帝王 |
Władca Ocean Park |
67 |
米 |
テス・ジェリッツェン |
外科医 |
Chirurg |
68 |
米 |
フェイ・ケラーマン |
原題 Stone Kiss |
Zabójczy pocałunek |
69 |
英 |
ジョン・バーデット |
原題 Bangkok 8 |
Bankok 8 |
70 |
ポーランド |
マレク・クライェフスキ |
‐ |
Koniec świata w Breslau |
71 |
米 |
カリン・スローター |
原題 A Faint Cold Fear |
Zimny strach |
72 |
米 |
ジョゼフ・フィンダー |
侵入社員 |
Paranoja |
73 |
英 |
ニッキ・フレンチ |
生還 |
Kraina życia |
74 |
米 |
ジョナサン・ケラーマン |
原題 Rage |
Wściekłość |
|
(4) Najgorsi z najlepszych |
75 |
米 |
ロバート・ラドラム |
暗殺者 |
Tożsamość Bourne'a |
76 |
米 |
トム・クランシー |
レッド・オクトーバーを追え |
Polowanie na „Czerwony Październik” |
77 |
米 |
ジェイムズ・パタースン |
血と薔薇 |
Fiołki są niebieskie |
78 |
米 |
ダン・ブラウン |
ダ・ヴィンチ・コード |
Kod Leonarda da Vinci |
|
(5)ミステリ‐非ミステリ (Kryminały-niekryminały) |
79 |
英 |
ジョゼフ・コンラッド |
密偵 |
Tajny agent |
80 |
スイス |
フリードリヒ・デュレンマット |
故障 |
Kraksa. Historia jeszcze możliwa |
81 |
チェコ |
ラジスラフ・フクス |
火葬人 |
Palacz zwłok |
82 |
イタリア |
ウンベルト・エーコ |
薔薇の名前 |
Imię róży |
83 |
米 |
ポール・オースター |
ガラスの街 |
Szklane miasto |
84 |
ドイツ |
エルンスト・ユンガー |
原題 Eine gefährliche Begegnung |
Niebezpieczne spotkanie |
85 |
米 |
ブレット・イーストン・エリス |
アメリカン・サイコ |
American Psycho |
86 |
米 |
フランク・ミラー |
シン・シティ |
Miasto Grzechu: Ten żółty drań |
87 |
スペイン |
ホセ・カルロス・ソモサ |
イデアの洞窟 |
Jaskinia filozofów |
88 |
スペイン |
エドゥアルド・メンドサ |
原題 La aventura del tocador de señoras |
Przygoda fryzjera damskiego |
89 |
米 |
マイケル・グルーバー |
夜の回帰線 |
Zwrotnik nocy |
90 |
英 |
マーク・ハッドン |
夜中に犬に起こった奇妙な事件 |
Dziwny przypadek psa nocną porą |
|
(6)ベスト10 (Złota dziesiątka) |
91 |
英 |
コナン・ドイル |
空き家の冒険 |
Pusty dom |
92 |
英 |
アガサ・クリスティー |
アクロイド殺し |
Zabójstwo Rogera Ackroyda |
93 |
米 / 英 |
レイモンド・チャンドラー |
大いなる眠り |
Głęboki sen |
94 |
米 |
パトリシア・ハイスミス |
見知らぬ乗客 |
Znajomi z pociągu |
95 |
英 |
ジョン・ル・カレ |
寒い国から帰ってきたスパイ |
Uciec z zimna |
96 |
米 |
マーティン・クルーズ・スミス |
ゴーリキー・パーク |
Park Gorkiego |
97 |
スウェーデン |
ヘニング・マンケル |
殺人者の顔 |
Morderca bez twarzy |
98 |
米 |
マイクル・コナリー |
ザ・ポエット |
Poeta |
99 |
米 |
ハーラン・コーベン |
唇を閉ざせ |
Nie mów nikomu |
100 |
英 |
イアン・ランキン |
滝 |
Kaskady |
非英語圏の25作品
上記の100作品のリストから非英語圏の作品を抜き出したもの。25作中、日本語で読めるのは15作。
東欧(3作品)
21 |
ポーランド |
ジョー・アレックス |
‐ |
Śmierć mówi w moim imieniu |
70 |
ポーランド |
マレク・クライェフスキ |
‐ |
Koniec świata w Breslau |
81 |
チェコ |
ラジスラフ・フクス |
火葬人 |
Palacz zwłok |
自国(ポーランド)からは2作家2作品が選ばれている。どちらの作家も、邦訳は1作もない。
ジョー・アレックス(Joe Alex)は本名マチェイ・スウォムチンスキー(Maciej Słomczyński, 1922-1998,
日本語版Wikipedia)。主に1950年代末から1960年代にかけての時期に、作者名と同名のジョー・アレックスを探偵役とするイギリスが舞台の探偵小説シリーズを発表した。1991年に発表された作品も含め、ジョー・アレックスを主人公とする探偵小説シリーズは全8作。このリストで選出されているのはジョー・アレックス・シリーズの1作で1960年の作品。マレック・カミンスキ「ポーランドのミステリー事情 現実と虚構の交錯」(吉崎由紀子訳、『ジャーロ』5号[2001年秋号])にはこの作家について以下のようにある。
コミュニズム政権下で最も人気の高かったポーランド人作家は、マチェイ・スウォムチンスキーである。「ジョー・アレックス」というペンネームで、探偵小説を数多く刊行した。外国人風の名前と、イギリスで大量に発表されていた犯罪小説の手法を取り入れた作風によって、ポーランドで一躍名を馳せる。彼の作品はワルシャワ条約機構加盟国の多くで翻訳・出版され、映画やテレビの原作となった作品も数多い。【中略】ジョー・アレックスは、しばしばアガサ・クリスティのパターンを取り入れた。さまざまな憶測、誤認が飛び交う捜査の末、意外な展開で犯人が明らかになる。
チェコから選出された『火葬人』は2012年12月に松籟社《東欧の想像力》の第9巻として邦訳が出ている(阿部賢一訳)。その訳者あとがきと著者紹介によれば、ラジスラフ・フクスは「巧みな心理描写とグロテスクな細部の描出を特徴とする、怪奇小説とも、心理小説とも評される作品を数多く発表」した作家。探偵小説の愛読者であり、「探偵物や犯罪物、あるいはホラーといったジャンルは、思慮深く、そして趣味よく手が加えられていれば、文学的な価値を低くするものではない」と回想録で述べているという。『火葬人』では凡庸な人間が殺人者に変わっていく様が描かれている。
北欧(7作品)
25 |
スウェーデン |
シューヴァル&ヴァールー |
笑う警官 |
Śmiejący się policjant |
38 |
スウェーデン |
シャスティン・エークマン |
白い沈黙 |
Czarna Woda |
56 |
スウェーデン |
ホーカン・ネッセル |
原題 Carambole |
Karambol |
58 |
スウェーデン |
カーリン・アルヴテーゲン |
喪失 |
Zaginiona |
97 |
スウェーデン |
ヘニング・マンケル |
殺人者の顔 |
Morderca bez twarzy |
36 |
デンマーク |
ペーター・ホゥ |
スミラの雪の感覚 |
Smilla w labiryntach śniegu |
49 |
ノルウェー |
ジョー・ネスボ |
ザ・バット 神話の殺人 |
Człowiek – nietoperz |
北欧からは7作家7作品が選ばれた。ホーカン・ネッセルの選出作はフェテーレン刑事部長シリーズの第7作。日本では第2作の『終止符(ピリオド)』のみ訳されている。
南欧(6作品)
33 |
スペイン |
マヌエル・バスケス・モンタルバン |
原題 Delantero centro fue asesinado al atardecer |
Środkowy napastnik zginie o zmierzchu |
54 |
スペイン |
アリシア・ヒメネス=バルトレット |
原題 Mensajeros de la oscuridad |
Wysłańcy ciemności |
87 |
スペイン |
ホセ・カルロス・ソモサ |
イデアの洞窟 |
Jaskinia filozofów |
88 |
スペイン |
エドゥアルド・メンドサ |
原題 La aventura del tocador de señoras |
Przygoda fryzjera damskiego |
53 |
イタリア |
アンドレア・カミッレーリ |
原題 Gli arancini di Montalbano |
Pomarańczki komisarza Montalbano |
82 |
イタリア |
ウンベルト・エーコ |
薔薇の名前 |
Imię róży |
6作中、日本語で読めるのは2作だけである。日本で南欧ミステリの邦訳が遅れていることが分かる。もっとも、この6人の中でまったく邦訳がないのはスペインのアリシア・ヒメネス=バルトレットだけである。スペインのエドゥアルド・メンドサは邦訳はあるが、ミステリは邦訳されていない。
マヌエル・バスケス・モンタルバンの選出作は私立探偵ペペ・カルバイヨ・シリーズの1作。タイトルは訳すと『センターフォワードは夕暮れ時に殺された』となる(井上知氏のご教示による)。1991年にはドイツ・ミステリ大賞(翻訳作品部門)の第2位になっている。日本ではシリーズ初期の長編3作品が翻訳されている。
アリシア・ヒメネス=バルトレット(アリシア・ヒメーネス・バルトレット)(Alicia Giménez Bartlett, 1951- ,
スペイン語版Wikipedia)は邦訳は1作もないが、イタリアで2008年にレイモンド・チャンドラー賞(国内外の優秀なミステリ作家に贈られる)を受賞するなど、国境を越えて評価されているミステリ作家である。このリストで選出されている作品は、1996年から刊行されている女刑事ペトラ・デリカード・シリーズの第3作(1999)。
エドゥアルド・メンドサの選出作は2001年の作品で、「名もなき探偵」シリーズ第3作。柳原孝敦氏がブログ「翻訳ミステリー大賞シンジケート」に連載したエッセイ「黒、ただ一面の黒」の「
第1回 なんだかおかしな黒:エドゥアルド・メンドサ」(2013/04/01)で、このシリーズの第4作(2012)が紹介されている。
アンドレア・カミッレーリの選出作は20編収録の短編集(1999年)。収録作のうちの1編が「ふたりのモンタルバーノ」のタイトルで邦訳されている(大條成昭訳、『ミステリマガジン』2001年2月号)。
フランス語圏(4作品)
17 |
フランス |
ジャン=クロード・イゾ |
失われた夜の夜 |
Total Cheops |
20 |
ベルギー |
ジョルジュ・シムノン |
メグレと首無し死体 |
Maigret i trup bez głowy |
24 |
フランス |
セバスチアン・ジャプリゾ |
シンデレラの罠 |
Kopciuszek w potrzasku |
51 |
フランス |
ジャン=クリストフ・グランジェ |
クリムゾン・リバー |
Purpurowe rzeki |
ドイツ語圏(2作品)
80 |
スイス |
フリードリヒ・デュレンマット |
故障 |
Kraksa. Historia jeszcze możliwa |
84 |
ドイツ |
エルンスト・ユンガー |
原題 Eine gefährliche Begegnung |
Niebezpieczne spotkanie |
フリードリヒ・デュレンマット「故障」は『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』(増本浩子訳、光文社古典新訳文庫、2012年)に収録。
エルンスト・ユンガーは文学方面で知られる作家だが、選出作の『Eine gefährliche Begegnung』(
ドイツ語版Wikipedia)はミステリであるらしい。
その他(3作品)
34 |
イスラエル |
シュラミット・ラピッド |
原題 מקומון |
Gazeta lokalna |
50 |
日本 |
桐野夏生 |
OUT |
Ostateczne wyjście |
52 |
ロシア |
ボリス・アクーニン |
原題 Статский советник |
Radca stanu |
シュラミット・ラピッドは邦訳に『「地の塩」殺人事件 女記者リジー・バドゥヒ』(母袋夏生訳、マガジンハウス、1997年9月)がある。ここで選ばれている作品は1996年のドイツ・ミステリ大賞(翻訳作品部門)で第2位になった作品。
桐野夏生の『OUT』は英訳版が2004年にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされたということもあり、世界でもっとも有名な日本ミステリとなっている。私の知る限りで、『OUT』は以下の24の言語に翻訳されている:英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、オランダ語、アイスランド語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語、ロシア語、ポーランド語、チェコ語、スロベニア語、クロアチア語、ギリシャ語、ハンガリー語、ヘブライ語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、トルコ語。なお、ポーランド語になっている日本の現代ミステリ作家は桐野夏生ぐらいしかない(『
OUT』のほか、『
グロテスク』、『
リアルワールド』、そしてミステリではないが『
東京島』が訳されている ※タイトルをクリックするとポーランド語版の表紙画像が見られます)。2012年に同じくエドガー賞最優秀長編賞にノミネートされた東野圭吾の『容疑者Xの献身』は知る限りで16の言語に翻訳されており、近隣国(ドイツ、チェコ、ハンガリー)でも翻訳出版されているが、ポーランド語には訳されていない。
ボリス・アクーニンの選出作はファンドーリンの捜査ファイル・シリーズ。日本では初期の3作品が翻訳されている。
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最終更新:2014年08月28日 23:07