ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧

2013年7月22日

【注意点】

 先月作成した「北欧ミステリ邦訳一覧」、「南欧ミステリ邦訳一覧」と同じように基本的に邦訳された順に並べていますが、1940年代までの作品についてはいつ邦訳されたかにかかわらず、「(1)18世紀・19世紀の古典犯罪小説・探偵小説」または「(2)20世紀前半のドイツ語圏探偵小説」に分類しています。
 たとえば、フリードリヒ・グラウザーのシュトゥーダー刑事シリーズは邦訳が始まったのは1990年代ですが、1930年代に発表された作品であるため、「(7)1990年代~に邦訳された作家」ではなく「(2)20世紀前半のドイツ語圏探偵小説」に分類してあります。

 ただし1950年代に伊東鍈太郎が訳した作品群については、発表年代にかかわらずすべて「(3)1950年代~に邦訳された作家」に分類しています。これは理由は単純で、伊東鍈太郎が訳した作品は発表年代がいつなのか(1940年代までの作品なのか1950年代以降の作品なのか)が分からないものが多いからです。

Index

ドイツ語圏最初の探偵小説(邦訳なし)

 ミステリ同人誌『ROM』117号(非英米ミステリ特集号、2003年3月)を最近国会図書館で読んで知ったのだが、ドイツ語圏の最初の探偵小説はドイツのアードルフ・ミュルナー(Adolf Müllner、1774-1829)が1828年に発表した中編小説「Der Kaliber」だとする説があるのだそうだ。1999年に刊行された草創期ドイツ語圏探偵小説の英訳アンソロジー『Early German and Austrian Detective Fiction』(米国amazon)の編者たちがそのように主張しているのだという。1828年ということは、ポーの「モルグ街の殺人」(1841年)より13年早い。さらに、1839年発表のオットー・ルートヴィヒ(Otto Ludwig、1802-1875)の中編「Der Tote von St. Annas Kapelle」もやはり「探偵小説」だそうだ。このオットー・ルートヴィヒは本名Emil Freiherr von Puttkammer。有名なドイツ作家で邦訳もあるオットー・ルートヴィヒ(1813-1865)とは別人なので注意。
 『Early German and Austrian Detective Fiction』はモルグ街よりも早いこの2作を含む全6作を収録。『ROM』117号では主宰者のROM氏がこの本のレビューを書いている。収録作はどれも未邦訳である。
 ドイツ語圏最初の探偵小説とされる「Der Kaliber」(1828)の作者のアードルフ・ミュルナーは戯曲「罪」が訳されている(深見茂訳、『ドイツ・ロマン派全集 第17巻 呪縛の宴 ドイツ運命劇集』、国書刊行会、1989年6月、pp.191-280)。原題は「Die Schuld」で、1812年の作品。

(1)18世紀・19世紀の古典犯罪小説・探偵小説

  • フリードリヒ・フォン・シラー Der Verbrecher aus verlorener Ehre (1786年)
    • 「太陽の亭主」(訳者不明、博文館 世界探偵小説全集 第1巻 田内長太郎・田中早苗編『古典探偵小説集』、1930年4月)
    • 「誇りを汚された犯罪者」(浜田正秀訳、ポプラ社百年文庫70『野』、2011年3月)

 一般的な説ではないと思うが、植田敏郎「ドイツの推理小説とその作家」(東京創元社《世界推理小説全集》第9回配本第9巻 クロフツ『樽』[1956年]、月報『推理』9)では、フリードリヒ・フォン・シラーの1786年のこの作品がドイツ最初の推理小説だとされている(「モルグ街の殺人」[1841]より55年早い!)。

  • E・T・A・ホフマン Das Fräulein von Scuderi (1819-1821年)
    • 『スキュデリー嬢』(吉田六郎訳、岩波文庫、1956年)
    • 「マドモワゼル・ド・スキュデリ」(大島かおり訳、『黄金の壺 / マドモワゼル・ド・スキュデリ』に収録、光文社古典新訳文庫、2009年3月)

 戦前から邦訳があるが、主なもののみ示した。ドイツではかつて、「モルグ街の殺人」より20年早いこの作品こそが世界最初の探偵小説だという主張がなされたことがあるという(日本独文学会2004年春季研究発表会 シンポジウム「ドイツ推理文学の諸相」発表要旨参照)。岩波書店のサイトではこの作品は、「サスペンスに富み,ふかく人生の機微をうがった本格的な推理小説」と紹介されている(岩波書店 ホフマン『スキュデリー嬢』)。

  • ヴィルヘルム・ハウフ Die Sängerin (1826年)
    • 『オペラの女優』(秋吉無声訳、内外出版協会、1912年)(オンラインで閲覧可能→国立国会図書館デジタル化資料
    • 「歌手」(木村信児訳、『世界短篇小説大系 探偵家庭小説篇』近代社、1926年3月)
    • 「歌姫殺傷事件」(江馬寿訳、『探偵倶楽部』1958年2月号[9巻2号]、pp.258-302)

 「歌姫殺傷事件」掲載号には江馬寿「ウイルヘルム・ハウフについて」が付されていて、以下のように紹介されている。
 『歌姫殺傷事件』は、ウイルヘルム・ハウフが残した貴重な推理小説である。ハウフの名は、我国では多く、というよりもむしろ全部が、童話作家としてのみ知られて来た。【中略】ここに紹介した『歌姫』は、もちろん初めての邦語訳である。ハウフ生存の時代には、恰もかのドイツ文学界の鬼才として尊敬されたホフマンが、いう所の怪奇小説風のものを多く発表し、人々の注目をあびていたわけであるが、この『歌姫殺傷事件』もホフマン張りの豊富な想像力によって創り出され、当時のものとしては珍らしい推理小説の体裁をととのえているのである。しかも、ハウフ独特の穏やかな諷刺とユーモアが混じえられている点に、注目して頂きたい。訳者は、我国では未だ紹介されなかったこの作品を訳出することによって、推理小説と文学というものの脈絡を更に検討する一つのよすがになればと考えるものである。【改行は省略した】

 1953年にドイツで刊行されたワルター・ゲルタイス(Walter Gerteis、1921-1999)の『名探偵は死なず その誕生と歴史』(邦訳1962年、弘文堂、前川道介訳)には、探偵小説史におけるヴィルヘルム・ハウフについて以下のような記述がある(邦訳書p.61)。
 それはともかく、ドイツに対犯罪機関ができた時代に、童話の形式だったが、純粋に()()()()()な性格をもったものとしては、ドイツで一番早かったヴィルヘルム・ハウフの短篇「何も見なかったユダヤ人アブナー」(一八二七年)が出ている。散歩にいったアブナーは実物を見なかったにもかかわらず、逸走した馬と犬との特徴を詳しく述べることができた。するどい眼力をもった彼は、散歩途上の砂や木にあった痕跡から一部始終を読みとったのであった。筆者がこの作品をこれ以上強調しないのは、申すまでもなくこれには原作があるからで、すなわちヴォルテールがその小説の主人公ザディクにアブナーと同じ冒険をさせているのである。

 ゲルタイスは探偵小説的な性格を持ったものでドイツで一番早かったのはハウフの短編「何も見なかったユダヤ人アブナー」(1827年)だといっている。ゲルタイスは探偵小説と犯罪小説を厳密に分けているので、1926年の「歌手」(「歌姫殺傷事件」)についてはおそらく「犯罪小説」との判定を下したのだろう。引用中で言及されている作品は、「なにも見なかったユダヤ人のアブネル」というタイトルでウィルヘルム=ハウフ『アレッサンドリア物語 ハウフ童話全集2』(塩谷太郎訳、偕成社文庫、1977年11月)に収録されている。2001年に刊行されたヴィルヘルム・ハウフ『冷たい心臓 ハウフ童話集』(乾侑美子訳、福音館書店)はハウフの童話集3冊の集成だが、「なにも見なかったユダヤ人のアブネル」はカットされているので注意。訳者あとがきによれば、ユダヤ人の描写のしかたに問題があるので収録を見合わせたとのこと。
 「なにも見なかったユダヤ人のアブネル」のもとになったとされるヴォルテール『ザディグ』(1747年)(「ザディーグまたは運命」、ヴォルテール『カンディード 他五篇』[植田祐次訳、岩波文庫、2005年]に収録、pp.83-227)のエピソード「犬と馬」(または「王妃の犬と国王の馬」)は、エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』(創元推理文庫、1975年)や『クイーンの定員 傑作短編で読むミステリー史』第1巻(光文社文庫、1992年3月)で読むことができる。なおストーリーの起源はヴォルテールよりもさらに以前にさかのぼるという。

  • ドロステ=ヒュルスホフ Die Judenbuche (1842年)
    • 『ユダヤ人のブナの木』(番匠谷英一訳、岩波文庫、1953年)
    • 『ユダヤ人のブナの木』(アンネッテ・フォン・ドロステ-ヒュルスホフ著、曲肱楽聴訳、星湖舎、2007年9月)
      • 星湖舎のサイトより内容紹介「19世紀初頭、ドイツ・ヴェストファーレン地方の寒村で起こった事件。次々と惨殺されるユダヤ人、聡明なそして孤独な一青年の奇妙な行動、そして彼の失踪、28年後、問題のブナの木の下で、すべてが明らかになる。」(リンク

 前川道介「文化史的興趣も尽きない「犯罪小説」の佳作」(『翻訳の世界』1991年7月号)によれば、「十八世紀に英仏から犯罪実話集がドイツに入り、一般読者に大いに歓迎されたため、いわゆる純文学者のなかで犯罪小説に手を染める者がでてきた。その草分けが『失われた名誉のための犯罪者』を書いたシラーで、つづいて『決闘』のクライスト、『スキュデリー女史』のホフマン、ドロステ=ヒュルスホフの『ユダヤ人のブナの木』などの名作が書かれ、この伝統は今世紀のレオ・ペルッツまで脈々と受けつがれている」。
 ちなみにこのエッセイ自体は、未訳の長編犯罪探偵小説、カール・フォン・ホルタイ(Karl von Holtei)『リガ殺人事件』(Der Mord in Riga)(1855年)を紹介したもの。

  • ヴィルヘルム・ラーベ(Wilhelm Raabe) Stopfkuchen (1891年)
    • 『ぶたマン 洋上殺人物語』(倉田勇治訳、人文書院、2005年9月)
      • 人文書院のサイトより内容紹介「翻訳不可能といわれた傑作長篇、世界初訳 / 19世紀ドイツで活躍した作家ラーべの晩年の傑作長篇小説が世界初訳。ある男が船の上で故郷の思い出を綴っているというシンプルな内容ながら、現在と過去、そのまたさらに過去、という時間軸をめまぐるしく変化させるその描き方は、19世紀の作家とは思えない斬新さ。昔の友人「ぶたマン」との再会、故郷の思い出、主人公の尊敬していた郵便配達人の死、そして過去の殺人事件の真相が……。」(リンク

 坂部護郎『世界探偵秘史』(星書房、1946年5月)の「探偵小説の先覚者達」(pp.311-317)ではヴィルヘルム・ラーベの名前が挙げられており、「ドイツの小説家。その探偵小説「ストップクーヘン」(Stopfkuchen)は一般に愛読せられた好著である」と紹介されている。その邦訳が『ぶたマン 洋上殺人物語』である。
 ちなみにこの「探偵小説の先覚者達」では、ドイツのクリスティアーン・アウグスト・ヴルピウス(Christian August Vulpius)の『Rinaldo Rinaldini(リナルド・リナルディーニ)』(1799)(邦訳なし)が「探偵小説の濫觴と云われる」とされている。シラーの「誇りを汚された犯罪者」、ドロステ=ヒュルスホフの『ユダヤ人のブナの木』のタイトルも挙げられており、ほかにドイツの探偵小説としてはホフマンの『悪魔の霊酒』(1815-1816)(邦訳は深田甫訳、ちくま文庫、2006年4月 等)、テーオドア・フォンターネの『Quitt』(1890)(邦訳なし)、リカルダ・フーフ(Ricarda Huch)の『Der Fall Deruga(デルーガ事件)』(1917)(邦訳なし)も挙げられている。またクライストの項目では『ミヒャエル・コールハースの運命』(1810)(邦訳は吉田次郎訳、岩波文庫、1941年 等)が「探偵劇」とされている。
 テーオドア・フォンターネの『Quitt』とリカルダ・フーフの『Der Fall Deruga(デルーガ事件)』は「ドイツ語圏のミステリファンが選ぶドイツ語圏ミステリベスト100(2002年)」のクラシック・ミステリ編にランクインしている。

 なお、ワルター・ゲルタイスは『名探偵は死なず その誕生と歴史』(邦訳1962年、弘文堂、前川道介訳)(原著1953年)で、ドイツには探偵小説の伝統はないが犯罪小説には立派な伝統があるとして、このページでも挙げたシラー「誇りを汚された犯罪者」、ホフマン『マドモワゼル・ド・スキュデリ』、ドロステ=ヒュルスホフ『ユダヤ人のブナの木』、ヴィルヘルム・ラーベ『ぶたマン 洋上殺人物語』のほか、19世紀の作品ではアヒム・フォン・アルニム「狂気の傷痍兵、ラトノオ砦の上に在り」(1818)(アヒム・フォン・アルニム『エジプトのイサベラ』[国書刊行会 世界幻想文学大系4、1975年]に収録、pp.9-48)、テーオドア・フォンターネ『Unterm Birnbaum(梨の木の下)』(1885)(邦訳なし)を挙げている。『梨の木の下』は「ドイツ語圏のミステリファンが選ぶドイツ語圏ミステリベスト100(2002年)」のクラシック・ミステリ編にランクインしている。
 またゲルタイスは20世紀の作品ではクララ・フィービヒ(Clara Viebig)「Absolve te」、リカルダ・フーフ「Der Fall Deruga」(デルーガ事件)、レルネット=ホレーニア『両シチリア連隊』(Beide Sizilien)*注、エルンスト・ペンツォルト(Ernst Penzoldt)「Die Perle(真珠)」を挙げているが、この4作は未邦訳。これらはゲルタイスに言わせれば「犯罪者や犯罪やそれらをテーマにした文学作品」であり、「たとえ警部が登場していても、決して探偵小説とは呼ばれないものである」とのこと(邦訳書p.151)。

  • :レルネット=ホレーニア『両シチリア連隊』(Beide Sizilien)は垂野創一郎氏の訳で2014年9月に東京創元社より刊行予定。垂野氏はミステリ評論同人誌『ROM』135号(2010年10月)の「レルネット=ホレーニアの幻想ミステリ」でこの作品のレビューをしている(そこでは訳題は『両シシリア連隊』となっている)。

(2)20世紀前半のドイツ語圏探偵小説

ドイツ
  • パウル・ローゼンハイン(Paul Rosenhayn、1877-1929)
    • 『新青年』に訳載されたジョー・ジェンキンズ・シリーズ(10編)
      • 「乾板上の三人」(鳥井零水[小酒井不木]訳、1923年5月号[4巻6号]、pp.202-239)
      • 「ルイ十五世の煙草匣」(鳥井零水[小酒井不木]訳、1923年夏季増刊号[4巻10号]、pp.66-83)
      • 「白い蘭」(鳥井零水[小酒井不木]訳、1924年新春増刊号[5巻2号]、pp.72-95) - 萌倉望氏の小酒井不木研究サイト「奈落の井戸」で翻刻されており、オンラインで読むことができる(トップページ>小酒井不木>翻刻ライブラリ(翻訳編))
      • 「共同出資者」(武村俊二訳、1927年夏季増刊号[8巻10号]、pp.140-158)
      • 「模造宝石事件」(訳者記載なし、1930年夏季増刊号[11巻11号]、pp.160-179)
      • 「午前三時」(訳者記載なし、1931年新春増刊号[12巻3号]、pp.66-78)
      • 「映画試撮事件」(浅野玄府訳、1931年夏季増刊号[12巻11号]、pp.336-355)
      • 「綱」(浅野玄府訳、1932年2月号[13巻2号]、pp.204-217)
      • 「死者甦る時」(浅野玄府訳、1932年夏季増刊号[13巻10号]、pp.112-123)
      • 「発明家と怪死体」(浅野玄府訳、1933年新春増刊号[14巻3号]、pp.404-426)
    • その他
      • 「空中殺人団」(鶴毛寧夫訳、『中学世界』1925年9月号~10月号[28巻9号、10号] / 論創ミステリ叢書『小酒井不木探偵小説選』論創社、2004年)※ジェンキンズ物
      • 「Razzia」(斎藤俊訳、『新青年』1926年11月号[7巻13号]、pp.231-239)※非ジェンキンズ物
  • フェルディナント・ルンケル(Ferdinand Runkel)
    • 「公爵の首」(鳥井零水[小酒井不木]訳、『新青年』1923年夏季増刊号[4巻10号]、pp.184-205、著者名表記「フェルヂナント・ルンケル」)
  • ワルター・ハーリヒ(Walther Harich、1888-1931)
    • 『妖女ドレッテ』(稲木勝彦訳、『新青年』1934年2月増刊[15巻3号]、pp.65-171、著者名表記「ワルター・ハアリヒ」/ 1959年、同一訳者による改訳版が東京創元社《世界推理小説全集》63巻『妖女ドレッテ』として刊行)
      • 『新青年』1934年2月増刊、pp.172-173に江戸川乱歩「「ドレッテ」に就いて」あり。
    • 『妖女エディト』(甲田寿太郎訳、『新青年』1938年2月増刊[19巻3号]、pp.452-495、著者名表記「ワルター・ハーリッヒ」)
  • アレキサンダー・カステル(Alexander Castell、1883-1939)
    • 「或る変質者の死」 (千葉猪平訳、『新青年』1935年8月増刊[16巻10号]、pp.283-291)
    • 「死の誤解」(H・W・ベレット『沈黙の環』[伊東鋭太郎訳、日本公論社、1937年]に併録)
  • オスカール・エンゼン(Oskar Jensen)
    • 「沈黙の唇」(雨石矢兵訳、『新青年』1937年2月増刊号[18巻3号]、pp.484-507)
  • H・W・ベレット(H. W. Berett)(ヴァルター・レドマン[Walther Redmann]とハンス・ベンツ[Hans Bentz、1902-1968]の合作筆名)
    • 『沈黙の環』 Ring des Schweigens (伊東鋭太郎訳、日本公論社、1937年、アレキサンダー・カステル「死の誤解」を併録)
      • 1940年に『武士の子』と改題刊行

  • ディートリッヒ・テーデン(Dietrich Theden、1857-1909)
    • 「巧に織った証拠」(平井喬訳、『宝石』1955年4月号、pp.210-222)

  • エーリヒ・ケストナー(Erich Kästner、1899-1974)
    • 『消え失せた密画』(小松太郎訳、創元推理文庫、1970年2月 等) ユーモアミステリ
      • ケストナーの作品は創元推理文庫ではほかに『雪の中の三人男』(小松太郎訳、1971年11月)と『一杯の珈琲から』(小松太郎訳、1975年9月)が出ている
    • 『エーミールと探偵たち』(池田香代子訳、岩波少年文庫、2000年6月 等)
    • 『エーミールと三人のふたご』(池田香代子訳、岩波少年文庫、2000年7月 等)

  • ヤーコプ・ヴァッサーマン(Jakob Wassermann、1873-1934)
    • 『埋れた青春(うずもれたせいしゅん)』(ヤコブ・ヴァッサマン著、秘田余四郎訳、雄鶏社 おんどり・ぽけっと・ぶっく、1955年) Der Fall Maurizius (1928)
      • この作品はフランスで映画化されている。映画版のあらすじは、「弁護士の息子エゼルは、18年前に父が担当した状況証拠のみで有罪となった、妻殺しの殺人事件に興味を持ち調査を始める。そこから分かった真実とは…!?」(amazon『埋もれた青春』DVD)。ヴァッサーマンはほかの作品の邦訳もあり。
  • アルフレート・デーブリーン(Alfred Döblin、1878-1957)
    • 『ベルリン・アレクサンダー広場』(早崎守俊訳、河出書房新社、1971年【上下巻】 / 復刻新版 河出書房新社、2012年6月) 1929年発表の前衛的犯罪小説
    • 『二人の女と毒殺事件』(小島基訳、白水社、1989年5月) 実際に起こった事件を元にした実録小説
      • ほかにも邦訳あり

 稲木勝彦「欧洲の探偵文学」(『宝石』1958年3月号)に以下のような記述がある。
英米でも著名な作家が探偵小説を書いている。そしてわが国でもその傾向は同じであるが、ドイツでも純文学作家の中にちらほら探偵小説――厳密な意味に於ては犯罪心理小説かも知れない――を書く人が現われ、特に、ヨアヒム・マース「グフェー事件」エーリヒ・ケストナー「紛失したミニアチュア」ヤーコプ・ワッサーマン「マウリチウス事件」フリードリヒ・デュレンマット「判事と首切役人」等は所謂文学的探偵小説として一読に価する。
 ここで挙げられている『紛失したミニアチュア』は『消え失せた密画』、『マウリチウス事件』は『埋れた青春(うずもれたせいしゅん)』、「判事と首切役人」は「裁判官と死刑執行人」(または「判事と死刑執行人」)のことである。ヨアヒム・マース『グフェー事件』(Joachim Maass, "Der Fall Gouffé")は未訳。

オーストリア
  • アウグスト・ワイスル(August Weißl、1871-1922)
    • 『緑の自動車』(延原謙訳、『新青年』1926年8月号[7巻9号]~12月号[7巻14号]、全5回連載(8月増刊号[7巻10号]には掲載されていない) / 水谷準訳、春陽堂《探偵小説全集》22巻『緑の自動車』)
      • 連載の掲載ページは順に、8月号pp.2-29、9月号pp.184-215、10月号pp.326-363、11月号pp.248-286、12月号pp.244-287
  • バルドゥイン・グロラー(Balduin Groller、1848-1916)
    • 探偵ダゴベルトシリーズ
      • 『探偵ダゴベルトの功績と冒険』(垂野創一郎訳、創元推理文庫、2013年4月)
        • 「上等の葉巻」(「細い葉巻」『ROM』121号[2004年11月]、小林晋訳)
        • 「大粒のルビー」(「紅玉(ルビー)事件」『新青年』1930年5月号[11巻6号]、訳者名記載なし)
        • 「恐ろしい手紙」(「匿名の手紙」『ミステリマガジン』1975年6月号、山田辰夫訳)
        • 「特別な事件」
        • 「ダゴベルト休暇中の仕事」
        • 「ある逮捕」
        • 「公使夫人の首飾り」
        • 「首相邸のレセプション」
        • 「ダゴベルトの不本意な旅」
      • 上記の本に未収録のダゴベルト物
        • 「奇妙な跡」(阿部主計訳、江戸川乱歩編『世界短編傑作集』第2巻[創元推理文庫、1960年] 等)
        • 「六百の鍵穴がある小箱」(垂野創一郎訳、『ミステリーズ!』58号[2013年4月号])
    • 非ダゴベルト物
      • 「尼寺から出て来た女」(『新青年』1927年5月号[8巻6号]p.274-279、浅野玄府訳) ※非ミステリのユーモア作品
  • ローレンス・H・デスベリー(Lawrence H. Desberry、本名Hermynia zur Mühlen[ヘルミュニア・ツア・ミューレン]、1883-1951)
    • 『左翼探偵小説デスベリー全集1 電気椅子の蔭で』(川口浩訳、青陽社、1930年) Im Schatten des elektrischen Stuhls (1929)
      • ほかの邦訳書に『真理の城』(ミユーレン著、林房雄訳、南宋書院 世界社会主義文学叢書、1928年)、プロレタリア童話集『小さいペーター』(ヘルミニヤ・ツール・ミユーレン著、林房雄訳、暁星閣、1927年)がある

  • シュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig、1881-1942)
    • 「白薔薇」(木村毅訳、『探偵倶楽部』1955年12月号[6巻12号]、pp.314-350) - Brief einer Unbekannten (1922)
      • ほかの訳題に「見知らぬ女の手紙」、「未知の女の手紙」
    • 「アモック殺人者」(江馬寿訳、『探偵倶楽部』1956年9月号[7巻10号]、pp.294-342) - Der Amokläufer (1922)
      • ほかの訳題に「アモク」、「情熱の海」、「愛慾の海 狂走者」、「狂走病患者」

 シュテファン・ツヴァイクは普通「(広義の)ミステリ作家」として語られることはないと思うが、上記の2作は探偵雑誌に訳載され、「白薔薇」の方は「ロマンティック・スリラー」(表紙)、「アモック殺人者」の方は「愛慾スリラー」(裏表紙)、「怪奇愛慾のスリラー」(目次)と紹介されている。なお、須知文三「独逸探偵小説の二傾向」(『新青年』1938年夏期増刊号[19巻13号])でもツヴァイクに言及があり、そこでは中編小説「不安」(Angst)が「その心理描写から見て凄いもの」と紹介されている。

  • レオ・ペルッツ(Leo Perutz、1882-1957)
    • 『最後の審判の巨匠』(垂野創一郎訳、晶文社ミステリ、2005年3月) - 2006本格ミステリ・ベスト10 第9位
      • ほかにも邦訳あり

スイス
  • フリードリヒ・グラウザー(Friedrich Glauser、1896-1938)
    • シュトゥーダー刑事シリーズ長編
      • 『シュルンプ・エルヴィンの殺人事件――シュトゥーダー刑事』(種村季弘訳、フリードリヒ・グラウザー『老魔法使い』[国書刊行会、2008年6月]に収録、pp.161-356)
      • 『狂気の王国』(種村季弘訳、作品社、1998年9月) - 2005年、英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞ノミネート
      • 『クロック商会』(種村季弘訳、作品社、1999年7月)
      • 『砂漠の千里眼』(種村季弘訳、作品社、2000年2月)
      • 『シナ人』(種村季弘訳、フリードリヒ・グラウザー『老魔法使い』[国書刊行会、2008年6月]に収録、pp.357-538)
    • シュトゥーダー刑事シリーズ短編
      • フリードリヒ・グラウザー『老魔法使い』[国書刊行会、2008年6月]に収録の短編(この本はシュトゥーダー刑事シリーズの長編2編と短編12編を収録)
        • 「老魔法使い」「尋問」「犯罪学」「はぐれた恋人たち」「不運」「砂糖のキング」「死者の訴え」「ギシギシ鳴る靴」「世界没落」「千里眼伍長」「黒人の死」「殺人――外人部隊のある物語」
          • 「死者の訴え」の翻訳の初出は『別冊幻想文学 怪人タネラムネラ 種村季弘の箱』(アトリエOCTA、2002年4月)
          • 「はぐれた恋人たち」は前川道介による邦訳もある。「シュトゥーダー刑事ともち去られた死体」(『ジャーロ』6号[2002年冬号] 、pp.106-109 ※目次にないので注意)
    • ほかの邦訳に『外人部隊』(種村季弘訳、国書刊行会、2004年7月)がある

ルクセンブルク
  • ノルベルト・ジャック(Norbert Jacques、1880-1954)
    • 『ドクトル・マブゼ』(平井吉夫訳、ハヤカワ・ミステリ、2004年7月) ※1924年にも『怪魔王』(水田銀之助訳、博文館《探偵傑作叢書》27)として邦訳がある

関連書籍(非ドイツ語作品)
  • キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』(熊井ひろ美訳、国書刊行会《世界探偵小説全集》14、1999年4月)
    • 1937年の作品。キャメロン・マケイブはドイツ人作家で、本名エルネスト・ボーネマン(Ernst Bornemann)。母語はドイツ語。『編集室の床に落ちた顔』はナチスの迫害から逃れるためにイギリスに渡ったボーネマンが数年で英語をマスターし、英語で執筆した作品である。

(3)1950年代~に邦訳された作家

  • アレクサンダー・レルネット=ホレーニア(オーストリア)(Alexander Lernet-Holenia、1897-1976)
    • 「姿なき殺人者」(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1954年1月号[5巻1号]、pp.287-330、著者名表記「アレキサンダー・レルネット=ホレニア」) - Ich war Jack Mortimer (1933)
    • 『両シチリア連隊』(垂野創一郎訳、東京創元社、2014年9月◆予定)
      • ほかの邦訳に『白羊宮の火星』(福武文庫、1991年2月)、短編集『モナ・リーザ、バッゲ男爵 他』(創土社、1975年)など
  • ハンス・ホイエル(Hans Heuer)
    • 「薔薇と毒薬」(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1955年4月号[6巻4号]pp.187-202、1955年5月号[6巻5号]pp.174-199、全2回連載)
  • シャーロット・カウフマン(Charlotte Kaufmann)
    • 「遺言書」(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1955年7月号[6巻7号]、pp.261-290)
    • 「諜報と激情」(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1956年10月号[7巻11号]、pp.192-214)
  • ワルター・トッド
    • 『香港No.5酒場(ほんこんごばんさかば)』(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1955年11月号[6巻11号]~1956年2月号[7巻2号]、全4回連載) スパイ物の実録小説
      • 掲載ページは順に、pp.258-288、pp.230-247、pp.98-111、pp.128-146

伊東鍈太郎が『探偵倶楽部』で訳したその他のドイツ語圏ミステリ
1954年3月号 5巻3号 264-298 「二重生活者の悲劇」 オシップ・シュービン(チェコ)(Ossip Schubin、1854-1934)
1955年6月号 6巻6号 180-203 「怖ろしき一夜」 インゲボルク・フィーゲン(Ingeborg Fiegen)
1955年8月号 6巻8号 382-410 「塀の向側(むこうがわ)の二人の女」 R・A・ヴェーラア
1955年9月号 6巻9号 128-151 「私は告白する」 ハインツ・オットー・クイツ(Heinz Otto Quitz) 道本清一名義
156-186 「事件は終りぬ」 ウィルヘムス・スパイヤー&パウル・フランク
1955年10月号 6巻10号 146-182 「深夜の跫音」 ヘルムート・ザンデル(Helmut Sander)
1956年10月号 7巻11号 80-110 「もう一つの鍵」 H・バウムガルテン(Harald Baumgarten) 道本清一名義
1957年5月号 8巻4号 134-169 「追跡する女」 コリンナ・ライニング
1958年8月号 9巻10号 281-285 「知りすぎた男」 エルンスト・シュムッカア 道本清一名義
1958年10月号 9巻12号 92-95 「詐術」 ベルタ・ブリュックナア
  • インゲボルク・フィーゲン「怖ろしき一夜」は"Eine unheimliche Nacht"か?
  • 「事件は終りぬ」は「この中篇は、最近死去した、ドイツの一流作家スパイヤーの未完の遺作を、これも一流作家フランクが完成したことで評判の傑作です。」と書かれている。ウィルヘムス・スパイヤーはヴィルヘルム・シュパイヤー(Wilhelm Speyer、1887-1952)のことか?

  • ミヒャエル・グラーフ・ゾルチコフ(ドイツ)(Michael Graf Soltikow、1902-1984)
    • 「新水爆殺人事件」(伊東鍈太郎訳、『宝石』1956年6月号[11巻8号]、pp.244-316)
      • 目次での内容紹介「水爆の秘密を握る博士の死と書類の行方は現代の最大スリル! スパイ小説にして明快な推理が勝つ日!!」
      • 編集後記「田中氏のクリスティ物と対照して、伊東鍈太郎氏に独乙ものを煩わした。新水爆に対する恐怖とこれにまつわる本格的な謎の解明は二百五十枚の長さを感じないで一気に読みきる。」
    • 「泥棒日記 ―エーリヒ・ベルガーの告白―」(伊東鍈太郎訳、『宝石』1956年7月号[11巻9号]、pp.144-151 / のちに『カインの末裔 他二篇』に収録)
    • 「空中殺人事件」(伊東鍈太郎訳、『宝石』1956年9月号[11巻12号]、pp.88-123)
      • 目次での内容紹介「アルゼンチンからヨーロッパへ逃れてきた男装の麗人とテストパイロットの再会読者の興味津津!!」
    • 「戦争花嫁事件」(伊東鍈太郎訳、『探偵倶楽部』1958年3月号[9巻3号]、pp.256-302)

+ 「戦争花嫁事件」に付された訳者の伊東鍈太郎のコメント
「戦争花嫁事件」に付された訳者の伊東鍈太郎のコメント

 ゾルチコフについて
 本篇の作者ミヒャエル・グラーフ・ゾルチコフは、現在西ドイツでもっとも人気のあるスリラー作家で、云わばフランスでシムノンが占めているような地位を西独で示していると云ってよいでしょう。
 かれの作品は僕の下手なホンヤクでさきに「新水爆殺人事件」、「泥棒日記」「空中殺人事件」の三篇を紹介(いずれも宝石誌)したが、今度の「戦争花嫁事件」は日本人が登場している点でちょっと変った趣きをみせている。しかも、従来異邦作家の手になるコケシ人形然とした日本人とちがって、人物として相当に描き出されている点は認めてよいと思う。
 かれの作品の特徴は、純然たるトリック、推理の方でなくて、やはりこれもシムノン型で、時局をひろく背景としてとりいれたサスペンス物やドキュメンタリーな物が多い。「ウロンスキーの騎兵大尉」(ポーランド参謀本部のスパイ将校)、「カナリス提督は何をしたか?」(ナチの諜報局長カナリスの反ヒトラー陰謀事件を扱ったもので、去年日本にこれの映画がきている)、「猫」(これは目下独仏合作の大作映画として両国で撮影中と伝えられる。その内容はやはり第二大戦争の女スパイ物)などがかれの代表的なものとされている。

  • マリー・ルイゼ・フィッシャー(ドイツ)(Marie Louise Fischer、1922-2005)
    • 『カインの末裔』(伊東鍈太郎訳、『宝石』1956年8月号[11巻11号]、pp.236-308 / 芸術社《推理選書》第7巻『カインの末裔 他二篇』[1956年]に収録 / 1960年に『女優邸殺人事件』と改題して銀河文庫で刊行?[現物未確認])
    • 『罪の影』(古市重郎訳、T.ワールド社、1989年2月、著者名表記「マリア・ルイス・フィッシャー」)
    • 『女子寮物語』(古市重郎訳、トランスワールド社、1990年4月、著者名表記「マリー・ルイス・フィッシャー」)
    • 『その時私は十七歳だった』(メーガー ミラー訳、現代図書、1997年7月、著者名表記「マリー ルイーゼ フィッシャー」)
      • 『カインの末裔』以外の作品がミステリなのかどうかは未調査
  • フランク・ブラウン(ドイツ)(Frank F. Braun、1895-1974? 79?)
    • 『夜の蝶』(伊東鍈太郎訳、『宝石』1957年1月号[12巻1号]pp.328-388、1957年2月号[12巻3号]pp.210-268、全2回連載) - 原題 Akte Korrenkamp

 『夜の蝶』に付された「作者の経歴」では1920年生まれとされているが、ネット上のドイツミステリ作家事典(Lexikon der deutschen Krimi-Autoren)では1895年生まれとされている(リンク)。
 稲木勝彦「欧洲の探偵文学」(『宝石』1958年3月号)では、稲木勝彦氏がドイツ語で読んだヨーロッパの探偵小説50冊ほどの中から「米英ものの水準に匹敵乃至はそれに近かいもの」が紹介されており、その中には『夜の蝶』(『コレンカンプ事件』)も含まれている。稲木氏は以下のように書いている。
「コレンカンプ事件」戦前のベルリンを舞台に自動車会社の社長が殺され、彼の甥が疑わしい。まだ若い未亡人にもかくした過去があり、その昔の恋人や自動車運転手も臭い。ベルリン警察署長が人情家で、腕利の探偵に捜査させながら段々未亡人に愛情を感じてゆく。本格もの。

伊東鍈太郎が『宝石』で訳したその他のドイツ語圏ミステリ
1956年3月号 11巻4号 269-315 「少年殺人犯」 ワルタア・エーベルト(ドイツ)(Walter Ebert、1907-????) のちに『カインの末裔 他二篇』に収録
1957年4月号 12巻5号 130-141 「夜の国境」 カール・ヒルシュフェルド
1957年7月号 12巻9号 40-73 「索溝」 フェリイ・ロッカー

 ワルタア・エーベルト(ヴァルター・エーベルト)は1953年にイギリスで制作された映画『二つの世界の男』(The Man Between)の原作『Gefährlicher Urlaub』の作者でもある。日本でも1954年に公開され、2011年にはDVD化された(amazon『二つの世界の男』DVD)。
 フェリイ・ロッカー(Ferry Rocker)はドイツのジャーナリストのHardy Worm(1896-1973)のペンネーム。1950年代にこのペンネームで本格ミステリを数作発表したようだ。稲木勝彦「欧洲の探偵文学」(『宝石』1958年3月号)では以下のように紹介されている。

フェリー・ロッカー 巴里に住んでいたので、しばしばフランスを舞台にし、また作品の多くは英国を舞台にしている。既に五、六作あるが、そのうち「ラテン区の銃声」と「ジョン・ケネディーの客達」が良い。前者は巴里のラテン区にある本屋のおやじが殺され、その甥の青年に嫌疑がかかる。巴里警察の中老の探偵が人なつこい態度で調べているうちに被害者や彼を取巻く人々に関する意外な事実が次々に分ってくる。巴里の庶民的な気質と風物が巧みに描込まれている。本格物。「ケネディーの客達」は前者とは打って変って、英国の流行作家が十人の友人をロンドン郊外の別荘へ招いて週末を過そうとして、その夜殺される。作家を取巻く十人の人物が相当によく書別けられ、筋の運びも謎の伏せ方も、意外性もよく、米、英の古典的本格物を読むような気持を起させる。

 「ラテン区の銃声」(Schüsse im Quartier Latin[カルチェ・ラタンの銃声])、「ジョン・ケネディーの客達」(John Kennedys Gäste)はどちらも未訳。

  • 伊東鍈太郎編訳『カインの末裔 他二篇』(芸術社《推理選書》第7巻、1956年)
    • 長編 『カインの末裔』マリー・ルイゼ・フィッシャー
    • 中編 「少年殺人犯」ワルタア・エーベルト
    • 短編 「泥棒日記」M・G・ゾルチコフ(ミヒャエル・グラーフ・ゾルチコフ)

 『探偵倶楽部』では同時期に伊東鍈太郎の訳で、スウェーデンのマリカ・スチールンステット(Marika Stiernstedt、1875-1954)の『占領軍将校殺人事件』(1953年10月号、道本清一郎名義)、ベルギーのジョルジュ・シムノンの『山峡の夜』(1954年12月号)、イギリスのネヴィル・シュートの『魔の夜間飛行』(1955年1月号)、オランダのA・デフレスネ(August Defresne、1893-1961)の『細菌培養土96号』(1956年2月号)などが掲載されている(『山峡の夜』は1936年に春秋社から刊行されたものの再録だと思われる)。また、『宝石』ではマリアンヌ・モン「古城の棲息者」(1956年1月号)を訳しているが、これがドイツ語圏の作品なのか否かは分からない。作者名はフランス的だが、作品の舞台はドイツである。翌々月号(1956年3月号)にはドイツのワルタア・エーベルトの「少年殺人犯」が訳載されたが、この号の編集後記には「久々の独逸物」との記述がある。ということは、やはりマリアンヌ・モン「古城の棲息者」はドイツ語圏の作品ではないのかもしれない。どの号のどの作品から勘定して「久々」なのかは分からない。

  • パウルス・ショッテ(オーストリア)(Paulus Schotte、本名 Paul Elbogen、1894-1987)
    • 「自分を追跡する男」(訳者名記載なし、『探偵倶楽部』1956年2月号[7巻2号]、pp.196-234)
  • ハンス=オットー・マイスナー(ドイツ)(Hans-Otto Meissner、1909-1992)
    • 『スパイ・ゾルゲ』(大木坦訳、実業之日本社、1958年)
    • 『アラスカ戦線』(松谷健二訳、早川書房、1970年 / ハヤカワ文庫NV、1972年)

 ハンス=オットー・マイスナーは外務省に勤務し、1936年から1939年まで大使館の書記官として東京で暮らした。戦後は作家活動に専念。父はドイツの政治家のオットー・マイスナー。

(4)1960年代~に邦訳された作家

  • フリードリヒ・デュレンマット(スイス)(Friedrich Dürrenmatt、1921-1990)
    • 『約束』(前川道介訳、ハヤカワ・ミステリ、1960年 / ハヤカワ・ミステリ文庫、2002年5月)
    • 『嫌疑』(前川道介訳、ハヤカワ・ミステリ、1962年[「裁判官と死刑執行人」も収録] / 早川書房《世界ミステリ全集》第12巻、1972年)
    • ※新訳 『判事と死刑執行人』(平尾浩三訳、同学社、2012年5月)
    • 『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』(増本浩子訳、光文社古典新訳文庫、2012年7月) - 2013年版このミステリーがすごい! 第5位
      • ほかにも邦訳あり
  • ハンス・ヘルムート・キルスト(ドイツ)(Hans Hellmut Kirst、1914-1989)
    • 『将軍たちの夜』(桜井正寅訳、早川書房 ハヤカワ・ノヴェルズ、1965年 / 安岡万里・美村七海訳、角川文庫、2010年7月) - 1965年、エドガー賞最優秀長編賞ノミネート
    • 『長いナイフの夜』(金森誠也訳、集英社、1979年12月 / 集英社文庫、1985年2月)
    • 『軍の反乱』(松谷健二訳、角川文庫、1987年3月)
      • ほかに『零八/一五』(全3巻、桜井和市・桜井正寅・藤村宏・城山良彦訳、三笠書房、1955年)

 2013年現在までに、エドガー賞最優秀長編賞にノミネートされたドイツ語圏作品は『将軍たちの夜』のみ。ちなみに最優秀長編賞への非英語圏からのノミネートはこれが初だった。

(5)1970年代~に邦訳された作家

  • ヨハネス・マリオ・ジンメル(オーストリア)(Johannes Mario Simmel、1924-2009)
    • 『白い逃亡者』(中西和雄訳、祥伝社 ノン・ノベル、1975年)
    • 『シーザーの暗号』【上下巻】(小菅正夫訳、番町書房 イフ・ノベルズ、1977年2月)
    • 『白い国籍のスパイ』(中西和雄訳、祥伝社、1981年7月 / 祥伝社 ノン・ポシェット【上下巻】、1996年10月)
    • 『白い壁の越境者』(中西和雄訳、祥伝社、1982年4月)
    • 『白い影の脅迫者』【上下巻】(大崎隆彦訳、中央公論社、1984年10月・11月)
    • 『白い殺意の異邦人』(平井吉夫訳、中央公論社、1985年7月)
    • 『ニーナ・B事件』(中西和雄訳、中央公論社 中公文庫、1986年8月)
    • 『白い悪夢の実験室』(平井吉夫訳、中央公論社、1988年10月)
    • 『暗がりの奴らは見えっこないさ』【上下巻】(大崎隆彦訳、中央公論社、1991年8月)
    • 『ひばりの歌はこの春かぎり』【上下巻】(平井吉夫訳、中央公論社、1992年12月)
  • ペーター・ハイム(Peter Heim)
    • 『アンデスの狙撃者』(松谷健二訳、角川文庫、1978年11月) - Töte, Gringo

(6)1980年代~に邦訳された作家

ミステリ・ファンにとってドイツという国はわからない国だ。というのはドイツ・ミステリという言葉がないためで、SFのローダン・シリーズみたいな看板ミステリがないせいだろう。(『ミステリマガジン』1980年7月号、海外ミステリ情報コーナー、p.111、執筆者署名なし)

  • ハインツ・G・コンザリク(ドイツ)(Heinz G. Konsalik、1921-1999)
    • 雑誌連載『二時間の昼休み』(磐田廣躬訳、『サンデー毎日』1981年1月4・11日号~4月19日号連載、全15回)
    • 『死の微笑』(畔上司訳、文春文庫、1997年6月)
    • 『SOS発信!』(畔上司訳、文春文庫、1998年9月)
      • ほかの邦訳に『第6軍の心臓』、『スタリングラートの医師』、『極限に生きる』(フジ出版社、1984年・1985年)
  • ゲオルゲ・ハルバン(オーストリア)(George Halban、1915-1998)
    • 『狼マリク』(松谷健二訳、角川書店、1981年6月)
  • パトリック・ジュースキント(ドイツ)(Patrick Süskind、1949- )
    • 『香水 ある人殺しの物語』(池内紀訳、文藝春秋、1988年12月 / 文春文庫、2003年6月)
      • ほかにも邦訳あり
  • ユルゲン・ペチュル(ドイツ)(Jürgen Petschull、1942- )
    • 『コマンド・フセインの復讐』(平井吉夫訳、新潮文庫、1989年12月)

(7)1990年代~に邦訳された作家

  • ベルント・ジュルツァー(ドイツ)(Bernd Sülzer、1940- )
    • 『ハルツ紀行作戦』(平井吉夫訳、新潮文庫、1991年12月)
  • アキフ・ピリンチ(トルコ / ドイツ)(Akif Pirinçci、1959- )
    • 『猫たちの聖夜』(池田香代子訳、早川書房、1994年6月 / ハヤカワ文庫NV、1997年11月) - 1995年版このミステリーがすごい! 第10位
    • 『猫たちの森』(池田香代子訳、早川書房、1996年12月)
      • ほかにアキフ・ピリンチ、ロルフ・デーゲン『猫のしくみ 雄猫フランシスに学ぶ動物行動学』(早川書房、2000年2月)
  • ヨーゼフ・ハスリンガー(オーストリア)(Josef Haslinger、1955- )
    • 『オペラ座毒ガス殺人事件』(上田浩二 監訳、筑摩書房、1995年11月)
  • イングリート・ノル(ドイツ)(Ingrid Noll、1935- )
    • 『女薬剤師』(平野卿子訳、集英社、1996年9月)
    • 『特技は殺人』(平野卿子訳、集英社文庫、2000年7月) - 1992年、グラウザー賞長編賞ノミネート
  • ヤーコプ・アルユーニ(ドイツ)(Jakob Arjouni、1964-2013)
    • 『殺るときは殺る』(渡辺広佐訳、パロル舎、1997年7月) - 1992年、ドイツ・ミステリ大賞第2位
    • 『異郷の闇』(渡辺広佐訳、パロル舎、1998年11月)

(8)2000年以降に邦訳された作家

2000年~
  • ホルスト・ボゼツキー(ドイツ)(Horst Bosetzky、1938- )(筆名「‐キー」 -ky )
    • ‐キー&コー『ストーカー』(有内嘉宏訳、第一出版[徳島の出版社]、2000年3月)
      • 原題 Die Klette。「コー」(Co.)こと心理学者のペーター・ハインリヒ(Peter Heinrich、1941- )との共著
    • アンソロジー『皇帝の魔剣』(小津薫訳、扶桑社 扶桑社ミステリー、2004年1月)に短編収録

  • アンソロジー『ベルリン・ノワール』(小津薫訳、扶桑社、2000年3月)
    • 「犬を連れたヴィーナス」テア・ドルン(Thea Dorn) → ほかにも邦訳あり
    • 「ガードマンと娘」フランク・ゴイケ(Frank Goyke)
    • 「廃虚のヘレン」ハイナー・ラウ(Heiner Lau)
    • 「ブランコ」ベアベル・バルケ(Bärbel Balke)
    • 「狂熱」カール・ヴィレ(Carl Wille)

2001年~
  • テア・ドルン(ドイツ)(Thea Dorn、1970- )
    • 『殺戮の女神』(小津薫訳、扶桑社、2001年2月) - 2000年、ドイツ・ミステリ大賞第1位
    • アンソロジー『ベルリン・ノワール』(扶桑社、2000年3月)に短編「犬を連れたヴィーナス」収録

  • 水声社《現代ウィーン・ミステリー・シリーズ》(2001年・2002年)
    • 1 ペーター・R・ヴィーニンガー(Peter R. Wieninger、1966- )
      • 『『ケルズの書』のもとに』(松村國隆訳、2002年8月)
    • 2 ロッテ・イングリッシュ(Lotte Ingrisch、1930- )
      • 『ペスト記念柱』(城田千鶴子訳、2001年5月)
    • 3 ヘルムート・ツェンカー(Helmut Zenker、1949-2003)
      • 『マン嬢は死にました。彼女からよろしくとのこと』(上松美和子訳、2002年2月)
    • 4 ヴォルフ・ハース(Wolf Haas、1960- )
      • 『きたれ、甘き死よ』(福本義憲訳、2001年5月) - 1999年、ドイツ・ミステリ大賞第1位
    • 5 ユルゲン・ベンヴェヌーティ(Jürgen Benvenuti、1972- )
      • 『消えた心臓』(唐沢徹訳、2001年10月)
    • 6 エルンスト・ヒンターベルガー(Ernst Hinterberger、1931-2012)
      • 『小さな花』(鈴木隆雄訳、2001年10月)
    • 7 クルト・ブラハルツ(Kurt Bracharz、1947- )
      • 『カルトの影』(郷正文訳、2002年2月)
    • 8 マルティン・アマンスハウザー(Martin Amanshauser、1968- )
      • 『病んだハイエナの胃のなかで』(須藤正美訳、2002年8月)
    • 9 ミヒャエル・ホルヴァート編『血のバセーナ 8人の女性ミステリー作家による短篇集』(伊藤直子、須藤直子訳、2002年8月)
      • 「危険な読書の秋に」アンナ・ヘルコヴィッツ(Anna Hercovicz)
      • 「母なるドナウ」エーディト・クナイフル(Edith Kneifl)
      • 「いとしの君」ドド・クレッセ(Dodo Kresse)
      • 「シンシア」ウルリケ・ライナー(Ulrike Rainer)
      • 「引っ掻かれたベートーヴェン」ネーナ・ロート=アヴィレス(Nena Roth-Aviles)
      • 「人形を憎んだ子」バルバラ・ビューヒナー(Barbara Büchner) → ほかにも邦訳あり
      • 「エウリディケの死」ユーリア・マルティンス(Julia Martins)
      • 「聞き込み」ヘルガ・アンデルレ(Helga Anderle) → ほかにも邦訳あり

2002年~
  • ベルンハルト・シュリンク(ドイツ)(Bernhard Schlink、1944- )
    • 『ゼルプの裁き』(岩淵達治 他訳、小学館、2002年6月)※ヴァルター・ポップとの共著
    • 『ゼルプの欺瞞』(平野卿子訳、小学館、2002年10月) - 1993年、ドイツ・ミステリ大賞第1位
    • 『ゼルプの殺人』(岩淵達治 他訳、小学館、2003年4月)
    • 『ゴルディオスの結び目』(岩淵達治 他訳、小学館、2003年8月) - 1989年、グラウザー賞長編賞
      • 『朗読者』の邦訳は2000年。ほかにも邦訳あり。
  • ペトラ・エルカー(ドイツ)(Petra Oelker、1947- )
    • 『ある貴婦人の肖像』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2002年10月)
    • アンソロジー『皇帝の魔剣』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2004年1月)に短編収録
  • ヴォルフラム・フライシュハウアー(ドイツ)(Wolfram Fleischhauer、1961- )
    • 『殺戮のタンゴ』(平井吉夫訳、早川書房、2002年10月)
    • 『消滅した国の刑事』(北川和代訳、創元推理文庫、2013年6月)
      • ほかにファンタジー小説『ファンタージエン 反逆の天使』の邦訳あり
  • ペトラ・ハメスファール(ドイツ)(Petra Hammesfahr、1951- )
    • 『記憶を埋める女』(畔上司訳、学習研究社、2002年11月) - 2000年、グラウザー賞長編賞ノミネート

2003年~
  • バルバラ・ビューヒナー(オーストリア)(Barbara Büchner、1950- )
    • 『17歳の悪夢 ブラックボックス』(山崎恒裕訳、ポプラ社、2003年5月)※ティーン向けミステリ
    • アンソロジー『血のバセーナ』(水声社、2002年8月)に短編「人形を憎んだ子」収録

2004年~
  • ヘニング・ボエティウス(ドイツ)(Henning Boëtius、1939- )
    • 『ヒンデンブルク炎上』【上下巻】(天沼春樹訳、新潮文庫、2004年8月)

  • アンソロジー『皇帝の魔剣』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2004年1月)
    • 第一話「カール大帝が呪われた短剣を世に送りだし、その見返りとして象を受けとった話」ローベルト・ゴルディアン(Robert Gordian、1938- )
    • 第二話「聴罪司祭の墜落と、短剣が聖遺物に高められなかった話」ヨハンネス・レーマン(Johannes Lehmann、1929- )
    • 第三話「信仰を失った十字軍騎士が、偽りの友を刺殺した話」ハンス・クナイフル(Hanns Kneifel、1936- )(ハンス・クナイフェル)
    • 第四話「聖堂騎士の血なまぐさい使命と、皇帝の短剣が大聖堂の運命を決めた話」トーマス・R・P・ミールケ(Thomas R. P. Mielke、1940- )(「トーマス・B・P・ミールケ」と誤植されている箇所あり)
    • 第五話「偽ヴァルデマール事件、ブランデンブルク辺境伯領での、短剣の七突きの話」ホルスト・ボゼツキー
    • 第六話「手をインクで汚した大罪人と、活版印刷の真の考案者の話」クリスティーネ・レーマン(Christine Lehmann、1958- )
    • 第七話「不滅への夢がこわれ、帝国議会のあるアウグスブルクで短剣が見つかった話」アネッテ・デブリッヒ(Annette Döbrich、1949- )
    • 第八話「風変わりな嫁入り道具が、湿原の島で不気味は効果を発揮した話」ペトラ・エルカー
    • 第九話「不運な家具職人の夢見た城が、じつは砂上楼閣だった話」ジークフリート・オーバーマイヤー(Siegfried Obermeier、1936-2011)(『皇帝の魔剣』巻末の著者紹介では1969年生まれとされている)
    • 第十話「ロシアの誇り、ナポレオンの屈辱、そして、無謀なフェルディナントの話」シャルロッテ・リンク
    • 第十一話「恋ゆえに心臓を一突きした皇帝の短剣が、眠りについた場所の話」ヴァージニア・ドイル(Virginia Doyle)

2005年~
  • ベルンハルト・ヤウマン(ドイツ)(Bernhard Jaumann、1957- )
    • 『死を招く料理店(トラットリア)』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2005年2月) - 2003年、グラウザー賞長編賞
  • マルティン・ズーター(スイス)(Martin Suter、1948- )
    • 『プリオンの迷宮』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2005年9月) - 2003年、ドイツ・ミステリ大賞第2位
    • 『縮みゆく記憶』(シドラ房子訳、ランダムハウス講談社、2008年8月)
    • 『絵画鑑定家』(シドラ房子訳、ランダムハウス講談社、2010年1月)

2006年~
  • アストリット・パプロッタ(ドイツ)(Astrid Paprotta、1957- )
    • 『死体絵画』(小津薫訳、講談社文庫、2006年3月) - 2005年、ドイツ・ミステリ大賞第1位

2007年~
  • レオニー・スヴァン(ドイツ)(Leonie Swann、1975- )
    • 『ひつじ探偵団』(小津薫訳、早川書房、2007年1月) - 2006年、グラウザー賞新人賞
  • アンネ・シャプレ(ドイツ)(Anne Chaplet、1951- )
    • 『カルーソーという悲劇』(平井吉夫訳、創元推理文庫、2007年5月)
  • セバスチャン・フィツェック(ドイツ)(Sebastian Fitzek、1971- )
    • 『治療島』(赤根洋子訳、柏書房、2007年7月) - 2007年、グラウザー賞新人賞ノミネート
    • 『ラジオ・キラー』(赤根洋子訳、柏書房、2008年1月)
    • 『前世療法』(赤根洋子訳、柏書房、2008年6月)
    • 『サイコブレイカー』(赤根洋子訳、柏書房、2009年7月)
    • 『アイ・コレクター』(小津薫訳、ハヤカワ・ミステリ、2012年4月)
  • アンドレア・M・シェンケル(ドイツ)(Andrea M. Schenkel、1962- )
    • 『凍える森』(平野卿子訳、集英社文庫、2007年10月) - 2007年、ドイツ・ミステリ大賞第1位、グラウザー賞新人賞、2008年、スウェーデン推理作家アカデミー最優秀翻訳ミステリ賞
  • クリスティアーネ・マルティーニ(ドイツ)(Christiane Martini、1967- )
    • 『猫探偵カルーソー』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2007年12月)

2008年~
  • ザビーネ・ティースラー(ドイツ)(Sabine Thiesler、1957- )
    • 『チャイルド・コレクター』【上下巻】(小津薫訳、ハヤカワ文庫NV、2008年1月)
  • フランク・シェッツィング(ドイツ)(Frank Schätzing、1957- )
    • 『グルメ警部キュッパー』(熊河浩訳、ランダムハウス講談社、2008年2月)
    • 『深海のYrr(イール)』【上中下巻】(北川和代訳、ハヤカワ文庫NV、2008年4月) - 2005年ドイツ・ミステリ大賞第2位、『ミステリが読みたい!』5位、文春9位
    • 『黒のトイフェル』【上下巻】(北川和代訳、ハヤカワ文庫NV、2009年2月) - 1996年、グラウザー賞長編賞ノミネート
    • 『砂漠のゲシュペンスト』【上下巻】(北川和代訳、ハヤカワ文庫NV、2009年8月)
    • 『LIMIT(リミット)』【全4巻】(北川和代訳、ハヤカワ文庫NV、2010年6月・7月)
    • 『沈黙への三日間』【上下巻】(北川和代訳、ハヤカワ文庫NV、2011年3月)
      • 小説より先に、ノンフィクション『知られざる宇宙 海の中のタイムトラベル』が邦訳された(大月書店、2007年8月)
  • ラルフ・イーザウ(ドイツ)(Ralf Isau、1956- )
    • 『銀の感覚』【上下巻】(酒寄進一訳、長崎出版、2008年7月)
    • 『緋色の楽譜』【上下巻】(酒寄進一訳、東京創元社、2011年10月)
      • イーザウの邦訳のうち、訳者の酒寄進一氏がサスペンスに分類しているのが以上の2作(『緋色の楽譜』訳者あとがき)。ほかにファンタジー作品の邦訳も多数。
  • クリストフ・シュピールベルク(ドイツ)(Christoph Spielberg、1947- )
    • 『陰謀病棟』(松本みどり訳、扶桑社ミステリー、2008年10月) - 2002年、グラウザー賞新人賞
  • ペーター・ブレント(ドイツ)(Peter Brendt、1964- )
    • 『Uボート決死の航海』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2008年11月)

2009年~
  • ユーリ・ツェー(ドイツ)(Juli Zeh、1974- )
    • 『シルフ警視と宇宙の謎』(浅井晶子訳、ハヤカワepiブック・プラネット、2009年8月)

2010年~
  • ピエール・フライ(ドイツ)(Pierre Frei、1930- )
    • 『占領都市ベルリン、生贄たちも夢を見る』(浅井晶子訳、長崎出版、2010年1月)
  • シャルロッテ・リンク(ドイツ)(Charlotte Link、1963- )
    • 『姉妹の家』【上下巻】(園田みどり訳、集英社文庫、2010年3月)
    • 『沈黙の果て』【上下巻】(浅井晶子訳、創元推理文庫、2014年9月◆予定) Am Ende des Schweigens (2003)
    • アンソロジー『皇帝の魔剣』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2004年1月)に短編収録

2011年~
  • フレドゥン・キアンプール(ドイツ)(Fredun Kianpour、1973- )
    • 『この世の涯てまで、よろしく』(酒寄進一訳、東京創元社、2011年5月)

(9)シーラッハ『犯罪』の邦訳(2011年6月)以降

2011年~
  • フェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ)(Ferdinand von Schirach、1964- )
    • 『犯罪』(酒寄進一訳、東京創元社、2011年6月) - このミス2位、文春2位、『ミステリが読みたい!』2位、2012年版『東西ミステリーベスト100』52位
    • 短編「パン屋の主人」(酒寄進一訳、『ミステリーズ!』51号[2012年2月号])
    • 『罪悪』(酒寄進一訳、東京創元社、2012年2月) - 文春9位、『ミステリが読みたい!』10位
    • 『コリーニ事件』(酒寄進一訳、東京創元社、2013年4月) - 2013年、英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞ノミネート
  • ゾラン・ドヴェンカー(ドイツ)(Zoran Drvenkar、1967- )
    • 『謝罪代行社』(小津薫訳、ハヤカワ・ミステリ、2011年8月 ※ハヤカワ・ミステリ文庫版【上下巻】同時刊行) - 2010年、グラウザー賞長編賞
      • ほかに少年少女向けミステリ《半ズボン隊》シリーズ(邦訳2作)や、児童書『トリ・サムサ・ヘッチャラ あるペンギンのだいそれた陰謀』の邦訳がある

2012年~
  • ネレ・ノイハウス(ドイツ)(Nele Neuhaus、1967- )
    • 『深い疵(きず)』(酒寄進一訳、創元推理文庫、2012年6月)
    • 『白雪姫には死んでもらう』(酒寄進一訳、創元推理文庫、2013年5月)
  • マルク・エルスベルグ(オーストリア)(Marc Elsberg、1967- )
    • 『ブラックアウト』【上下巻】(猪股和夫・竹之内悦子訳、角川文庫、2012年7月)
  • フォルカー・クッチャー(ドイツ)(Volker Kutscher、1962- )
    • 『濡れた魚』【上下巻】(酒寄進一訳、創元推理文庫、2012年8月)
    • 『死者の声なき声』【上下巻】(酒寄進一訳、創元推理文庫、2013年8月)
    • 『ゴールドスティン』【上下巻】(酒寄進一訳、創元推理文庫、2014年7月)
  • オリヴァー・ペチュ(ドイツ)(Oliver Pötzsch、1970- )
    • 『首斬り人の娘』(猪股和夫訳、ハヤカワ・ミステリ、2012年10月) - 2009年、グラウザー賞新人賞ノミネート

 2012年2月発売の『ミステリーズ!』vol.51はドイツミステリ特集となっている。『ミステリマガジン』でも過去にドイツミステリが特集されたことはなく、日本のミステリ雑誌でドイツミステリが特集されるのはおそらくこれが初めてである。

2013年~
  • アンドレアス・グルーバー(オーストリア)(Andreas Gruber、1968- )
    • 短編「ゴーストライター」(酒寄進一訳、『ミステリーズ!』57号[2013年2月号])
    • 短編「メスメリズムの実験」(酒寄進一訳、『ミステリーズ!』57号[2013年2月号])
    • 『夏を殺す少女』(酒寄進一訳、創元推理文庫、2013年2月)
    • 『黒のクイーン』(酒寄進一訳、創元推理文庫、2014年1月)
  • イザベル・アベディ(ドイツ)(Isabel Abedi、1967- )
    • 『日記は囁く』(酒寄進一訳、東京創元社、2013年10月)
  • レーナ・アヴァンツィーニ(オーストリア)(Lena Avanzini)
    • 『インスブルック葬送曲』(小津薫訳、扶桑社ミステリー、2013年11月) - 2012年、グラウザー賞新人賞
  • マックス・ベントー(ドイツ)(Max Bentow、1966- )
    • 『羽男』(猪股和夫訳、角川文庫、2013年11月)
  • セバスティアン・クナウアー(ドイツ)(Sebastian Knauer、1949- )
    • 『バッハ 死のカンタータ』(藤田伊織・帯純子訳、大成出版社、2013年12月)

2014年~
  • メヒティルト・ボルマン(ドイツ)(Mechtild Borrmann、1960- )
    • 『沈黙を破る者』(赤坂桃子訳、河出書房新社、2014年5月) Wer das Schweigen bricht (2011)
  • ライナー・レフラー(Rainer Löffler)
    • 『血塗られた夏』 Blutsommer (2012) ◆東京創元社より刊行予定

短編のみ邦訳されている作家

  • ハンスイエルク・マルティーン(ドイツ)(Hansjörg Martin、1920-1999)
    • 「後家づくり」(前川道介訳、『ミステリマガジン』1980年12月号、pp.127-132) - Die Witwenmacher
  • ピーケ・ビーアマン(ドイツ)(Pieke Biermann、1950- )
    • 「まなざしの法則」(池田香代子訳、『ニュー・ミステリ ジャンルを越えた世界の作家42人』ジェローム・チャーリン編、早川書房、1995年10月)
    • 「7.62」(菅沼裕乃訳、『ウーマンズ・ケース』下巻、サラ・パレツキー編、ハヤカワ・ミステリ文庫、1998年2月)
  • ヘルガ・アンデルレ(オーストリア)(Helga Anderle)
    • 「サタデー・ナイト・フィーバー」(菅沼裕乃訳、『ウーマンズ・ケース』下巻、サラ・パレツキー編、ハヤカワ・ミステリ文庫、1998年2月)
    • 「カナイマへようこそ」(務台夏子訳、『ミステリマガジン』2000年1月号、pp.210-221)
    • 「聞き込み」(須藤直子訳、『血のバセーナ 8人の女性ミステリー作家による短篇集』水声社、2002年8月)
  • ビルギット・ヘルシャー(ドイツ)(Birgit Hölscher、1958- )
    • 「料理とわが姉、宿命」(篠田淳子訳、『ジャーロ』10号[2003年冬号]))

未刊に終わったドイツ語圏古典ミステリ

  • 世界傑作探偵小説集(未来社、1946年)
    • W・シャイダー『ウィーンで再会した女』

 《世界傑作探偵小説集》は1946年11月のエツィオ・デリコ(イタリア)『悪魔を見た処女』(江杉寛訳)、シュニツレル(アルトゥル・シュニッツラー、オーストリア)『愛慾の輪舞』(末吉寛訳)の2冊しか刊行されなかった(江戸川乱歩は『探偵小説四十年』や『幻影城』巻末の「探偵小説叢書目録」で『愛慾の輪舞』を未刊行としている)。『愛慾の輪舞』は不倫を扱った戯曲で、1950年代には『輪舞』というタイトルで岩波文庫、新潮文庫、角川文庫などに収録されている。
 この叢書ではW・シャイダー『ウィーンで再会した女』が予告されていた。ヴィルヘルム・シャイダー(Wilhelm Scheider)の"Urlaub in Wien"(ウィーンの休日)のことだろうか。ヴィルヘルム・シャイダーは須知文三「独逸探偵小説の二傾向」(『新青年』1938年夏期増刊号[19巻13号])でも名前が挙げられており、そこでは『快走艇カチンカ号』(Die Yacht Katinka)が「心理派」に対しての「正統派」の作品とされている(これ以上の言及はない)。

  • 欧洲大陸探偵小説シリーズ(新東京社、1946年)

 S・エルヴェスタード(スヴェン・エルヴェスタ、ノルウェー)『怪盗』(荒井詩夢訳、1946年12月)しか刊行されなかった。巻末の予告では、「サスペンスと怪奇の雰囲気につつまれたオーストリアのペルツ、芸術味豊かに犯罪への心理をあばく巨匠ワッサーマン【中略】等の諸作家の未紹介作品を順次刊行の予定である」と書かれている。
 おそらく「ペルツ」はオーストリアのレオ・ペルッツ、「ワッサーマン」はドイツのヤーコプ・ヴァッサーマンのことだろう。ペルッツの『最後の審判の巨匠』やヴァッサーマンの『埋もれた青春(うずもれたせいしゅん)』が刊行される予定だったのかもしれない。

  • 現代欧米探偵小説傑作選集(オリエント書房、1947年)
    • (スイス)レナート・ウエリング(Renate Welling)『死の跳躍』(Der Todessprung)
    • (スイス)ルドルフ・ホーホグレンド(Rudolf Hochglend)『郵便私書函八四号』(Postfach 84)

 《現代欧米探偵小説傑作選集》は全30巻のラインナップが予告されていたが、カルロ・アンダーセン(デンマーク)の『遺書の誓ひ』(吉良運平訳、1947年1月)の1冊のみで中絶した。ドイツ語圏の作品は上記の2冊が刊行される予定だった。(著者名のカタカナ表記は当時の表記に従う)

ドイツ語圏の少年少女向けミステリ

ドイツ
  • エーリヒ・ケストナー(Erich Kästner、1899-1974)
    • 『エーミールと探偵たち』(池田香代子訳、岩波少年文庫、2000年6月 等)
    • 『エーミールと三人のふたご』(池田香代子訳、岩波少年文庫、2000年7月 等)

  • ヘンリー・ウィンターフェルト(Henry Winterfeld、1901-1990)
    • 『カイウスはばかだ』 Caius ist ein Dummkopf (1953)
      • 関楠生訳、学習研究社 少年少女学研文庫、1968年
      • 関楠生訳、福武文庫、1990年10月
      • 関楠生訳、岩波少年文庫、2011年6月
    • 『カイウスはひらめいた』 Caius geht ein Licht auf (1969)
      • 関楠生訳、学習研究社 少年少女学研文庫、1970年

 シリーズは全3作あり、そのうち第3作『Caius in der Klemme』(1976)は邦訳はない。

  • ヴォルフガング・エッケ(Wolfgang Ecke、1927-1983)
    • 《エッケ探偵教室》シリーズ(各務三郎編、旺文社、1981年11月、全6巻) - 推理クイズ集
      • 『黄金の鼻』
      • 『おばけギャング団』
      • 『消えた花びん』
      • 『クローバー同盟』
      • 『指名手配書』
      • 『スリの女王』

  • ステファン・ボルフ(Stefan Wolf、1938-2007)
    • 《こちらB組探偵団》シリーズ(偕成社 Kノベルス)
      • 1 『名画を追え』(若林ひとみ訳、1988年12月)
      • 2 『サーカスの警報』(佐々木田鶴子訳、1988年12月)
      • 3 『クラスメート誘拐』(若林ひとみ訳、1989年2月)
      • 4 『赤ちゃんが消えた』(佐々木田鶴子訳、1989年4月)
      • 5 『深夜の幽霊ドライバー』(佐々木田鶴子訳、1989年7月)
      • 6 『SOS!こちら学校』(佐々木田鶴子訳、1989年10月)
      • 7 『虎よ、にげろ』(池田香代子訳、1990年1月)
      • 8 『悪魔のトンネル』(佐々木田鶴子訳、1990年4月)
      • 9 『2ペンス切手のゆくえ』(池田香代子訳、1990年5月)
      • 10 『放火魔のくる夜』(若林ひとみ訳、1990年12月)
      • 11 『エジプト秘宝をまもれ』(佐々木田鶴子訳、1991年3月)
      • 12 『ようこそ、幽霊くん』(池田香代子訳、1991年5月)

  • ヨアヒム・フリードリヒ(Joachim Friedrich、1953- )
    • 《4と1/2探偵局》シリーズ(鈴木仁子訳、ポプラ社)
      • 1『宝の地図のひみつ』(2004年8月)
      • 2『消えた先生のなぞ』(2004年9月)
      • 3『天使の追跡大作戦』(2004年11月)
      • 4『名探偵の10か条』(2005年1月)
      • 5『探偵犬、がんばる!』(2005年4月)
    • 《ひみつたんていダイアリー》シリーズ(はたさわゆうこ訳、徳間書店)
      • 1『オイボレ発明家をすくえ!』(2010年10月)
      • 2『金庫をやぶったのは、だれ?』(2010年10月)
      • 3『おしゃべりオウムがきえちゃった!』(2010年11月)
      • 4『宝の地図をとりもどせ!』(2010年12月)
    • その他
      • 『アナ=ラウラのタンゴ パパの謎を追って』(平野卿子訳、ポプラ社 ポプラ・ウイング・ブックス、2004年8月)

  • キルステン・ボイエ(Kirsten Boie、1950- )
    • 『メドレヴィング 地底からの小さな訪問者』(長谷川弘子訳、三修社、2006年5月)
      • 2005年のドイツ語圏推理作家協会ハンスイェルク・マルティーン賞(児童ミステリ賞)ノミネート作だが、邦訳書の帯によれば「冒険ファンタジー」。この作家の邦訳はほかに児童書『パパは専業主夫』がある。

  • 《少年探偵団ザ・スリー》(加納教孝訳、草土文化、2008年・2009年、全8巻)
    • 1~7巻はウルフ・ブランク(Ulf Blanck、1962- )作、8巻はボリス・プファイファ(Boris Pfeiffer、1964- )作
      • 1『幽霊船』(2008年6月)
      • 2『アトランティスを救え!』(2008年6月)
      • 3『魔術師の魔力』(2008年7月)
      • 4『魔法の噴水』(2008年9月)
      • 5『インターネット海賊』(2008年10月)
      • 6『密輸業者の島』(2008年12月)
      • 7『ゴースト・ハンターズ』(2009年4月)
      • 8『よみがえった恐竜たち』(2009年4月)

  • ゾラン・ドヴェンカー(Zoran Drvenkar、1967- )
    • 《半ズボン隊》シリーズ(木本栄訳、岩波書店)
      • 『走れ!半ズボン隊』(2008年6月)
      • 『帰ってきた半ズボン隊 上 事件編』『下 解決編』(2009年10月)

オーストリア
  • トーマス・ブレツィナ(Thomas Brezina、1963- )
    • 《タイガーチーム事件簿》(中野京子訳、さ・え・ら書房、1998年、全3巻)
      • 1『火山島のなぞ』(1998年3月)
      • 2『消えたメカ・モンスター』(1998年5月)
      • 3『ファラオの呪い』(1998年5月)
    • 《男の子おことわり、魔女オンリー》(松沢あさか訳、さ・え・ら書房、2006年、全4巻) ※非ミステリ
      • 1『きのうの敵は今日も敵?』(2006年3月)
      • 2『兄貴をカエルにかえる?』(2006年3月)
      • 3『いちばんすてきなママはだれ?』(2006年4月)
      • 4『うちはハッピーファミリー?』(2006年4月)
    • 《冒険ふしぎ美術館》
      • 1『ダ・ヴィンチのひみつをさぐれ! ねらわれた宝と7つの暗号』(越前敏弥、熊谷淳子訳、朝日出版社、2006年5月)
      • 2『ゴッホの宝をすくいだせ! 色いろ怪人と魔法の虫めがね』(越前敏弥、田中亜希子訳、朝日出版社、2007年5月)
      • 3『ミケランジェロの封印をとけ!』(越前敏弥、生方頼子訳、英治出版、2008年6月)

参考文献

 戦前から1950年代までの日本におけるドイツ語圏ミステリの邦訳状況については、以下の文献を参考にした。

  • 長谷部史親「ドイツ文化圏の作家たち」(長谷部史親『欧米推理小説翻訳史』本の雑誌社、1992年5月 / 双葉社 双葉文庫、2007年6月、pp.184-201)
  • 長谷部史親「ローレンス・H・デスベリーの『電気椅子の蔭で』」(長谷部史親『ミステリの辺境を歩く』アーツアンドクラフツ、2002年12月、pp.172-179)
  • 新保博久「ミステリ再入門」
    • 第26回 ドイツから退屈をこめて (『ミステリマガジン』2002年6月号、pp.138-141)
    • 第27回 あるスパイ小説家の墓碑銘 (『ミステリマガジン』2002年7月号、pp.88-91)
    • 第28回 スイスの刑事、ドイツの探偵 (『ミステリマガジン』2002年8月号、pp.150-153)
    • 第29回 ウィンナ・コーヒーはほろ苦い (『ミステリマガジン』2002年9月号、pp.84-87)
  • 垂野創一郎「レルネット=ホレーニアの幻想ミステリ」(『ROM』135号[2010年10月]、pp.62-75)

 また雑誌掲載作を探すにあたっては以下の目録を利用した。

  • 山前譲編、ミステリー文学資料館監修『探偵雑誌目次総覧』(日外アソシエーツ、2009年6月)
  • 山前譲編「「新青年」作者別作品リスト」(ミステリー文学資料館編『幻の探偵雑誌10 「新青年」傑作選』光文社文庫、2002年2月)

更新履歴

  • 2013年7月28日:「(1)18世紀・19世紀の古典犯罪小説・探偵小説」にヴィルヘルム・ハウフについての記述を追加。
  • 2013年7月28日:「(2)20世紀前半のドイツ語圏探偵小説」にシュテファン・ツヴァイクについての記述を追加。オスカール・エンゼン「沈黙の唇」追加。
  • 2013年7月28日:「(3)1950年代~に邦訳された作家」で、伊東鍈太郎の『探偵倶楽部』および『宝石』における訳業を大幅加筆。パウルス・ショッテ「自分を追跡する男」追加。
  • 2013年8月1日:「(1)18世紀・19世紀の古典犯罪小説・探偵小説」の末尾に、ワルター・ゲルタイスが『名探偵は死なず その誕生と歴史』で挙げている犯罪小説について加筆。
  • 2014年9月14日:「ドイツ語圏の少年少女向けミステリ」にヘンリー・ウィンターフェルト『カイウスはばかだ』、『カイウスはひらめいた』追加。
  • 2014年10月27日:「ドイツ語圏の少年少女向けミステリ」にステファン・ボルフ《こちらB組探偵団》シリーズ追加。

※更新履歴は見落としていた作品を追加した場合にのみ記録しています。新刊は随時追加していますが、ここでは示しません。


関連ページ



最終更新:2013年07月29日 22:29