2012年4月14日
ミステリ批評家賞(Prix Mystère de la Critique)、2012年の受賞作
- 対象は2011年にフランスで出版されたミステリ小説
- この賞は1972年創設。20名~30名ほどのミステリ批評家や作家が1年間に出たミステリ小説から優れた作品をそれぞれ10作品挙げ、得票数の最も多かった作品が受賞作となる。今回は34人が投票に参加した。そのような形式のため、受賞者には有名作家が多いとされる。
フランス語作品部門
翻訳作品部門
(第5位のイシャイ・サリッド『Le Poète de Gaza』(ガザの詩人)は昨年のフランス推理小説大賞の翻訳作品部門の受賞作である[昨年9月に受賞作が発表された])
なお、『本格ミステリー・ワールド2011』(南雲堂、2010年12月)に掲載されたインタビューでフランスの推理作家ポール・アルテが、2011年に高木彬光『刺青殺人事件』のフランス語訳の出版が予定されており楽しみにしていると発言しているが、2012年4月現在、まだ出版されていないようである。
ちなみに、翻訳作品部門はやはり英語圏の作家の受賞が多い。過去の翻訳作品部門の受賞作家のうち非英語圏の作家は以下の7人である。日本の作家がこの賞を受賞できる日は来るだろうか。
- ドイツ - ホルスト・ボゼツキー(1988年)
- スペイン - フランシスコ・ゴンサレス=レデスマ(1993年、2007年)
- イタリア - アンドレア・カミッレーリ(1999年)
- スウェーデン - ヘニング・マンケル(2000年)
- ロシア - ボリス・アクーニン(2002年)
- 南アフリカ共和国 - デオン・マイヤー(2004年) ※アフリカーンス語で執筆
- アイスランド - アーナルデュル・インドリダソン(2006年)
残るはフランス推理小説大賞
フランス推理小説大賞は新進のミステリ作家に与えられる賞である。東野圭吾の作品の仏訳は『むかし僕が死んだ家』(
La Maison où je suis mort autrefois、2010年4月)と『容疑者Xの献身』だけなので、フランスではまだ新進の作家だと言っていいだろう。昨年と同じならば、候補作の発表は6月で受賞作の決定は9月である。翻訳作品部門の最終候補には昨年は11作品がノミネートされた。
ところで、来月には『容疑者Xの献身』に次ぐガリレオシリーズの第二長編『聖女の救済』のフランス語訳『
Un café maison』も出るようだ。フランス推理小説大賞が何月から何月までで期間を区切っているのか分からないため、これが『容疑者Xの献身』と同じく今年発表の回の対象作になるのかどうかは分からない。伊坂幸太郎の作品では『オーデュボンの祈り』(2011年2月仏訳出版)が今年の対象になるのかは分からないが、『重力ピエロ』(
Pierrot-la-gravité、2012年1月)は対象期間に入っているはずである。桐野夏生『IN』(2011年9月仏訳出版)も今年の対象作のはずである。
フランスではかつて、夏樹静子が『第三の女』(La promesse de l'ombre)で1989年にフランス冒険小説大賞を受賞している。それからすでに20年以上が経過した。再び日本の作品がフランスのミステリ賞を勝ち取る日が来ることを期待したい。
参考文献
- 平岡敦「フランスのミステリ賞総まくり」(『ミステリマガジン』1998年4月号【特集:ミステリ賞って何だ?】、pp.48-49)
- 権田萬治「ミステリー批評家大賞」(権田萬治監修『海外ミステリー事典』新潮社、2000年2月、p.354)
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最終更新:2012年04月14日 21:32