2011年5月9日-12日
※未完成
Index
第3章 1960年代~1970年代
「翻訳ミステリ」の時代
- ア・コロビツィン『逃亡 : 犯罪なき犯罪』(法律文化社、1970年)
イェジィ・エディゲイ『顔に傷のある男』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、1977年)の解説で訳者の深見弾氏が、邦訳された主な共産圏のミステリとしてセミョーノフ『ペトロフカ、38』とともに挙げている。
第4章 1980年代
エドワード・トーポリ & フリードリヒ・ニェズナンスキイ『赤の広場』(中央公論社、1983年)
- 『本の雑誌』63号(1988年9月)に松村喜雄「ソ連の推理小説事情」
(日本推理作家協会の訪ソ団については、2010年4月の日本推理作家協会会報に篠田節子さんが書いた
こちらの記事でも少し触れられている)
ソ連崩壊後に刊行されたミステリ全集・選集
ソ連崩壊後の1993年、ロシアで「Серия "Мастера советского детектива"」(シリーズ「ソ連ミステリ・マスターズ」とでも訳せばいいんだろうか?)という全19巻の推理小説叢書が刊行されている。ロシアのネット書店で全19巻の内容と、作者のプロフィールが分かるようになっている(→
リンク)。収録されている9人(8人+1組)を列挙する。
- アルカージイ・アダモフ(3冊)
- ワイネル兄弟(ヴァイネル兄弟)(7冊)
- ユーリイ・クラロフ(Юрий Кларов)(1冊)
- ニコライ・レオーノフ(3冊)
- ヴィクトル・プローニン(Виктор Пронин)(1冊)
- ニコライ・プスルツェフ(Николай Псурцев, 1954- )(1冊)
- アナトーリイ・ロモフ(Анатолий Ромов)(1冊)
- ユリアン・セミョーノフ(1冊)
- レオニード・スローヴィン(Леонид Словин)(1冊)
邦訳のあるワイネル兄弟『ミノトール訪問』(Визит к минотавру)、ユリアン・セミョーノフ『ペトロフカ、38』も収録されている。
第5章 1990年代以降
1992年以降
アレクサンドラ・マリーニナ『盗まれた夢』(作品社、1999年)
- 沼野充義「マリーニナと現代ロシアの推理小説」
- 「しかし一九八五年にゴルバチョフ政権下で「ペレストロイカ」が始まり、現代ロシア文学の世界も激しく変化していった。推理小説というジャンルもその例外ではない。もともとソ連時代に書籍はすべて「計画」に基づいて出版され、部数も事前に決められており(その決定も、読者の需要に応じてではなく、イデオロギー的理由によって行なわれた)、売れ行きがいいから増刷、ということにはならなかった。だから当然、ベストセラーという概念もありえない。しかし、ペレストロイカ以後、市場経済の原理が導入され、本の市場にも読者の需要が反映するようになると、一九九〇年代初頭くらいからロシアでもベストセラー・リストが書評誌を賑わすようになった。」
ソ連/ロシアの推理小説を読んだことがない人でも、1991年末のソ連崩壊後、ロシアからアレクサンドラ・マリーニナやボリス・アクーニンなどの世界的にその名を響かせるベストセラー推理作家が誕生していることは、あるいは聞いたことがあるかもしれない。そして、ソ連崩壊後にロシアに続々と人気推理作家が誕生していることも、「ソ連時代には推理小説はなかった」という風説の流布に一役買っているのだろう。確かに、ソ連時代には「ベストセラーを連発する推理作家」はいなかったが、それは上で引用しか箇所から分かるように、「推理作家」がいなかったのではなく、「ベストセラー」という概念がなかったのである。つまり、ある推理作家がどんなに良い作品を書いたとしても、それがベストセラーになることは決してなく、またそれが海外に名を轟かすこともなかったのである。沼野氏の解説では、ソ連崩壊後の人気推理作家としてマリーニナのほかに、ヴィクトル・ドツェンコ、コレツキー、レオーノフの名が挙げられているが、このうちレオーノフは、先に紹介した飯田規和(1972)「ソ連の推理小説」で当時の新人作家として紹介されている。決してソ連時代に推理作家がいなかったわけではない。レオーノフのように、長年地道に(というのは勝手な想像だが)推理小説を書いてきて、ソ連崩壊後についにベストセラー作家となった人物もいるのである。(なお、飯田氏が紹介している「レオーノフ」と沼野氏が紹介している「レオーノフ」が同一人物なのかやや不安があったが、毛利公美(1998)「
現代ロシア探偵小説事情」を見る限り、まず間違いなく同一人物だと言っていいだろう)
エドワルド・ブラーソフ
最終更新:2011年05月12日 17:06