中国SFメモ

2011年1月24日~時々更新
  • 最終更新:2011年7月11日

 中国SFについてのメモ。
 中国SFの日本での紹介の歴史は長く、簡単にここでまとめるのは恐れ多いぐらいである。

Index

(1)中国SFの日本での紹介の歴史

 中国SFについては、林久之氏を中心とする中国SF研究会が、1980年ごろから現在まで、同人誌『中国SF資料』を刊行し、紹介を続けているようだ。2010年夏には『中国SF資料之九 ホラー特集』が刊行されている。(中国ミステリの翻訳を行った同人グループなどは存在しなかったのだろうか?)

  • 『中国科学幻想文学館』(2001年)下巻の巻末に、邦訳された中国SFのリストがあり、同人誌掲載の分もまとめられている。

(2)中国SFを知るための基本文献(日本語)




武田雅哉、林久之『中国科学幻想文学館』(上下巻)(2001年、大修館書店)
  • 上巻は武田雅哉氏が執筆。古代中国~清末・民国期の翻訳・創作SFまでを扱う。
  • 下巻は林久之氏が執筆。戦後の中華人民共和国成立以降、「現在」までの大陸・台湾・香港SFを扱う。

 中国のSF史を一望できるすばらしい本である。ミステリではこの上巻に対応する時代を扱う井波律子『中国ミステリー探訪』(2003年)が刊行されているが、下巻に対応するような、新しい時代の中国ミステリを概観できる日本語の資料は刊行されていない。日本における中国SF研究の歴史の長さを感じさせる労作である。

(3)邦訳された中国語圏SF

台湾、香港のものも含めて挙げておく。

単行本

老舎(ろうしゃ)『猫城記』(1980年、サンリオ文庫)
衛斯理(ウェイスリー)『貓《ねこ》 - NINE LIVES』(1991年、徳間文庫) (※ 倪匡(げい きょう)の別名義)

 前者の作者老舎は、文学方面で名高い人。後者は日本と香港でこの作品を原作とする映画が製作されたときに刊行されたもののようだ。



 こちらは台湾SF、張系国『星雲組曲』(2007年、国書刊行会)。

短編アンソロジー

『中国科学幻想小説事始』(1990年、イザラ書房)
  • 「雪山魔笛」童恩正
  • 「太平洋人」鄭文光
  • (脚本)「飛べ、冥王星」葉永烈

短編の雑誌掲載




 左側は「中国SF特集」の『S-Fマガジン』2008年9月号。ミステリマガジンなどで「中国ミステリ特集」などはかつて見たことがないので、SF界のこのような取り組みがうらやましい。
 右側は、『S-Fマガジン』2007年6月号。

『S-Fマガジン』1979年11月号
  • 宗教・理性・実践」厳家其 (抄訳) (小説っぽくないタイトルだが、小説)
『S-Fマガジン』1982年5月号
  • のんちゃんと電子頭脳」遅叔昌
『S-Fマガジン』2003年10月号 ◆非英語圏SF特集◆
  • アッシャ」遥控
『S-Fマガジン』2007年6月号 ◆異色作家特集◆
  • カルメン」夏笳(シアジア)
『S-Fマガジン』2008年9月号 ◆中国SF特集◆
  • 水棲人」韓松(かん しょう)
    • 月面の白色人種と地上の黄色人種との最終戦争が迫る中、ある存在が開発された――(長編『紅色海洋』の一部を訳したもの)
  • さまよえる地球」劉慈欣(りゅう じきん)
    • 太陽が赤色巨星化すると知ったとき、わたしたちは一つの決断を下した……。
  • シヴァの舞」江波(こう は)
    • 問題はいかに死ぬべきかだ――わたしは未知のウィルスの被験体に応募した。
  • ほかに、中国のSF雑誌『科幻世界』副編集長の姚海軍(よう かいぐん)による「中国SF界の現状」(pp.34-42)、中国SF研究会の林久之氏による「〈科幻世界〉の今日」(pp.43-47)が掲載されている。

 その他の雑誌などでの中国SFの掲載は、2001年までについては、『中国科学幻想文学館』下巻の巻末リストで一覧することができる。

(4)Wikipediaの中国SF関連記事リンク集(日本語、中国語)

 中国語で書かれた情報を探すのなら、Wikipediaよりも百度百科の方が適切だと思うが、とりあえずWikipediaのをまとめておく。

日本語


中国語


(5)その他の中国SF関連資料(日本語)

  • 日本SF作家クラブ編(2001)『SF入門』早川書房、2001年12月
    • 林久之「中国SF」pp.26-29
  • 小松左京監修、日本SF作家クラブ編(2008)『世界のSFがやって来た!! ニッポンコン・ファイル2007』角川春樹事務所、2008年8月
    • 「SF雑誌編集者からみた日中SF気質」pp.31-33
    • 「アジアのSFと周辺事情~現状を語る」pp.132-134
    • 「SF創作活動を教育すること」pp.138-140


最終更新:2011年02月06日 12:23