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でも、2人の時間は、僕とアスカにとっては一瞬のものでしかなかった。
多分、かなり長い時間、僕たちはお互いに触れ合い、見つめ合い、それだけで
色々な事を伝え合っていたと思う。
だけど、時間は冷酷に流れていく。その時は、来るんだ。

「シンジ、ごめんね。」
アスカは何か吹っ切れたような顔で、僕を見つめる。
「あたし、素直になれなかった。シンジが傍にいてくれるだけで良かったのに、
憎まれ口ばかり叩いて、シンジを信じていなかった。」
「そんなことないよ。僕には分かる。
むしろ、君の気持ちから逃げていたのは僕なんだ。
仕事なんかに逃げて、最低だ。」
アスカは、何も答えない。

「ごめんね、シンジ。」
突然の一言。
言った瞬間に部屋の向こうで何かが割れる音がする。
「え?」
「…鏡。新しい景色を映すものよ。」
「え?よくわからないよ、アスカ、君は一体…」
僕が言い終わる前に、アスカの声が響いた。
脳に直接響き渡ったその声は、今まで聴いたどんなアスカの声よりも
穏やかで静かで、そして僕への想いに満ちあふれていた。
「覚えていて、シンジ。あたしはずーっとシンジの傍にいるわ。
何があっても、どこでも、いつまでも。」
「行くな、アスカ!」

咄嗟に叫んだ一言は、けれども声にならずに喉元で凍り付く。
アスカは、輝き出すと、ゆっくりと浮かび上がり、風景に溶け込み始めた。
握りしめていた手も、やがて消え、僕の手だけが空しく宙を掴んでいる。
最後まで残っていた表情が、僕に向かって微笑む。
「きっとこの先、何があっても、あたしたちは乗り越えていけるわ。」
そして、アスカはそのまますっと消えていった。
最後に聞こえた言葉は、一瞬たりとも忘れない。

「だって、あたしたちの愛は真実だもの…。」
扉が開く。同時にミサトさんが駆け込んでくる。
「シンジ君?大丈夫?無事だった?」

僕は呆然として、ベッドの脇に腰掛けたまま。
アスカの手を握りしめたまま。
アスカは、そこにいる。
安らかな、寝息をたてて。
指先から心臓のトクン、トクン、という鼓動が伝わってくる。
その微かな動きが、全て僕へのメッセージのような気がして、
僕は手を離すことができない。
アスカは、ここにいる。
眠っている。

でも、僕には分かった。痛切に、分かった。
アスカは、ここにはいない。いるけど、いない。
そして、いないけど、いる。
アスカの魂は内に閉じこもっているんじゃない。
アスカは、世界に溶け出して行ってしまったんだ。

「聞こえてる?シンジ君?」
ミサトさんが僕の肩を掴み、前後に揺すっている。
なんだか、遠い世界の出来事のように、肩に触れられているという実感がない。
「モニターが回復したと思ったら、シンジ君の様子がおかしくて…」
「…大丈夫です、ミサトさん。」
「本当に大丈夫?真っ青よ。」
僕の顔をのぞき込んでミサトさんが言う。
「本当に、大丈夫ですから。」
自分では立ち上がったつもりだったのに、
僕はそのまま倒れ込んでしまったらしい。
気づいたら、アスカの部屋と続いている応接間のソファーの上で、僕は寝ていた。
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