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「シンジ、」
あたしは、目覚める。

待ち続け、待ち続け、うんざりするような時間を飛び越えて、あの人を。
彼を一端は破滅に追い込んだのは、あたし。
自分でも分かっていながら、止められなかった。
それは重々分かっていたけれど、周辺から指摘されると腹が立った。
あんたたちに何が分かるっていうの?
あたしの辛さ苦しみ、何も分かってないくせに!
でも、どうしようもなかった。
あたしは結局、シンジとは引き離され、ドイツに戻された。
「出戻り」ってやつだ、そう言って自分を嗤った。

ドイツでの日々も退屈で、どうしようもなく空虚で孤独で、
ただ日々の積み重ねが数えて過ごすことしかできなかった。
表向きはドイツ支部への出向だったけれど、
別にやることなんて何もないんだ。シンジと距離を置くのが目的なのだから、
ドイツに着いた瞬間にその目的は達成されたのだから。

あたしは毎日、とりあえず出勤のカードを通し、
与えられた個室で時間をやり過ごし、
夕刻にまたカードを通して帰宅する、
それ自体を仕事として、とりあえず生きた。
シンジへの連絡手段は絶たれ、約束の1年間を耐えることのみに集中した。
時々ヒカリが連絡をくれたけれど、
あたしは素直になれず、いつも愚痴をたれてばかりいた。
そう、あたしは素直になれなかった。素直になるのが、怖かった。
臆病な自尊心が、いつもあたしの邪魔をしていた。
それに気づかせてくれたあの人には、会うことができない。
あたしは、真っ暗闇の中に居た。
狭い部屋で毎日を過ごすことにも慣れ、
誰とも会話することなく過ごす事にも慣れ、
そうやって1年が過ぎようとしていた。

最初に話を持ってきたのは、ドイツ支部のなんとかと言うお偉いさんで、
これは日本の本部からも承認を受けているから、と実験概要を見せられた。
その実験は、日本で行っているものとほぼ同種のもので、
あたしにはやる意味はないように思えた。
けれど、このドイツ人達は、「自分達で」実績を作りたい、という
野心満々の連中ばかりで、ああ、あたしを利用したいんだな、
ということはすぐに分かった。
日本の承認を取っているというのもただの嘘だろう。

それでもあたしは、書類にサインをし、久しぶりにプラグスーツを着て、
シミュレータに、乗った。
乗った理由なんてどうでもいい。
これが終わればシンジに会える、ただ、そんな気がしただけ。
後は…やっぱりあたしは自分の存在価値を証明したかったのかもしれない。
今更、だけど、あたしはそういう自分を認めることができなかった。
だから、また、臆病な自尊心に自分を乗っ取られた。
虎にでもなっちゃうんじゃないの?とどこかで冷静なあたしが、あたしを嗤った。
事実は、その通りにはいかなかったけれど、似たようなものだ。

「アスカ、」
今回はママの声が本当に聞こえたような気がしたの。
「ママ、」
思わず叫んでいた。

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