目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえ

 なんで僕は道に迷っているのだろう?
ジオフロントに通うようになってから、もう何年経っていると思っているんだ?
もう人生の半分以上をここに費やしているのに、それなのに…。

僕は迷子になっている自分を認めたくなかった。

「ネルフ諜報部」正確に言えば「ネルフ広報部情報分析課」。
でも、「広報部」のくせに副指令直轄の「部隊」だから、みんなからは「諜報部」と呼ばれている。
トップは今は…リツコさんがやっている筈。
メンバーが何人いるのか、どんな活動をしているのか、
全くわからない。ミサトさんぐらいの地位にいるとわかるらしいけれど、
僕はこの部署に関しては、その存在くらいしか知らない。
でも、スタッフルームがどこにあるのかは知っている。…筈だった。
今僕は、そこへ向かっている、筈…。

不安が増幅される中、あるところで角を右に曲がると、そこには暗闇があった。
これは駄目だ、引き返そう、そう思って振り向いた僕は愕然とした。
背後は壁だったのだ。
正面に向き直ってみると、暗闇がどんどん浸食してくるのがわかった。
あっという間に指先さえ見ることのできない真っ暗闇に。
一瞬、過去の出来事を思い出し、パニックになりかけるが、おしとどまる。
ここは、どこ?


目を開けても閉じても脳に認識される風景は変わらない。
完璧な、闇。
僕は目を閉じ、深呼吸をする。

この空気の重たい感じ、埃っぽい匂い、僕は突然気づいた。
ここは、僕がアスカの心の流れを感じた、あのホテルの廊下だ。
どこかで、僕はそこへ通されたんだ。
だとすると、これは夢なのか?
僕の自問自答は、カタン、という音によって中断することになった。
この廊下の先、きっとあの部屋で、誰かが待っている。多分、アスカだ。
そう思うと、怖くはなくなった。
今度は僕は何を見、何を聞くことになるのだろう、
それを考えながら、壁伝いに廊下をゆっくりと進んだ。

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最終更新:2007年08月07日 19:47
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