子供たちの歌は終わらない11

「あんた、自分で何をやったかわかってるんでしょ?」
「…」
「ここまでヒドイとは思わなかったわ。あたしの監督責任も大きいけど、
あなたももう子供じゃないんだし…」
「だって…」
「何?」
「だって、私を見てくれないんだもん…」
「え?」

最後の「え?」は僕が発した。でもその言葉は何故か「え?」という「形」になって、
そのゼリーに吸収されてしまった。
話は続く。

「私、我慢したわ。愛していたし、愛されているのもわかっていた。
大事にしてくれたと思う。けれど、私は、その『大事にされ方』じゃイヤだったの…
もっともっともっともっと傍にいて欲しかった。私に安心を与えて欲しかった。
私はそれ以外何も要らなかったのに…」
その女は泣き出した。

部屋は相変わらず絶望的に暗くて、僕は前に進めず、
傍観者であることを強いられている。
でも。
顔は見えなかったけれど、僕には分かった。彼女はアスカだ。
そして向かい合っているのは、きっとミサトさんだ。
「アスカ!」
僕の叫びはまたもやこのくず餅のようなゼリーのような壁に吸収されて
ぼとん、と床に落ちる。
スプーンを投げ捨てて、クロールのように僕は必死になって前に進む。
「アスカ!」
ぼとん。
「アスカ!」
ぼとん。

「だからって、あなたのやった事の言い訳にはならないでしょ?」
幾分声を落ち着けた感じでミサトさんが言う。
アスカは、ゆっくりとうなづく、と思った刹那、立ち上がって叫んだ。
「なによ、あんたはいいわよ、加持がいてさ、なんだかんだ言って
うまくやってんじゃないの!あんたたちが仕事中に仲良くじゃれてるの
見てて私が何を感じていたか、あんたには絶対わかんないわよ!」

瞬間、スゴイ音がした。ミサトさんがアスカの頬を叩いた、
という事が分かるまでしばらく時間がかかった。
「あんた、いつまでも人のせいにしてるんじゃないわよ!」
泣き声?ミサトさんは泣きながら、続けた。
「シンジ君の気持ちを考えたことあるの?彼は、確かに鈍感よ、
けれど、あの子、一生懸命アスカを愛していたじゃない、
一生懸命自分が手にした幸せを守ろうとしていたじゃない、
あんたが甘えていただけなの、それがわからないの?」

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最終更新:2007年07月19日 02:32
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