子供たちの歌は終わらない10

何か、囁き声が聞こえる。バスルームの方からだ。
防音がなっていないなぁ、と思いながらも気になってそちらに向かう。
声はバスルームではなく、廊下から聞こえてくるようだ。
そっと扉を開ける。
誰もいない。
けれど、声は聞こえてくる。

「この囁き声が一体どこから聞こえてくるのか、確かめなくてはならない。」
急にそういった義務感に襲われる。何故だろう?わからない。
それでも僕はとりあえずジーンズをはき、上にTシャツを被って、部屋を出た。
廊下を音もなく進む。厚手のカーペットは僕の靴の音を完璧に吸収してくれる。
その吸音性の高い廊下で、響くこの声。
角を何度か曲がったところで気づく。
このホテル、こんなに部屋は多くない。廊下だって真っ直ぐ一本の筈。
じゃあ、ここはどこだ?
そう思った瞬間に、その部屋に辿り着いた。

なぜその部屋だと分かったのか、それはドアがわずかながら開いていて、
そこから声が漏れているのが明らかだったからだ。
僕は何のためらいもなく、ドアを開ける。音はしない。
中は薄暗くて、ちょっとした恐怖感を僕に与えてくれる。
一歩一歩、ゆっくりと前に進む。

ふいに何かにぶつかる。壁?いや、目の前には何もない、はず。
だが、それ以上前に進むことが出来ない。
部屋は遮光性ばっちりのカーテンで閉め切られ、
誰がそこにいるのかもわからない。
けど、声は続く。女の声だ。

僕は先に進もうとする。でも跳ね返される。
ゼリーのような透明のねっとりした物体が僕の前に立ちはだかっている。
なぜか僕はスプーンを持っていて、
それで必死になってそのゼリーを掻き出そうとする。
そのゼリー状のものは、何か懐かしい匂いがした。

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最終更新:2007年07月19日 02:31
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