子供たちの歌は終わらない9

しかし、退屈だ。
僕は頬杖をつきたいのを必死にこらえながら、
そしてアクビをもう何十回も噛み殺しながら、
説明会をただぼんやりと聞いている。

ミサトさんから命じられてこの場にいるものの、
なんで僕がこの場に座っていなくちゃいけないのかがわからない。
土地買収だとか、アンテナ設置に対しての日照権の問題とか、
それはそれで重要な話なんだろうけれど、
僕には完全に対岸の火事でしかない。
「責任者」のバッジを付けた初老の男性がパワーポイントを駆使して、
同じ説明をもう3日も繰り返している。
そしてまだこの「説明会」という名の拷問はあと2日続くのだ。

その間、外に出ることも何故か許されず、食事もホテル内での簡素なもののみ。
ネルフの予算は以前とは比べモノにならないくらい少ないけれど、
それでもこの囚人食のごとき貧相な食事には辟易する。
え?話を聞いていろ?って?無理だよ。
もう聞き飽きたし、僕の興味はそこにはない。
彼らの声は僕の耳には届かない。
僕は焦点の合わなくなってきた視線を無理矢理に修正し、
天井のシャンデリアを睨み付ける。

アスカ、君は今、どこにいるんだ?

その夜、また夢を見た。
今度は夢と気づくのにだいぶ時間がかかった。

僕は眠れなくて、レンドルミンを何錠も自棄気味に口に放り込み、
部屋にあったビールでそれを喉の奥に流し込んだ。
パンツ一枚でベッドに横になり、天井をぼんやりと見つめる。

この一週間の「精神鍛錬」に出発する時、
僕はミサトさんに長めの休暇を申請した。
ミサトさんは、以前よりは丈の長くなった、
それでもタイトなミニスカートから伸びる
すらりとした年齢を感じさせない足を組み直しながら
僕の申請を一瞥し、あっさりと許可をくれた。

僕には、時間ができた。この出張の後にとりあえず2週間。
もう1年もの間、逃げていた。今度は逃げない。
アスカを、迎えに行く。
きっと、あの夢の中で、彼女にもそれは伝わっている筈だ。
待っててくれるよね、アスカ?

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最終更新:2007年07月19日 02:30
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