いつも、何度でも2

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「何を分かったっていうの?」 アスカの冷たい視線が僕の心をズタズタにしていく。 「アスカの気持ちだよ」 言い終わるか終わらないかの刹那、僕の顔のすぐ横を何かが通り過ぎた。 背後でガシャンと物凄い音がして、僕はアスカが灰皿を投げつけたことを知る。 その音で金縛りが溶けたかのように、僕のカラダは動き出す。 後ろを振り向くと、背後に立てかけてあった姿見に灰皿が当たったらしく、 鏡が粉々に砕けて飛び散っている。 アスカを見ると、顔を伏せ、肩を震わせている。 僕はとりあえず割れた鏡を片づけようと、 屈み込んで砕けた破片を拾い集めようとする。 粉々に砕け散った鏡の破片。 そこに写るいくつもの僕の姿。あるものは泣いているように、 またあるものは怒っているように、悲しんでいるように、 様々な僕の姿が映し出される。 ふいに、僕の姿が映らなくなり、 アスカが、色々なアスカがそこに映し出される。 表情はおろか、年の頃さえ違う、様々なアスカ。 粉々に砕けた鏡の中で、そのアスカたちは、 やっぱり怒ったり泣いたり悲しんだり、 そして喜んだり笑ったりしている。 悲しみはあちこちに積もっていく。 そして悲しみは、僕に決して嘘をつかない。 ふと気配を感じて振り返ると、そこにはアスカが立っていた。 表情はない。 「私だって言いたいことはたくさんあるの。」 ぽつりと、呟く。僕は、頷く。 「言いたいことは悲しいことばかり。」 「うん。」 「本当は、こんなこと、言いたくないのに。」 「うん。」 僕は、そうされるのを求めているのがわかるから、 アスカの右手に触れる。 傷跡に沿って肩口まで手を伸ばしていく。 「だから、何をわかったつもりになっているの?」 アスカはそう言うと、僕の中にゆっくりと飛び込んできた。 抱きしめる、とかいうのではない。本当に僕の中に吸収されるように、 するりと僕の中に入り込んできた。 熱い。 僕たちは溶けて混じり合い、言葉にはならない交感状態にいる。 あたりはLCLの臭いに満ちていて、それは僕にあの「壁」を思い出させた。 それと同時に、あの忌まわしい記憶も。 「人類補完計画」 あれを僕たちは今、2人で行なっているのだろうか。 「余計なことを考えないで…」 アスカの声がどこからか聞こえる。 そうだよな、これは僕と君の見ている夢だ。 現実以上に大事な夢だ。 僕は背中にガラスの破片がブツブツと刺さる感触を覚えながら、 その場に横たわった。 いや、本当に「横たわった」のかどうかも疑わしい。 けれども、そんなこと、もはや問題ではないんだ。 僕たちはそこで愛し合い、憎しみ合い、 お互い埋め損ねたパズルのピースを埋めた。 欠けているピースも、だぶっているピースもたくさんあったけど、 僕たちは、混じりっけのない、完全な1つの「もの」になっていた。

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