目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえ2

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何回か廊下を曲がり、やはり僕は以前目にしたことのある部屋に辿り着いた。 ドアは、やはり少し開いている。 ゆっくりとドアを開け、ゆっくりと中に入る。 中は前回と同じだ。しかし廊下が真っ暗なので、 今回は薄明かりが漏れている感じがする。 ゆっくりと進む。そろそろぶつかる筈だ、あの壁に。 どよん。たぷん。 やはり。 LCLで出来ているらしいその透明な「壁」は、今回も僕と彼女の間を隔てる。 向こうに座っているのは…、誰? 気配は確かに感じるのに、姿が見えない。 アスカはどこ?ここに居るはずじゃなかったの? どこからも答えはない。自分の心音だけが、どくん、どくん、と響いている。 息を吸う。吐く。呼吸音は壁に吸収されていく。 まるでスキューバか宇宙遊泳か。 自分の心音と呼吸音だけがしばらく続いた。 どのくらいかは、わからない。ここには時間の流れがないからだ。 なんとなくだけど、そう感じる。 夢の世界でもあり、現実にも繋がっている、この奇妙な世界。 僕は次に起こる事をただ、じっと待つことにした。 「ちょっと、シンジィ、何ぼーっとしてんのよぉ」 え? いつの間にか目を閉じていた僕は、その声に驚いて目を開く。 アスカだ。アスカの声だ。 「どこ?どこにいるのアスカ?」 僕は声を上げるが、やはりこの壁は今の僕の声を拒絶する。 「ん、ぁあ、ごめん。別になんでもないんだよ。」 「嘘。どーせ実験の事でも考えてるんでしょー。」 声は下から聞こえてきた。え?下? 床を見ると、そこに床はなく、僕の真下に、僕とアスカがいた。 見覚えがある。結婚して初めてのデートの時だ。 (まったく、今日くらい私の事で頭いっぱいにならないのかしら…?) 怒ったようなアスカの声が聞こえる。 これは、アスカの思い出の中なのだろうか…。 街中の雑踏もクルマのクラクションも、電車の轟音も、 何も今の僕には聞こえない。 僕に聞こえるのは、自分の心音と呼吸音、 そして下の2人の会話だけ。 いや、違う。この音はなんだ? シンジが何かに気づき、ポケットをまさぐる。 瞬間、ものすごく気持ちの悪い何かが僕の心の中に侵入してくる。 この感じ、この心を雑巾のように絞り上げるこの感触。 これは、憎悪だ。

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