再生

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始まりがあれば終わりもある。 目の前にある一枚の紙…人生の重要な岐路はこんな紙切れに判子を押すだけで決まってしまう。 始まりは歓喜に震え幸せを感じながら判子を押した。しかし…今はどうだ。同じ動作に連なる感情は喪失感と軽い安堵… 彼女の顔には一切の感情も見ては取れない。紙には彼女の書くべき事が既に書かれ、押されているのだから。能面の様に白く美しい顔を唯、まっすぐに僕の方へ向け僕が彼女のとった行動を真似るのを待つだけ。 「書けたよ…」 「そう…」 彼女は不備がないか紙に目を通し自分の鞄にしまいこむ。お互い納得はしている。終わりという現実は酷くあっさりと終焉に向かって進む。 「アスカ」 「何?」 短い。ただのいらえ。この事からも未練なんて物は感じられない。この終わりには別に浮気など外的な要因は一切無い。 ただ… 僕は彼女に幸せになって欲しかった。苦労はかけさせたくないと仕事に没頭した。彼女に裕福に暮らして欲しかった。 しかし…現実には彼女は疎外感を感じ、心を閉ざしていった。久し振りに家に帰る僕の顔を見て嬉しそうに笑うアスカも段々とその顔を曇らせていく。 当たり前だ、幸せを願っていた人の手を『仕事で疲れてる』と邪険に振り払っていたのだから… 当然、アスカも解ってくれていた。生活の為には仕事が必要な事を。けれど彼女の幸せにはそれは当てはまらなかった。彼女は裕福など求めてはいない。アスカは僕と過ごす時間が大切だったのだ。 僕が価値観の違いに気付いたのが彼女が心を閉ざしきった後だった… 「アスカ…すまなか…」 「謝らないで!シンジと結婚した事は嬉しかったんだから…」 「でも…もう辛いの…」 「わかったよ…」 アスカの大粒の涙を僕は見つめながら 「今までありがとう」と… 始まりがあれば終わりもある… でも終わりがあれば始まりもある… また始まりを信じて… 【終わり】

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