子供たちの歌は終わらない13

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残りの2日をなんとか乗り切って、 僕はとりあえず2週間の自由を手にした。 朝、ベッドから起きあがり、顔を洗い、ヒゲを剃る。 歯を磨き、身支度を整える。 冷蔵庫を開け、エビアンを1本、タオルにくるんで鞄の中に。 僕が外に出ることを止める人間はもういない。 そのまま僕は眩しく焼けるような日差しの中へ身体を溶け込ませた。 向かったのは「あおば小麦工房」 トウジ、いや鈴原夫妻が経営しているパン屋だ。 何度かアスカと遊びに行ったこともあり、場所は覚えている。 第2新東京市の郊外に、彼ら夫婦の住居兼店舗はあった。 でも、「あおば小麦工房」はシャッターが閉まり、 人の気配などミジンコほども感じられない。 「留守」を辞書でひいたら「この家のこと」と書いてあるんじゃなかろうか、 と思われるくらいに。 シャッターには「都合によりしばらく休業いたします 店主」の張り紙。 その張り紙は剥がれかけ、字は滲んでいる。 この直射日光の当たる場所で半ば黄ばんだA4の無機質な一枚の紙は、 彼がそこに貼られてから少なくとも1週間は経っていることを教えてくれた。 僕の数少ない友人一家は一体どこへ行ったのだろう? いきなり僕は途方に暮れてしまった。 両隣の家はトウジ一家の不在に関して何も知らず、 トウジの携帯は留守電のままで、 (奥さんの携帯番号も聞いておけば良かったと後悔した) その日は1時間かおきに、繋がらないと分かっていながらも 彼に電話をかけ続け、 「メッセージをこれ以上お預かりできません」 という音声ガイダンスを聴くに及んで 僕はその日の行動が徒労に終わったことを知った。 冷房の効きが悪いレンタカーのせいで、 たっぷり2リットルは汗をかき、 途中で買ったエビアンも3本目が空になる頃、 僕はホテルにようやく辿り着いた。 シャワーを浴びてから僕は翌日からの行動計画を練る。 とは言っても、唯一アテにしていた手がかりに肩透かしを喰らった今、 残された選択肢はそう多くはない。 でもこのまま帰るわけにはいかないんだ。 明日またあの場所へ行ってみよう。 ここで諦めちゃ駄目なんだ。とにかくもがいてみよう。 僕は翌日に備え、睡眠薬を飲むと早めにベッドにもぐりこんだ。 アスカ、また君の夢を見たいよ、僕に何か伝えておくれよ。 僕の儚い希望は、その夜は叶えられなかった。 その代わりに、ふと気がついたら、ベッドの前に、初号機が立っていた。 カラダは動かない。目だけが初号機を見つめる。 その初号機は確かに初号機なんだけど、身長は2メートルくらい。 綺麗に部屋に収まっていた。なんの違和感もなかった。 「…母さん?」 次の瞬間、初号機は消えていて、僕は夜が明けているのを知った。 夢?それとも今のは…?

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