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ネル半島


サガミ・ベース


  1. 地球人

概要(基準となる日時:帝国暦27年6月(シルヴィー)15日)

サガミベース転移半年目



ベース近郊



サガミ・ベースについて


幾つかの問題はあったが、土地の支配者であるハイズ伯爵は、シトゥ湖(後のサガミ湖)から流れるトゥルカ川(後のサガミ川)から東と、デューヴェス山脈の東峰から南の範囲をサガミ郷(サガミハラ)とし、サガミ・ベースの司令官であるフィリップ・ジェイソン・ロバーズ少佐をサガミ卿として騎士に任じ、地球人達は、正式にこの土地の居住権を得ることになった。

本来デューヴェス山脈南峰以東はハイズ伯爵の直轄地でもあり、殆ど居住者の存在しない未開の森林地帯であったため、それについては大きな問題は発生しなかった。

しかし、ミラ・サルナ公国のネル半島では、古くからの豪族や騎士団の勢力が非常に強く権限も大きいため、新興貴族や準貴族ともいえる商人集団との間で諍いが絶えない土地であり、突如出現した新しい領主の存在は、その勢力バランスを崩す切っ掛けにもなりうるとして、諸侯の多大な関心と干渉の標的となる。

また、サガミ・ベースは、サガミ郷として認知されて以降、異国の珍奇な品々を産するとして有名になり、現在の主な産物は紙と強烈な蒸留酒である(芋焼酎とエールから作るウィスキー)。







以下ネタバレ設定




ストーリー


ディープ・インパクト



 『それ』が原因であったのは、ほぼ間違い無い事であったが、結果の全てを『それ』がもたらしたのだとするには、あまりにも小さなものであった。
 偶然の一言で済ますには、巨大に過ぎる、それこそ天文学的数値が並ぶ、極小の確率で発生した事故であった。

 『それ』(後年同様の物質を「超重量物質」もしくは「超重量結晶」呼んだが、もっとも一般化した呼称にならって、以後は「一号結晶」と呼ぶ)は、東南アジアの某国で発見された小さな黒い結晶体であった。
 米国の陸軍が研究費の大半を支出している某研究機関が、発見される以前から追いかけていた謎の結晶体である。
 本来は全人類の総力をあげてでも調べるべきものであったが、それは叶わなかった。
 なにはともあれ、およそ一八トン近い質量をもつ、直径二四ミリメートルの一号結晶は、横須賀に停泊中の輸送艦で機材と共に待機している研究チームの下へと、米国陸軍の軍用機に載せられ南シナ海を北上したが、日本の近海で突如その質量を変化させた。
 機体の積載限界に迫る勢いで増大し続ける一号結晶を持て余し、輸送チームは静岡県の民間空港に緊急着陸した。
 事故の原因については日本政府はもちろん、ホワイトハウスにも秘密にされた。

 結局、紆余曲折の末、翌日には『お祭り』を控えた、神奈川県に存在する米国陸軍工廠に運び込まれて固定され、夜明け前に膨大な量の機材と共に到着した研究チームによって、原因の究明が計られる事となった。
 そして、事件は、件の『お祭り』の最中に起きる事になる。

 固定された状態であっても、光や電磁波はもちろん、強度さえ確かであれば、音波によってすら、微かながら重力波変動を起こす一号結晶は、担当する物理学者達を狂喜させ、外の喧騒をよそに、莫大なエネルギーを注ぎ込んだ各種の実験を行わせるに至った。
 が、それは、本来であれば人類が気付く事もなく終わるはずであった事象を、二百名以上の行方不明者を出す、未曾有の大事件に変えてしまうものだったのである。

 およそ三億光年の彼方から、光に遅れる事僅か数年という、光速にほぼ等しい速度で宇宙空間より飛来したマイクロ・ブラックホール。
 直径一ミリメートルに満たないマイクロ・ブラックホールは、その速度と質量によってアインシュタイン時空を歪め、誕生した三億年前のその時、そのままの姿で、一号結晶の発生させた重力波に導かれるようにして、地球を直撃した。
 が、もちろん当たり前のように、ほぼなんの抵抗も受けないまま地球を貫通。
 本来であれば、そのまま誰にも気付かれる事無く飛び去るはずであったが、一号結晶の実験に伴う幾つかの偶然が、その速度とエネルギー状態を僅かに変化させた。
 光速からコンマ以下数桁の単位での速度の低下と、それに伴う時空に生じたわずかなエネルギー変動が、マイクロ・ブラックホールに最終的な寿命をもたらし、光速以下コンマ数パーセントの速度から相対速度ゼロへの瞬間的な減速とベクトル変更、地上三メートルの付近での全エネルギーの開放と消滅という結果を生み出す。
 TNT火薬に換算した場合、兆から京トンという単位(さらにブラックホールが持っていた全運動エネルギーと位置エネルギーが加わる)が使用されうるという、途方もないエネルギーの解放であり、全ての探知システムを物体からの反射波に頼っていた人類にとって、それはまさに不意打ちであった。

 命中したのはほぼ赤道直下の大西洋上。
 飛び出したのは、日本の神奈川県郊外。米国の陸軍基地のど真ん中である。

 開放されたエネルギー量からして、日本どころか人類の生存にすら影響を与えかねない甚大な被害をもたらすはずであったが、なんの加減か、グランド・ゼロには半径一二〇メートルほどの、半球形の穴が穿たれただけであった。

 数ヶ月にわたって行われた調査の結果、マイクロ・ブラックホールの直撃という、地球の寿命を越えても二度とは発生し得ないであろう、運命論的な偶然によってもたらされた被害は、人的損失僅かに二〇三名、しかもほぼ半数が軍属という、そのエネルギー規模と確率からすると、ゼロに等しいものであったと結論された。
 失われた一号結晶とその実験については極秘にされ、二度とない未曾有の大事件は、数年のうちに人々の記憶から薄れ、被害者の家族以外からは忘れ去られる事となった……。



 事件の後、原子以下にまで綺麗に分解され「消し飛んだ」と思われた人々であったが、数千光年の距離と数千年の時を超え、地球から消えた、その時の状況、状態のそのままで、再びこの時空へと姿を現す事になる。

 要するに「時空を超えた」わけだが、アインシュタイン宇宙の境界を超えたわけではない。
 この程度のエネルギーでは、時空に直径240メートルもの穴をあける事など不可能であることは間違いないので仕方がない。
 エネルギー総領としては、周辺の建造物および数百人の人間を、通常の空間で光速にまで加速して移動させる事が、辛うじて可能かどうかという程度のはず。
 さらに、当然ながらこの「異世界転移」した物語の主人公達が、同様のSF的手法で元の世界へ帰るのは不可能。
 距離については瞬間移動でもなんでもなく、光速以下での移動であり、引き伸ばされた時間については、特殊相対性理論の範疇内に収まっている。








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