14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #01 > パートB


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「・・・本当に、できると思っているのですか?ネスさん。」

受け取った石を大事そうに抱き抱える女性に向けて男性は問いかける。

「さぁな。だから、やってみるんだろ?」

ネスと呼ばれた女性は、さも当然のような態度で答えた。
その様子に男性は大きく溜め息をついてから再び口を開く。

「これは立派な違反行為ですよ?いったい何処で情報を仕入れてきたのか知りませんが・・・」
「じゃあ、断れば良かったじゃねーか。」
「・・・断って貴女が素直に諦めてくれるのでしたら、そうしてます。貴女の”犠牲者”は僕一人で十分ですよ。」
「なーんだ、分かってるじゃん。ラス。流石、最高の相棒だぜ!」
「伊達に3年、生活を引っ掻き回されてはいませんよ。最低の相棒さん。」

高笑いをしながら肩を叩いてくるネスに、ラスと呼ばれた男性は胃が縮こまる感覚を覚えていた。
この件はこれ以上、何を言っても無駄であると悟ったラスは次の疑問をぶつける。

「・・・それで、今度は何処で問題を起こしてきたのです?」
「うんっ?」
「惚けないでください。こんな上質の輝石、貴女が手に入れられるワケがないでしょう。」

態とらしい反応を返すネスに、ラスは真剣な表情で問い詰める。
彼が彼女に渡した石。それは”輝石”と呼ばれる特殊な鉱物だった。
地域によって多少の違いはあれど、基本的には純度の高い物、大きな物ほど高額で取引されている。
彼女が彼の元に持ち込んできた輝石は、とても純度が高くてしかもそれなりに大きい。
どう見ても彼女一人で工面できる金額では、こんな上質な輝石が購入できるワケがない。
だから、彼は女性がこの輝石を持ち込んできた時から、彼女が何か問題を起こしてきたことを悟っていた。

「んー、そうだなぁー・・・。すぐに分かると思うぜ。すぐに、なっ。」

ネスの笑顔に嫌な予感を感じたラスは、血の気が引いていくのを感じていた。
その数秒後、ネスの笑顔が一瞬だけ僅かに陰る。

「・・・そーら、来たぜ!」

ネスが窓の方に視線を向けたのに気付き、ラスも窓から外を見る。
それとほぼ同時に轟音を発しながら二人を目掛けて飛んでくる物体が1つ。
その姿を認めたラスは目を白黒させた。ネスは徐にラスの首根っこを掴み、思い切り引っ張った。
突然のことにラスはされるがまま、人形のように宙に舞う。
ネスが反対側の窓ガラスを体当たりで割りながらラスを右手で引き摺って外へ飛び出した頃、件の物体が二人が先程まで居た床に衝突する。
すると、凄まじい爆発音と供に二人の居た建物を炎で包んだ。

「ああぁーっ!僕の店がぁーっ!!」

建物が焼け落ちていく様を見たラスは、引き摺られながら叫んでいた。
ネスはそんな彼の様子に構うこともなく全力で走る。

「うぅっ・・・やっと・・・借金を返し終えたばかりなのに・・・」
「そうだったのか・・・。アイツらめ、許せんな!」
「・・・。」
(貴女が連れて来たのに、よく言いますよ・・・。)

引き摺られながらすすり泣くラスに、ネスは建物を倒壊させた相手に対して怒りを露わにしてみせる。
その様子にラスは呆れて物も言えなかった。
気を取り直してラスはネスに件の建物倒壊事件の実行犯について問い詰める。

「・・・で、今度はどちらの悪党さんに因縁をつけて来られたので?」
「どちらの悪党さんだと思う?」
「そうですね・・・。この辺りの悪党であんな代物を持ち出して来れるのですから、”ブルーシーツ”か”グレン盗賊団”辺りですか?」
「・・・”ダイア・スロン”。」
「ああ、”ダイア・スロン”もありますね。・・・って、はぃいっ?!」

ネスの口から飛び出した悪党の名前に、ラスは思わず聞き返した。
”ダイア・スロン”と言えば、この辺りで有名な悪党なんてレベルではない。

「じょ、冗談・・・ですよね?」
「冗談なんて言ってどーすんだよ。マジだよ、マ~ジ。」
「ネスさん・・・彼らが何者か・・・。」
「何だよラス。私はバカじゃねーぞ?ダイア・スロンって言やぁ、反協会過激派組織の総元締めだぜ。」
「分かってて、喧嘩を売ってきたと・・・?」
「おうよ!丁度、私が欲しい上質な輝石の密輸中みたいだったしな♪」
「・・・・・・・・・流石を感じます。ネスさん。」

ネスが因縁をつけてきた悪党、”ダイア・スロン”。
それは、この世界の実質的中心組織である”リンカー協会”の活動に反対する組織の中でも最も過激で、最も勢力の強い組織だ。
協会を正義とするのであれば、確かに悪党である。
ただし、『この辺りで有名な』なんてレベルではない。世界的に有名な悪党だ。
その悪党の中の悪党とも言うべきダイア・スロンから高価な輝石を強奪した。

(嗚呼、神様よ・・・どうして僕にこの様な仕打ちを・・・?)

彼女の所業は、彼らにとってほぼ確実に万死に値する物だろう。
この様子では自分は確実に彼女の仲間と思われているはずだ。
ラスは普段は信じてもいない神様に向かって、心の中で悪態をついていた。
彼の所業に天が怒ったのか、先の建物倒壊の実行犯、ダイア・スロンの追手と見られる輩が二人の行く手を塞いでいた。

「さっすが!手回しの良いこった!」

ネスは自然と笑みが零れた【こぼれた】。
彼女にとってこの状況は既に想定済みのことで、また自ら望んでいたことでもあった。
ネスはこう言う荒事が堪らなく好きなのだ。
放っておけば一日中、彼方此方で荒事を巻き起こしているだろう。
しかし、それでは関係の無い人間まで巻き込む恐れがある。
ラスはそうした巻き込み被害を極力抑えるため、防波堤の役割を自ら買って出ていた。
とは言え実際に防波堤として機能した記憶は殆どなく、ただの犠牲者第1号となっていただけだった。

「おぉっと!あっぶねぇーなぁ!」
「態とギリギリで避けておいて、よく言いますね・・・。」

二人の行く手を塞ぐ追手の数は十数人ほど居た。
そして、其々が手に持った武器を振り回し突撃してきた。
しかしネスは、まるで始めから目の前には何も無かったかのように、降り注ぐ刃の雨を掻い潜って【かいくぐって】いた。
引き摺っていたラスに掠らせる【かすらせる】こともなく、疾風の如く走り去ったネスに流石の追手達も度肝を抜かれていた。

「・・・舌を噛むなよ?ラス。」
「えっ?うわぁっ!?」

突然、ネスがラスに忠告した。そして、急に進行方向を変える。
急制動による慣性がラスの身体を襲い、ラスは慌てて口を噤む。
その直後、ネスが進もうとしていた先の地面が衝撃音と供に減り込む。
ラスにはその正体がすぐに分かり、青褪めた。

「アイアンカノン!?ネスさん!貴女いったい何をしたんですか!?」
「何って、輝石を頂戴しただけだぜ?」
「それは分かってますよ!問題は何処で因縁つけてきたかです!」

彼女がいくら高価な輝石を盗んだとはいえ、あくまでたった一人の流れ者だ。
十数人の追手と、建物の焼き討ちだけでも十分過ぎる追撃態勢である。
いくら天下のダイア・スロンでも、然したる【さしたる】理由も無くアイアンカノンなんて高価な輝石を持ち出してくるワケがない。
しかも此処は街中だ。あんな火力の強い輝石を使っていては治安部隊と衝突する可能性が高い。
場合によってはこの街の治安部隊との交戦も厭わない【いとわない】ほど、彼女の所業は許されざることであった。
そう考えなくては合点がいかなかった。

「何処でそりゃあアンタ、アイツらのアジトでに決まってるだろ?」
「な、なんですってー!」

基本的に反対組織はその活動拠点を人に知られるのを嫌う。
ダイア・スロンも例外ではなく、またダイア・スロンが尤も色濃くその特徴を持っていた。
その彼らが拠点の場所を知られ、しかも高価な物をたった一人の流れ者に奪われ逃げられた。
そんなことが、『はいそうですか』で許されるワケがないことぐらい子供だって想像できる。
ラスはトンでもないことをしてくれたネスに辟易【へきえき】した。
ネスはそんな彼の様子を構うこともなく、唯只管【ただひたすら】この状況を心から楽しんでいた。

「しかしホント、ヘッタクソだな。もっとよく狙えよ。なっ!」
「ごふぅっ!」

ネスはアイアンカノンの弾幕を避けつつ一気に距離を詰め、アイアンカノンを操るガンナーを蹴り倒した。
元々狙撃も連射も苦手なアイアンカノンで、あそこまで正確に狙いを付けられるガンナーはそうは居ない。
つまり、決してヘタクソなワケではない。むしろかなりの熟練者である。
九分九厘、相手が彼女でなければ命中させていただろう。ラスはそう思っていた。
そして、ネスの回避能力の高さはその先で待ち構えていたガンナーの集団を震撼させることになる。

「わーお!今日はやたら物が飛んでくる日だぜ!」
「そうですね・・・。」
「何だ、楽しくなさそうだな。」
「流れ弾が当たらないか心配で、僕には楽しむ余裕なんてありませんよ。」
「ダイジョブだって!当たらねーようにしてっからさ!楽しもーぜ?」

待ち構えていた十数名のガンナーはショートアサルトガンを携えており、二人に向け一斉に射撃を開始した。
常識では到底避けきれる量ではない銃弾の飛ぶ中を、ネスは軽口を叩きながら避けてみせる。
しかも、彼女の言う通り引き摺っているラスにすらただの一発も掠っていない。
その異様な光景に、ガンナーの集団は圧倒され動揺の色を隠せていなかった。

「ば、化物か!?」
「・・・ご名答♪」
「ぐはぁ!!」

ショートアサルトガンを連射していたガンナーの一人がネスによって殴り倒される。
その様子ですっかり怯えきったガンナーの集団は闇雲に乱射を続ける。
狙って当たらない物が、当てずっぽうで当たるほど現実は甘くない。
あっという間にガンナーの集団は一人残らず地に伏せた。

「・・・化物人間【ヒューマノイドモンスター】のこと、覚えとくといいぜ♪」
「残念ですが、聞こえていないかと・・・。」
「そうなんだよなー。だからかな、いまいち知名度が上がらないんだよなー・・・。」
「悪名は轟いてますけどね・・・。」

何処の誰が言い出したかは分からない。
人間の皮を被った化物。それがネスについた二つ名である。
確かに世間一般でその名を知る者は少ない。
しかし、悪党の間では要注意人物の名前として上位に挙がっている。
ラスは以前街中でそういう噂話を聞いていた。そして、それは恐らく本当の話だろうと彼は確信していた。

(下手な悪党より怖いですし、性質も悪いですしね・・・。)

しかしながら、その悪党の間でも”怪物人間”の姿まで知る者は少ない。
何故なら姿を知る者の多くが姿を思い出すだけで失神してしまうほどに恐怖を感じ、記憶の奥底に仕舞い込んでしまうからだ。
まさかたった一人の流れ者の女性が、その人であるとはまず思わないだろう。

「・・・なんか言いたげだな?」
「いいえ、相変わらず見事な手際だと思っていただけですよ。」
「まっ、そーいうことにしとくぜ。アイツらまだやってくるみたいだし。」
「の、ようですね・・・。」

先の建物倒壊やアイアンカノン騒動でこの街は静まり返っていた。
道行く人はその殆どが近くの建物に避難し、店という店が急遽店を畳んでいた。
その最中で感じる十数人ほどの気配。その正体は火を見るよりも明らかだった。

「おいおい、引き摺られてただけなのにバテてんのか?」
「ええ、精神的に。」
「まったく、嘆かわしいぞ。もっと図太く生きようぜ?」
(貴女が図太すぎるだけですよ・・・。)
「・・・上っ!?」

何気なく見た建物の上にキラりと光る物を見つけラスは叫んだ。
その叫び声に反応するよりも早く彼女が動く。直後、弾丸が地面に着弾する音が響いた。
どうやら、ネスは自身を狙う者の存在にとうに気付いていたらしい。
それでいて、態とギリギリまで相手に狙いを定めさせていたのだ。
ラスは彼女の桁外れの勘の鋭さに改めて驚かされ身震いしていた。
その一撃を皮切りに付近の建物の上に陣取っていたガンナー達が一斉に射撃を開始する。
同時に、道と言う道に各々自慢の武器を構えたファイター達が立ちふさがった。
二人は囲まれていた。正確に言うのであれば、自分達が囲まれるのをネスが待っていた。

「どうするんですか!?前の道だけでもざっと、20人は居ますよ!?大丈夫なんですか!?」
「何言ってんだよ、32人居るぞ。後ろは15、左の細い道に9人、右の広い道なんて43人だ。」
「えっ・・・。」
「で、今上から雨霰【あめあられ】のようにショートアサルトガンぶっ放してきてるヤツらが29人だ。」
「あっ・・・。」
「それから、さっきのヤツらが合わせて25人だから、追手は今の所合わせて153人だなっ!」
「ああっ・・・あ・・・・・・ぁっ・・・・・・。」

ネスは状況をかなり正確に把握していた。
ラスは彼女の状況把握能力が完璧に近いことを、これでもかというほどに身に沁みて【しみて】理解している。
それ故に、突きつけられた絶望的な現実にただただ絶句するしかなかった。

「ったく、天下のダイア・スロンとあろうもんがこれっぽちの追撃かよ。私も過小評価されたもんだぜ。」

ネスは降りしきる鉛の雨の中を、何事も無かったかのように平然と走りながら呟く。
ラスはもう既に突っ込む気力を失っていて、為すがままされるがままに引き摺られていた。

「・・・・・・当然、左の細い・・・」
「バ~カ、右に決まってんだろっ♪」
「・・・・・・もう、好きにしてください。」

ラスの言葉に被せる様にネスが答える。
遂に精根尽きてしまったラスは、ことの成り行きを見守ることにした。
ネスは意気揚々と右手に見える広い通りに出る。
そこには彼女の予想通り、43人のファイターが待ち構えていた。

(やっぱ弱そうなのばっかだな。つまんねー・・・。)

気配から検討は付いていたが、実際に対峙してみるとやはり何れも大したことがなさそうだ。
ネスはそう思い落胆していた。しかし、そんなネスの気持ちを知る由もない追手達は迎撃態勢を整えていた。

「ほらほら。アンタら、逃げた方が身のためだと思うぜ?」
「ふざけろ!」
「あっ、そっ。」

迎撃態勢の整った集団にネスは一気に突っ込む。
その数秒後、ボロ雑巾のように積みあがっていく追手の山。
43人居た集団は1分と待たず全員が大地を抱いていた。

「じゃ、私、残りのヤツらも倒してくっからよ。先に例の場所で待っててくれ。」
「・・・了解です。って、うわぁぁっ!?」

ネスはラスが自分の申し出を承諾したことを確認すると、徐に彼を天高く放り投げた。

「だから、投げるなら投げるって言ってくださぁぁーい!!」

半ば予想はしていたし慣れているとは言え、やはり突然放り投げられるのは心臓に悪い。
天高く舞うラスは、上空から力いっぱい叫んでネスを非難していた。