14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #01 > パートA


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「よぉ!頼んでたアレ。できた?」

木製の古びた扉を勢いよく押し開けて、女性が建物の中へと飛び込んだ。
元々建てつけがあまり良くなかったのか、それとも彼女が勢いよく開けたせいか。
扉の止め具が勢いに耐え切れず壊れ、支えの無くなった扉が床に倒れる。
しかし、女性は気に留める様子もなくタイル張りの床を進む。
その視線の先にはカウンターに頬杖を突いている男性の姿があった。

「ええ、できる限りのことはしてみましたが・・・。」

男性はカウンターから出て女性のもとへと歩み寄る。
その途中、ちらりと倒れた扉を見て軽く溜め息をつく。
女性は男性のその様子から何を言おうをしたのか悟り先に口を開く。

「あっ、すまねぇ。まっ、態と【わざと】じゃねぇし許せ!」
「ええ、分かってます。この程度で済んで良かったと思っているぐらいです。」

軽く頭を掻きながら高笑いをする女性に、男性は呆れた表情で皮肉を言う。
そして、男性は徐に【おもむろに】何かを取り出し女性の方に向けた。
それを見た女性は笑うのを止め、真剣な面持ちで受け取る。

「・・・うん。流石、良い仕事するぜ!」
「・・・当て推量で褒められても嬉しくないですよ。」
「なんだ、素直じゃねぇな。折角褒めたのによ。」

女性が受け取った物、それは真っ赤な包帯のような布で巻かれたこぶし大ぐらいの石だった。
彼女は右手でそれを強く握り、ゆっくりと胸元へと引き寄せる。

(もうじき・・・もうじきだ・・・!)

~~~~

「―――ったく、親父の奴・・・。」

人通りの疎らな交差点を渡りながら、スポーツカットの学生が空に悪態をつく。
成績は平均的、運動は人並みよりはできるが一芸に秀でているワケでもない。
特にモテると言うワケでもないが、絶望的に不恰好というワケでもない。
そんな何処にでも居そうなごく普通の17歳の高校3年生、芹沢タクトはふらふらと歩いていた。
彼は今、この年頃の若者は須らく【すべからく】立たされるであろう大きな岐路に立っている。
そして、この年頃の若者は須らく路頭に迷う。彼もまた、そんな若者の一人だった。

「俺、どーせバカだから大学行けねぇし、トラックの運ちゃんにでもなるぜ。」
「特に何かやりたいことねーし、一応大学行くつもりだな。」
「働きたくないでござる!つーわけで、ニート希望で。なんてなっ。・・・はぁっ。」

彼の周りは皆そんな感じでそれなりに迷いながらも、実に楽観的にこの事態を捉えていた。
そして、二言目には決まって言うのだった。

「タクトはいいよな、最悪の場合、道場継ぐっていう選択肢あるし。」

彼はそう言われる度、態と余裕綽々【よゆうしゃくしゃく】の笑顔で肯定して皆の顰蹙【ひんしゅく】を買ってはじゃれ付かれていた。
それはそれで楽しくて、皆で笑いあっていた。

(・・・良いワケねーだろ。)

彼は本当はそう言われるのがイヤだった。
しかし、顔に出して周りの気を悪くするのもイヤなので我慢していた。

(まっ、お前らには分からねーよな。”最悪の選択肢”が有ることの辛さ、重さなんてさ・・・。)

彼の実家は代々、芹沢剣道場という小さな剣術道場を経営している。
両親の話によれば無名ながらも歴史のある剣術を教えている世界唯一の道場らしい。
確かに、世の中に広まっている他の剣術を見ても似たような物はあれど同じ物はなかった。
そして、インターネットで検索しても名前が出てこないぐらいに無名だ。
騙されているんじゃないかと疑ったこともあるが、一応それらしい古い巻物などがあったので嘘ではないらしい。
彼はそんな芹沢剣道場の跡取り息子として育てられていた。
彼自身、剣術は好きだしできることならば続けたいと思っていた。
しかし、彼には絶対に超えられない相手が最も身近に居た。

(アイツの方が強いし、『やりたい』言ってんだからやらせてやりゃいいだろーが・・・。)

1つ下の弟、芹沢ユウトは彼よりも才能に溢れていた。
二人は物心ついた頃から他の門下生に混じって剣術を習っている。
その頃からユウトは頭角を現し、数ヵ月後には門下生全員がその才能を認める所になっていた。
そんなユウトはことある度に師範代になる夢を語っていた。
そして彼は兄として、同じ剣を学んだ者としてその夢を叶えてあげたいとずっと思っていた。
しかし、現実はそんな兄弟の願いを聞き入れはしなかった。

(『代々長男が継いでいる。この代で曲げるワケには行かない。』とか、ふざけろよ・・・。)

余計な後継者争いを防ぐために、代々師範代を務める家系の長男が跡を継ぐことになっている。
頑な【かたくな】にそれを守り通そうとする現師範代の父親と、弟に譲ろうとしている彼が衝突するのは必至だった。

(『従わなきゃ勘当だ。』とか、足元見やがって。)

父親の言う通りに自分が勘当されれば、繰り上がって弟が跡を継げるだろう。
しかし、彼には勘当された後生活していく自信がなかった。
就職するにしても特にやりたい仕事があるワケでもない。
進学するにしても現在の学力では父親を黙らせるような名門大学に入学できるワケもない。
結局の所、今の彼には”最悪の選択肢”を選ぶか勘当されて文字通り路頭に迷うかしかなかった。

「・・・ええぃ!くっそぉーっ!!」

彼は道端で立ち止まり、溜まりに溜まった鬱憤を声に乗せて空へとぶちまけた。
その声が天に届いたのだろうか。この後、彼の願いは叶うこととなる。