14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

第1回パロロワ本編向け練習成果物置き場>成果物その3

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14sure74

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本編

=D-4(X3Y3);螺旋の塔最上階の一室;1日目AM8:30=
「(さぁて、困った。)」
明らかに場違いな声がある女性の心に響く。
「(エリねぇ、アタシ、皆助かる方法思いつかないや。)」
イリスはいつも通り明るく言った。
しかし、そこには自嘲と自虐の気持ちがはっきりと含まれていた。
「(・・そう。)」
エリナは一言だけ素っ気無く返す。
「(ありゃ?なんだよぉ、意外とアッサリ返してくれちゃってさ。)」
「(貴女のことですもの、こうなるまで黙ってるワケが無い・・でしょう?)」
「(んっ、まぁそうだけどね。)」
状況は最悪だった。エリナは今、塔の最上階に居た。
彼女は今、追われている。今居る場所は最終的に逃げ込んだ場所だった。
彼女が追われている理由。それは少し前に遡る。

ーーーー
=E-4(X3Y1);螺旋の塔入口前;1日目AM8:00=
(・・アレは?)
エリナの目にある光景が映った。
二人の女の子が走っている。
一人は腰まであるおさげが可愛い女の子。もう一人は黒いボブカットの女の子だった。
二人の後ろには男が一人。狂気と優越感に染まった笑顔で後を追っていた。
その手には光る物が1つ。恐らくは短刀の類だろう。
一団は高く聳え立つ塔に向かっていた。
「(・・・いいのかい?)」
「(・・あの娘【こ】達なら大丈夫よ。貴女の仲間がついているんですもの。)」
「(OK!さすがエリねえ!『見捨てる』・・なんて言ってたら張り倒す所だったよ。)」
「(・・・どうやって?)」
エリナは時を同じくして自身と同じ身の上になった二人の少女の捜索を打ち切る。
そして、『うーんうーん』と、態とらしく唸っているイリスを無視して一団の後を追った。

ーーーー
=D-4(X3Y3);螺旋の塔最上階の一室;1日目AM8:30=
今、エリナの後ろには追われていた二人が居た。二人は不安そうな目をしている。
「(・・覚悟完了?)」
イリスはエリナに問いかける。
「(そうね。)」
この時既に、エリナはある決断を下していた。イリスもそれを理解していた。
二人の息は恐ろしいほどに合っていた。
「お姉さん・・。」
「大丈夫、二人は必ずお姉さん達が守るから!」
不安そうな顔をするおさげの少女に、赤いショートカットの女性が笑顔を作って答える。
(・・とは言った物の、どうしよう。)
赤いショートカットの女性、アーシャは周りを見回しながら考えていた。
(あの穴から外へ飛び降りたら・・・死んじゃうよね。)
こんな時なのに、そんな当たり前なことを考えている自分に呆れて溜め息を1つ。
部屋の壁には人工的に開けられたような大きな穴が1つ開いていた。
そこから見える景色から、結構な高さがある。落ちたら恐らく助からないだろう。
(彼女は何か思いついたのかな・・?)
アーシャはちらりと前を見る。部屋の入口をじっとみている女性の姿が映った。
黒いウェーブの掛かったセミロングが美しい女性で、エリナと名乗った。
彼女とは塔の入口でばったりと出会った。
その時、私は直感的に同じことを考えていると思った。
彼女もそう考えたのかお互いに何も言わず塔の中へと入り、そして今こうして行動を供にしている。

「ふはははー!追いかけっこはもう終わりだぜぇ!」
遠くから男の憎たらしい声が聞こえる。
あの男、言動の割りには頭が切れるようだ。
男は塔の中で私達が彼女達と合流するのを身を潜めて待ち、安心して油断した隙を突いてきた。
(エリナさんが居なかったら私は・・。)
彼女が居なければ今頃私は、乾いた音と供に飛んできた”何か”によって致命傷を受けていただろう。
その時の彼女は、あの男がこの瞬間を狙っていたのを知っていたかのような言動だった。
しかし、共謀者とかそういう類の間柄ではないらしい。
もしそうならば、此処に行き着くまでの道中で何かしらのアクションがあるはずだからだ。
恐らく、私よりもずっと勘が鋭くあの男と同等以上に頭が切れる女性なのだろう。
会って間もなく余り言葉も交わしていないが、私は彼女を頼りになる存在だと思っていた。

「おっじゃましまーすww」
蔑んだような笑顔で男がドアを勢いよく蹴り開ける。
アーシャとエリナは男をじっと睨みつける。
「さーて、追い詰めたぞ!っと。」
「・・二人を、頼むわ。」
「エリナさん?・・・!!」
エリナはアーシャに小声で一言だけ告げた。
その言葉の意味を解してハッとしたアーシャはすぐに答える。
「囮なら私がやります!手負いの私の方よりも貴女が付いていた方が彼女達を守れますよ!」
「『囮になる』・・なんて言ってないわよ?」
「えっ!?でも・・!」
エリナは戸惑うアーシャの反応に優しい声で答える。
「・・やはり、貴女が付いていた方がいいわ。・・・貴女なら、二人を見捨てない。」
「!!」
『追い詰められると人は本音を漏らす』と聞いたことがある。
彼女はあの一言で私の本音を探りに来たのだ。そして、私がどういう考えで動く人間かを確かめたのだ。
(この事態に彼女は・・・、なんて女性【ひと】なんだろう。)
私は今までに、彼女ほど美しくて聡明な女性に会った記憶がない。
あの男のために、彼女のような女性がその身を穢すのはあまりに忍びない。

やはり此処は私が行くべきだ。
「でも、先に言った通り、私は手負いです。私が付いていても・・」
あの時の”何か”によって私は利き腕を負傷していた。
二度と動かせないほどではないが、もう暫くは武器を握れそうにない。
「・・・”魔法”に怪我は関係ないの?」
「!?」
確かに、魔法ならば利き腕で放たなくても威力にそこまで大きな変動はない。
あんな男でも、できれば殺したくはない。殺せばきっと、それが何処かで誰かを悲しませることになる。
私の”甘さ”だと言われたら、反論のしようもない。
しかし、私は誰かを悲しませるような”正義”はいらないと思っている。
男を殺さないためには、魔法の威力を下げて撃つ必要がある。
だが、あの男からは魔力の気配をまったく感じない。つまり、魔法耐性が著しく低いと考えられる。
魔法耐性の著しく低い相手に魔法を使うと、威力を落としていてもこちらの予想以上の影響を与えてしまうと聞く。
利き腕でも威力を最小限まで落として放てる自信は少しなかったし、況しては利き腕で放てない現状ではさらに自信はなかった。
そんな事情があって、今まで私はあの男に対して魔法を放つことを躊躇っていた。
「・・のようね。やはり、貴女が付いていくべき。私は、戦えないもの。」
「・・何で、私が魔法を使えると?」
私は彼女の前で魔法を使っていない。また、彼女からは魔力の気配を殆ど感じない。
それはつまり、彼女自身は魔法を使えるわけではないし、魔力を感知する能力が高いわけでもないことにもなる。
「貴女なら、分かると思うわ。」
「・・なるほど、やはり”何か”居るのですか?」
初めて会ったときから、アーシャはエリナにエリナとは違う”何か”の気配を微かに感じていた。
それはアーシャと同じ”戦士”の気配に非常によく似ていた。
アーシャは一見するとエリナは戦士には見えないことから来る、ギャップのような物だろうと思っていた。
「ええ。・・能天気な女性【ひと】だけど。結構、便利なのよ。」
「(こらー!能天気とはなんだー!取り消せー!!しかも、便利って、あたしは道具じゃなーい!)」
「・・・だから大丈夫。私は戦えない。けど、弱くないから。」

アーシャは驚いていた。確かに頭は切れるし冷静だが、彼女はいわばただの女性だ。
私のように戦士として正規の訓練は受けていない。
何者かは知らないが優秀な戦士の気配が、彼女をサポートしていただけだった。
しかし、いくら優秀なアドバイザーがついていようとも、行動をする彼女自身がそれ相応の資質を持っていなくてはそううまくはいくまい。
それが一瞬の隙も許されない極限状態ならば尚更だ。
恐らくは、彼女にはかなりの資質があるのだろう。
もし望んで戦士になっていれば、私など足元にも及ばない戦士になっていたやもしれない。
私は彼女に、女性として戦士としてある種尊敬の念ような物を感じずにはいられなかった。
(エリナさん、やはり、私は・・貴女を!)
私は思考のスクラップアンドビルドを必死に繰り返す。
しかし、たどり着く結論は一つだった。
そして、その結論では彼女を納得させることは恐らく不可能だった。

「さーて、生贄の相談は終わったかなぁ?」
「話が早いわね・・・私じゃ、不満?」
男の問いかけに間髪居れずエリナが答える。
「エリナさん・・。」
何かを言いかけるアーシャをエリナが片手で制す。
「・・行って。」
アーシャはそれ以上何も言わず二人を連れ、壁伝いに入口へとゆっくり進む。
「んー、オレはあっちの赤い髪のお姉さんの方がよかったぜ。」
「そっ。・・じゃあ、襲えば?」
「やめとくぜ。二兎追うものは一兎も得ずとか言うしな。」
「ふーん・・。」
「(イリス、やはり彼は・・・。)」
「(・・だね。)」
エリナの問いかけに、イリスは一言だけ返す。
「(・・ホントに、いいんだね?キミは今は”ただの女子大生”だよ?)」
そう、今の私は”ただの女子大生”だ。
本来ならばこんなことをする必要はないし、こんなことを考える必要もない。
「(・・彼女の目、真っ直ぐで綺麗だった。)」
本当に、真っ直ぐで綺麗な目だった。多分、私じゃ生涯絶対にできそうにない。
「(でも彼女は”戦士”、それも恐らくは相当な手練。・・キミより適任だよ?)」
本当ならば”戦士”がやることだということも分かっている。
変身ができるならば、”戦士”になれるならば私は既にやっている。
「(でしょうね。でも、彼女はきっと・・。)」
私では絶対できない目を持つ生粋の”戦士”。
恐らく、彼女はそれ故に今まで何度となく悩み苦しんできたに違いない。そして、今も恐らく苦しんでいる。
見る人が見れば『甘い』と一言で切り捨てるだろう。
しかし、私はそうは思わない。切り捨てる方がずっと簡単だからだ。
彼女にあんな目ができるのは、私よりもずっと”強い”からだろう。
「(だろうねぇ。・・・OK。やろっかエリナ。)」
こういった、彼女の何気ない配慮が本当に身に沁みる。
彼女は私にいよいよという時に迷うことがないよう、最後の決意をする機会をくれたのだ。
私は彼を刺し違えても殺すことを改めて決心した。
私はこの時、”ただの女子大生”であることを捨てたのだった。
(彼女に、こんなマネはさせられない。・・あの目は、こんなことで濁らせてはいけない!)

「あー、でも逃げるフリして後ろからガツーン!なんてのは怖いなぁー!」
「!!」
男の言葉でアーシャの中に一筋の閃光が走った。
そうだ。その手があった。もう少し回り込んで、後ろから攻撃をかければ或いは・・。
ちょっと卑怯な感じもするが、この際そんなことを気にしてはいられない。
アーシャの動きが止まり、視線をエリナの方へ向けようとする。
「アーシャ!」
それよりも早く、エリナが叫ぶ。
「『加勢しよう』なんて考えたら私。・・・貴女を恨むわ。」
「えっ!?・・・っ!」
アーシャはエリナの予想外の反応に驚き彼女の方に振り向く。
そして、彼女の発する気配からすぐにその言葉の意味を理解する。
(そんな!?・・貴女は!・・本当に!?)
彼女はあの男を刺し違えてでもこの場で殺すつもりなのだ。そして、その光景を私に見せたくないのだろう。
確かに、あの男は危険すぎるし話し合いで解決も期待できそうにない。
仮に私が後ろから加勢して、この場をうまく切り抜けても何時かは決着をつける必要がでてくるはずだ。
そして、その時は今よりも状況が悪いかもしれない。
無論、好転している可能性や決着をつける必要が無くなる可能性だって否定はできない。
だが、その確証がない以上、今の彼女を納得させるにたる理由にはならない。
それに、この作戦はあの男に知られている。
あの男のことだから、きっと何か策を考えているに違いない。
最悪の場合裏をかかれ二人とも無事ではない可能性がある。そうなったら誰があの娘【こ】達を守るのだろう。
「・・・行きなさい。」
「エリナさん・・私・・!!」
「そうだぜ、おヤサシ~イアーシャちゃんの代わりに、エリナちゃんが人殺しをしようとしてるんだ。見ないであげるのが’おなさけ’ってもんだw」
「!!?」
「・・・いいから、行きなさい!!」
エリナは声を張り上げて言い放つ。
アーシャは複雑な表情のまま少しだけ固まるが、すぐに二人を連れて部屋から出て行った。

「(あーもう、あんな言い方したら『貴女の代わりにアイツを殺してやるんだからさっさと消えろ。』って言ってるようなもんじゃん。)」
「(・・仕方なかったのよ。)」
「(もっと他に言い方ってのもあったろうに。キミのそういうところ、よくないよ。)」
「(分かってるわ・・・。)」
迂闊だった。
今までの行動から彼はかなり狡猾で勘の鋭い男だと分かっていたが、心の何処かでまだ侮っていた。
そして、その油断が彼に対する殺気を外へ出す結果になっていた。
彼は私が必要ならば躊躇わず殺そうとする類の人間だと悟ったのだろう。
そして、彼女が相手が悪人でも殺すのを躊躇う人間であることも恐らく分かっていた。
その上で私が彼女をどういう思いで逃がそうとしているのかを考え、自分が生き延びるためにああやって態と引き止めようとしたのだ。
十中八九、あのまま彼の言う通りに彼女に後ろから襲わせていれば奇襲は成功していた。
最悪の場合でも4人でこの場を逃げるだけの隙は作れていただろう。
しかしそれでは、彼は生き延びてしまう。
彼が生き延びるということは、それだけ多くの悲劇が撒き散らされることに他ならない。
その過程で彼に今よりも有利な状況ができる可能性は高い。
あの手のタイプの場合、時間を与えれば与えるほどより狡猾で凶悪な手を考えてくるものだ。
平和的解決が望めそうにない以上、できる限り早い段階で手を打たなくてはいけない。

「(今頃彼女、泣いちゃってるよー?)」
「(泣いてる・・だけならいいわ。)」
泣いているだけならばまだ救いがある。
彼女のことだから、きっと今頃必要以上に自分を責めているに違いない。
最悪の場合、それが原因で思いがけない行動に走るかもしれない。
今の私にできることは、彼女があの綺麗な目を自ら抉り取るようなことがないように祈ること。
そして、できる限り彼と彼女を引き離すことだった。
「(完全にやられたわね・・。)」
「(時間を稼ぎつつ、彼を殺して、もし生き延びても彼女との再会を避けろ。・・厳しい注文だぁね。)」
イリスの言うとおりだった。
あのまま、何事もなく彼女を逃がしていれば、今後彼女ともし再会できた時は笑顔で合流できただろう。
しかし、彼女は私のやろうとしていることを知ってしまった。
私が今後彼女と合流するということは、『私が貴女の代わりに人を殺してきた』と体言することになる。
いくら心優しい彼女だって”戦士”だ。流石にそんなことをされて気分がいいワケがない。
結局、私は自らの油断で彼に今後の行動を著しく制限されてしまったのだ。
(私って・・まだまだ、ダメね。)

ーーーー
=D-4(X3Y3);螺旋の塔内部;1日目AM8:40=
(私は!・・私は・・・!!)
なんて、無力なのだろう。道中、アーシャは自分を責めていた。
恐らく、今までこれほど自身の”甘さ”が恨めしく思ったことはないだろう。
(なのに・・・私は・・何で・・・ホッとしているの!?)
恐らくはエリナを信頼し、いつか必ず再会できると思ってのことだった。
しかし、この安心感はエリーやクリスのような、古くからの付き合いがある戦友に抱く類のもの。
いわば、お互いのことを色々と理解して信頼している相手だからこそ許されるものだ。
確かに私は彼女を信頼している。しかし、会ってまだ1時間も経っていない。
まだ、私のことを殆ど話していないし、彼女のことも殆ど聞いていない。
それなのに、彼女は私のことを信頼し、私の”甘さ”を受け入れてくれた。
ただそれだけのことで、私は彼女のことを理解したと勝手に思って安心していたのだ。
これを身勝手な思い込みと言わずなんといえばいいのだろう。自分の浅ましさが悔しい。
アーシャは強く歯を食いしばった。何かが欠ける様な音がしても気にすることはなかった。
このとき、彼女の戦友が居れば『そんなに自分を責めたらダメ』とすかさず手を差し伸べていただろう。
しかし今この場に彼女の戦友は居ない。それがアーシャに際限なく自責をさせる結果となっていた。

「あっ。お姉さんの荷物、私が持ったままだった・・。」
鈴音はふと、自分が荷物を預かっていたことを思い出した。
あの男から逃げている途中、『ちょっと持ってて。』と言われ何気なく受け取っていた。
その後、壁や床などを調べているようだったから、仕掛けがないか探しているのだろうと思って持っていた。
私は折を見て返そうと思っていた。
しかし、ちょっとキツそうで声をかけにくい印象だったこともあって、返しそびれていた。
(!?)
アーシャはその言葉に驚き、鈴音の方に顔を向けた。
そこには確かに、エリナの持っていた物と思われるバッグがあった。
エリナがこの塔を上る途中に彼女に荷物を預けていたことは、アーシャも覚えていた。
てっきり受け取っていたものかと思っていたが、バッグは此処にある。
それはつまり、彼女は今丸腰であるということ。
(丸腰!?・・・あっ。)
あの男は武器の扱いは並以上に心得ているようだった。
対して、彼女は恐らく武器の扱いに関しては素人だろう。
素人が下手に武器を持って相手に立ち向かうのは、みすみす相手に武器を渡すようなことになりかねない。
相手が自分よりも武器を使った戦いに慣れているのならば尚のこと。
彼女はそれを承知で鈴音に荷物を渡し、態と回収しなかったのだろう。
それに、使える道具が多いということはそれだけ戦術を立てやすいということだ。
彼女は私達を少しでも生き延びやすくするために、自分の道具を預けたのだ。
あの時、私はただ皆を塔の仕掛けやあの男の追撃から守ることだけで必死だった。
それなのに、その頃彼女は平行してこんな先のことまで考えていたのだ。
(彼女は・・本当に凄い女性【ひと】だ。それなのに・・私は・・・くっ・・。)

「アーシャさん。私、届けに行ってきます!」
鈴音はそう行って来た道を引き返そうとした。
いくらなんでも、丸腰で武器を持った男性を相手に、女性が勝てるはずがない。
彼女があの男を殺すとか何とか物騒なことも言っていたが、どうせ男が口から出任せを言ってるに違いない。
彼女は少なくとも、人を殺めるような女性【ひと】ではないだろう。
第一、武器も無いのにどうやって殺せるというのだ。むしろ、あのままでは殺されるのは彼女だ。
それに、今から急いで助けに戻ればそれこそあの男の言った通り、後ろからガツーン!とできるかもしれない。
彼女は何故か強く拒んでいたが、正直私は彼女に恨まれてもいいから皆で助かりたい。

「あたしも・・行く!」
鈴音の言葉に、おさげの少女、まゆこが答えた。
「あたしのせい、だから!」
あの男に出会った時、あの男は今にも死んでしまいそうなぐらい苦しそうな呻き声をだしていた。
あたしが心配になってとりあえず声をかけてみたいと言ったのが、そもそもの原因だ。
あの時、鈴音の言う通りに無視していればよかったのかもしれない。
「役に立てるか分かんないけど・・・助けなきゃ!」
こんな時にステッキさえあれば。とまゆこは強く思った。

「行ってはダメ!」
足早に引き返そうとする二人を引き止める声が響いた。
「えっ?」
鈴音とまゆこは予想外の言葉に足を止めて振り返る。
二人の目にアーシャの姿が映る。
俯いているせいでその表情はよく分からないが、声は怒っているような気がした。
「何故です!あのままではエリナさんが!」
「あたし、エリナお姉さんを助けに行きたい!」
「二人は!エリナさんを・・信じられないの?」
アーシャの言葉に二人はハッとする。
彼女は私達を逃がすために、一人残ることを選択したのだ。
当然、私達が無事逃げ出せることを信じているはずだ。
私達が助けに戻れば、彼女の信頼を裏切ることになる。
鈴音はまゆこと顔を見合わせる。まゆこも鈴音と同じ気持ちだった。
「大丈夫・・彼女は・・・強いから。ねっ。・・信じようよ。」
私とまゆこを優しく抱きしめる彼女の肩が少しだけ震えている。
彼女の顔は笑顔だが、何だかとても悲しそうで今にも壊れそうだった。
そして、私は彼女が一番辛いのだと悟る。
冷静に考えれば、私達が行くよりも彼女が行った方が助けられる可能性は高い。
それは彼女自身が一番よく分かっているはずだ。
その彼女が、そうしたい気持ちを抑えている。恐らくは、私達を守るためだろう。
「ごめんなさい・・。私、エリナさんを信じます。」
そんな彼女の気持ちも知らないで、一人助けに行こうと騒ぎ出した自分が恥ずかしい。
鈴音は今、自身の思慮の浅さが悔しくてたまらなかった。
「・・あたしも、エリナお姉さんを信じる。」
変身ができないだけで、こんなにも無力になるとは思わなかった。
まゆこは初めて、もっと強くなりたいと心から願った。

そうして三人は、其々の気持ちを胸に塔の外へと急いだのだった。

つづく。

現在状況

●キャラクター名
アーシャ・リュコリス

●現在位置
D-4(X3Y3):螺旋の塔内部

●健康状態
利き腕負傷中(強姦男の攻撃による、後1時間ぐらいは武器を握れそうにない、軽く動かしたりはできる。)(魔力十分)
自信喪失中
自己嫌悪中
後悔中


●装備武具と詳細
なし

●道具と詳細
デイパック
食料(2日分)
真水(1Lペットボトル2本分)
懐中電灯(電池残量未確認)
地図(現在位置『塔の傍』)
コンパス(動作確認済み)
時計(24Hデジタル式腕時計、腕に巻くのは何となく抵抗があったのでバッグの取り出しやすい位置に)
参加者名簿(エリーシア、クリステル、ルーファスの名前は確認済み)
後不明

●現在の同行者への見解(前回との差分)
  • 榊鈴音
黒いボブカットが可愛い少女。魔力の気配はまったく感じない。何があっても絶対に守る。信頼している。
  • まゆこ
おさげが可愛い少女。魔力の気配を感じる。何があっても絶対に守る。信頼している。
  • 富永エリナ→離脱
とても聡明で美しくて心優しい女性。何があっても絶対守りたかった。再会は絶望的だと思っている。

●今後の行動予定と優先順位
1:鈴音とまゆこを連れて塔を出る


●キャラクター名
榊 鈴音【さかき すずね】

●現在位置
D-4(X3Y3):螺旋の塔内部

●健康状態
普通

●装備武具と詳細
なし

●道具と詳細
デイパック
食料(2日分)
真水(2Lペットボトル2本分)
懐中電灯(電池残量十分)
地図(現在位置『塔の傍』)
コンパス(動作確認済み)
参加者名簿(確認したが、殆ど覚えていない)
後不明

時計(24Hデジタル式腕時計、左手首の内側に装着済み)

デイパック(エリナ分)
食料(不明)~2日分~
真水(不明)~2Lペットボトル2本分~
懐中電灯(電池残量不明)~電池残量十分~
地図(現在位置未確認)~『塔の傍』である事を確認済み~
コンパス(動作未確認)~動作確認済み~
参加者名簿(未確認)~カザネ、シノブの名前は確認済み~
後不明~刀【日本刀(BlankBlood(仮))】、ラベルに『A』のような文字が書かれたビン【絶倫ドリンクA(リョナラークエスト)】は確認済み~

●現在の同行者への見解(前回との差分)
  • アーシャ
優しくて頼りになるお姉さん。何だかとても悲しそう。信頼している。
  • まゆこ
おさげが可愛い女の子。お人好し過ぎるので放っておけない。いざとなったら守る。信頼している。
  • 富永エリナ→離脱
ちょっとキツそうで声がかけにくかったけど優しいお姉さん。必ず再会できると信じている。

●今後の行動予定と優先順位
1:アーシャとまゆこと一緒に塔を出る


●キャラクター名
まゆこちゃん

●現在位置
D-4(X3Y3):螺旋の塔内部

●健康状態
普通(魔力残量十分)

●装備武具と詳細
なし

●道具と詳細
デイパック
食料(たぶん3日分)~2日分~
真水(2Lペットボトル2本分)
懐中電灯(電池残量十分)
地図(現在位置『多分、塔の傍』)
コンパス(動作未確認)
参加者名簿(確認済み、読めなかった字も多くあったので内容は殆ど覚えてない)
後不明

時計(24Hデジタル式腕時計、左手首内側に装着済み)

●現在の同行者への見解(前回との差分)
  • アーシャ
赤い髪が素敵な頼れるお姉さん。もしかしたら、魔法使いかもしれないと感じている。何だか悲しそう。信頼している。
  • 榊鈴音
黒い髪が似合ってる明るくて優しいお姉さん。信頼している。
  • 富永エリナ→離脱
ちょっと怖そうだけど優しいお姉さん。必ず再会できると信じている。

●今後の行動予定と優先順位
1:アーシャと鈴音と一緒に塔を出る
2:マジックステッキを探す


●キャラクター名
富永エリナ【とみなが えりな】&アール=イリス

●現在位置
D-4(X3Y3)螺旋の塔最上階の一室、壁に開いた穴を背にして強姦男と対峙している

●健康状態
普通(魔力十分)

●装備武具と詳細
なし

●道具と詳細
時計(24Hデジタル式腕時計、左手首内側に装着済み)

●現在の同行者への見解(前回との差分)
  • アーシャ→離脱
とても真っ直ぐで綺麗な目をした”強い”女性。彼女の綺麗な目を守りたい。信頼している。
  • 榊鈴音→離脱
礼儀正しくて素直そうな少女。信頼している。
  • まゆこ→離脱
おさげの可愛い明るくてお人好しそうな少女。魔法が使えるかもしれないと考えている。信頼している。

●今後の行動予定と優先順位
1:アーシャと鈴音とまゆこが逃げる時間を稼ぐ
2:強姦男を殺す
3:強姦男を殺したことをアーシャに知られないようにする方法を考える


●キャラクター名
強姦男【ごう かんお】

●現在位置
D-4(X3Y3)螺旋の塔最上階の一室、入口を背にしてエリナと対峙している

●健康状態
普通

●装備武具と詳細
短刀【なぞちゃんの小太刀(アストラガロマンシー)】(右手、順手で構えている)

●道具と詳細
デイパック
食料(2日分)
真水(2Lペットボトル2本分)
懐中電灯(電池残量十分)
地図(現在位置『塔の傍』)
コンパス(動作確認済み)
参加者名簿(確認済み、女っぽい名前は一通り記憶済み)
拳銃【ハンドガン(なよりよ)】(安全装置解除済み、残弾無し)
後不明

時計(24Hデジタル式腕時計、左手首外側に装着済み)

●現在の同行者への見解(前回との差分)
同行者なし

●今後の行動予定と優先順位
1:エリナを犯ってから殺る→気が向いたらその後更に犯る
2:アーシャと鈴音とまゆこを追いかける
3:次に犯るヤツと、その方法を考える
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